ヤシャゲンゴロウ

ヤシャゲンゴロウ(夜叉源五郎、学名Acilius kishii Nakane)は、コウチュウ目ゲンゴロウ科メススジゲンゴロウ属分類される昆虫の1

ヤシャゲンゴロウ
夜叉ヶ池に生息するヤシャゲンゴロウ
夜叉ヶ池に生息するヤシャゲンゴロウ
分類
: 動物界 Animalia
: 節足動物門 Arthropoda
: 昆虫綱 Insecta
: コウチュウ目(鞘翅目) Coleoptera
亜目 : オサムシ亜目 Adephaga
上科 : オサムシ上科 Caraboidea
: ゲンゴロウ科 Dytiscidae
亜科 : ゲンゴロウ亜科 Dytiscinae
: メススジゲンゴロウ属 Acilius
: ヤシャゲンゴロウ A. kishii
学名
Acilius kishii Nakane, 1963
和名
ヤシャゲンゴロウ

分布

日本福井県南条郡南越前町(旧:今庄町)の夜叉ヶ池のみで分布が確認されている固有種である[1][2]

特徴

体長は14.5-16.0 mm[2]メススジゲンゴロウときわめて近縁で[2]亜種として記載されていたこともあったが、1985年に独立種とされた。メススジゲンゴロウとは、雌の上翅の条溝が浅く不明瞭で毛が密生していない点で区別される。オスはメススジゲンゴロウとほとんど区別がつかない[3]。飛んでいる姿は確認されておらず、生息域の移動の可能性が少ないと考えられている。イモリ天敵であるが、幼虫である時期がモリアオガエルのオタマジャクシの時期と重なり、減少が抑えられ生態系のバランスが保たれている。晴れた日には活発に池を泳ぎ回っている。

生活史

5月下旬-7月初旬に朽木に産卵する[1]。約10日で孵化し、幼虫は2回の脱皮の後、約20日で岸辺の砂地にを作りになる[4]。その後約8日で羽化し成虫となり、冬に雪で覆われ池の底の落葉に身を寄せて越冬する[5]。一生を通して肉食で、幼虫ミジンコ類などを餌とし、成虫は夜叉ヶ池に生息しているモリアオガエルクロサンショウウオオタマジャクシトンボヤゴ類などを餌とする[2][4]

保全状況評価

絶滅危惧IB類 (EN)環境省レッドリスト[6]


環境省によるレッドリストの絶滅危惧IB類(EN)[6]、および福井県によるレッドリスト絶滅危惧I類(CRまたはEN)[3]の指定を受けている。種の保存法にて、国内希少野生動植物種に指定されている[2]

夜叉ヶ池は周辺から数か所から湧き水が流入し、年間ほぼ同じ水量を保っている[7]。夜叉ヶ池の水質が良く低温であり、餌となる小動物が豊富に生息していることなどが生息条件となっている。夜叉ヶ池では個体数は多いものの、生息地が非常に限定的であるため希少性が高い。岐阜県揖斐川町と福井県の南越前町の両側から山岳道路と登山道の整備により登山者と観光客の往来が増えて、生息地が汚染されつつあり絶滅が危惧されている[1][8]

個体数の推移

近畿中国森林管理局福井森林管理署による調査により、以下のように個体数が推定されている[9]

  • 1995年 - 約1,020匹
  • 2007年 - 約190匹
  • 2008年 - 約550匹

また福井大学でも2004年度から生息数の調査が行われた[10]。餌となるミジンコの個体数の調査も行われた。

  • 2006年 - 100から数百匹

保護増殖活動

2005年(平成17年)12月16日に農林水産省環境省が「ヤシャゲンゴロウ保護増殖事業計画」を発表した[11]。2006年(平成18年)6月22日に、福井県の麓の地区で「ヤシャゲンゴロウを育てる会」が発足した。希少生物ヤシャゲンゴロウの飼育・人工繁殖を実施、飼育場を利用した環境教育を実施している[8]

関連画像

脚注

  1. 植物絶滅危惧種情報検索(ヤシャゲンゴロウ)”. 生物多様性情報システム (2007年8月3日). 2011年12月1日閲覧。
  2. 川上 (2009)、148-149頁
  3. 福井県レッドデータブック データベース・ヤシャゲンゴロウ”. 福井県. 2011年12月1日閲覧。
  4. 夜叉ヶ池とヤシャゲンゴロウ希少動物「ヤシャゲンゴロウ」”. 近畿中国森林管理局. 2011年12月1日閲覧。
  5. 夜叉ヶ池”. NHKさわやか自然百景 (2006年1月29日). 2011年12月1日閲覧。
  6. 環境省第4次レッドリスト(9分類群・分類群順) (PDF). 環境省. pp. 15 (2012年). 2013年7月13日閲覧。
  7. ヤシャゲンゴロウ”. 福井県. 2011年12月1日閲覧。
  8. ヤシャゲンゴロウと夜叉ヶ池 (PDF). 南越前町. 2011年12月1日閲覧。
  9. 絶滅危機のヤシャゲンゴロウ”. 福井新聞 (2009年1月5日). 2011年12月1日閲覧。
  10. 保科英人「2006年度におけるヤシャゲンゴロウの生息状況について」『福井大学教育地域科学部紀要 第II部 自然科学』第58巻、福井大学教育地域科学部、2007年12月、11-15頁、CRID 1050845762717976960hdl:10098/1428ISSN 13456032
  11. ヤシャゲンゴロウ保護増殖事業計画 (PDF). 農林水産省環境省 (2005年12月16日). 2011年12月1日閲覧。

参考文献

  • 川上洋一『絶滅危惧の生きもの観察ガイド 東日本編』東京堂出版、2009年8月。ISBN 978-4490206760。
  • 森正人・北山昭『改訂版 図説日本のゲンゴロウ 第2刷』文一総合出版、2007年6月15日。ISBN 978-4-8299-2159-3。

関連項目

外部リンク

 

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