マウゼル

マウゼル[1][ˈmzəl]; : Mouseholeコーンウォール語: Porthenys)は、イングランドコーンウォールにある村・漁港の名前である[2]ペンザンスから南に2.5マイル (4 km)の海岸・マウント湾に位置し[3][4]、ペンザンスの行政教区のひとつでもある。また港の入り口から350メートル (380 yd)沖合には、「セント・クレメント小島」(: St Clement's Isle)と呼ばれる島嶼が存在する。

マウゼル

マウゼル港 (Mousehole Harbour)
マウゼルの位置(コーンウォール半島内)
マウゼル
マウゼル
コーンウォールにおけるマウゼルの位置
人口697人 2011年国政調査
英式座標
SW468264
教区
単一自治体
  • コーンウォール
シャイア・カウンティ
リージョン
構成国イングランドの旗 イングランド
イギリスの旗 イギリス
郵便地域PENZANCE
郵便番号TR19
市外局番01736
警察デヴォン・アンド・コーンウォール
消防コーンウォール
救急医療サウス・ウェスタン
欧州議会サウス・ウェスト・イングランド
英国議会
  • セント・アイヴス

マウゼルは自然保護公園の一種であるコーンウォール特別自然美観地域(AONB[5]) の中に存在する[6][7]。コーンウォール一帯のおよそ3分の1がAONBに指定されており、国立公園と同様の地位・保護レベルにある。

歴史

マウゼルの旧称は「ポース・エニーズ」(: Porth-Enys)という[4]。この村はマラザイアンと共に、16世紀までマウント湾の主要港のひとつだった。主要な貿易中心地として衰退するまでは、マウゼルにも数多くの定期市市場が存在し、毎週火曜に市場を開く許可状が出されていたほか、1292年にヘンリー・ド・タイズ(: Henry de Tyes)から許可された、聖バーナバスの祭り毎に3日間開催される定期市などで賑わっていた[8]。マウゼルはマウント湾にある多くのコミュニティ同様、アルヴァートン荘園の管理下にあって、初期の定期市や営業特権などはすべてこの荘園の所有物であった[9]

マウゼルはペンザンス・ニューリンポールなどと同様、1595年のコーンウォールの戦いで破壊された。この戦いではスペインカルロス・デ・アメスキータがマウント湾に侵攻し[4][10]、地元のパブである「キーグウィン・アームズ」 'Keigwin Arms' だけが戦火に耐えて残った[11][注釈 1]。現在この建物は私有物件となっているが、外壁には「大地主ジェンキン・キーグウィンは、この家をスペイン人から守って1595年7月23日にここで殺された」[注釈 2]と書かれたプラークが掲げられている。

地元のコミュニティラジオ局コーストFM(旧称:ペンウィズ・ラジオ[注釈 3])で、FM96.5MHz・97.2MHzで放送している[13]

20世紀

ペンリー・ライフボート・ステーション

マウント湾では長年救難艇が利用可能だったが、1913年に新しい救難艇波止場として、町外れのペンリー・ポイントにペンリー・ライフボート・ステーションが完成した。1981年12月19日には、ハリケーンによる時化中救難に向かったクルー8名が命を落とすという、ペンリー救難艇災害も発生している[14][15]。救難艇は1983年にニューリンへ移動したが、その後も「ペンリー・ライフボート」の名で知られている[16]

マウゼルは別荘地としての需要も増えている。村の海岸沿いにある歴史あるホテル「ロブスター・ポット」(: The Lobster Pot)は、1930年代に詩人ディラン・トマスの友人だったウィン・ヘンダーソン[注釈 4]が経営していたゲストハウスだが、現在では近代的な高級アパートメントに作り替えられている。トマスはケイトリン・マクナマラとペンザンスで結婚した後、1938年にこのホテルを訪れハネムーンを過ごした[17]

