ソーホーの夜

ソーホーの夜」(ソーホーのよる、"Last Night in Soho")は、イングランドポップ・バンドのデイヴ・ディー・グループのシングルであり、1968年6月28日にフォンタナより発売された。バンドのソングライターケン・ハワードアラン・ブレイクリーが書いたこの曲はチャート1位を達成した「キサナドゥーの伝説」の次の作品であり、バンドにとって全英シングルチャートのトップ10入り(8位)をした最後の作品となった[3]

Last Night in Soho
デイヴ・ディー・グループシングル
B面 ミセス・サーズディ
リリース
録音 1968年5月31日[2]
ジャンル サイケデリック・ポップ
時間
レーベル フォンタナ
作詞・作曲 ケン・ハワード
アラン・ブレイクリー
プロデュース スティーヴ・ローランド
デイヴ・ディー・グループ シングル 年表
キサナドゥーの伝説
(1968年)
ソーホーの夜
(1968年)
アントワネット号の遭難
(1968年)

制作

「ソーホーの夜」はコリン・ラーキンの『Encyclopedia of Popular Music』では「ロンドンで最も悪名高い平方マイルで失われた純真さを描くレザーボーイ・バイク・サーガ」と記されている[4]。ソングライターのケン・ハワードとアラン・ブレイクリーはデイブ・ディーのコメントに促され、「強い視覚的なイメージ」を念頭に置いてこの曲を書いた[5][6]ニューヨークパリを歌った著名な曲は多数存在するので、2人はそれに対してイギリスを歌った曲の制作を考えた[5]。バンドのそれまでのシングル「ザバダク」や「キサナドゥーの伝説」のエキゾチックなテーマとは対照的にこの曲の舞台は20世紀を通じて性産業ナイト・ライフの拠点として有名だったロンドンのウエスト・エンドソーホー地区である。曲の中では前科者の男が恋人のために更生しようとするが、不良仲間との再会により誘惑に負けてしまう[7]。最終節で彼は実刑判決に直面し、恋人に惜別の意を表している[8][9]。ライターのロブ・チャップマンはこの曲を「ライオネル・バートジョアン・リトルウッドのようなミドル・エイト」のある「ギャングランドを舞台としたサイコドラマ」であると説明している[9]

この曲にはレジ・ティルスリーによるドラマチックなオーケストラ・アレンジメントが取り入れられている。デチューンされたハモンドオルガンは警察の到着を表している[5]。フロントマンのデイブ・ディーはこの曲はバンドのこれまでのヒット曲よりもシリアスなものだと考えており、『ディスク・アンド・ミュージック・エコー』誌で「過去の反復的なレコードを作ったとは誰も言わないよ。彼らはギミックに富んでいたけれど、常に互いに違っていた。けど進歩しなければならない時が来るし、もう少しストレートなものに挑戦しなければならない時が来るんだ」と語った。ディーはバンドのヒット曲の中でこの曲が1番好きだという[10]

発売

「ソーホーの夜」は「ミセス・サーズディ」をB面として1968年6月28日にフォンタナより発売された。バンドはシングルのプロモーションとしてソーホーのストリップ・バーの前でバイクと一緒に写真を撮り[10]、また7月4日の『トップ・オブ・ザ・ポップス』で曲を披露した[11]。曲は全英シングルチャートに11週入り、最高順位は8位であった。バンドにとって最後の全英トップ10入りシングルとなった[3]

評価と遺産

レコード・ミラー』のピーター・ジョーンズはこの曲を賞賛し、「このグループがトップの座を維持するスタイルのコンスタントな切り替え」に注目した[12]。『メロディ・メイカー』のクリス・ウェルチはこの曲を「キサナドゥーの伝説」ほど商業的ではないと考え、「彼らのいつものギミック満載のパフォーマンスから離れている」と評した[13]。「ソーホーの夜」はキンクスのシングル「デイズ」と同時期にチャートインしていたが、リードシンガーのレイ・デイヴィスは『ディスク・アンド・ミュージック・エコー』のコラム「ヒット・トーク」で「『ソーホーの夜』は好きではない」「『キサナドゥーの伝説』は僕の好みではなかったし、この曲もそうだ」と表明している[14]。一方で『メロディ・メイカー』のコラム「ブラインド・デート」のインタビューを受けたザ・フーキース・ムーンは「彼らがいつもやっているハンガリアン・ビア・チャントよりもこっちの方が好きだ」と述べた[13]

このシングルの成功を受けてデイヴ・ディーは俳優になりたいと言い出し、『ディスク・アンド・ミュージック・エコー』誌上で「ヒットを連発するのはいいけど、特に目指すものがないところまで来てしまうんだ。挑戦がなければ人生は退屈でつまらなくなり、結局はつまらないレコードを作ることになる」と語った[10]。ディーは1年以上経った1969年9月にバンドを脱退し、1970年にマーティ・フェルドマン主演のコメディ映画Every Home Should Have One』に出演した[15]

