さらば愛しき大地
『さらば愛しき大地』(さらばいとしきだいち)は、柳町光男監督・脚本による1982年の日本の映画。
| さらば愛しき大地 | |
|---|---|
| A Farewell to the Land | |
| 監督 | 柳町光男 |
| 脚本 | 柳町光男 |
| 製作 |
柳町光男 池田哲也 池田道彦 |
| 出演者 |
根津甚八 秋吉久美子 山口美也子 |
| 音楽 | 横田年昭 |
| 撮影 | 田村正毅 |
| 編集 | 山地早智子 |
| 製作会社 |
プロダクション群狼 アトリエ・ダンカン |
| 公開 | 1982年4月9日 |
| 上映時間 | 130分 |
| 製作国 |
|
| 言語 | 日本語 |
あらすじ
1980年代初めの鹿島臨海工業地帯近くの町。農家の山沢家は長男の幸雄がダンプの運転手として外で働き、両親と妻の文江が農業に従事している。次男・明彦は東京に出て、そのことを恨みに思う幸雄は時折些細なことで暴れだす。
そんな彼の生きがいは幼い二人の息子たちなのだが、二人きりで沼に遊びに出かけボートから転落して命を落とした。身重の文江は嘆き悲しみ、幸雄は怒りを文江にぶつけ、背中に観音像と子どもの戒名を刺青して供養する。
そんな折、幸雄は順子という、かつて明彦の恋人だった女をダンプに乗せてやる。順子は昼間は工場で働き、夜は母の飲み屋を手伝っている。彼女は母親が若い男と出て行ったと打ち明け、寂しさを抱えた者同士で男女の関係が生まれる。二人は同棲を始めるが、妻文江は黙認した。
そして、順子との間には娘が生まれ、実家の文江は第三子を出産していたが、依然として幸雄の二重生活は続いている。だが仕事は減り、その不安と孤独を紛らわすために覚醒剤を常用するようになっていく。
一方、母や兄夫婦を心配して実家に戻った明彦は幸雄が設立した建材業の現場を手伝い、兄の借金返済のために懸命に働く。しかし、覚醒剤で荒んでいく幸雄と、それを説教する堅実な明彦の間には溝が広がり、幸雄は会社も仕事も捨てて逃げ出してしまう。
家計が苦しくなった順子はスナックで働き始め、順子のヒモになった幸雄はますます覚醒剤に溺れていって、幻聴と幻覚に襲われるようになる。順子は仕方なく、結婚を控えた昔の恋人・明彦に金の工面を頼む。順子と明彦が会っていると知った幸雄は、それまで鬱積していた弟に対する思いが一気に噴き出す。
明彦の結婚式の日、幻聴や幻覚を抱えた姿で式場に向かった幸雄は、明彦に包丁を突きつけて騒動を起こす。
結婚式に行ったはずの幸雄が自宅で呆けているのを、帰宅した順子が見つけて、クスリをやめるよう哀願するが聞き入れられず、やがて台所に立ち野菜を切り始める。すると幸雄の耳には順子の心の声が幻聴として聞こえてくる。自分に対する恨み、情けない自分を責め立てる声を聞いた幸雄は、突然、順子の背中に包丁を突き刺し、息絶える姿を呆然と眺めた。
キャスト
製作
企画・脚本
監督の柳町光男は、本作の舞台・鹿嶋市がある同じ茨城県出身で、鹿島臨海工業地帯の建設により、農村がどんどん壊され、ダンプカーが走る光景をずっと見ていた[1]。そういうものが映画の舞台としては格好だなと感じプロットは練ってはいた。上手く構成できていないとき、新聞でダンプの運転手が覚せい剤をやって愛人を殺したという記事を見つけ、一気にホンが書けた[1]。映画はその実話とは大分違うという[1]。製作費約5,000万円[2]。
興行
柳町光男監督の前作『十九歳の地図』同様に、内容が暗い、救いようがない、地味などと評され[5][6]、配給会社をたらいまわしになった挙句[6]、1982年のベルリン国際映画祭に正式出品が決まってもダメで[4]、結局買い手が付かず自主上映になった[3][7][8]。しかし、こんないい作品を埋もれさせては映画人の恥だと、配給会社の若手宣伝マンやジャーナリストなどが中心となって支援する会を作り、上映機運を盛り上げた結果、岡田茂が社長を務めていた東急レクリエーションが運営する新宿のミニシアター「シネマスクエアとうきゅう」で1982年6月に公開された[3]。結果的に12週上映の大ヒットとなった[8]。この反響を受け[5]、1982年7月以降、名古屋市の毎日地下劇場など各地で順次公開された[5][6]。
評価
ニューヨーク・タイムズのジャネット・マスリンは「平穏さと獰猛さが静かに衝突している」と指摘した上で、本作に好意的な評価を与えた[9]。
受賞歴
脚注
- 藤木TDC「柳町光男インタビュー」『映画秘宝』2015年12月号 71頁、洋泉社。
- 「シネマ最前線 溢れるエネルギー!柳町光男 『さらば愛しき大地』撮影快調!!」『シティロード』1981年10月号、エコー企画、22–23頁。
- 「日本映画シアター MOVIE&STARトピックス」『ロードショー』1982年10月号、集英社、219頁。
- 小藤田千栄子「洋画ファンのための邦画コーナー PREVIEW試写室 共演の根津甚八と秋吉久美子がよかった『さらば愛しき大地』」『SCREEN』1982年3月号、近代映画社、253頁。
- 「ニュース・スクランブル CINEMA シネマ視斜室 現代日本の断面をさらけ出した衝撃作! 『さらば愛しき大地』」『週刊明星』、集英社、1982年6月3日号、148頁。
- 「ニュース・スクランブル CINEMA『さらば愛しき大地』記録破りの大ヒット」『週刊明星』、集英社、1982年8月19日号、148頁。
- Carte Blanche カルト・ブランシュ - アーカイブス
- 大森さわこ : ミニシアター再訪【第3回】 - 芸術新聞社
- Maslin, Janet (1983年3月20日). “'Farewell,' A Japanese Drama”. The New York Times. 2014年10月18日閲覧。
- ““キネ旬ベスト・テン”に輝く名作がスクリーンに!”. チケットぴあ (2013年5月30日). 2014年10月18日閲覧。
- “第6回日本アカデミー賞”. アカデミー賞. 2014年10月18日閲覧。
- “第25回ブルーリボン賞”. シネマ報知. 2012年7月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年10月18日閲覧。
- “第37回毎日映画コンクール”. 毎日新聞. 2014年10月18日閲覧。