トビウサギ

トビウサギ(跳兎、英名:Spring hare)は、哺乳綱齧歯目トビウサギ科Pedetidae)に分類される現生種の総称。現生種ではトビウサギ属Pedetes)のみでトビウサギ科を構成する。現生種は長らくトビウサギ(Pedetes capensis)1種と考えられてきたが[3]、近年、アフリカ南部の種(P. capensis)とアフリカ東部の種(P. surdaster)の2種に分けられることが判明した[1]。このうちアフリカ南部の種については引き続き標準和名「トビウサギ」が用いられ、アフリカ東部の種については「トウブトビウサギ」が用いられる[2]。本記事ではこの2種(ほか絶滅化石種)から成るトビウサギ属について扱う。

トビウサギ
トビウサギ
トビウサギ Pedetes capensis
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 齧歯目 Rodentia
亜目 : ウロコオリス形亜目 Anomaluromorpha
: トビウサギ科 Pedetidae
: トビウサギ属 Pedetes
学名
Pedetes Illiger, 1811[1]
模式種
Yerbua capensis Forster, 1778[1]
和名
トビウサギ属[2]
英名
Springhaas[3]
Spring hare[3]
現生種

以下、トビウサギ(Pedetes capensis)とトウブトビウサギ(Pedetes surdaster)の特徴について記す。近年、2種は別種とされたが、以下の記述は主に別種とされる以前の情報に基づくものであり、両種の特徴が混在している可能性がある点を留意。

分布

サハラ以南のアフリカ大陸東部と南部[3]

形態

頭胴長(体長)35 - 43センチメートル、尾長37 - 47センチメートル、体重3 - 4キログラム[3]。背面は赤褐色、腹面は白い体毛で覆われる[3]。尾の先端部は黒褐色の体毛で覆われる[3]。尾は跳躍する時にバランスを保つのに用いると考えられている。

頭部は短く、吻は高い[3]。眼は大型[3]。耳介が大きいうえに長く[3]ウサギのように見えることが和名や英名(hare=ノウサギ)の由来になっている。前肢は短い[3]。後肢は長く、発達している[3]。後肢の第1趾は退化しているが、第2趾に大きな鉤状の爪があり第3 - 5趾の爪はやや蹄状になる[3]

命名

一般名は、アンデシュ・スパルマンにより飛び跳ねるウサギということでSpring-Haasenと名づけられた[4]

分類

ウロコオリス科とともにウロコオリス形亜目に分類されている[1]

現生種は、分子系統学的差異から以下の2種に分けられる[5]。和名は川田ら (2018) に従う[2]。英名はDieterlen (2005) に従う[1]

Pedetes capensis (Forster, 1778) トビウサギ South African spring hare
南アフリカ、アンゴラ、コンゴ、ザンビア、ナミビア、ボツワナ、ジンバブエ、モザンビークといった広範囲に分布する。
染色体数2n=38[6]
Pedetes surdaster (Thomas, 1902) トウブトビウサギ East African spring hare
ケニア、タンザニア並びにウガンダに点在して分布する。
染色体数2n=40[6]

絶滅した近縁種についてはトビウサギ科を参照。

生態

サバンナや半砂漠地帯に生息する。群れは形成せず、単独もしくはペアで生活する。夜行性で、昼間は地面に掘った深さ80 - 120センチメートルの巣穴の中で休む[3]。移動する際には後肢だけで2 - 3メートル跳躍する[3]。主に巣穴を中心に300 - 400メートルの範囲で活動するが、食物がない場合は10 - 14キロメートルの距離を移動することもある[3]。頭部を地面につけて振動で危険を察知し、危険を感じると大きな鳴き声をあげる[3]天敵としてはヤマネコ類、ジャッカル、ラーテルオオトカゲニシキヘビなどが挙げられる[3]

食性は植物食の強い雑食で、植物の根茎果実昆虫類節足動物等を食べる[3]

繁殖形態は胎生。妊娠期間は約2ヶ月。周年繁殖(特に雨季が多い)し1回に1-2頭の幼獣を産む。幼獣は産まれてから2日で走行できるようになる[3]

人間との関係

稲や芋、トウモロコシ、麦等の農作物を食害する害獣[3]。害獣としての駆除等により生息数は減少している[3]

生息地では肉が食用とされることもある[3]

ペットとして飼育されることもあり、日本にも輸入されている。

広域に分布することから絶滅の恐れは少ないと考えられており、2016年のIUCNレッドリストでは2種とも低懸念(LC)とされている[7][8]

LEAST CONCERN (IUCN Red List Ver. 3.1 (2001))

脚注

  1. Fritz Dieterlen, “Family Pedetidae,” In Don E. Wilson & DeeAnn M. Reeder (eds.), Mammal Species of the World (3rd ed.), Volume 2, Johns Hopkins University Press, 2005, Page 1535.
  2. 川田伸一郎・岩佐真宏・福井大・新宅勇太・天野雅男・下稲葉さやか・樽創・姉崎智子・横畑泰志 「世界哺乳類標準和名目録」『哺乳類科学』第58巻 別冊、日本哺乳類学会、2018年、1-53頁。
  3. 小原秀雄「トビウサギ」、小原秀雄・浦本昌紀・太田英利・松井正文 編著『レッド・データ・アニマルズ6 アフリカ』、講談社、2000年、168-169頁。
  4. Sparrman, A. (1778). “Tilläggning om Yerbua capensis”. Kungl. Svenska vetenskapsakademiens handlingar 39.
  5. Handbook of the mammals of the world. Lynx Edicions. (2016)
  6. Conrad A. Matthee and Terence J. Robinson, “Mitochondrial DNA Phylogeography and Comparative Cytogenetics of the Springhare, Pedetes capensis (Mammalia: Rodentia),” Journal of Mammalian Evolution, Volume 4, Springer, 1997, Pages 53–73.
  7. Child, M.F. 2016. Pedetes capensis (errata version published in 2017). The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T16467A115133584. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T16467A22240444.en. Accessed on 20 September 2022.
  8. Butynski, T.M. & De Jong, Y. 2016. Pedetes surdaster (errata version published in 2017). The IUCN Red List of Threatened Species 2016: e.T136621A115210504. https://doi.org/10.2305/IUCN.UK.2016-3.RLTS.T136621A22240559.en. Accessed on 20 September 2022.

関連項目

参考文献

  • 『原色ワイド図鑑3 動物』、学習研究社、1984年、47、216頁。
  • 『小学館の図鑑NEO 動物』、小学館、2002年、163頁。

外部リンク

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