ティラコスミルス

ティラコスミルス (Thylacosmilus) は、哺乳綱砕歯目ティラコスミルス科ボルヒエナ科とされることもある[1][2][3])に分類される肉食哺乳類新生代中新世後期から鮮新世後期の約700万年前 - 300万年前の南アメリカに生息した。学名は「ポケットナイフ」の意[4]スミロドン剣歯虎に酷似し、同様に長大なサーベル牙を持つ。

ティラコスミルス
生息年代: 新生代第三紀中新世後期-鮮新世後期
7–3 Ma
ティラコスミルス
ティラコスミルス復元想像図
地質時代
中新世中期 - 鮮新世後期
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 砕歯目 Sparassodonta
: ティラコスミルス科 Thylacosmilidae
: ティラコスミルス属 Thylacosmilus
学名
Thylacosmilus
Riggs, 1933
  • T. atrox
  • T. lentis

形態

想像図

全長約1.2 - 1.7m、頭骨長約20 - 23cm、体重は80 - 120kgとジャガーに近い体重があったとされるが、これまで発見された化石の最大では推定150kgと小型のライオントラに匹敵した[5][6]。頭骨は長く、厚みがある構造である[7]。歯数は28本。上顎にはサーベル状、下顎には釘状の犬歯を持つ。この特徴はスミロドンに似た特徴である。同様にこの牙を獲物に打ち込むために顎は120度まで大きく開き、頸椎には筋肉の付着点が発達していた[3]。また、獲物を押さえるための前肢も強力である[8]。しかし最大の相違点は、この牙が一生伸び続ける無根歯だということである[9]。このため、万一牙を折損したとしても、餓死に至る可能性は少なかったと推定されている[10]。また通常哺乳類が毛繕いなどに用いている切歯を持っておらず、歯列は犬歯と臼歯のみであった[10]。外観上目立った相違点では、顎先近くの下顎骨が下方に伸び、サーベル犬歯を保護する「」のようになっていたことが挙げられる[9][10]。ただしこの「鞘」はスミロドンには存在しないが、それ以前のマカイロドゥスは持っていた[4]。それ以外の骨格上の相違点では、スミロドンに比べると眼窩は小さく、後端は閉じている[9]。また、後獣類であるために、上恥骨が存在した[11]

生態

ティラコスミルス自身、それほど敏捷な捕食者ではなかったために、動きの遅い鈍重な有蹄類(午蹄中目)やオオナマケモノを捕食していたと推定されている[12][7]。かれらはスケリドテリウムなどの大型草食獣を獲物とし、その犬歯で刺し殺して捕らえていたとされる[10]。しかし、相手が大型であった場合には、失血死を狙っていたとする意見もある[10]。この方法が他の捕食者たちに比して優れていたためか、ティラコスミルスはボルヒエナなどが滅びた後も繁栄を続けた[12]。しかし、南北アメリカ大陸がパナマ陸橋を介して300万年前[13]に陸続きとなり、スミロドンなどネコ科の肉食獣の南下と前後して絶滅することになる[9][2][12]

脚注

  1. 冨田幸光『新版 絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄・岡本泰子イラスト、丸善出版、2011年、53,57,60頁
  2. コルバート, モラレス & ミンコフ 2004, p. 300.
  3. 今泉忠明 1995, p. 108.
  4. 實吉達郎 1990, p. 120.
  5. Ercoli, Marcos D.; Francisco J. Prevosti (2011). “Estimación de masa de las especies de Sparassodonta (Mammalia, Metatheria) de edad Santacrucense (Mioceno Temprano) a partir del tamaño del centroide de los elementos apendiculares: inferencias paleoecológicas” (スペイン語). Ameghiniana 48 (4): 462–479. doi:10.5710/amgh.v48i4(347). http://ameghiniana.org.ar/index.php/ameghiniana/article/viewArticle/347.
  6. Sorkin, B. (2008). “A biomechanical constraint on body mass in terrestrial mammalian predators”. Lethaia 41 (4): 333–347. doi:10.1111/j.1502-3931.2007.00091.x.
  7. リチャードソン 2005, p. 175.
  8. 今泉忠明 1995, pp. 108–109.
  9. 冨田幸光 2002, p. 48.
  10. 今泉忠明 1995, p. 109.
  11. 實吉達郎 1990, p. 118.
  12. 今泉忠明 1995, p. 110.
  13. 長谷川政美 2014, p. 92.

参考文献

  • 今泉忠明『絶滅巨大獣の百科』データハウス〈動物百科〉、1995年。ISBN 4-88718-315-1。
  • エドウィン・ハリス・コルバート、マイケル・モラレス、イーライ・C・ミンコフ『脊椎動物の進化(原著第5版)』田隅本生(訳)、築地書館、2004年。ISBN 4-8067-1295-7。
  • 實吉達郎『サーベルタイガーとマンモスはどちらが強かったか 古代猛獣たちのサイエンス』PHP研究所、1990年。ISBN 4-569-52738-8。
  • 冨田幸光『絶滅哺乳類図鑑』伊藤丙雄、岡本泰子、丸善、2002年。ISBN 4-621-04943-7。
  • 長谷川政美『系統樹をさかのぼって見えてくる進化の歴史 僕たちの祖先を探す15億年の旅』ベレ出版〈BERET SCIENCE〉、2014年。ISBN 978-4-86064-410-9。
  • ヘーゼル・リチャードソン、デイビッド・ノーマン(監修)『恐竜博物図鑑』出田興生(訳)、新樹社〈ネイチャー・ハンドブック〉、2005年。ISBN 4-7875-8534-7。

関連項目

外部リンク

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