供物
概説
供物のもつ意味
供物に関する解釈はさまざまである。ビアッティ(Beattie, J.)は供儀の象徴的な側面こそが本質であるとし、人間と超自然的な存在との間にも互酬的な面がある、つまり人間と霊との関係には常に何らかの交換が行われている面があるので、それがしばしば霊に対する贈呈や譲渡となっている(物質的なもの、および非物質的なことがらを含む)、とした[2][3]。
ユダヤ教
供物に関して、ユダヤ教においては、アブラハムが自分のひとり息子イサクを神に捧げた燔祭が知られている[2]。
『旧約聖書』にみられる贖罪の羊は、セム人の罪をその身に負わされ、アザゼルのもとへと荒野を追われていった[2]。羊や山羊といった存在も、それを供える人間と生命の本質を共有していて、その結果、人間自身を表象している[2]。
ユダヤ人が「トーラー」と呼ぶ書物(「モーセ五書」とも呼ばれる書物群)には「コルバン」と呼ばれる供物についての規定や記述が書かれている[注釈 1]。動物を捧げたり、「zevah shelamim」(英語で言う「peace offering」和解のための贈り物)を捧げたり、あるいは「holocaust ホロコースト」と呼ばれる供物(具体的には雄牛・羊・やぎ・はと のいずれかを、ヤーウェにだけ捧げることを示すために祭壇で焼くこと(焼ききること))、である。
キリスト教

カトリックの神学では、アブラハムがひとり息子のイサクを生贄として捧げなければならなかったのと同じように、神もまた人類の罪をあがなうために神のひとり子であるイエスを捧げたのだ、とすることがある。[注釈 2]
カトリックのミサでは祭壇でパン(ホスチア)とぶどう酒をささげる。
ミサ。ホスチアをかかげているところ。
古代インドおよび仏教
古代インドのサンガ(ガナ)のひとつとされるヴァッジ国では、都市の内外にある祠廟(チャイティヤ)を崇め供物を絶やす事がなかったという。仏典にある「衰亡を避けるための7つの法 satta aparihaariyaa dhammaa」には供物をささげることも含まれている。
こうした行為は、ブッダが示唆したともそうでないとも言われ、その後の仏教の伝統的な行為とも共通している。
- 日本の仏教
日本の仏教では主に、仏壇などで灯明や香華(お線香・抹香)を配し、米、飯、果物などのほか、生花などが一般的で、生花の場合は「供花(くか)」「仏花(ぶっか、ぶつばな)」と呼ばれる。
日蓮はシキミを好んで供えたので、日蓮宗系の各宗派では今もシキミを供え、「おしきみ」と呼ぶ。
道教
道教では、幽魂、正薦亡位には穀物を供え、神に対しては茶や果物を供えていた。つまり対象によって供物にも違いがあったらしい[6]。
道教には醮(しょう)という祭りもあり、これは夜間に供物を並べて、神々に願いごとを上奏するやり方である[7]。《隋書》経籍志の「道経序録」によると、「醮」とは災厄を消除する方法のひとつであり、夜中 星空の下で酒や乾肉などの供物を並べ、天皇太一や五星列宿を祭り、文書を上奏する儀礼、とのことである[8]。
神道

神道では「饌」といい、本来は神のために調えて献上した食物や食事を指し、献饌ともいう[9]。さらに遡れば、その土地の首長豪族が指導して田畑を開き、あるいはその土地を守護したことへの返礼として、収穫した穀物や特産品を食事として献上したことに始まるものである。
他
死者に花を供えるということも広く行われる。事故や事件の現場に犠牲者への供花(花の供えもの)が沢山置かれるということも行われる。
2011年のノルウェー連続テロ事件の犠牲者に供えられた花とキャンドル。
2019年の東池袋の交通事故の犠牲者に供えられた花と飲料。
2019年にニュージーランドで起きたクライストチャーチモスク銃乱射事件の犠牲者に供えられた花。![死んだカンガルー[要出典]に供えられた花と果物(北海道・円山動物園、2011年)](../I/Offered_flowers_and_an_apple_for_the_Kangaroo's_death_in_the_Japanese_zoo.jpg.webp)
宗教ではなく、さらにフィクションの中の話にすぎないのだが、アニメのファンの一部に、自分の思い入れの強いアニメのキャラクターが物語中で死んだら炭酸飲料を供える例もあるのだという[10]。
脚注
注釈
出典
- 『供犠』 - コトバンク
- 小口偉一、堀一郎『宗教学辞典』東京大学出版会、1979年、170頁。ISBN 978-4130100274。
- Beattie, J., Other Cultures, 1964。(翻訳本:蒲生正男、村武精一『社会人類学』社会思想社、1968)
- 日本大百科全書『供花』 - コトバンク
- 山折哲雄『仏教用語の基礎知識』角川学芸出版, 2000、p.120
- 野口鐵郎, 田中文雄, 丸山宏, 浅野春二『道教の教団と儀礼』雄山閣出版、 2000、p.135-137
- 改訂新版世界大百科事典『斎』 - コトバンク
- 改訂新版世界大百科事典『醮』 - コトバンク
- デジタル大辞泉『饌』 - コトバンク
- “アニメキャラの死を悼む個展、タイで開催 「進撃の巨人」も:時事ドットコム”. 時事ドットコム. 2021年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年7月19日閲覧。




