キイロダカラ

キイロダカラ(黄色宝)、学名 Monetaria moneta は、吸腔目タカラガイ科に分類される巻貝の一種。インド洋太平洋の熱帯・亜熱帯海域に広く分布する小型のタカラガイである。本種の貝殻はかつて、アフリカインド中国太平洋諸島の各地で貝貨貨幣)として使われた歴史をもつ[1][2][3][4][5][6][7][8][9]

キイロダカラ
分類
: 動物界 Animalia
: 軟体動物門 Mollusca
: 腹足綱 Gastropoda
: 吸腔目 Sorbeoconcha
: タカラガイ科 Cypraeidae
亜科 : コモンダカラ亜科 Erosariinae
: Erosariini
: キイロダカラ属 Monetaria Troschel, 1863
: キイロダカラ M. moneta
学名
Monetaria moneta (Linnaeus, 1758)
英名
Money cowry

名称

和名は本種の背面が黄色を帯びることに由来し、末尾に「貝」をつけてキイロダカラガイ(黄色宝貝)と呼ばれることもある。また成体で貝殻の縁が瘤状に張り出したものはフシダカキイロダカラ(節高黄色宝)、若い個体は剣道具の面に似ることからメンガタダカラ(面形宝)とも呼ばれる。

一方、学名の"Moneta"は「通貨」、英名"Money cowry"は「貨幣のタカラガイ」を意味する。また中国語でも「貨貝」である。これらは各地で貝貨として使われた歴史に由来する。学名のシノニムにはCypraea monetaErosaria moneta 等がある。またフシダカキイロダカラを指して M. monetoides Iredale, 1939 等とすることもある[1][2][3][4][5][7]

形態

成体は殻高30mm前後で、タカラガイ科の中では小型の部類である。貝殻は成長過程や地域個体群により形や色の濃淡が変化する。若い個体はラグビーボール型で、殻口が大きく開き、歯もない。背面に灰黒色の横帯が3本あり、見た目が剣道具の「面」に似るので、「メンガタダカラ」とも呼ばれる。一方、老成すると背面や縁が瘤状に膨らんで凹凸ができ、上や下から見ると凧形に近くなる。これは「フシダカキイロダカラ」とも呼ばれる。成体の殻口は狭く、両側に13-14の歯状突起がある。

生時の貝殻は黄白色で、不明瞭な灰色の横帯が3本入る。底面にも黄色みが残るが殻口周辺は白色である。また同属のハナビラダカラ M. annulus 同様、背面に橙色の細い線が"()"状に入る個体もいる。軟体部は灰褐色で、生時に殻を覆う外套膜には細かい縞模様がある[1][2][3][5][7][9]

但し貝殻の黄白色の下には灰色や青紫色の層があり、死んで磨滅が進むとこれらの色が現れるので必ずしも「キイロ」ではなくなる[10]。しかし殻表の瘤や3本の帯模様は残りやすく、同定の手掛かりになる。

同属のハナビラダカラやビャクレンダカラ M. obvelata と似ているが、ハナビラダカラは成長しても瘤ができず単純なドーム型なので区別できる[1][2][5][7]。ビャクレンダカラは縁辺が丸く膨らんで中央部よりも高くなるがやはり瘤状にはならず、また分布域も南太平洋に限られる。

生態

インド洋と太平洋の熱帯・亜熱帯海域に分布する。西は南アフリカ、南はオーストラリア北部、北は南日本ハワイ諸島、東は南北アメリカに程近いガラパゴス諸島クリッパートン島まで、分布域は広い[4]。日本での分布域は、日本海側で山口県以南、太平洋側で房総半島以南である[6]

浅い海のサンゴ礁や岩礁に生息し、転石等の物陰に潜んでいる。潮間帯のタイドプール等でも見られる[2][4]。また死んだ貝殻は海岸にもよく見られ、とりわけ本州中部では冬季に多く打ち上がる[10]

利用

嘗てはアフリカ・インド・中国・太平洋諸島の各地で貝貨として使用されていた[3]。例えば古代中国では、同属のハナビラダカラとともに貝貨に多く使われており、貝殻の背面を削り取って大きな穴を開けたものが流通した。この穴からは中の幼殻や殻口が縦線として見えるため、「貝」の象形文字は貝貨を横倒しにした形に由来するとされる。またこれが貨幣として流通したため、お金にまつわる漢字に「貝」が入るようになったとされている[2][9]貝部中国の貨幣制度史も参照のこと)。

現在では、本種の貝殻は他のタカラガイと同様にコレクションの対象となる他、工芸用素材にも用いられる。

参考文献

  1. 吉良哲明, 1959. キイロダカラ(メンガタダカラ), 「原色日本貝類図鑑」増補改訂版, 20図版, 51p. 保育社
  2. 小菅貞男, 1994. キイロダカラガイ, ポケット図鑑「日本の貝」45p., 49p. ISBN 4415080480, 成美堂出版
  3. 波部忠重・小菅貞男, 1996. キイロダカラガイ, 「エコロン自然シリーズ 貝」改訂版, 20図版, 54p. ISBN 9784586321063, 保育社
  4. Poutiers, J. M., 1998. Cypraea moneta. Gastropods in: FAO Species Identification Guide for Fishery Purposes: The living marine resources of the Western Central Pacific Volume 1. Seaweeds, corals, bivalves and gastropods. Rome, FAO, 1998. 503p. 2013.1.24閲覧
  5. 今島実ほか, 1999. キイロダカラガイ, 内田亨監修「学生版 日本動物図鑑」重版, 304p. ISBN 4832600427, 北隆館
  6. 行田義三, 2003. キイロダカラ, 「貝の図鑑 採集と標本の作り方」120p. ISBN 4931376967, 南方新社
  7. 奥谷喬司, 2006. キイロダカラ. 奥谷喬司・楚山勇 新装版山渓フィールドブックス 4「サンゴ礁の生きもの」124-125p. ISBN 4635060616, 山と渓谷社
  8. WoRMS - World Register of Marine Species - Monetaria moneta (Linnaeus, 1758) 2013.1.24閲覧
  9. 静岡県自然学習資料センター 静岡県/静岡の自然を学ぼう/キイロダカラ【貝】 2013.1.24閲覧
  10. 池田 等 著、斉藤博 編『海辺で拾える貝 ハンドブック』(第2版)株式会社 文一総合出版、東京都新宿区、2009年7月17日、45頁。ISBN 978-4-8299-1024-5。
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