サルトリイバラ

サルトリイバラ(猿捕茨[5]・菝葜[6][注 1]学名: Smilax china)は、サルトリイバラ科[注 2]シオデ属分類される落葉つる性多年生植物。山野や丘陵に自生する雌雄異株つる性の半低木である[6]。別名は、ガンタチイバラ、カカラなど。茎には棘があり、秋に赤い果実をつける。地中に肥大化して横たわる根茎があり、薬用にされる。

サルトリイバラ
Smilax china
Smilax china
(2008年5月23日、神奈川県川崎市
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 単子葉類 monocots
: ユリ目 Liliales
: サルトリイバラ科 Smilacaceae
: シオデ属 Smilax
: サルトリイバラ S. china
学名
Smilax china L. (1753)[1]
シノニム
英名
China root
変種品種[4]
  • S. c. var. kuru
  • コミノサルトリイバラ S. c. var. igaensis
  • トキワサルトリイバラ S. c. var. yanagitae
  • キミノサルトリイバラ S. c. f. xanthocarpa

名称

和名サルトリイバラの由来は、つる性のにはがあることから「これではサル(猿)も思うようには動けない」という意味で、この植物の小枝が絡み合って、鋭い鉤爪(かぎづめ)がたくさんついていて猿が引っ掛かりそうな感じがするので「猿捕り茨(いばら)」の名があるといわれる[7][8]。また、猟師がサルを捕まえるのにトゲのある丈夫なつるを用いたため、この名がついたという説もある[6]

中国名(漢語)で「菝葜」と書く[1]。別名、イギノハ[6]、カシワノハ[6]、ガンタチイバラ[9][10]、カラタチイバラ[7]、カカラ[7][9][11]、カメイバラ[11]、コバンノキ[11]、サンキライ[12][10]などともいう[13]

分布・生育地

東アジア中国朝鮮半島日本)に分布する。日本では北海道本州四国九州沖縄に分布し、日本中の山野でふつうに見られる[5][12]。 山野や丘陵の林縁や林内などに自生し[14]、日が当たり水はけのよい場所を好む。

形態・生態

林縁の他の植物に絡みつく、雌雄異株つる性の落葉低木[14]根茎は、固く屈曲していて、横に這って太い[14][15]の長さは70センチメートル (cm) から数メートル (m) で[9]、根元は太いが、緑色の枝は細くてたくさん分枝し、つる状に伸びて巻きひげで絡まってやぶを作る[10][8]。高さ2 - 3 mほどになり、棘がある茎は硬く、全体が緑色で紫褐色が混じり、這うように伸びてごとにジグザグ状に曲がって枯れた葉柄基部が残り、ほかの低木の枝から枝へと絡みつく[7][15][5]。茎には毛がなく、固い棘が所々まばらに生えるが、しばしば棘がないものもある[16][17][18]。茎断面は維管束痕が散在する[5]

互生し、葉身の長さ3 - 12 cmの円形から広卵形、または広楕円形で、基部は円く、葉先は尖って突端が少し凹んでいる[11]。葉は葉軸を中心にやや折れ曲がっている[9]。葉質は革質で硬く、全縁で表面には光沢があり、くっきりした3 - 5本の葉脈が入り葉の先端で合流する[16][17][18]葉柄は短く、托葉の先が変化した巻きひげは、1対ずつついて長くなって絡みつく[10][14]。新芽は赤みを帯びて、葉が大きく生長するまでは、舟の帆のように立ってつき、目立つ[19]。秋になると、黄色や褐色系に紅葉する[12]

花期は初夏(4 - 7月)[14][15]。新葉とともに葉腋より花茎を出して、散形花序を伸ばし、淡黄緑色の多数の小が集まって咲く[14]。花の6枚の花被片は先端が反り返る。雄花には雄蘂が6本、雌花には子房が3室・柱頭が3本ある[16][17][18]

雌株は果実を結び、果実(液果)は直径7 - 10ミリメートル (mm) 程度の形で、散形花序につき、に熟すと赤くなってよく目立つ[16][17][18]。表面はカキブドウのように、無害な白い粉が入る[19]。冬になっても赤い果実がくすんだ色になって残ることもある[5]。一つの果実には、種子が5個前後入っている[20]。種子は長さは4 mmほどの大きさがあり、倒卵形・広楕円形・球形など、さらには平らな面があったり鈍い陵があったりと、さまざまな形のものがある[20]

冬芽は枝に互生し、長卵形で紅紫色をした芽鱗1枚に覆われており、節の残った葉柄基部に包まれている[5]ルリタテハ幼虫食草とする[21][22]他、フタホシオオノミハムシも食草とする。

利用

薬用

秋に掘り上げて日干し乾燥させた根茎は薬用に使われ、利尿解毒皮膚病に効果があり、リウマチの体質改善に役立つと考えられてきた[14]。漢方では菝葜(ばつかつ)とよんで、膀胱炎腫れ物に治療薬として使われる[7]民間療法として、おできにきび、腫れ物などに、乾燥根茎1日量10 - 15グラムを、水200 - 400 ccコップ2杯ほど)でとろ火にて半量になるまで煎じ、食間3回に分けて服用する用法が知られている[14][6]