マウゼルでは活気に満ちた祭りや地域活動が行われている。クリスマスにはイルミネーションを行うことで有名である。1981年以来、毎年12月19日には救難事故で亡くなった犠牲者を偲んで灯が消される。トム・バウコックの夜は毎年12月23日に行われるユニークな祭りで、地元住民のトム・バウコックが、16世紀に起こった飢餓を終わらせたことに由来する。この祭りはアントニア・バーバーが書いた本『マウゼルの猫』や、このテレビ映像化作品にインスピレーションを与えた。バーバーの本は、バウコックと彼のネコが飢饉を救ったという筋書きで、この話から地区にはネコも多い[1][18][19]。祭りは、魚の頭がペイストリーの上に突き出した形の、魚・卵・ポテトを用いた地元のパイ、「スターゲイジー・パイ」の由来にもなっている。マウゼルでは2年に1度、'Sea, Salt and Sail'(意味:海、塩、帆)と呼ばれる小規模な海祭りも行われる[20]

1995年の長編映画『ブルー・ジュース』は、一部がこの村で撮影された。

地元行政

マウゼルは元々ポールのアンシエント・パリッシュ (ancient parish) の一部で、1866年にこの教区から独立した。1894年にはポールのアーバン・ディストリクトの一部になった。このディストリクトは1934年に廃止され、マウゼルはペンザンスの自治区 (Municipal borough) に吸収された[21]。ペンザンス自治区は1972年地方自治法を元に1974年に廃止され、マウゼルは新しいペンウィズ・ディストリクトに組み込まれたほか、以前のバラは1980年まで教区でカバーされないアンパリッシュド・エリアとなった。アンパリッシュド・エリアには、1980年に行政教区が設置され[22]、ペンザンスの教区議会は「タウン・カウンシル」と自称するようになった。ペンウィズ・ディストリクトは2009年に廃止され、マウゼルは単一自治体のコーンウォール・カウンシル自治下にある。

著名な住人

ドリー・ペントレス

ペンウィズコーンウォールの中で、コーンウォール語がコミュニティの言語として使われている最後の地区だと考えられている。ドリー・ペントレスは記録に残る限り最後の話者で(但し本当に最後の話者だったかは疑わしいとされる)[23]、村にはマウゼルの出身とされる[24]彼女の記念碑が存在する。実際の所、彼女はマウゼルを包括する教区であるポールの出身だったとされている。

ドリーが1777年に亡くなってから1年後、デインズ・バリントンは、コーンウォール語の文章に英訳文が付けられた手紙を受け取った。差出人でマウゼルの漁師だったウィリアム・ボディナー(: William Bodinar)は、コーンウォール語を喋れる村人を5人知っていると書いていた。バリントンはまた、マラザイアン出身のジョン・ナンカロウ(: John Nancarrow)もネイティヴ・スピーカーで、1790年代まで生存していたと聞き取っている[25]

コーンウォール語学者のジョン・キーグウィン(1641年 - 1716年)、メソジストのウィリアム・カーヴォッソ (William Carvosso) (1750年 - 1834年)、海軍兵士のジョゼフ・トリワヴァス[注釈 5][26]もマウゼル出身である。

海軍元帥を務めたキャスパー・ジョン(1903年 - 1984年)は、退官後をマウゼルで過ごした。芸術家のジャック・ペンダー(1918年 - 1998年)はマウゼルで生まれ、キャリアのほとんどをこの村で過ごした。作家・イラストレーターのミシェル・カートリッジはマウゼル在住である[27]

文学

多くの近代的・都市おとぎ話を書いた作家のチャールズ・デ・リントは、自身の小説『リトル・カントリー』"The Little Country" の舞台をこの村にしている[28]

アントニア・バーバーが書き、ニコラ・ベイリー[注釈 6]が挿絵を付けた子ども向けの本『マウゼルの猫』は、トム・バウコックや彼を祝う祭り・トム・バウコックの夜を扱った作品である。

脚注

注釈

  1. キーグウィン・アームズの歴史や写真に関してはこのサイトで閲覧することができる[12]
  2. 原文:"Squire Jenkyn Keigwin was killed here 23 July 1595 defending this house against the Spaniards". この史実自体は記録に残るものである[11]
  3. : Penwith Radio
  4. : Wyn Henderson
  5. Joseph Trewavas VC, CGM; 1835年12月14日 - 1905年7月20日)
  6. : Nicola Bayley

