前世

前世(ぜんせ)とは、ある人生を起点として、それより前の人生のことを指す。古くは転生を内包するヒンドゥー教仏教などの宗教的世界観のなかで認められ、加えて現代ではニューエイジや、スピリチュアリティによっても支持されている。少数の研究を除き一般に科学的には認められていない概念であり、個人が前世の存在を認めるか否かは内面信条によって異なる。

概要

インドでは、ヒンドゥー教でも前世が認められている。仏教では、三世のうちの過去世にあたる。インド起源の宗教に限らず、前世の記憶を持って生まれ変わったと主張する人は、古今東西に多い。

また、現代の先進国に暮らし、物理科学合理性を信奉し、転生や前世の存在を全く信じない人でも、退行催眠を受けている時に、本人としても思いがけず、前世を思い出すということが起きるとの報告がある。1988年に出版された医学博士ブライアン・L・ワイスの著作『前世療法』[1]により、世界中で広く再認識されるようになった。ブライアン・ワイスが、患者の治療中に前世を半ば偶然に発見した経緯、発見をありのまま公表するのか、あるいは科学者としての保身のために発見を隠すか、悩んだ経緯などについては、彼の著書『前世療法』に詳しい。

ニューエイジ思想

東洋哲学を取り入れたことで、前世やカルマ、転生思想を内包したニューエイジ思想は、1980年代のアメリカで広がりを見せた。

女優のシャーリー・マクレーンニューエイジ思想に感銘を受け、カルマ転生思想をもとにしたスピリチュアルな自伝的著作『アウト・オン・ア・リム』[2]を1983年に発表し、大きな反響を得た。この自伝は1987年にABCの全米ネットでドラマ化され数千万人が視聴し、彼女の著作は続編[3][4]も含め数百万部が売れた。これにより伝統的キリスト教では異端とされる転生思想を支持する人々の存在が、広く一般に知られるようになった[5]

研究例

イアン・スティーヴンソンによる調査

転生を扱った学術的研究の代表的な例としては、イアン・スティーヴンソンによる面接調査がある。スティーヴンソンは1961年から生まれ変わり事例の調査を始め、最終的に2,000例を超える「生まれ変わりを強く示唆する事例」を収集した。そして考察の結果、スティーヴンソンは最終的に、ある種の「生まれ変わり説」を受け入れている。彼の研究[6]は1966年と1974年に出版され反響を得た。

ジム・タッカーによる調査

ヴァージニア大学ジム・タッカーは、イアン・スティーヴンソンの研究を引き継ぎ、約1,100の生まれ変わり事例を調査した。

前世療法研究

前世療法で用いられる退行催眠については、虚偽記憶を生み出すという批判もあるが、検証の結果「前世の記憶」である可能性が高い記憶が想起されたケースもある。

1986年から1988年の間に、トロント大学医学部教授ジョエル・L・ホイットン[7]アメリカ催眠療法家ギャレット・オッペンハイム[8]マウントサイナイ病院精神科医ブライアン・L・ワイス[1]らの著作によって前世療法による治療の報告がなされている。

転用

バーチャルYouTuberのいわゆる「中の人」が、バーチャルYouTuberとしての活動を行う以前に行っていた活動のことを指して使われる場合がある。

参考文献

  • ポール・エドワーズ 著、福岡洋一 訳『輪廻体験─ 神話の検証』皆神龍太郎 監修、太田出版〈Skeptic library 04〉、2000年9月。ISBN 4-87233-541-4、ISBN 978-4-87233-541-5、NCID BA49014659OCLC 123035299
  • ブライアン・L・ワイス 著、山川紘矢山川亜希子 訳『前世療法─米国精神科医が体験した輪廻転生の神秘』PHP研究所PHP文庫〉、1996年9月17日。ISBN 4-569-56932-3、ISBN 978-4-569-56932-1、OCLC 674609124
  • 山口敏太郎『前世』青林堂、2006年12月11日。ASIN B019CID7M8ISBN 4-7926-0399-4、ISBN 978-4-7926-0399-1、OCLC 674989704

脚注

出典

  1. Brian L. Weiss (1988). Many Lives, Many Masters: The True Story of a Prominent Psychiatrist, His Young Patient, and the Past-Life Therapy That Changed Both Their Lives. Fireside. ISBN 0-671-65786-0
    ブライアン・L・ワイス 著、山川紘矢・山川亜希子 訳『前世療法:米国精神科医が体験した輪廻転世の神秘』PHP研究所、1991年。ISBN 4-569-53301-9。
  2. Shirley MacLaine (1983). Out on a Limb. Bantam Doubleday Dell Publishing Group
    シャーリー・マクレーン 著、山川紘矢・亜希子 訳『アウト・オン・ア・リム―愛さえも越えて』地湧社、1986年。
  3. Shirley MacLaine (1986). Dancing in the Light. Bantam Books
    シャーリー・マクレーン 著、山川紘矢・亜希子 訳『ダンシング・イン・ザ・ライト―永遠の私をさがして』地湧社、1987年。
  4. Shirley MacLaine (1987). It's All in the Playing. Bantam Books
    シャーリー・マクレーン 著、山川紘矢・亜希子 訳『オール・イン・ザ・プレイング―私への目覚め』地湧社、1988年。
  5. 島薗進『精神世界のゆくえ 現代世界と新霊性運動』東京堂出版、1996年、78頁。
  6. Ian Stevenson (1966). Twenty Cases Suggestive of Reincarnation. University of Virginia Press
    イアン・スティーヴンソン 著、今村光一 訳『前世を記憶する20人の子供』叢文社、1977年。
  7. Joel L. Whitton; Joe Fisher (1986). Life Between Life: Scientific Explorations into the Void Separating One Incarnation from the Next. Garden City, N.Y: Doubleday. ISBN 0-385-23274-8
    ジョエル・L・ホイットン、ジョー・フィッシャー 著、片桐すみ子 訳『輪廻転生:驚くべき現代の神話』人文書院、1989年7月25日、17頁。ISBN 4-409-33036-5。
  8. Garrett Oppenheim (1987). Who Were You Before You Were You?. Venture Inward. vol.3, no.3. A.R.E. Association
    片桐すみ子 編訳 『輪廻体験:過去世を見た人々の証言』人文書院、1991年11月20日、第1章『前世療法の実際』、ギャレット・オッペンハイム。ISBN 4-409-42011-9。

関連項目

外部リンク

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