食用

若葉は5 - 6月、果実は10 - 11月ころに採取し、食用にできる[7]。若葉はくせがなく、軽く茹でて水にさらし、おひたし和え物炒め物などに調理される[7][6]。赤い果実は、そのまま生食したり、焼酎果糖を加えて漬け込んで果実酒にもできる[7][6]四国地方などの西日本の地域では、葉で菓子柏餅を包む風習もある[7]。紀州や中勢地域などでは、サルトリイバラの葉で包むので柏餅とはよばず、五郎四郎餅[11]やいばらまんじゅう[23]とよばれる。かつては、葉を乾燥させてお茶代わりに飲んだり、タバコに混ぜたりしたといわれる[7]千葉県北総地域では、サルトリイバラの葉(同地では「ばらっぱ」と呼称される)に饅頭をのせて蒸しあげたばらっぱまんじゅうが伝わる[24]

その他

園芸用では、庭園の添景木に使われたり、紅葉の時期に赤く熟す果実は水分が少ないため花材として生花に向いている[12][20]。繁殖は、秋に赤く熟した果実をつぶして取り出した種子を水洗いして保存し、3月頃に播種する[14]

近縁種

中国では近縁種のサンキライ(山帰来)も自生する。サルトリイバラは、中国の何にあたる植物なのか種々の説があり、土伏苓(どぶくりょう)、菝葜(ばっけい)などとされる[14]。中国の山帰来の代用品として、和の山帰来とするのは、サルトリイバラの根茎である[14][11]

  • トゲナシサルトリイバラ - 伊豆諸島に自生するサルトリイバラの変種[25]
  • ヒメサルトリイバラ - 屋久島に自生する小型種。別名ヒメカカラ[25]

脚注

注釈

  1. 「ばっかつ」とも読む。
  2. APG体系クロンキスト体系ではサルトリイバラ科に分類されるが、古い新エングラー体系ではユリ科に含まれていた[1]

出典

  1. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Smilax china L. サルトリイバラ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年7月15日閲覧。
  2. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Smilax china L. f. gigantifolia (Sasam.) T.Koyama サルトリイバラ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年7月15日閲覧。
  3. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Smilax china L. var. taiheiensis (Hayata) T.Koyama サルトリイバラ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年7月15日閲覧。
  4. 米倉浩司; 梶田忠 (2003-). BG Plants簡易検索結果表示”. 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList). 千葉大学. 2013年12月6日閲覧。
  5. 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 228.
  6. 高野昭人監修 世界文化社編 2006, p. 106.
  7. 奥田重俊監修 講談社編 1996, p. 108.
  8. 辻井達一 2006, p. 211.
  9. 大嶋敏昭監修 2002, p. 191.
  10. 谷川栄子 2015, p. 106.
  11. 辻井達一 2006, p. 212.
  12. 亀田龍吉 2014, p. 95.
  13. 樹に咲く花』 492頁。
  14. 馬場篤 1996, p. 57.
  15. 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓 2003, p. 176.
  16. 鈴木庸夫 2005, p. 215.
  17. 池田健蔵・遠藤博編 1997, p. 29.
  18. 本田正次ほか監修 1984, p. 599.
  19. 谷川栄子 2015, p. 107.
  20. 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2018, p. 245.
  21. 猪又敏男編・解説、松本克臣写真『蝶』山と溪谷社〈新装版山溪フィールドブックス〉、2006年(原著1996年)、205頁。ISBN 4-635-06062-4。
  22. 森上信夫、林将之『昆虫の食草・食樹ハンドブック』文一総合出版、2007年、32頁。ISBN 978-4-8299-0026-0。
  23. 三重県「いばらまんじゅう」JA多気郡女性部 多気勢和支部
  24. ばらっぱまんじゅう 千葉県”. うちの郷土料理. 農林水産省. 2024年2月29日閲覧。
  25. 辻井達一 2006, p. 214.

参考文献

  • 池田健蔵・遠藤博編『原色野草検索図鑑 単子葉植物編』北隆館、1997年、29頁。ISBN 4-8326-0386-8。
  • 大嶋敏昭監修『花色でひける山野草・高山植物』成美堂出版〈ポケット図鑑〉、2002年5月20日、191頁。ISBN 4-415-01906-4。
  • 奥田重俊監修 講談社編『新装版 山野草を食べる本』講談社、1996年2月10日、108頁。ISBN 4-06-207959-3。
  • 亀田龍吉『落ち葉の呼び名事典』世界文化社、2014年10月5日。ISBN 978-4-418-14424-2。
  • 鈴木庸夫『葉・実・樹皮で確実にわかる樹木図鑑』日本文芸社〈実用best books〉、2005年、215頁。ISBN 4-537-20354-4。
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、228頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『増補改訂 草木の 種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2018年9月20日、245頁。ISBN 978-4-416-51874-8。
  • 高野昭人監修 世界文化社編『おいしく食べる 山菜・野草』世界文化社〈別冊家庭画報〉、2006年4月20日、106頁。ISBN 4-418-06111-8。
  • 高橋秀男監修 田中つとむ・松原渓『日本の山菜』学習研究社〈フィールドベスト図鑑13〉、2003年4月1日、176頁。ISBN 4-05-401881-5。
  • 谷川栄子『里山のつる性植物 観察の楽しみ』本間秀和(写真)、NHK出版、2015年6月20日、106 - 107頁。ISBN 978-4-14-040271-9。
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、211 - 214頁。ISBN 4-12-101834-6。
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、57頁。ISBN 4-416-49618-4。
  • 本田正次ほか監修『原色園芸植物大図鑑』北隆館、1984年、599頁。ISBN 4-8326-0003-6。OCLC 15399897全国書誌番号:85015870
  • 茂木透写真『樹に咲く花 合弁花・単子葉・裸子植物』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2001年、492 - 493頁。ISBN 4-635-07005-0。

関連項目

外部リンク

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