核 (群論)
正規核
p-核
本節で G は有限群とするが、いくつかの点においては局所有限群や副有限群に一般化される。
定義
素数 p に対して、有限群の p-核 (p-core) は、その最大の正規 p-部分群として定義される。これは、群の任意のシロー p-部分群の正規核、したがって である[3]。G の p-核はしばしば Op(G) で表され、また特に、有限群のフィッティング部分群の定義などに用いられる。同様に、群 G の p′-核 (p′-core) は、その位数が p と互いに素であるような G の最大の正規部分群で、Op′(G) で表される[4]。有限単純群の分類理論等を含めた有限非可解群の文脈では、2′-核をしばしば単に核と呼んで O(G) と書く[4]。このとき、「群の核」と「群の部分群の核」は別な意味ということになるので、少々紛らわしい。また、さらに p′,p-核 Op′,p(G) は、剰余群
として定義される。有限群の場合、p′,p-核は、その唯一の正規 p-冪零部分群になる。
群の p-核を、その唯一の連正規 (subnormal) p-部分群として定義することもできる。p′-核は唯一の最大連正規 p′-部分群であり、p′,p-核は唯一の連正規 p-冪零部分群である。
群の p′-核および p′,p-核は昇 p-列 (upper p-series) の初項になる。素数の集合 {π1, π2, ..., πn+1} に対して、部分群 Oπ1,π2,…,πn+1(G) を
で定義すると、π2i−1 = p′ および π2i = p と取ることにより昇 p-列が形成される。降 p-列も存在する。有限群が p-冪零 (p-nilpotent) であるとは、それが自身の p′,p-核に等しいことをいう。また、有限群が p-可解 (p-soluble) であるとは、それが自身の昇 p-列のいずれかの項と一致することをいう。なお、群 G の昇 p-列の長さを、G の p-長さ (p-length) と呼ぶ。さらに、素数 p に対して、有限群 G が p-束縛 (p-constrained) であるとは、
が成り立つことを言う。
任意の冪零群は p-冪零であり、任意の p-冪零群は p-可解である。任意の可解群は p-可解であり、任意の p-可解群は p-束縛である。群が p-冪零であるための必要十分条件は、それが正規 p-成分 (normal p-complement) でちょうど p′-核に一致するものを持つことである。
特徴
正規核の場合と同様、集合に作用している場合が重要である。p-核および p′-核は、ベクトル空間の上への群の作用を研究するモジュラー表現論において重要である。有限群の p-核は、標数 p の任意の体上の既約表現の核 (kernel) すべての交わりに一致する。一方、有限群の p′-核は、主 p-ブロックに属する通常(複素)既約表現の核すべての交わりに一致する。また、有限群の p′,p-核は標数 p の任意の体上の主 p-ブロックにおける既約表現全ての交わりである。有限群の p′,p-核は、位数が p で割り切れるアーベル主因子 (abelian chief factor) の中心化群全ての交わりとも一致する(アーベル主因子はどれも主ブロックに属する p-元体上の既約表現である)。有限群の場合、p-束縛群が主ブロックに属する標数 p の体上の既約表現となるための必要十分条件は、その群の p′-核が表現の核に含まれることである。
脚注
- 鈴木通夫 (1977), 群論, 上, 岩波書店, p. 62, ISBN 978-4-00-730271-8
- Schmidt, R. (1994), Subgroup Lattices of Groups, Walter de Gruyter, p. 199, ISBN 3-11-011213-2
- Doerk & Hawkes 1992, p. 21.
- Gorenstein, D. (1982), Finite Simple Groups :An Introduction to Their Classification, Springer, p. 32, ISBN 978-1-4684-8499-1
- Aschbacher 2000, p. 158.
参考文献
- Aschbacher, M. (2000), Finite Group Theory (Second ed.), Cambridge University Press, ISBN 0-521-78675-4
- Doerk, K.; Hawkes, T. (1992), Finite Soluble Groups, Walter de Gruyter, ISBN 3-11-012892-6
- Huppert, B.; Blackburn, N. (1982), Finite Groups II, Springer Verlag, ISBN 0-387-10632-4