ヒメカラマツ

ヒメカラマツ(姫唐松、学名:Thalictrum alpinum var. stipitatum)は、キンポウゲ科カラマツソウ属多年草。チシマヒメカラマツ(学名:Thalictrum alpinum var. alpinum)を基本種とする変種高山植物[3][4][5][6][7][8][9]

ヒメカラマツ
長野県八ヶ岳 2022年7月上旬
分類APG IV
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
: キンポウゲ目 Ranunculales
: キンポウゲ科 Ranunculaceae
: カラマツソウ属 Thalictrum
: チシマヒメカラマツ
T. alpinum
変種 : ヒメカラマツ
T. alpinum var. stipitatum
学名
Thalictrum alpinum L. var. stipitatum Y.Yabe (1903)[1]
シノニム
和名
ヒメカラマツ(姫唐松)[5]

特徴

根茎は短く横に伸び、地中に1-数個の細い匐枝を伸ばす。は繊細で緑色、無毛、直立または斜上し、高さは8-20cmになり、上部で分枝しない。花期にも根出葉が生存し、長い葉柄があり、葉身は2-3回3出複葉で、頂小葉は卵形から広卵形、またはやや円形になり、長さ幅ともに3-8mm、先は浅く2-3裂し、基部はくさび形から円形になる。葉質はやや厚く、裏面の葉脈が隆起する。葉柄の基部の托葉は膜質で、縁は全縁、淡褐色で、小葉柄の基部に小托葉はない。茎葉は小さななものが1-2個つくか、または無いことがある。株の根元に前年の枯れた根出葉の葉柄が残る[3][4][5][6][7][8][9]

花期は7-8月。花序は長さ3-10cmの総状花序で、を10個ほどつけ、花の径は0.5-1cmになり下垂する。花柄は長さ0.5-1.5cmになり、斜上し、基部に披針形で長さ4-5mmの苞があり、茎を抱く。片は4個あり、長さ4mm、幅2mmの楕円形で黄緑色、早落性。花弁はない。雄蕊は多数あり長さ8mm、葯は鮮黄色で長さ1-2.5mm、花糸は糸状で葯より細く、紫色を帯び、葯隔は突出する。雌蕊は4-6個あり、花柱は伸長し、柱頭は三角状になる。果実は長さ3-5mmのやや扁平な紡錘形の痩果になり、4-6個つき、両側に縦に隆起する5脈があり、基部に長さ1.5-3mmの果柄があって下垂する。痩果の残存花柱は長さ約1mm、斜上する。染色体数2n=14[3][4][5][6][7][8][9]

分布と生育環境

日本では、本州の岩手県早池峰山)、中部地方の高山(谷川岳戸隠連峰北アルプス北部・八ヶ岳南アルプス)、四国に分布し、高山帯の風の強い礫地、砂礫地や乾いた草地に生育する[3][4][5]タイプ標本の採集地は北アルプスの白馬岳[4][5]。世界では、ヒマラヤ地域に広く分布する[3]

名前の由来

和名ヒメカラマツは、「姫唐松」の意で、植物体が小型であることによる[9]。基本種の Thalictrum alpinum に対する和名「ヒメカラマツソウ」は、植物学者矢田部良吉 (1892) による命名である。矢田部は、「甲州八ヶ嶽ニ生ズ。高サ二三寸乃至七寸。からまつそう屬中ノ小ナルモノナリ。余之ヲひめからまつさうトセリ。」と述べている[10]

種小名(種形容語)alpinum は、「高山性の」の[11]、変種名 stipitatum は、「柄のある」の意味[12]

種の保全状況評価

国(環境省)のレッドデータブックレッドリストでの選定はない。都道府県のレッドデータ、レッドリストの選定状況は次の通り[13]。群馬県-絶滅危惧IA類(CR)、山梨県-絶滅危惧IA類(CR)、長野県-絶滅危惧II類(VU)、静岡県-要注目種(N-II分布上注目種等)。

ギャラリー

基本種

チシマヒメカラマツ(学名:Thalictrum alpinum L. (1753) var. alpinum[14])- ヒメカラマツの基本種。痩果の果柄がないか、あっても短い[3]。果柄が湾曲しない点で区別されるというが、必ずしも明確な違いとはいえないという。千島列島樺太をはじめ、北半球の寒帯全域に広く分布する[6]

分類

ヒメカラマツは、日本産のカラマツソウ属のなかで一番小型である[9]。同属のなかでアキカラマツ節(Sect. Thalictrum)に属し、早落性の萼片をもち、雄蕊は下垂し、花糸は糸状でその先の葯は花糸より太くやや長い特徴をもつ。同節のなかでも、形態的には、チャボカラマツ T. foetidum var. glabrescens に似る。両種は、背丈が低く、花期にも根出葉が生存するという共通点がをもつが、分布地と花期は異なり、本種のそれは、本州の岩手県・中部地方・四国のそれぞれの高山帯で、7-8月であり、チャボカラマツは、北海道の道央と岩手県の一部で、5-6月である。本種は、茎先が分枝せず、花序は総状花序につくのに対し、チャボカラマツは、茎先が1-3回分枝し、花序は散房花序につく[15]

脚注

  1. ヒメカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  2. Thalictrum nippono-alpinum Honda, International Plant Names Index
  3. 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」p.166
  4. 『原色新日本高山植物図鑑(II)』p.50
  5. 『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』pp.90-91
  6. 清水建美 (1982)『日本の野生植物 草本II離弁花類』「キンポウゲ科カラマツソウ属」p.83
  7. 『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』p.235
  8. 『山溪カラー名鑑 日本の高山植物』p.441
  9. 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.475
  10. 矢田部良吉、日本植物新名, The botanical magazine,『植物学雑誌』,Vol.6, No.60, p.96, (1892).
  11. 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1483
  12. 『新分類 牧野日本植物図鑑』p.1514
  13. ヒメカラマツ、日本のレッドデータ検索システム、2022年11月16日閲覧
  14. チシマヒメカラマツ 「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  15. 門田裕一 (2016)『改訂新版 日本の野生植物2』「キンポウゲ科カラマツソウ属」pp.163-166

参考文献

  • 佐竹義輔・大井次三郎・北村四郎他編『日本の野生植物 草本II離弁花類』、1982年、平凡社
  • 清水建美著『原色新日本高山植物図鑑(II)』、1983年、保育社
  • 北村四郎・村田源著『原色日本植物図鑑・草本編II(改訂53刷)』、1984年、保育社
  • 豊国秀夫編『山溪カラー名鑑 日本の高山植物』、1988年、山と溪谷社
  • 清水建美編・解説、門田裕一改訂版監修、木原浩写真『山溪ハンディ図鑑8 高山に咲く花(増補改訂新版)』、2014年、山と溪谷社
  • 大橋広好・門田裕一・木原浩他編『改訂新版 日本の野生植物 2』、2016年、平凡社
  • 牧野富太郎原著、邑田仁・米倉浩司編集『新分類 牧野日本植物図鑑』、2017年、北隆館
  • 米倉浩司・梶田忠 (2003-)「BG Plants 和名−学名インデックス」(YList)
  • 日本のレッドデータ検索システム
  • 矢田部良吉、日本植物新名, The botanical magazine,『植物学雑誌』,Vol.6, No.60, p.96, (1892).
This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.