岩波講座 基礎数学

岩波講座 基礎数学(いわなみこうざ きそすうがく)とは、岩波書店から分冊形式で出版された数学書シリーズ。これらの内いくつかは、後に岩波基礎数学選書(いわなみきそすうがくせんしょ)シリーズとして、一冊本として、一部修正されて再版された。現在は岩波オンデマンドブックスとして刊行が進んでいる。

岩波講座 基礎数学
著者 小平邦彦 監修
発行日 第1次発行:1976年-1981年
第2次刊行:1982年-1984年
第3次刊行:1987年-1989年
岩波基礎数学選書:1990年-1991年
岩波オンデマンドブックス2015年-
発行元 岩波書店
ジャンル 数学
言語 日本語
形態 岩波講座 基礎数学:分冊
岩波基礎数学選書:一冊本
岩波オンデマンドブックス:常微分方程式とスペクトル理論を除いて一冊本
公式サイト 岩波基礎数学選書
ウィキポータル 数学
[ ウィキデータ項目を編集 ]

基礎数学

岩波講座 基礎数学1976年から1981年にかけて発行。(後に重版時には第1次発行と呼ばれる。)全24、80分冊。(79分冊+総索引1冊。)総索引は最後の第24巻に含まれる。各分冊はベージュ色ソフトカバーA5判正誤表が全4回配布されている[注釈 1]。各分冊にISBNはない。配本は巻の順である。

監修は小平邦彦。各巻は5つの分野に分類されている。それらは、線型代数(岩堀長慶編集)、代数学(河田敬義編集)、解析学I、解析学II(藤田宏小松彦三郎編集)、幾何学(田村一郎服部晶夫飯高茂編集)である。

複数の分冊に渡るものは、ページ数は通算して振られている。章末には問題が付されている。

元岩波書店編集部の荒井秀男によれば、計画は1973年頃。計画時に小平邦彦は、戦前の岩波書店の数学書のシリーズである「岩波講座 数学」は分冊で勉強しやすかった、と語った。出版の計画が中止となる巻はなく、刊行は完結した[1]

基礎数学は1982年から1984年にかけて第2次刊行、また1987年から1989年にかけて第3次刊行として重版されている。

巻は再編されている。第1次発行では、各巻に含まれる分冊は内容が不統一だったが、重版では同一タイトルのものは(ほぼ)一つの巻にした。各巻は箱入りである。1巻から3巻は線型代数、4巻から8巻は代数学など、巻の順序はジャンルごとにまとまっている。また、第1次発行における誤りの修正を含む。

第3次刊行では「数学の学び方」と題された付録を含む。(第6回配本に添付。) これは、基礎数学の8人の編集者おのおのによる、自分の「数学の学び方」についてのエッセーである。1987年に単行本としても出版され、更に2015年には、「新・数学の学び方」と題されて、深谷賢治斎藤毅河東泰之宮岡洋一小林俊行の5名のエッセーを加えたものが出版された[2]。また第2次刊行の月報を、1冊にまとめて製本したものを含み、巻ごとにISBNが付された。分冊の奥付にも記されている。

