ヴァルデンブルク鉄道

ヴァルデンブルク鉄道(ヴァルデンブルクてつどう、ドイツ語: Waldenburgerbahn)は、スイスのバーゼル=ラント準州に存在する鉄道路線。2021年まではスイスの旅客鉄道として唯一の軌間750 mmの路線として知られていたが、同年以降近代化プロジェクトの一環で改軌が行われ、2022年現在はメーターゲージ(軌間1,000 mm)の路線となっている。運営はバーゼルラント交通(Baselland Transport AG、BLT)によって行われている[10][6][7][11]。

ヴァルデンブルク鉄道
新型電車のトラムリンク(104、2022年撮影)
新型電車のトラムリンク(104、2022年撮影)
基本情報
国 スイスの旗 スイス
所在地 バーゼル=ラント準州
種類 鉄道
路線網 1系統(2022年現在)
起点 リースタル駅(Liestal)[1][2][3]
終点 ヴァルデンブルク駅(Waldenburg)[1][2][3]
駅数 12箇所[1]
開業 1880年[2][3][4]
休止 2021年[5]
再開 2022年[5]
運営者 バーゼルラント交通[5][6][7]
使用車両 トラムリンク(Be 6/8)[5][6][7]
路線諸元
路線距離 13.1 km[4][8]
軌間 750 mm(2021年まで)
1,000 mm(2022年以降)[5][9]
電化区間 全区間
電化方式 直流1,500 V
(架空電車線方式)[9]

歴史

軌間750 mm時代

ヴァルデンブルク渓谷沿いに鉄道を建設する計画は、当時のスイス中央鉄道が1858年にバーゼル - オルテン間に鉄道を開通させた事に始まった。これにより、馬車が通る交通の要衝であったヴァルデンブルクはその役割を奪われる形となり、経済や交通の活性化を目的に19世紀後半以降長大トンネルを含む複数の鉄道プロジェクトが立ち上げられたが、これらは財政面や技術的な要因から実現しなかった。その後、1870年代にヴァルデンブルク渓谷地域における交通の利便性を向上させるため再度鉄道を建設する計画が浮上し、1871年に現在のヴァルデンブルク鉄道の建設計画の承認が行われた。この計画に際しては産業革命後のヴァルデンブルク渓谷の礎となった時計工場を始めとする沿線の需要も大きな支えとなり、1880年11月1日のヴァルデンブルク鉄道開通へと繋がった。その際、軌間については建設費用削減の観点から750 mmの狭軌が採用されている。車両については開通当初スイス・ロコモティブ・アンド・マシン・ワークス(SLM)製の2両の蒸気機関車と4両の客車(2軸車)、数両の貨車が導入され、以降も輸送量増加にともない車両の増備が順次なされていった[12][2][3][4]。

その後、1912年に軌間を1,000 mm(メーターゲージ)に変更する計画が浮上したが、この時点では費用の問題に加え第一次世界大戦の勃発により実現しなかった。また、1920年代後半から1930年代前半にかけて電化計画が立案されたがこれもこの時点では実現せず、長期にわたり蒸気機関車が牽引する客車列車・貨物列車が使用される事となった[4]。

第二次世界大戦後、戦時中の石炭不足による本数削減の経験を基に路線を電化する計画が再度立ち上がり、路線バスやトロリーバスへの置き換え案との比較を経て、1951年に路線の維持および電化が決定した。そして線路や枕木、バラストの交換や改良といった近代化工事、新型電車(CFe4/4 1 - CFe4/4 3)の導入といった工程を経て、1953年10月25日に電化開通式典が実施された。その後、1980年代に入るとヴァルデンブルク渓谷地域の人口増加に伴いヴァルデンブルク鉄道の通勤客の増加が顕著となり、新型電車の導入による輸送力の増強が行われた。その一方で貨物輸送は1984年12月、郵便輸送は1992年5月をもって廃止されている[13][2][3][4][8][14]。

改軌・近代化プロジェクト

2015年、バーゼル都市州議会はヴァルデンブルク鉄道の軌間を従来の750 mmからスイス各地で多く採用されている1,000 mmへ変更する案を賛成多数により採決した。これはヴァルデンブルク鉄道の将来を見据えた近代化の一環であり、これに加えてリースタル駅の移転、ヴァルデンブルク駅や車両基地の再建、一部の駅の併合および新設、車両の交換設備の拡張、洪水などの災害対策の強化、新型電車の導入といった多数の施策が行われる事となった[6][7][5][15]。

2016年、ヴァルデンブルク鉄道の運営権を有していたヴァルデンブルク鉄道株式会社(Waldenburgerbahn AG)はバーゼル近郊で公共交通機関を運営するバーゼルラント交通に吸収されたが、同事業者は引き続きプロジェクトを進め、2021年4月5日に実施されたさよなら運転をもって750 mm軌間の路線は営業運転を休止し[注釈 1]、以降は1年以上の休止期間を設ける事で路線の大規模な改装を実施した[注釈 2]。そして2022年12月11日、装いを新たにしたヴァルデンブルク鉄道の営業運転が再開された[5][6][7]。

