広島家族3人放火殺人事件

広島家族3人放火殺人事件(ひろしまかぞく3にんほうかさつじんじけん)は放火及び殺人事件である。

検察は状況証拠に基づき被害者の家族による保険金詐取を目的とした犯行として逮捕起訴し死刑求刑したが、司法は3度の無罪判決を下した。

事件の概要

2001年1月17日頃、広島県広島市西区木造2階建て住宅の居住者の女性が殺害された後、女性の自宅が放火されて、子供2名が焼死体で発見された。この事件で3人の保険金など計約7300万円を詐取したとして、事件から5年経過した2006年6月に女性の息子(焼死した子供の父親でもある)の男を逮捕し、殺人並びに現住建造物等放火などの罪で起訴された(厳密に言えば、被告は、本件殺人放火事件の容疑で逮捕される前、元妻と一緒に児童扶養手当をだまし取ったとして詐欺の容疑で逮捕・起訴されており、この別件の容疑での起訴後の勾留中に本件殺人放火事件の容疑を自白し、この自白が決め手とされて殺人や現像建造物等放火の罪で再逮捕・追起訴されたという経緯をたどっている[1])。

裁判経過

2007年11月、一審の広島地方裁判所の審理で検察側が『明らかな保険金目的による殺人』として死刑求刑被告無罪を主張した。一審判決では自白の任意性についてはある程度認めたものの、死亡保険金を詐取することが目的だったという検察側の主張に対して、そこに至るまでの動機が不十分だとして、信用性を否定。また、いわゆる犯人しか知り得ない秘密の暴露もなく、物的証拠がないことも併せて無罪判決を下した。検察側は判決を不服として控訴した。

2009年12月14日の2審広島高等裁判所も、被告の「灯油をまいて放火した」などという供述などに矛盾があり、自白の信用性に問題があるとして状況証拠だけでは有罪に出来ないとして、広島地裁の一審無罪判決を支持し、検察側の控訴棄却を言い渡した[2]

本事件は、検察の上告により、最高裁判所での審理が行われていたが、2012年2月22日、検察の上告を棄却する決定がされ、無罪判決が確定した[3]。後述のように死刑求刑で無罪ないし逆転無罪もしくは逆転有罪になった刑事裁判は数多いが、三審とも無罪判決が下されたのは極めて希な事例である。

なお、新聞やテレビはほとんど報じていないが、弁護側から「本件殺人放火事件の捜査を目的とした別件逮捕」と批判された詐欺罪についても、一審から上告審まで三度に渡り、無罪とされている[4][5]

補足

最高裁判所によると記録の残る1958年以降に死刑求刑に対して一審で無罪が言い渡されたのは名張毒ぶどう酒事件北方事件高岡暴力団組長夫婦射殺事件に次ぐ4件目である(4件の再審無罪事件を除く)。ただし、名張毒ぶどう酒事件においては二審で逆転有罪で死刑判決が下され最高裁で確定している(現在再審請求中)。

後に死刑求刑事件の土浦一家3人殺害事件で一審における5件目、鹿児島高齢夫婦殺害事件で6件目、平野母子殺害事件で7件目の無罪判決がでた。ただし、土浦一家3人殺害事件は一審で心神喪失とされ無罪だったのに対し、二審では心神耗弱とされ無期懲役が言い渡され、最高裁で確定した。鹿児島高齢夫婦殺害事件は検察側控訴中に被告が病死したため、公訴棄却となった。平野母子殺害事件は一審で無期懲役、二審で死刑判決を受けるも最高裁が差し戻し、差し戻し一審で無罪判決が言い渡された。検察側は控訴したが、高裁は検察の控訴を棄却[6]、検察は上告を断念したため無罪が確定した。

殺人事件で死刑を求刑された被告人に対して一審、二審と続けて無罪が言い渡されたのは本事件で3件目で、過去2件(北方事件、高岡暴力団組長夫婦射殺事件)は検察側が上告を断念した為に無罪判決が確定している。従って一審及び二審での死刑求刑に対して無罪判決が出された刑事事件で検察が上告したのは今回が初のケースとなる。

なお、過去に土田・日石・ピース缶爆弾事件豊橋事件において死刑を求刑された被告人に対し、殺人に関して無罪になったことがあったが、別件での軽微な事件に置いて懲役刑の有罪とされた為、無罪扱いとはなっていない。

脚註

  1. 冤罪FileNo.16完全無罪に二度上訴し、三度も死刑を求めた検察の暴挙!◇『広島殺人放火事件』
  2. 広島の放火殺人、二審も無罪 自白の信用性疑問と高裁 - 共同通信47NEWS 2009年12月19日閲覧
  3. 広島の家族3人殺害、無罪確定へ 死刑求刑で異例”. 日本経済新聞社 (2012年2月25日). 2024年4月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年4月8日閲覧。
  4. 平成21年12月14日・広島高裁判決
  5. 平成24年2月22日・最高裁決定
  6. 大阪母子殺害、高裁も無罪…差し戻し控訴審判決 読売新聞 2017年3月2日

関連項目

外部リンク

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