重版時の巻全冊数著者分類発行年月[注釈 2]岩波基礎数学選書あるいは岩波オンデマンドブックスで採用された書名、ページ数、価格[注釈 3][3](空欄は未刊行)
12アフィン幾何射影幾何1河田敬義線型代数 v1976年5月「線型空間・アフィン幾何」440頁、3600円
19解析入門 I5小平邦彦解析学I ii1976年5月「解析入門」530頁、3300円。軽装版(I 3000円+II 3000円)もある。
118多様体論 I3志賀浩二幾何学 i1976年5月「多様体論」岩波オンデマンドブックスでは、386頁で9680円。
21線型空間 I2伊原信一郎線型代数 i1976年7月「線型空間・アフィン幾何」
24群論 I3近藤武代数学 i1976年7月「群論」408頁、3200円
211測度積分1吉田耕作解析学I iii1976年7月「現代解析入門」472頁、3600円
218多様体論 II3志賀浩二幾何学 i1976年7月「多様体論」
332次形式 I2田坂隆士線型代数 iii1976年8月「2次形式」272頁、2400円
34ホモロジー代数 I2河田敬義代数学 iii1976年8月「ホモロジー代数」320頁、2600円
314常微分方程式 I1斎藤利弥解析学II i1976年8月岩波オンデマンドブックス 168頁、4300円
44群論 II3近藤武代数学 i1976年9月「群論」
415定数係数線型偏微分方程式1金子晃解析学II v1976年9月岩波オンデマンドブックス、170頁、2600円
423代数幾何学 I3飯高茂幾何学 vii1976年9月岩波オンデマンドブックス「代数幾何学」として、IとIIとIIIを合本。462頁、7000円
51線型空間 II2伊原信一郎線型代数 i1976年10月「線型空間・アフィン幾何」
59解析入門 II5小平邦彦解析学I ii1976年10月「解析入門」
516線型偏微分方程式論における漸近的方法 I2藤原大輔解析学II viii1976年10月岩波オンデマンドブックス「線型偏微分方程式論における漸近的方法」としてIとIIを合本、320頁、7500円
518多様体論 III3志賀浩二幾何学 i1976年10月「多様体論」
632次形式 II2田坂隆士線型代数 iii1976年11月「2次形式」
69集合位相 I2彌永昌吉彌永健一解析学I i1976年11月「集合と位相」320頁、2600円
613確率論 I3伊藤清解析学I vii1976年11月「確率論」400頁、3200円
72Jordan標準形単因子論 I2杉浦光夫線型代数 ii1976年12月「ジョルダン標準形・テンソル代数」512頁、4000円
75加群 I3山崎圭次郎代数学 ii1976年12月「環と加群」656頁、4400円。岩波オンデマンドブックスでは、652頁で11550円。
721組合せ位相幾何学1加藤十吉幾何学 iv1976年12月岩波オンデマンドブックス 160頁、4100円
81線型不等式とその応用1岩堀長慶線型代数 vii1977年1月岩波オンデマンドブックス 178頁、4500円
88保型関数 I3清水英男代数学 vii1977年1月単行本「保型関数」
816非線型楕円型方程式1増田久弥解析学II vi1977年1月岩波オンデマンドブックス 140頁、3600円
823代数幾何学 II3飯高茂幾何学 vii1977年1月岩波オンデマンドブックス「代数幾何学」として、IとIIとIIIを合本。462頁、7000円
93テンソル空間外積代数1横沼健雄線型代数 iv1977年3月「ジョルダン標準形・テンソル代数」
96Galois理論 I3藤崎源二郎代数学 v1977年3月「体とガロア理論」520頁、4000円。岩波オンデマンドブックスでは7800円。
912複素解析 I3小平邦彦解析学I v1977年3月「複素解析」464頁、3800円
104群論 III3近藤武代数学 i1977年4月「群論」
10141階偏微分方程式1大島利雄小松彦三郎解析学II iii1977年4月岩波オンデマンドブックス158頁、4000円
1020微分位相幾何学 I3田村一郎幾何学 iii1977年4月単行本「微分位相幾何学」
112Jordan標準形と単因子論 II2杉浦光夫線型代数 ii1977年5月「ジョルダン標準形・テンソル代数」
1114常微分方程式 II1木村俊房解析学II ii1977年5月岩波オンデマンドブックス 166頁、4200円
1119位相幾何学 I3服部晶夫幾何学 ii1977年5月「位相幾何学」536頁、4200円
1124Lie群 I1伊勢幹夫幾何学 viii1977年5月下記参照、単行本「リー群論」
