4割打者

4割打者(よんわりだしゃ)とは、野球において1シーズンの打率が4割(.400)を超えたことがある打者のこと(規定打席未満の場合は除外)。

概要

リトルリーグ高校野球、大学野球などでは4割を超える打率を残す選手は珍しくない。しかし、プロ野球で4割打者になることは極めて難しい。1試合で回って来る打数は一般に3.63回ほどであるため[1]、4割を達成するには1試合あたり、平均1.452本の安打を打たねばならないことになる。プロでは一般的に3割を維持すれば十分に一流とみなされる。

メジャーリーグでの直近の4割打者は1941年テッド・ウィリアムズにまで遡る。これ以降で4割打者に迫った記録としては、1977年ロッド・カルーが達成した.388、1980年ジョージ・ブレットが達成した.390、1994年トニー・グウィンが達成した.394が挙げられる。もっとも迫った例として2000年トッド・ヘルトンが規定打席に達して4割を超えていたが試合に出場を続け打率を下げてしまっている。また、テッド・ウィリアムズは23歳1か月で4割打者になっており、これは打率4割達成者の最年少記録である。4割打者の中では唯一、タック・ターナーのみがスイッチヒッター(左投げ両打ち)であり、1894年に.418を記録している。

NPBに於いてはランディ・バース1986年に達成した.389が打率のシーズン最高記録[2]であり、いまだに4割を超えた打者は存在しない(詳しくは打率を参照のこと)。1989年ウォーレン・クロマティは規定打席に達した時点で4割を超えていたが、チームが優勝争いをしていたために試合に出続けた結果、打率を下げてしまい4割達成はならなかった。また、2017年には近藤健介がNPB史上初の100打席以上立って、打率4割のままでシーズンを終えたが、規定未達に終わった。

NPBの二軍のイースタン・リーグでは上条皇裕大毎)が1961年に.424[3]鈴木健西武)が1991年に.401の記録を残している。また、国民野球連盟1947年夏季リーグで宇高レッドソックスの茅野秀三が.403を記録している。他、NPB以外の国内独立リーグではベースボール・チャレンジ・リーグ野原祐也富山、後に阪神)が2007年に.412の記録を残し、関西独立リーグ (2代目)(当時・BASEBALL FIRST LEAGUE)の田中耀飛兵庫、後に楽天)が2017年に.422の記録を残した[4][5]。さらに、2020年シーズンの関西独立リーグでは、試合数の激減の影響を強く受け、大橋諒介、小山一樹、花岡洋平の3人が新たに4割打者となった。

分析

テッド・ウィリアムズ以降、メジャーリーグ及び日本プロ野球に4割打者が生まれていない理由として、古生物学者であるスティーヴン・ジェイ・グールド博士は、進化論の観点から以下のような仮説を立てている[6]。グールドは、打率が投手と打者の勝負の結果で決まる相対的な指標であることに注目し、以下のような仮説を立てた。

  • (事実1)レギュラー選手の平均打率は、どの時代でもおおむね2割台後半を維持している。
  • (事実2)レギュラー選手の打率の標準偏差は、時代が進むほど減少している。
  • (推論1)メジャーリーグをプロスポーツとして成立させるために、ルールの細かい改正が行われ、平均打率は一定の範囲内に保たれていた。
  • (推論2)初期のメジャーリーグでは多様な技術が試されたため、打率の標準偏差も大きかったが、最良の結果を残した技術のみが模倣されて多様性が減少したため、打率の標準偏差は減少した。
  • (結論)打者の能力は時代が進むにつれ向上しており、現在ではかつてないほど多くの人数が最良の打者の範疇に近づいている。そのため、最良の打者の打率と平均打率との差が小さくなり、結果的に4割打者は出現しなくなった。

この仮説によると、4割打者が消滅したのは、打者の能力が低下したためではなく、打者の能力が全体的に向上して野球というスポーツが成熟したことの証拠である。

それ以外にも交通手段が飛行機及び新幹線ではなく電車しか使えなかったことで球団によっては長時間の移動を強いられ体力面でハンデがあったこと、ドラフト会議導入前は強い選手が人気球団に集中したことで格差が生じたことも1つの理由として挙げられる。

また4割打者に限らず、出塁率5割、投手の場合は防御率0点台も同じ理由で時代が経つにつれ記録するのが困難になっている。近年では現役中にドーピングで体力増強したバリー・ボンズが2004年に出塁率6割を達成しているが、それ以外ではあと1歩で達成できずに終わっているケースが多くなっている。

