ハンゲショウ

ハンゲショウ(半夏生、半化粧、学名: Saururus chinensis)は、ドクダミ科ハンゲショウ属に分類される多年草の1種である。カタシログサ (片白草) ともよばれる。水辺や湿地に生え、高さ1メートルに達し、葉は互生する。夏に小さな花が集まった細長い総状花序をつけ、その周囲の葉が白く変色する(図1)。東アジアから東南アジアに分布し、日本では本州以南から報告されている。

ハンゲショウ
1. ハンゲショウの花と葉
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
階級なし : モクレン類 Magnoliids
: コショウ目 Piperales
: ドクダミ科 Saururaceae
: ハンゲショウ属 Saururus
: ハンゲショウ S. chinensis
学名
Saururus chinensis (Lour.) Baill. (1871)[1]
シノニム
和名
ハンゲショウ (半夏生、半化粧)、ハンゲショウグサ (半夏生草)[2]、ハンゲソウ (半夏草)[3]、カタシログサ (片白草)[4][5]、カタジロ (片白)[5][6]、オシロイカケ[5]、サンパクソウ、ミツジログサ (三白草)[7]、ミツジロ (三白)[8]
英名
Chinese lizard's tail

利尿、解毒、解熱作用がある生薬とされ、三白草(さんぱくそう)とよばれる[9][10]。また観賞用に栽培されることもある[11]学名である Saururus chinensis のうち、属名の Saururusラテン語で「トカゲの尻尾」(細長い花序の形)を、種小名の chinensis は「中国の」を意味している[12]

特徴

多年生草本であり(図1, 2)、特有の臭気があり、また精油を含む[4][5][10][13]。太く長い地下茎が横に這う[4][5]。そこから伸びた地上茎は高さ30–100センチメートル (cm) になる[4][5]互生し、葉身は卵形から披針状卵形、5–15 × 2–10 cm、先端は尖り、基部は心形、葉脈は掌状で5–7脈、葉柄は長さ 1–5 cm、幅広で背面に稜がある[4][5][13](図1, 2)。托葉は膜質で一部葉柄に合着している[4]

2a. 茎と葉
2b. 葉と花序
2c. 葉と花序

花期は6–8月。香りがある小さなが多数集まり長さ 10–15 cm の総状花序を形成し、頂生または対生状につく[4][5][13](上図2c)。花序は初めは下垂しているが、後に次第に上を向く[4][13]。花期になると花序に近い数枚の葉が白くなり送粉者への広告塔となるが、花期が終わると再び緑色になる[4][5][13](上図2b, c)。蜜腺を欠くが、花粉を餌とする虫媒花であると考えられ、ハナアブが訪花することが報告されている[5]。花序軸には縮毛がある[4][5]花柄は長さ2–3ミリメートル (mm)、花基部に(小苞)があり、花は両性、花被を欠き、雄しべは6–7個、雌しべは3–5個の離生心皮からなる[4][5]。雌しべは子房上位、縁辺胎座で各心皮に2個の胚珠をつけ(1個のみ種子になる)、花柱の上方内面に柱頭がある[4][5]果実分離果、1.5–3 mm、褐色で表面はしわ状、無毛[4][5]。種子は楕円形、長さ約 1 mm、褐色で表面は平滑[5]染色体数は 2n = 22[4][5]

分布

3. 葦毛湿原のハンゲショウ

日本韓国中国ベトナム台湾フィリピンに分布する。日本では本州、四国、九州、沖縄から報告されている[4][14]

低地の水辺や湿地に群生する[4][13] (図3)。

保全状況評価

ハンゲショウは日本全体としては絶滅危惧等に指定されていないが、生育に適した土地が減少していることなどによって減少し、下記のように地域によっては絶滅危惧種に指定されている[15]。以下は2020年現在の各都道府県におけるレッドデータブックの統一カテゴリ名での危急度を示している[15](※埼玉県東京都では、季節や地域によって指定カテゴリが異なるが、下表では埼玉県は全県のカテゴリ、東京都では最も危惧度の高いカテゴリを示している)。

名前の由来

「ハンゲショウ」の名の由来は、 七十二候の1つである「半夏生」(太陽黄経が100°になる日であり、毎年7月2日頃)の頃に白い葉をつけるためとする説と、葉の一部を残して白く変化する様子から「半化粧」とする説がある[4][13]。季節名としての「半夏生」は、この頃に半夏(カラスビシャク; 図4)が生えることに由来するとされる[16][17][18]

またの片面(表面)だけが白くなることから、カタシログサ(片白草)ともよばれる[4][5]

脚注

出典

  1. Saururus chinensis”. Plants of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年9月5日閲覧。
  2. "半夏生草". 動植物名よみかた辞典 普及版. コトバンクより2021年9月5日閲覧
  3. "半夏草". 精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2021年9月5日閲覧
  4. 大橋広好 (2015). “ドクダミ科”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. p. 54. ISBN 978-4582535310
  5. 大森雄治 (1999). “日本のドクダミ科・コショウ科・センリョウ科植物”. 横須賀市博物館研究報告 自然科学 46: 9-21. NAID 40003710131.
  6. "片白". 精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2021年9月5日閲覧
  7. "三白草". 動植物名よみかた辞典 普及版. コトバンクより2021年9月5日閲覧
  8. "三白". 動植物名よみかた辞典 普及版. コトバンクより2021年9月5日閲覧
  9. ハンゲショウ”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2021年9月4日閲覧。
  10. ハンゲショウ”. 武田薬品工業株式会社. 2021年9月5日閲覧。
  11. ハンゲショウ”. みんなの趣味の園芸. NHK出版. 2021年8月30日閲覧。
  12. Wiart, C. (2012). Saururus chinensis”. Medicinal Plants of China, Korea, and Japan: Bioresources for Tomorrow's Drugs and Cosmetics. CRC Press. pp. 10–12. ISBN 978-1439899113
  13. 林 弥栄 & 門田 裕一 (監修) (2013). “ハンゲショウ”. 野に咲く花 増補改訂新版. 山と渓谷社. p. 18. ISBN 978-4635070195
  14. 琉球の植物研究グループ (2018 onward). 琉球の植物データベース”. 国立科学博物館. 2021年9月4日閲覧。
  15. ハンゲショウ”. 日本のレッドデータ 検索システム. 2021年9月4日閲覧。
  16. "半夏生". 百科事典マイペディア. コトバンクより2021年9月5日閲覧
  17. "半夏生". デジタル大辞泉. コトバンクより2021年9月5日閲覧
  18. "半夏生". 精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2021年9月5日閲覧

関連項目

外部リンク

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