129集合と位相 II2彌永昌吉彌永健一解析学I i1977年6月「集合と位相」
1213確率論 II3伊藤清解析学I vii1977年6月「確率論」
1223代数幾何学 III3飯高茂幾何学 vii1977年6月岩波オンデマンドブックス「代数幾何学」として、IとIIとIIIを合本。462頁、7000円
135環と加群 II3山崎圭次郎代数学 ii1977年8月「環と加群」
1316線型偏微分方程式論における漸近的方法 II2藤原大輔解析学II viii1977年8月岩波オンデマンドブックス「線型偏微分方程式論における漸近的方法」としてIとIIを合本、320頁、7500円
1321微分幾何学 I2佐々木重夫幾何学 v1977年8月「微分幾何学」296頁、2500円
146ホモロジー代数 II2河田敬義代数学 iii1977年9月「ホモロジー代数」
146体とGalois理論 II3藤崎源二郎代数学 v1977年9月「体とガロア理論」
1421微分幾何学 II2佐々木重夫幾何学 v1977年9月「微分幾何学」
158可換環論1飯高茂代数学 iv1977年11月岩波オンデマンドブックス 144頁、3700円
1510解析入門 III5小平邦彦解析学I ii1977年11月「解析入門」
1516非線型発展方程式1高村幸男小西芳雄解析学II vii1977年11月
168保型関数 II3清水英男代数学 vii1977年12月単行本「保型関数」
1615数理物理に現われる偏微分方程式 I1藤田宏池部晃生犬井鉄郎高見穎郎解析学II iv1977年12月岩波オンデマンドブックス「数理物理に現われる偏微分方程式」としてIとIIを合本。350頁、8100円
1620微分位相幾何学 II3田村一郎幾何学 iii1977年12月単行本「微分位相幾何学」
173対称群一般線型群表現論1岩堀長慶線型代数 vi1978年2月岩波オンデマンドブックス[4]、154頁、4200円
177数論 I3河田敬義代数学 vi1978年2月単行本「数論」
1717超関数論入門1小松彦三郎解析学II ix1978年2月岩波オンデマンドブックス 196頁、5000円
1719位相幾何学 II3服部晶夫幾何学 ii1978年2月「位相幾何学」
185環と加群 III3山崎圭次郎代数学 ii1978年3月「環と加群」
1811関数解析 I3藤田宏、黒田成俊解析学I iv1978年3月「関数解析」544頁、4200円
1812複素解析 II3小平邦彦解析学I v1978年3月「複素解析」
197数論 II3河田敬義代数学 vi1978年5月単行本「数論」
1913確率論 III3伊藤清解析学I vii1978年5月「確率論」
1924Lie群 II1竹内勝幾何学 ix1978年5月下記参照単行本「リー群論」
208保型関数 III3清水英男代数学 vii1978年8月単行本「保型関数」
2011関数解析 II3藤田宏、黒田成俊解析学I iv1978年8月「関数解析」
2020微分位相幾何学 III3田村一郎幾何学 iii1978年8月単行本「微分位相幾何学」
216体とGalois理論 III3藤崎源二郎代数学 v1978年10月「体とガロア理論」
2111関数解析 III3伊藤清三解析学I iv1978年10月「関数解析」
2112複素解析 III3小平邦彦解析学I v1978年10月「複素解析」
2113Fourier解析1小松彦三郎解析学I vi1978年10月岩波オンデマンドブックス 200頁、5000円
227数論 III3河田敬義代数学 vi1979年2月単行本「数論」
2215数理物理に現われる偏微分方程式 II2藤田宏池部晃生犬井鉄郎高見穎郎解析学II iv1979年2月「数理物理に現われる偏微分方程式」としてIとIIを合本。岩波オンデマンドブックス 350頁、8100円
2219位相幾何学 III3服部晶夫幾何学 ii1979年2月「位相幾何学」
2310解析入門 IV5小平邦彦解析学I ii1979年9月「解析入門」
2317スペクトル理論 I1木村俊房解析学II x1979年9月岩波オンデマンドブックス 204頁、5200円
2317スペクトル理論 II1黒田成俊解析学II xi1979年9月岩波オンデマンドブックス 184頁、4700円
2322複素多様体論 I3小平邦彦幾何学 vi1979年9月単行本「複素多様体論」
2410解析入門 V5藤田宏解析学I ii1981年3月「現代解析入門」
2422複素多様体論 II3小平邦彦幾何学 vi1981年3月単行本「複素多様体論」
2422複素多様体論 III3小平邦彦幾何学 vi1981年3月単行本「複素多様体論」
2424総索引11981年3月