運用

改軌後の2022年12月現在、ヴァルデンブルク鉄道は以下の路線で運行されており、「19号線」と呼ばれる事もある。運行間隔は通常30分、ラッシュ時には15分であり、ダイヤはリースタル駅(Liestal)でスイス連邦鉄道の列車と乗り換えができるよう設定されている[16][1][9][17]。

駅名 接続交通機関 備考・参考
Liestal スイス連邦鉄道
路線バス
Gräubern
Bad Budendorf 路線バス
Talhaus
Lampenberg-Ramliinsburg 路線バス
Hölstein 路線バス
Hölstein Sud
Hirschlang
Niederdorf
Winkelweg 路線バス
Oberdorf
Waldenburg 路線バス

車両

現有車両

トラムリンク(2022年撮影)

2022年の改軌・運行再開以降、ヴァルデンブルク鉄道で使用されているのはシュタッドラー・レールが展開する超低床電車のトラムリンク(Be 6/8)である。両運転台式の7車体連接車で10両(101 - 110)が導入されており、多客時には2両を連結した運用も行われる。2018年の発注の際にはアールガウ州とチューリッヒ州で公共交通機関を運営するアールガウ交通(Aargau Verkehr AG)との共同発注が行われており、導入コストの削減が図られている[16][18][5][19]。

主要諸元
車両番号 編成 運転台 最高速度 全長 全幅 全高 着席定員 立席定員 備考・参考
101 - 110 7車体連接車 両運転台 80km/h 44,180mm 2,400mm 3,610mm 104人 177人 [16][18]

過去の車両

BDe4/4(2019年撮影)

2021年の改軌に伴う運行休止まで営業運転に使用された車両は、1980年代から1990年代にかけて製造された電動車のBDe4/4 11 - BDe4/4 17および制御車のBt 111 - Bt 120であった。引退後は全車とも電化計画が存在するスロバキアの軽便鉄道であるチェルノフロン鉄道へ譲渡され、2025年からの本格的な営業運転開始を予定している[10][9][5][20][21]。

また、1980年以降動態保存運転が行われていた蒸気機関車の5号機(G 3/3 Nr 5)や客車(WB48)、貨車(G208)については2018年以降タルハウス駅(Talhaus)で静態保存されている[13][22]。

脚注

注釈

  1. 軌間750 mmの最終列車は翌4月6日の深夜0時以降に運行された。
  2. 営業運転休止中には代行バスが運行された。

出典

  1. “Liestal – Waldenburg”. BLT. 2022年12月29日閲覧。
  2. Baselland Transport AG 2020, p. 3-5.
  3. Baselland Transport AG 2020, p. 6.
  4. Stefan Marschnig 2014, p. 59.
  5. Erik Buch (2022年12月11日). “Two times Tramlink – two inaugurations in Switzerland: 1) Waldenburgerbahn”. Urban Transport Magazine. 2022年12月29日閲覧。
  6. “Das Projekt”. BLT. 2022年12月29日閲覧。
  7. “Rund um den Bau”. BLT. 2022年12月29日閲覧。
  8. Stefan Marschnig 2014, p. 60.
  9. “Waldenburgerbahn fleet sold to Slovakia”. Urban Transport Magazine (2020年5月7日). 2022年12月29日閲覧。
  10. “Waldenburgerbahn: Letzter Regelzug auf 750 Millimeter-Gleisen abgefahren”. bahnonline.ch (2021年5月19日). 2022年12月29日閲覧。
  11. 長真弓 (2003-4). スイスの鉄道. JTBキャンブックス. JTB. pp. 41. ISBN 4-533-04742-4
  12. “Oris Big Crown Pointer Date Waldenburgerbahn”. Uhrenkosmos (2022年11月8日). 2022年12月29日閲覧。
  13. “Waldenburgerbahn”. Verein Dampfzug Waldenburgerbahn. 2022年12月29日閲覧。
  14. Lorenz Degen (2020年11月2日). “140 Jahren Waldenburgerbahn: Ein Rückblick vor der geplanten Erneuerung”. BZ. 2022年12月29日閲覧。
  15. Andreas Hirsbrunner (2015年12月17日). “Landrat hat entschieden: Waldenburgerbahn bekommt Meterspur”. bz Basel. 2022年12月29日閲覧。
  16. “Roll­material”. BLT. 2022年12月29日閲覧。
  17. Baselland Transport AG 2020, p. 15.
  18. “BLT Stadt­bahn­fahrzeuge”. BLT. 2022年12月29日閲覧。
  19. “Neues «Waldenburgerli» ist knallgelb”. SRF (2018年10月24日). 2022年12月29日閲覧。
  20. Andreas Hirsbrunner (2020年4月22日). “Das Waldenburgerli wird slowakisch – das ganze Rollmaterial geht für 80'000 Franken weg”. bz Basel. 2022年12月29日閲覧。
  21. “チエルノフロン鉄道”. 阿里山林業鐵路及文化資產管理處. 2022年12月29日閲覧。
  22. “Die vollständige und abschliessende Geschichte der Dampflok WB-5 «Gedeon Thommen» in Stichworten”. Verein Dampfzug Waldenburgerbahn (2018年10月22日). 2022年12月29日閲覧。

参考資料

外部リンク

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