マギルス

マギルスMagirus GmbH[1])は、消防隊の先駆者であり起業家であるドイツ人コンラッド・ディートリッヒ・マギルスConrad Dietrich Magirus)によって設立された[2] ドイツ、バーデン=ヴュルテンベルク州ウルムに拠点を置く消防用設備貨物自動車消防車)メーカー。ドイツ社Deutz AG)の商用車部門であったマギルス=ドイツMagirus-Deutz)として一般的に知られる。今日も使用されるロゴはウルム大聖堂尖塔を象ったMagirusの「M」を表している[2]

マギルス
Magirus GmbH
元の種類
有限会社(GmbH)
業種 製造業
輸送用機械
前身 1866年:マギルス(Magirus)
1949年 - 1983年:マギルス=ドイツ(Magirus-Deutz)
1983年 - 2013年:イヴェコ・マギルス(Iveco Magirus)
設立 1866年
1864年:合弁企業として)
創業者 コンラッド・ディートリッヒ・マギルス(Conrad Dietrich Magirus)
解散 1936年3月5日:フンボルト=ドイツ AG(Humboldt-Deutz AG)傘下へ
本社
拠点数
ドイツ:ウルム
オーストリア:グラーツ
フランス:シャンベリ
イタリア:ブレシア
事業地域
世界各地
主要人物
会長:ロエル・ニツェット
(Roel Nizet)
CEO:パオロ・モンフェリーノ(Paolo Monferino)
製品 消防用設備
消防車の製造開発
営業利益
減少 1.042億ユーロ2009年
従業員数
2,100名(2009年
親会社 CNHインダストリアル
ウェブサイト www.magirusgroup.com

マギルスは消防用設備に関する世界有数のメーカーであり、はしご車の分野では世界一となる[3]。消防車はイヴェコシャーシとエンジンを基に製造が行われているが、イヴェコ以外のプラットフォームパワートレイン)を選択することも可能である[注 1]

日本には1982年昭和57年)に東京消防庁に初号車が導入された。現在はモリタテクノスがマギルス製はしご車の販売・整備を行う[5]

歴史

黎明期から創業まで

創業者コンラッド・ディートリッヒ・マギルス

食料品店と食品工場を営む両親のもとに生まれたマギルスは、青年期に体操選手として活動し、その後、イタリアナポリ職業訓練生として7年間留学。留学後の19世紀前半にはウルム体操協会の理事に就任している。1847年にマギルスを含む体操選手数名でウルム市初となるウルム消防隊(消防士)を結成[6]。結成後に出動したオーストリアドナウシュタットで火災の消火に成功している。1850年に父親の事業を引き継いでおり、同時期、自身の消火活動の記録と消火技術に関する書籍「Alle Theile des Feuer-Lösch-Wesens消火活動の本質)」を自費出版している。ウルムでの活動が認められたことにより1853年にウルム消防隊の指揮官に任命され、7月10日には消火を専業とする現代消防署の前身となる「Deutscher Feuerwehrverbandドイツ消防団)」を設立している。マギルスはこの仕事に没頭しており、消防車の開発や消火器および消火技術の改善などに取り組み、特に消火活動における数々のはしご車の設計を行い、思いついたアイデアを次々形にしたことから、はしご車における先駆者とみなされている。

1864年、マギルスはエバーハート兄弟との合弁企業Gebr. Eberhardt offene Handels- und Kommanditgesellschaft(エバーハート兄弟合名=パートナーシップ)」社を設立。しかし、兄弟と意見が対立したため、1866年に「Feuerwehr-Requisiten-Fabrik C. D. Magirus gab(マギルス消防小道具工場)」と名付けたマギルス社の前身を創始し[7]、この年から消防車の製造を開始している。

創業以降

1873年、マギルスは高さ14mの2段式延長はしご車「ウルマー・ラダー(Ulmer Ladder)」を開発し[2]1873年ウィーンで開催された国際博覧会で発表し金メダルを受賞している[2]1883年にはマギルスの長男ハインリッヒが会社に加わる。業績は好調であり、新工場設立など得て企業規模が拡大している。1887年にマギルスは会社を3人の息子に対し譲渡[2]。マギルスが開発した車両(ワゴン)は初期はにより牽引され、次に蒸気エンジンに替わり、その後ガソリンエンジンによる動力に切り替わっている。1910年代後半にはトラックやバスの製造を開始。当初アメリカから輸入されたディーゼルエンジンを使用していたが、1929年以降、独自のディーゼルエンジンを開発し、このエンジンを使用した車両製造を開始している。また、マギルス製品は過酷な状況下でも作動するため技術力に関し定評がある。この他にもマギルスはターンテーブル式のはしご車を発明しており、これはマギルス・リッター(Magirus Leiter)と呼ばれ世界中で消防隊の必須機材となっている。

1942年式 T-5型はしご車。クレックナー=フンボルト=ドイツ(KHD)エンブレムとなっている

1940年から1945年までマギルスの名称は使用されず、フロントグリルに付いていたMを模したエンブレムもクレックナー=ドイツ(Klöckner-Deutz 正式には Klöckner-Humboldt-Deutz, KHD Deutz AGの前身)名義となり、KHDのエンブレムである円形の物に代わり販売が行われている。1949年にエンブレムはマギルスのMに戻っており、ブランド名はマギルス=ドイツとして販売されている。1974年フィアットのトラック部門とのパートナーシップを締結。この結果、1975年にフィアットの商用車部門「イヴェコ」が誕生している。1975年にマギルス=ドイツはイヴェコの傘下企業となっており、「イヴェコ・マギルス」としてマギルスブランドのトラックを製造している。KHDとフィアットとの合弁事業は1979年に突如終了し、急遽フィアットがマギルス=ドイツの所有者となっている[8]。イヴェコのトラックは、1980年代の終わりまでドイツおよび他のヨーロッパ市場や中東市場ではマギルスブランドとして販売されていた。

