垣内忠質

垣内 忠質(かきうち ただかた)は江戸時代後期の豪商。紀伊国有田郡栖原村垣内太郎兵衛家第9代。文芸を嗜み、亀田鵬斎等と交流した。

 
凡例
垣内 忠質
垣内忠質肖像 横田汝圭筆、亀田鵬斎文政5年(1822年)
時代 江戸時代後期
生誕 宝暦9年(1759年
死没 天保11年4月3日1840年5月4日
改名 垣内松之助、弥市、太郎兵衛、十兵衛
別名 子衛(子衡[1])(字)、茗渓(号)[2]、忠賢(ただかた)[3]
諡号 了斎
墓所 紀伊国有田郡栖原村施無畏寺
氏族 藤原菊池氏栖原垣内家
父母 垣内繁安
兄弟 垣内孝友
登美
垣内広敬(養子)

生涯

宝暦9年(1759年)[1]紀伊国栖原垣内家第8代垣内繁安の次男として生まれた[2]。幼名は松之助で、後に弥市と改めた[2]。兄が夭折したため家督を継ぎ、太郎兵衛と称した[2]。幼くして江戸茅場町本店に勤務し、成長後は房総半島を視察して家業に精通した[2]。支配人辻甚七と協議の上、新和泉町支店を弟垣内孝友に譲り、本店を深川西永代町に移転し、河岸地に蔵を構えて流通の便を図った[2]。30年間事業を拡大し、余剰資金で土地を購入して店舗を新設した[2]

老後は十兵衛と称し、隠宅の庭に花を植え、吉日には客を迎えて宴を開き、和歌・書道を披露した[2]。藩主徳川治宝西浜御殿に招かれて書を求められ、「先祖は代々俗務のことで招かれていたが、文雅のことで招かれたのは自分が初めてだ。」と喜んだ[2]。子垣内広敬・甥菊池海荘と郡内の豪家を回って屋敷・庭園の華美を諌め、義倉を設置したため[2]、数年後の天保の大飢饉[4]で郡内は被害を免れたという[2]

天保11年(1840年)3月病気に罹り、4月3日82歳で死去し、了斎の諡号を与えられた[2]。生前のある晩、義孫垣内惟聡と江戸でのことを語り合ったが、将来のことには一言も触れなかったという[2]施無畏寺に葬られ、天保12年(1841年)6月伊藤弘済撰・北畠蓼洲書・甥菊池海荘題額の墓碑が建てられた[1]

人物

伊藤仁斎の聖学、米芾の書を学び、骨董・和歌・謡曲を好んだ[1]。酒は飲まなかった[1]

毎晩寝る前下女に蝋燭を持たせて子孫宅を巡回した。ある晩、姪孫保がいたずらで蝋燭を抜き出したところ、7,8個の欠片を一つに集めて使い回していたため、ばらばらに折れてしまったという[2]

文政5年(1822年)横田汝圭筆の肖像画が渥美コレクションに所蔵されるが[5]亀田鵬斎は讃において「我斯の像を睹るに、真に逼ること少きなり。」と酷評している[3]木村蒹葭堂『蒹葭堂日記』にも垣内太郎兵衛の名が見える[6]

親族

  • 父:垣内繁安(第8代太郎兵衛、義同)
  • 兄 - 夭折[7]
  • 弟:垣内孝友(初代孫左衛門、淡斎)
  • 姉妹:栄(栄好) - 垣内元綽(太郎左衛門、敬念)妻[8]
  • 姉妹[7]
  • 妻:登美(妙了)[9] - 湯浅村谷輪与右衛門娘[10]。死別後、天保12年(1841年)広敬と大坂に移り、天保13年(1842年)1月21日77歳で死去し、施無畏寺に葬られた[9]
  • 長男 - 夭折[1]
  • 次男 - 夭折[1]
  • 養子:垣内広敬 - 弟孝友の子[1]

脚注

  1. 湯浅町 1967, pp. 947–948.
  2. 菊池 1918, p. 8.
  3. 渥美 1995, pp. 210–214.
  4. 湯浅町 1967, p. 855.
  5. 鈴木 1998, pp. 120–121.
  6. 塚田 2004, p. 136.
  7. 湯浅町 1967, pp. 946–947.
  8. 菊池 1918, p. 30オ.
  9. 湯浅町 1967, pp. 948–949.
  10. 菊池 1918, p. 29ウ.

参考文献

  • 菊池三九郎『黄花片影』菊池三九郎、1918年4月。NDLJP:926715/17
  • 湯浅町誌編纂委員会『湯浅町誌』湯浅町、1967年。
  • 渥美国泰『亀田鵬斎と江戸化政期の文人達』芸術新聞社、1995年1月。
  • 鈴木泉「35 垣内忠質肖像 横田汝圭筆・亀田鵬斎賛」『江戸の文人交友録 亀田鵬斎とその仲間たち 渥美コレクションを中心に』世田谷立郷土資料館、1998年9月。
  • 山口啓二「歴史と現在、そして未来 ―南紀栖原の豪商菊池家の文書整理を通じて見えてきたもの―」『名古屋大学日本史通信 ばさら』第2号、名古屋大学大学院文学研究科、1999年。
  • 塚田孝「木村蒹葭堂と北堀江五丁目 ―近世大坂の都市社会構造との関連で」『大阪における都市の発展と構造』山川出版社、2004年3月。
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