歴代4割打者

順位は打率上位順

日本プロ野球

関西独立リーグ (2代目)
順位名前所属打席打率達成年
1小山一樹兵庫ブルーサンダーズ.4362020年
2田中耀飛兵庫ブルーサンダーズ.4222017年
3今田勇大大阪ゼロロクブルズ.4202023年
4花岡洋平06BULLS.4042020年
  • 「大阪ゼロロクブルズ」と「06BULLS」は同一球団。

ほか、規定不足であるが大橋諒介堺シュライクス)が2020年に.490を打った。不足分の打数を足した際の打率は.463となる。

ベースボール・チャレンジ・リーグ
順位名前所属打席打率達成年
1野原祐也富山サンダーバーズ.4122007年
北海道フロンティアリーグ
順位名前所属打席打率達成年
1大橋諒介KAMIKAWA・士別サムライブレイズ.4572023年
2川上智也石狩レッドフェニックス.4122023年
国民野球連盟
順位名前所属打席打率達成年
1茅野秀三宇高レッドソックス.4031947年
日本女子プロ野球機構
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1三浦伊織ウエスト・フローラ.5002014年2回目
2岩谷美里埼玉アストライア.4412017年
3川端友紀イースト・アストライア.4312013年2回目
4大山唯兵庫ディオーネ.40742015年1回目
4大山唯兵庫ディオーネ.40742016年2回目
6三浦伊織ウエスト・フローラ.40712013年1回目
7川端友紀京都アストドリームス.4062011年1回目

メジャーリーグ

1900年以降の近代野球が対象
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1ナップ・ラジョイフィラデルフィア・アスレチックス.4261901年
2ロジャース・ホーンスビーセントルイス・カージナルス.4241924年2回目
3ジョージ・シスラーセントルイス・ブラウンズ.41971922年2回目
4タイ・カッブデトロイト・タイガース.41961911年1回目
5タイ・カッブデトロイト・タイガース.4091912年2回目
6ジョー・ジャクソンクリーブランド・ナップス.4081911年
7ジョージ・シスラーセントルイス・ブラウンズ.4071920年1回目
8テッド・ウィリアムズボストン・レッドソックス.4061941年
9ハリー・ハイルマンデトロイト・タイガース.4031923年
10ロジャース・ホーンスビーセントルイス・カージナルス.40271925年3回目
11ロジャース・ホーンスビーセントルイス・カージナルス.401281922年1回目
12ビル・テリーニューヨーク・ジャイアンツ.401261930年
13タイ・カッブデトロイト・タイガース.40111922年3回目

アメリカメジャーリーグにおいて1900年以降、打率4割が達成されたのは13回、わずか8人の選手によってのみである。また、19世紀の記録も含めた場合でも合計28回であり、19世紀には12人の選手によって15回記録されている。

19世紀、近代野球前の記録
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1ヒュー・ダフィーボストン・ビーンイーターズ.4401894年
2ティップ・オニールセントルイス・ブラウンズ.4351887年
3ロス・バーンズシカゴ・ホワイトストッキングス.4291876年*4回目
4ウィリー・キーラーボルチモア・オリオールズ.4241897年
5タック・ターナーフィラデルフィア・フィリーズ.4181894年
6*フレッド・ダンラップセントルイス・マルーンズ.4121884年
7エド・デラハンティフィラデルフィア・フィリーズ.40961899年3回目
8ジェシー・バーケットクリーブランド・スパイダーズ.40951896年2回目
9サム・トンプソンフィラデルフィア・フィリーズ.4071894年
10ジェシー・バーケットクリーブランド・スパイダーズ.4051895年1回目
11エド・デラハンティフィラデルフィア・フィリーズ.40411895年 2回目
12エド・デラハンティフィラデルフィア・フィリーズ.40401894年 1回目
13ビリー・ハミルトンフィラデルフィア・フィリーズ.4031894年
14ピート・ブラウニングルイビル・カーネルズ.4021887年
15ヒューイー・ジェニングスボルチモア・オリオールズ.4011896年

フレッド・ダンラップは、ユニオン・アソシエーションでの記録。ロス・バーンズはナショナル・アソシエーションも含めた場合の達成回数

ナショナル・アソシエーション(NA)の記録
順位名前所属打席打率達成年達成回数
1リーヴァイ・メイエールフィラデルフィア・アスレチックス.4921871年
2カル・マクヴィーボストン・レッドストッキングス.43131871年
3ロス・バーンズボストン・レッドストッキングス.43121873年3回目
4ロス・バーンズボストン・レッドストッキングス.4301872年2回目
5デイヴイ・フォースボルチモア・カナリーズ.4181872年
6キャップ・アンソンフィラデルフィア・アスレチックス.4151872年
7ロス・バーンズボストン・レッドストッキングス.4011871年1回目

