セルナ級揚陸艇

セルナ級揚陸艇(セルナきゅうようりくてい、: Десантные катера проекта 11770。11770型揚陸艇)は、ロシア海軍向けに建造された、エアー・キャビティ・システムを備えた上陸用舟艇である。

セルナ級揚陸艇
BTR-80を輸送中のD-156
BTR-80を輸送中のD-156
基本情報
艦種 揚陸艇
建造所 ヴォルガ造船所またはボストチナヤ造船所
運用者  ロシア海軍
建造期間 1994年 - 2014年
就役期間 1994年 - 就役中
計画数 17
建造数 16
次級 ジュゴン級上陸用舟艇[1]
要目 ([2]
軽荷排水量 53.8トン
常備排水量 61.0トン
満載排水量 99.7トン
全長 25.6 m
最大幅 5.8 m
水線幅 5.7 m
吃水 1.16 m - 1.52 m
主機 M-503A-3ディーゼルエンジン×2基
推進器 ポンプジェット
出力 2x3,000馬力
最大速力 30ノット (56 km/h)
巡航速力 12ノット (22 km/h)
航続距離 600海里 (1,100 km)
航海日数 1日
搭載人員 兵員92名
搭載能力 戦車1両
またはAPC2両
または貨物45トン
乗員 5人(うち准士官2人)

ニジニ・ノヴゴロドのアレクセーエフ水中翼船中央設計局によって設計された[3]。「セルナ」とは偶蹄目の一種シャモアのことである。

概略

セルナ級の特徴はエアー・キャビティ・システム(ACS)で、これは加圧された人工的な空気膜(あるいは多数の気泡)で船底を覆うものである。船体の大部分を直接水に触れないようにすることで、水の抵抗(摩擦)を減らして船の移動を容易にし、最大30ノットという高速を発揮可能である。

もうひとつの特徴は推進器で、通常のプロペラスクリューを用いるのでなく、新式のウォータージェット推進用のインペラーを用いている。これは、ACSによって常時発生している気泡を含んだ液体中でも効率的に船を推進することが出来るように設計されている。これはVVD[注釈 1]と呼ばれており、従来型のウォータージェットと異なり、VVDには水流をジェット状にするためのノズルが存在せず、直接にインペラの羽が取り付けられている[4]

建造と運用

1994年から2014年にかけて、ニジニ・ノヴゴロドのヴォルガ造船所で11隻、ウラジオストクボストチナヤ造船所によって1隻の合計12隻が建造された。そのほかに、輸出用として、4隻が1994年から1995年にかけて建造された[5]。輸出仕様の4隻は[注釈 2]、1隻がエストニアに、3隻がアラブ首長国連邦に売却された。

ロシア海軍

2016年時点でのロシア海軍での配備状況は以下の通り[6]。括弧内は艦番号。

アラブ首長国連邦

アラブ首長国連邦海軍に導入された艇は、軍ではあまり長期間使われず、1998年に民間に移管された[8]

エストニア

エストニアに売却された1隻はエストニア警察・国境警備隊に所属するPVL–104 Tiirとして運用された後、2004年に行われたオークションで、41万クローンで払い下げられた[9]。自然保護団体によって、海洋プラスチック回収のために使用されている[10]

実戦参加

2022年ロシアのウクライナ侵攻の際、ズミイヌイ島(蛇島)に接岸していたセルナ級1隻が、2022年5月6日にウクライナのバイラクタルTB2ドローンの攻撃を受けて破壊された[11]Oryxによるオープン・ソース・インテリジェンスに基づく分析では、船上に対空車両9A331 TLAR(9K331 トールM1対空ミサイル装備)が積載されていたが、これもドローン攻撃で破壊された[12]

5月12日にマクサー・テクノロジーズが撮影した衛星画像では、そのセルナ級が攻撃を受けた付近で海没している様子と、別のセルナ級1隻が海上で急旋回してミサイル攻撃と見られる白煙から逃れている姿が含まれていた[13]

ギャラリー

脚注

注釈

  1. : ВВД - водометных вентилируемых движителяхのローマ字転写。通気ウォータージェット推進
  2. 輸出タイプのことは「11771型」と記述している資料も存在する。
  3. 2018年に実施された北極海航路に関する任務の際には「アレクセイ・バリノフ」(791)に改名されていた[7]
  4. 同様に2018年に「イワン・パスコ」(792)に改名されていた[7]
  5. ロシア産業貿易省が主催するロシア軍需企業の輸出支援のための見本市。International Maritime Defence Showの略。
  6. 中央海軍博物館に展示されている本当の船でなくレプリカ船

出典

  1. Десантные катера проекта 21820 «Дюгонь» - Мастерок.жж.рф (ロシア語). LiveJournal (2012年10月26日). 2022年5月15日閲覧。
  2. ОАО "Судостроительный завод "Волга" (ロシア語). ヴォルガ造船所. 2014年8月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月12日閲覧。
  3. Project 11770 Serna fast landing craft (英語). GlobalSecurity.org. 2022年5月11日閲覧。
  4. вентилируемых водометных движителях (PDF) (ロシア語). pp. 62-65 (2002年). 2022年5月15日閲覧。
  5. Project 11770 Serna”. Russianships.info. 2022年5月11日閲覧。
  6. Car′kow 2015, p. 25.
  7. Книга рекордов ВС РФ - Комплексная экспедиция Министерства обороны Российской Федерации и Русского географического общества (ロシア語). 国家防衛管理センター (2018年). 2018年12月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年5月15日閲覧。
  8. Mikhail Barabanov (2008). “Russian Arms Deliveries to Arab Countries of the Persian Gulf Region” (英語) (pdf). Moscow Defense Brief (Centre for Analysis of Strategies and Technologies (CAST)) 4: 16. https://www.files.ethz.ch/isn/94687/2008_4.pdf.
  9. Virumaa Nädalaleht (エストニア語) (2004年11月26日). 2022年5月12日閲覧。
  10. TIIRU KODULEHT (エストニア語) (2021年4月14日). 2022年5月12日閲覧。
  11. Odesa hit by missiles as Ukraine claims it has sunk second Russian ship (英語). the Guardian (2022年5月8日). 2022年5月9日閲覧。
  12. Attack on Europe: Documenting Russian Equipment Losses During the 2022 Russian Invasion of Ukraine”. 2022年5月11日閲覧。
  13. ぎりぎりでミサイルかわす揚陸艇、衛星画像が捉えた黒海の攻防”. CNN.co.jp (2022年5月13日). 2022年5月14日閲覧。

参考文献

  • Car′kow, A. (2015) (ロシア語). Rossijskij Wojenno-Morskoj Fłot 2016 g. Morskaja Kollekcyja. nr 12(193)/2015

外部リンク

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