2013年、イヴェコ・マギルスは消防用設備品に関して再び「マギルス」ブランドを使用することを決定している[9]。また、この年の9月23日に社名を「Magirus GmbH」に変更している[7]。現在、マギルスブランドは、消防設備部門にのみ使用されているブランド名となり、通常のトラック部門ではイヴェコブランドが使用されている。

飛行船用はしご車

1930年オハイオで建造中の飛行船。はしご車先端で作業しているのが見える

マギルス社は、飛行船の建造に使用される可動式のはしご車の全てをドイツとアメリカで製造している。スライド式のマルチエクステンションはしご車はトレーラー形式のワゴン車であり、馬による牽引を考慮した設計であったが、このはしご車は大人2人で移動させることが出来るほど軽快であった。ワゴンにははしごが転倒するのを防ぐため、四方に手ネジ式の「アウトリガー」が装備されている。また最大で約80度の角度で25m(85フィート)まで伸ばすことが可能であった。このはしご車は1920年代と1930年代に撮影された飛行船建造中の写真に記録されているのが見受けられる。

製品

Magirus turntable ladders[10](はしご車)
数字は梯子全長を表す。
  • M27L
  • M32L
  • M32L-AS - 関節式はしご車。障害物や狭小空間で利便性が向上する[2]
  • M32-AS NB
  • M32L-AT - 間接式はしご車。
  • M34L-H
  • M39L
  • M42L
  • M42L-AS - 関節式はしご車。
  • M55L
  • M60L
  • M68L - はしご車最大となる68mまで延伸可能なレスキューリフト付きはしご車。
Fire Engines[11](消防車)
  • Light pumpers - 小型ポンプ車。
    • TSF-W
    • MLF
  • Medium pumpers - 中型ポンプ車。
    • LF 10 CITY
    • LF 10 ALL-WHELL
    • LF 20 CITY
    • LF 20 ALL-WHELL
    • LF-KATS
    • TLF 3000
    • TLF 4000
  • Heavy pumpers - 大型ポンプ車。
  • Industrial Fire Engines - 工場向け消防車。
  • Forest firefighting vehicles - 山火事向け消防車。
Airport Fire Engines[12](空港消防車 ARFF)
  • The Magirus DRAGON - 専用設計されたARFF車両。
    • Magirus DRAGON X4
    • Magirus DRAGON X6
    • SUPERDRAGON X8
  • The Magirus IMPACT - 小型空港向けの消防車。
    • Magirus IMPACT X4
    • Magirus IMPACT X6
    • Magirus SUPERIMPACT X6
Special Vehicles[13](特殊車両)
  • Magirus AirCore - 大型ファンに液体噴霧機能が取り付けられたタービン消防車。森林火災などで使用される。
  • Magirus MultiStar - 中型車がベースとなる伸縮式ブームリフトが取り付けられた車両。
  • Mobile command centre - バンベースの指揮車両。
Logistics Rescue Vehicles[14](ロジスティクス・レスキュー車両)
コンポーネントを自在に組み合わせ使用されるベースとなる中型車両。
Components & Systems[15](機材とシステム)
  • portable pumps - 携行式ポンプ。
  • pumps - 据え置き(車両搭載)型ポンプ。

画像

脚注

注釈

  1. 日本向けはイヴェコのシャーシを使用したはしご車が輸入されたが、現在は排出ガス規制に対応させるために国産メーカーのシャーシを使用している[4]。そのため、シャーシを一旦ドイツに輸送して架装後に再び日本に戻す手法が採られる(2019年名古屋市消防局中川消防署に導入されたスカニアシャーシのはしご車を除く)。

出典

  1. Die wichtigsten Unternehmen des Jahres 2009 - Welt Online”. Top500.welt.de (2011年7月5日). 2012年6月5日時点のオリジナルよりアーカイブ。2012年1月26日閲覧。
  2. Tradition”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。
  3. Iveco Magirus erhält den “Santa Barbara”-Preis (Memento vom 4. 12月 2017 im Internet Archive).2020年8月20日閲覧。
  4. よくいただくご質問 インデックス
  5. マギルス製消防車 製品ラインナップ
  6. Conrad Dietrich Magirus - Visionary and wright”. Magirus GmbH 公式Youtube channell (2014年3月5日). 2020年8月21日閲覧。
  7. Iveco Magirus”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。
  8. Kacher, Georg (September 1982). Kennett, Pat. ed. “Intertruck: Germany”. TRUCK (London, UK: FF Publishing Ltd): 21.
  9. Magirus wieder als Marke”. Feuerwehr-Magazin (2013年9月26日). 2020年8月20日閲覧。
  10. Turntable Ladders”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。
  11. Fire Engines”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。
  12. Airport Fire Engines”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。
  13. Special Vehicles”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。
  14. Logistics Rescue Vehicles”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。
  15. Components & systems”. Magirus. 2020年8月20日閲覧。

参考文献

  • Bernd Regenberg: Die berühmtesten deutschen Lastwagen von 1896 bis heute. 4. Auflage. Verlag Podszun-Motorbücher, Brilon 1997, ISBN 3-923448-89-9
  • Dieter Augustin: Iveco Magirus – Alle Lastwagen aus dem Werk Ulm seit 1917. Motorbuch-Verlag, Stuttgart 2006, ISBN 3-613-02600-7
  • Alexander Weber: Magirus Omnibusse. Podszun-Verlag, Brilon 2013, ISBN 978-3-86133-685-3

関連項目

外部リンク

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.