クエンティン・タランティーノ監督の映画『デス・プルーフ in グラインドハウス』で使用されたデイヴ・ディー・グループの1966年のヒット・シングル「ホールド・タイト」を聴いたエドガー・ライトは「ソーホーの夜」と出会った。ライトの2021年のサイコロジカルホラー映画『ラストナイト・イン・ソーホー』はこの曲にちなんで名付けられており[16]、エンドクレジットで使用もされている。

チャート

チャート (1968) 最高
順位
オーストラリア (Kent Music Report)[17] 61
ドイツ (GfK Entertainment charts)[18] 13
アイルランド (IRMA)[19] 11
オランダ (Dutch Top 40)[20] 15
オランダ (Single Top 100)[21] 15
ニュージーランド (Listener)[22] 4
シンガポール (Radio Singapore)[23] 1
UK シングルス (Official Charts Company)[3] 8

参考文献

  1. “More Big Name 45's”. New Musical Express. (22 June 1968). https://worldradiohistory.com/UK/New-Musical-Express/1968/NME-1968-06-22-S-OCR.pdf 2021年7月5日閲覧。.
  2. Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick, & Tich – May 1968 (2016年11月11日). 2016年11月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年8月21日閲覧。
  3. "Dave Dee Dozy Beaky Mick Tich: Artist Chart History". Official Charts Company.
  4. Larkin, Colin (2011). The Encyclopedia of Popular Music. 5th Concise Edition: Omnibus Press. p. 516
  5. Last Night In Soho (Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich)”. Jon Kutner. 2021年7月6日閲覧。
  6. Altham, Keith (December 1968). “Dave Dee's Happy To Make Instant Hits”. New Musical Express. https://www.rocksbackpages.com/Library/Article/dave-dees-happy-to-make-instant-hits 2021年7月6日閲覧。.
  7. “Ex-cop Dave Dee turns crook!”. Disc and Music Echo: 6. (22 June 1968). https://worldradiohistory.com/UK/Disc/1968/Disc-&-Music-Echo-1968-06-22.pdf 2021年7月4日閲覧。.
  8. “Soho Song”. Runcorn Weekly News: 20. (27 June 1968). https://www.britishnewspaperarchive.co.uk/viewer/bl/0003296/19680627/205/0020 2021年7月4日閲覧。.
  9. Chapman, Rob (2015). Psychedelia and Other Colours (1st ed.). Faber & Faber. p. 555. ISBN 978-0-571-28200-5
  10. Farmer, Bob (3 August 1968). “Dave Dee... from Soho to Pantomime, just for the challenge”. Disc and Music Echo: 13. https://worldradiohistory.com/hd2/IDX-UK/Music/Archive-DISC-IDX/IDX/1968/Disc-&-Music-Echo-1968-08-03-IDX-13.pdf#search=%22dave%20dee%20soho%22 2021年7月6日閲覧。.
  11. “Disc News”. Disc and Music Echo: 4. (6 July 1968). https://worldradiohistory.com/UK/Disc/1968/Disc-1968-07-06-S-OCR.pdf 2021年7月6日閲覧。.
  12. Jones, Peter (29 June 1966). “Your guide to this week's new singles”. Record Mirror. https://worldradiohistory.com/UK/Record-Mirror/60s/68/Record-Mirror-1968-06-29.pdf 2021年7月4日閲覧。.
  13. Welch, Chris (6 July 1968). “Pop Singles”. Melody Maker. https://worldradiohistory.com/UK/Melody-Maker/60s/68/Melody-Maker-1968-0706.pdf 2021年7月8日閲覧。.
  14. Davies, Ray (17 August 1968). “Hit Talk”. Disc and Music Echo: 3. https://worldradiohistory.com/UK/Disc/1968/Disc-&-Music-Echo-1968-08-17.pdf 2021年7月6日閲覧。.
  15. Matthews, Simon (27 October 2016). Psychedelic Celluloid: British Pop Music in Film & TV 1965 - 1974. Oldcastle Books. p. 192. ISBN 9781843444589. https://books.google.com/books?id=R_ZEDQAAQBAJ&dq=every+home+should+have+one+dave+dee&pg=PT193 2021年7月8日閲覧。
  16. Edgar Wright On 'Last Night In Soho', Quentin Tarantino And 'Baby Driver 2'”. Esquire. 2021年7月8日閲覧。
  17. Kent, David (2005). Australian Chart Book 1940–1969. Australian Chart Book Pty Ltd, Turramurra, N.S.W.. ISBN 0-646-44439-5
  18. "Musicline.de – Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich Single-Chartverfolgung" (in German). Media Control Charts. PhonoNet GmbH.
  19. "The Irish Charts – Search Results – Last Night in Soho". Irish Singles Chart.
  20. "Nederlandse Top 40 – Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich" (in Dutch). Dutch Top 40.
  21. "Dutchcharts.nl – Dave Dee, Dozy, Beaky, Mick & Tich – Last Night in Soho" (in Dutch). Single Top 100.
  22. flavour of new zealand - search listener”. www.flavourofnz.co.nz. 2021年8月20日閲覧。
  23. "Hits of the World" (PDF). Billboard. 19 October 1968. p. 77. 2021年8月20日閲覧
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