単行本化

単行本化はまず岩波基礎数学選書として行われた。岩波基礎数学選書は「基礎数学」の中から学部程度の基礎教科に相当するものを選んで[5]1990年から1991年にかけて再出版している。選書になった全16巻は「線型空間・アフィン幾何」「解析入門」「多様体論」「群論」「現代解析入門」「2次形式」「ホモロジー代数」「集合と位相」「確率論」「ジョルダン標準形・テンソル代数」「環と加群」「体とガロア理論」「複素解析」「位相幾何学」「微分幾何学」「関数解析」である。品切れ後も、要望に応じて復刊されていたこともあった[6]

分冊形式であった基礎数学を灰色のハードカバーの一冊本としてまとめ、索引を付した。A5判。また、章末問題に解答・ヒントを付した[5]。基礎数学では別タイトルであった巻を一冊にまとめたものもある。巻頭には「刊行にあたって」と題された小平邦彦の短文がある。内容は各巻に共通である。

1992年にも単行本として、「保型関数」「微分位相幾何学」「数論」「複素多様体論」「リー群論」が出版された。これらは基礎数学選書には含まれない。このほかにも、単行本として復刊[7][8]したものもある。

「リー群論」について言えば、当初はA5判のハードカバーであった。第2次刊行の「Lie群」I、IIを各々前篇、後篇として、竹内が前書きをつけたものであり、索引が付けられている。内容は、前篇はリー群の入門、後篇は対称空間の入門である。前書きにおいて伊勢著のI(第2次刊行で竹内が改訂)のみならず、竹内著のIIも当初は伊勢の執筆が予定されていた事が明かされている。なお、伊勢幹夫は「Lie群I」の第1次発行と前後して、1977年に死去している。現在岩波オンデマンドブックスとして再刊されたときには、一冊の単行本として出た。

伊勢・竹内著の「リー群論」は英訳がアメリカ数学会 (AMS) から出版されている[注釈 4]

2015年[9]から、岩波書店は単行本化された5冊と岩波基礎数学選書の16冊を含む全巻を再編し、全39巻[注釈 5]で再出版[10]している。現在も復刊作業は継続中である。可能な限り基礎数学選書のように一冊にまとめられているが、「常微分方程式」と「スペクトル理論」のみ分冊化し、軽装版の解析入門も2冊組である。内容は全く同一だが、岩波基礎数学選書の名で、シリーズ化が予定されている[11]。「常微分方程式」、「定数係数線型偏微分方程式」、「代数幾何学」、「線型偏微分方程式論における漸近的方法」、「組合せ位相幾何学」、「線型不等式とその応用」、「非線型楕円型方程式」、「1階偏微分方程式」、「可換環論」、「数理物理に現われる偏微分方程式」、「対称群と一般線型群の表現論」、「超関数論入門」、「Fourier解析」、「スペクトル理論」は岩波オンデマンドブックスで復刊された。

脚注

注釈

  1. 正誤表第1回は月報7に収録され、第2,3,4回は独立した小冊子としてそれぞれ15巻、22巻、24巻に付属している。
  2. 奥付に記された日付。
  3. 1992年4月時点でのもの。
  4. Ise, Mikio; Takeuchi, Masaru (1991). Lie Groups I-II. Translations of Mathematical Monographs. 85. American Mathematical Society. ISBN 9780821845448. https://bookstore.ams.org/mmono-85/
  5. 単行本化された5冊+岩波基礎数学選書15冊+岩波オンデマンドブックス17冊+軽装版解析入門I&II=全39冊)

出典

  1. 特集: 2007年度日本数学会出版賞受賞者のことば 荒井秀男氏 (pdf). 数学通信」12巻2号. 日本数学会 (2007年). 2012年9月19日閲覧。
  2. 本書の旧版にあたる『数学の学び方』は1987年,岩波講座「基礎数学」第3次刊行第6回配本に添付された講座の編集委員8名によるエッセイ集です.”. www.iwanami.co.jp. 岩波書店. 2020年12月6日閲覧。
  3. 「リー群論」伊勢幹夫、竹内勝。1992年。第1刷より。
  4. 対称群と一般線型群の表現論”. www.iwanami.co.jp. 岩波書店. 2020年12月6日閲覧。
  5. 各巻冒頭「刊行にあたって」(小平邦彦)より
  6. 待望の復刊”. encrypted-tbn0.gstatic.com. encrypted-tbn0.gstatic.com. 2021年4月11日閲覧。
  7. 新装版 複素多様体論”. www.iwanami.co.jp. 岩波書店. 2020年12月6日閲覧。
  8. 軽装版 解析入門 II”. www.iwanami.co.jp. 岩波書店. 2020年12月6日閲覧。
  9. リー群論”. www.iwanami.co.jp. 岩波書店 (2015年7月10日). 2020年12月7日閲覧。
  10. 環と加群”. www.iwanami.co.jp. 岩波書店. 2020年12月6日閲覧。
  11. 岩波基礎数学選書 多様体論”. www.iwanami.co.jp. 岩波書店. 2021年7月9日閲覧。

関連項目

外部リンク

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.