ナショナル・アソシエーションの記録は特殊な扱いを受けているため、詳しくはNAPBBPはメジャーリーグかを参照。

各種記録 (*)は近代野球前の記録
  • 個人最多達成回数 : エド・デラハンティ(*)、タイ・カッブ、ロジャース・ホーンスビーらの3回

NAの記録も含む場合はロス・バーンズの4回が最多)

  • 個人シーズン連続達成記録 : エド・デラハンティ(*)、ジェシー・バーケット(*)、タイ・カッブ、ロジャース・ホーンスビーらの2年連続

(NAの記録も含む場合はロス・バーンズの3年連続が最高)

韓国プロ野球

順位名前所属打席打率達成年
1白仁天MBC青龍.4121982年

台湾プロ野球

順位名前所属打席打率達成年達成回数
1王柏融Lamigoモンキーズ.4142016年
2王柏融Lamigoモンキーズ.4072017年2回目
3蔣智賢中信兄弟エレファンツ.4022016年
4林泓育Lamigoモンキーズ.4002016年

かつて、台湾プロ野球界は2015年から2020年まで「打高投低」リーグだった[7]2016年に台湾プロ野球界は4割打者を次々と生み出し、シーズンのリーグ平均OPSは.850であった[8]。極端な「打高投低」を是正するため、2021年シーズンから、台湾のプロ野球界は、通常のボールよりも反発係数が高く、飛びやすかったボールの反発係数を以前の反発係数に戻した[9]

キューバリーグ(木製バット導入以降)

順位名前所属打席打率達成シーズン達成回数
1オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス.4692003-044回目
2ホセ・アブレイユエレファンテス・デ・シエンフエーゴス.4532010-11
3ミチェル・エンリケストロンヘロス・デ・イスラ・デ・ラ・フベントゥ.4472005-06
4オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス.4312000-011回目
5オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス.4252005-065回目
6オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス.4212002-033回目
7オスマニー・ウルティアレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス.4082001-022回目
8アルフレド・デスパイネアラサネス・デ・グランマ.4042009-10
9ノルリス・コンセプシオンレニャドレス・デ・ラス・トゥーナス.4022001-02
10ミチェル・エンリケストロンヘロス・デ・イスラ・デ・ラ・フベントゥ.4012008-091回目
11ミチェル・エンリケストロンヘロス・デ・イスラ・デ・ラ・フベントゥ.4012010-112回目

脚注

注釈

    出典

    1. タカシ, カネシゲ、規央, 鳥越『プロ野球 令和の最新データで読み解く「この選手がすごい! 」ランキング』辰巳出版、2020年8月。ISBN 978-4-7778-2647-6https://books.google.pt/books?id=mr78DwAAQBAJ&pg=PR2&lpg=PR2&dq=%E4%B8%80%E8%A9%A6%E5%90%88%E5%B9%B3%E5%9D%87%E6%89%93%E6%95%B0&source=bl&ots=4vPkVQ8PQd&sig=ACfU3U2oNlA9hsOS6-qGImEUIQPTLZat0Q&hl=ja&sa=X&ved=2ahUKEwi-0KS0yfr2AhUP3IUKHcFfAisQ6AF6BAgwEAM#v=onepage&q=%E5%B9%B3%E5%9D%87%E6%89%93%E6%95%B0%E3%81%AF3.63&f=false
    2. 打率【シーズン記録】”. NPB. 2022年2月4日閲覧。
    3. 森岡浩 『プロ野球人名事典 1995』(紀伊國屋書店、1995年)122頁。
    4. 選手成績 (PDF) - BASEBALL FIRST LEAGUE
    5. “<ドラフト>楽天5位・田中耀飛外野手(兵庫ブルーサンダーズ)飛距離が持ち味”. 河北新報. (2017年10月27日). http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201710/20171027_14035.html 2017年10月28日閲覧。
    6. スティーヴン・ジェイ・グールド 『フルハウス 生命の全容―四割打者の絶滅と進化の逆説』 早川書房
    7. 2015 Batting Stats”. my.cpblstats.com. 2021年3月31日閲覧。
    8. 2016 Batting Stats”. my.cpblstats.com. 2021年3月31日閲覧。
    9. Rob (2020年9月25日). CPBL To Lower COR Value of Baseball in 2021 Season (英語). CPBL STATS. 2021年3月31日閲覧。

    関連項目

    This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.