出典

  1. 世界ふれあい街歩き ちょっとお散歩「コーンウォール」”. NHK. 2017年7月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2017年7月28日閲覧。
  2. Must see fishing villages in Cornwall”. Travel Daily News. 2015年5月13日閲覧。
  3. Ordnance Survey: Landranger map sheet 203 Land's End ISBN 978-0-319-23148-7
  4. History of Mousehole, in Penwith and Cornwall”. visionofbritain.org.uk. 2017年7月30日閲覧。
  5. 小野まり (2010年7月15日). コッツウォルズの魅力の真髄を知る Part1”. ロンドン・オリンピック特設サイト ニュースダイジェスト. 2017年7月30日閲覧。
  6. Cornwall AONB”. Areas of Outstanding Natural Beauty. landscapesforlife.org.uk. 2017年7月30日閲覧。
  7. 07 West Penwith”. コーンウォール特別自然美観地域. 2017年7月30日閲覧。
  8. West Penwith Resources – Paul (Lysons)”. West-penwith.org.uk (2003年10月18日). 2013年10月15日閲覧。
  9. Madron - Lake’s Parochial History—1868 (part 3)”. west-penwith.org.uk. 2017年7月30日閲覧。
  10. Grego, Peter (2013). Cornwall's Strangest Tales: Extraordinary but true stories. Pavilion Books. ISBN 1909396435. https://books.google.co.jp/books?id=_bK_CAAAQBAJ&pg=PT34&lpg=PT34&dq=Carlos+de+Am%C3%A9squita&source=bl&ots=-4vAep0Cjt&sig=3PwVW-pl9RMJOzRFdyuUVq-L2qo&hl=ja&sa=X&ved=0ahUKEwi1iYahzrDVAhUJxbwKHd0QAHg4ChDoAQg0MAI#v=onepage&q=Carlos%20de%20Am%C3%A9squita&f=false 2017年7月30日閲覧。
  11. Berry, Eric. History of Keigwins”. ロンドン大学. VCH Explore. 2017年7月30日閲覧。
  12. Keigwin House, Mousehole”. VCH Explore. 2017年7月30日閲覧。
  13. “Volunteer run Penwith Radio to change its name to Coast FM”. http://www.falmouthpacket.co.uk/news/14510092.Volunteer_run_Penwith_Radio_to_change_its_name_to_Coast_FM 2017年2月4日閲覧。
  14. “Solomon Browne history”. BBC. (2010年9月27日). http://news.bbc.co.uk/local/cornwall/hi/things_to_do/newsid_9036000/9036004.stm 2010年12月3日閲覧。
  15. 1981: Lifeboat crew missing after mission”. BBC ON THIS DAY. BBC. 2017年7月30日閲覧。
  16. Leach, Nicholas (2006) [2000]. Cornwall's Lifeboat Heritage. Chacewater: Twelveheads Press. pp. 41–42. ISBN 0-906294-43-6
  17. City and County of Swansea – The 1930s”. Dylanthomas.com (2010年10月25日). 2007年9月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月15日閲覧。
  18. 世界ふれあい街歩きちょっとお散歩 コーンウォール”. goo. 2017年7月30日閲覧。
  19. The Mousehole Cat - Dream Team Theatre Company”. Cornish riviera box office. 2017年7月30日閲覧。
  20. Home”. Seasalts.co.uk. 2013年10月15日閲覧。
  21. Vision of Britain website: Paul UD”. visionofbritain.org.uk. 2017年7月30日閲覧。
  22. A complete list of orders affecting Cornwall County from 1973 to the present”. Database of Local Government Orders. Local Government Boundary Commission for England. 2012年6月7日閲覧。
  23. Dolly Pentreath”. A History of the World. BBC. 2017年7月30日閲覧。
  24. "Pentreath [later Jeffery], Dorothy [Dolly]". オックスフォード英国人名事典. オックスフォード大学出版局. 2017年7月30日閲覧 {{cite encyclopedia}}: 不明な引数|month=|coauthors=が空白で指定されています。 (説明)
  25. Ellis, P. Berresford (ca. 1970) The Story of the Cornish Language. Penryn: Tor Mark Press
  26. A CEREMONY TO UNVEIL A MEMORIAL PLAQUE TO JOSEPH TREWAVAS VC, CGM, RN, TOOK PLACE AT ST POL DE LEON CHURCH, PAUL VILLAGE, CORNWALL.”. victoriacross.org.uk (2002年6月26日). 2017年7月30日閲覧。
  27. Michelle Cartlidge”. Mabecronbooks.co.uk. 2013年10月15日閲覧。
  28. The Little Country”. Amazon.com. 2007年5月11日閲覧。

外部リンク

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