エンゲル係数

エンゲル係数(エンゲルけいすう、英語:Engel's coefficient、ドイツ語:Engelsches Gesetz)とは、1世帯ごとの家計消費支出に占める飲食費の割合(パーセント単位)のことである[1][2]

エンゲルの法則:収入の増加に伴い、食費支出も増える、総支出に占める割合は減少する。

ドイツ社会統計学者エルンスト・エンゲル1857年論文で発表した[1]

概要

"エンゲル係数の値が高いほど生活水準は低い"傾向にある。これは、食費(食糧・水など)は生命維持の関係から(嗜好品に比べて)極端な節約が困難なためであり、これをエンゲルの法則という。 経済成長に伴い生活水準が向上していくため、エンゲル係数は経済成長に伴い低下していく。[1][2]

有用性の議論

エンゲル係数の高低は生活水準を表す指標となっているが、1世帯あたりの人数や人口に占める生産年齢の割合、価格体系、生活慣習の異なる社会集団の比較には不適当な場合もある[2]

経済学者の飯田泰之は、日本では支出に占める食費の割合は最も貧しい20%で約25%、最も豊かな20%で22%ぐらいであるとして、中間層の方が食費にあてる割合が高いとしている[3]

岐阜大学教授の大藪千穂は、高齢化や為替変動、食文化の変化など複雑な要因によってエンゲル係数が上昇しているので、上昇すなわち貧困ということにはならないとしつつも、低所得者層の生活の厳しさについての指標としては有用であるとしている[4]

ニッセイ基礎研究所の櫨浩一は、共働き世帯の増加は世帯所得が増えるため、中食による食費増はエンゲル係数の増加には大して影響していないと述べている。また、食品に対する公租公課が一律で増額された場合でその他の生活必需とされる物品や役務への公租公課が増やされなかった場合、社会全体のエンゲル係数は上昇することが多いとして、日本では2014年4月に消費税が5%から8%に増税となったが、食料品が増税となった一方で、医療費、学費、地代といった非課税品目も消費支出に含まれるため、相対的にエンゲル係数が上昇したとしているほか、高齢化に伴う無職世帯の増加が長期的なエンゲル係数の上昇に大きな影響を与えていると述べている[5]

日本の統計

第二次世界大戦以前のエンゲル係数は、都市労働者の場合、3割台だったが、敗戦後には6割前後にまで上昇した[6]

消費支出に占める食料費の割合
年度総世帯二人以上の世帯単身世帯
2017年 25.5%25.7%24.5%
2016年 25.7%25.8%25.1%
2015年 25.0%25.0%25.1%
2014年 24.0%24.0%23.8%
2013年 23.6%23.6%23.5%
2012年 23.6%23.5%24.1%
2011年 23.6%23.6%23.5%
2010年 23.2%23.3%23.1%
2009年 23.4%23.4%23.1%
2008年 23.2%23.2%23.0%
2007年 22.9%23.0%22.5%
2006年 23.1%23.1%22.9%
2005年 22.7%22.9%22.1%
2004年 23.0%23.0%23.0%
2003年 23.1%23.2%22.6%
2002年 23.3%23.3%23.3%
2001年 23.2%23.2%22.9%

2011年より上昇の一途を辿っており、2016年はバブル以降もっとも高い数字となった。[7]

消費支出に占める食料費の割合(地方別)[8]
年度北海道東北関東北陸東海近畿中国四国九州沖縄
2017年 24.5%25.6%25.8%26.2%25.2%27.1%25.9%24.5%24.3%28.0%
  • 日本の総務省統計局 『家計調査年報』1世帯当たり1か月間の収入と支出より

世界の統計

日本25.4%
食費
アメリカ19.3%
  
カナダ23.5%
  
イギリス24.9%
  
イタリア24.4%
  
トルコ35.5%
  
韓国32.9%
  
スペイン26.9%
  
  • 総務省統計局 『世界の統計2008』 "13-補2 家計の収入"より

脚注

  1. 「エンゲルの法則」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』ブリタニカ・ジャパン。
  2. 志田明「エンゲル係数」『日本大百科全書』小学館。
  3. 軽減税率は貧困対策に効果的なのか? / 飯田泰之×荻上チキ SYNODOS -シノドス- 2015年11月11日 2021年3月15日閲覧
  4. エンゲル係数、29年ぶり高水準 食生活の変化が影響か 朝日新聞デジタル 2017年3月30日 2021年3月15日閲覧
  5. 基礎研レポート エンゲル係数の上昇を考える ニッセイ基礎研究所 2017年5月 2021年3月15日閲覧 (PDF)
  6. 佐々木潤之介他 『概論日本歴史』 吉川弘文館 2000年 p.264
  7. 出典:家計調査速報 総務省
  8. 明治から続く統計指標:エンゲル係数 総務省統計局

関連項目

  • エンジェル係数 - エンゲル係数を受けて作られた用語
  • シュワーベの法則 - エンゲル係数から派生した考えで、支出における家賃の割合は低所得ほど大きいとする説であるが例外も多い。
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