風俗三十二相
『風俗三十二相』(ふうぞくさんじゅうにそう)は、月岡芳年が1888年(明治21年)、数え50歳の時[1]に発表した浮世絵の連作。大判32枚、目録共33枚揃の美人画錦絵である[2]。江戸時代後期寛政年間から明治時代にかけての様々な年代・年齢・階層の女性を描き、芳年美人画中の傑作・代表作と評価されている[1][3]。版元は日本橋馬喰町の島鮮堂綱島亀吉[2]。
解説

題名と先行作品
「三十二相」とは元々仏教用語で、白毫や後光など、仏に備わる三十二の優れた身体的特徴を指し[4]、転じて女性の容貌や姿形の美しさを指すようにもなった[5]。三十二相を女性の身体特徴になぞらえることは、浮世絵では享保・元文年間の西村重信『三十二相象』等に既に見られ[4]、芳年に直接影響を与えたと考えられる近い時期の作品としては、歌川国貞の『当世三十二相』『今様三十二相』、豊原国周の『当勢三十二想』が挙げられる[4]。また、作品の題材や構図には師である歌川国芳からの学習や模倣も認められる[4]。
構成
32作の題名はいずれも「~さう」(~そう)という女性の様態を示す言葉であり、それに「寛政年間女郎の風俗」のように、描かれた女性の時代と身分を説明する副題が付されている。芳年の制作から百年近く前の寛政年間に始まり、享和・文化・文政・天保・弘化・嘉永・安政と各時代を描き、その後幕末の万延から慶応の約8年間を省略し、明治時代に続いている[6]。江戸時代の女性が23作、明治時代の女性が9作で構成され、過ぎ去った時代への芳年のノスタルジーも込められている[6]。
女性の感情を題材とするという点で、『見立多以尽』(みたてたいづくし)(1877年[明治10年]~1878年[明治11年])はコンセプトを共通する作品である[1][5]。この連作では各作品の題名を「~したい」とし、余白部分に女性の内面を解説する戯文を添えていた。一方、本作では題名以外の解説を廃し、表情と体の動きのみで女性の内面を描写することに挑戦している[1][7]。
作品一覧
目次
1. うるささう
寛政年間処女之風俗
2. しだらなささう
寛政年間京都芸子風俗
3. いたさう
寛政年間女郎の風俗
4. あつたかさう
寛政年間町家後家の風俗
5. ひんがよささう
享和年間官女之風俗
6. けむさう
享和年間内室之風俗
7. つめたさう
文化年間めかけの風俗
8. あつさう
文政年間内室の風俗
9. おもしろさう
文政年間奥女中の風俗
11. さむさう
天保年間深川仲町芸者風俗
13. みたさう
天保年間御小姓之風俗
14. にあいさう
弘化年間廓の芸者風俗
15. めがさめさう
弘化年間むすめの風俗
16. かゆさう
嘉永年間かこゐものの風ぞく
17. むまさう
嘉永年間女郎之風俗
18. かいたさう
嘉永年間おかみさんの風俗
19. じれつたさう
嘉永年間鳶妻 之風俗
20. たのしんでゐさう
嘉永年間師匠之風俗
21. あいたさう
嘉永年間おいらんの婦宇俗
23. にくらしさう
安政年間名古屋嬢之風俗
24. すゞしさう
明治五六年以来芸妓の風俗
25. おきがつきさう
明治年間西京仲居之風俗
26. かわゆらしさう
明治十年以来内室の風俗
27.暗 さう
明治年間妻君の風俗
28. あぶなさう
明治年間当時芸妓の風俗
29. はづかしさう
明治年間むすめの風俗
30. ねむさう
明治年間娼妓の風俗
31. うれしさう
明治稔間当今芸妓之婦宇曽久
32. 遊歩がしたさう
明治年間妻君之風俗
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