CALL4

CALL4(コールフォー)は、東京都新宿区に所在する特定非営利活動法人、および同法人が運営するウェブプラットフォーム。公益訴訟(Public law litigation)[3]の支援を目的とし、クラウドファンディングプラットフォームを中心に活動する[4][5]。また、裁判に関する資料・文書を収集し、ウェブサイトに公開している[6][7][8]

特定非営利活動法人CALL4
国籍 日本の旗 日本
格付 特定非営利活動法人
コード 8011105009785
法人番号 8011105009785
設立日 2018年12月[1]
2021年4月8日(法人認証)[2]
代表者 谷口太規
郵便番号 162-0825
事務所 東京都新宿区神楽坂5-8 恵比寿亭ビル402
外部リンク CALL4

概要・沿革

2015年、弁護士の谷口太規は、貧困家庭の支援活動や地域づくりの理論を学ぶため、フルブライト奨学生としてミシガン大学ソーシャルワーク大学院に留学した。ドナルド・トランプ政権下の米国で市民の期待を背負った司法が行政に対峙する光景を見て、自身も戦うことを決意。帰国後の2018年12月、英米で展開する訴訟専門のクラウドファンディングに着想を得て、弁護士の仲間とともに3人で裁判支援団体を立ち上げた[1][4][9]

2019年1月7日、谷口らは一般社団法人「Citizen's Platform for Justice」を設立[10][11]

同年2月14日、同性カップル13組が、同性間の結婚を認めていない民法と戸籍法の規定は憲法24条及び13条により保障される婚姻の自由を侵害し、憲法14条1項の保障する法の下の平等に違反するとして、国に対し立法不作為を理由とする損害賠償請求訴訟を東京、大阪、札幌、名古屋の4地裁に一斉に提訴した(「結婚の自由をすべての人に」訴訟[12][13][14]。これに呼応するように同日、谷口らは当該裁判を含む「公益訴訟」を支援するためのクラウドファンディングのウェブサイト「CALL4(コールフォー)」を開設した[15][16][17]。サイト名は英語の「call for」(呼びかける)とかけており、市民は立法、行政、司法の三権に対抗する「第4の権力」になれるという思いを込めて付けられた[15]。公益訴訟の内容については後述する

2021年4月8日、東京都より特定非営利活動法人の認証を受けた[2]

2023年3月28日、認定特定非営利活動法人(認定NPO法人)となった[1]

同年7月10日、一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子ら19歳から25歳の男女6人が、選挙に立候補できる年齢が25歳以上か30歳以上に制限されているのは、国民主権などを定める憲法に反するとして、次回統一地方選で被選挙権が行使できることの確認や1人10万円の賠償を国に求め、東京地裁に提訴した[18][19]。主任弁護士は戸田善恭。谷口と亀石倫子も弁護団に加わった[20]。同日、戸田、谷口、亀石らは公共訴訟を主体的に担うプロジェクト「LEDGE」を立ち上げた。代表には亀石が就任した。「LEDGE」は第1号ケースとして、当該訴訟をサポートすると発表した[21]

公益訴訟について

1967年から1971年にかけてフィラデルフィア警察署長を務め、1972年に同市長に就任したフランク・リゾアフリカ系アメリカ人に対し激しい差別を行った。1976年1月21日、合衆国最高裁判所は、市警察による虐待行為が問題になった「リゾ対グード事件」において、控訴裁判所の判決を破棄する判決を下した[22]ハーバード・ロー・スクール教授のエイブラム・チェイズは同判決をもとに、公共訴訟(Public law litigation)の特徴を描き出した。「公共訴訟の対象は、私的権利に関する私人間の争いではなく、公共政策の内容に関する不満である」「訴訟における事実審理は、過去へとさかのぼる司法的なものではなく、将来へと向かう立法的なものである」とチェイズは定義した[3]

ジャーナリストの浜田敬子は谷口太規らを取材した記事の中で、公共訴訟を次のように紹介している[23]

公共訴訟とは個人の権利回復を求めるだけでなく、社会の仕組みを変えることも目指した訴訟だ。これまでに「一票の格差」や「在外日本人選挙権」など当事者が起こした訴訟が広く社会課題への関心を呼び、制度や法律を変える契機にもなってきたことから、「社会を変えるための裁判」だとも評される。最近では同性婚や選択的夫婦別姓制度をめぐる訴訟もそうだ。AERA』2023年7月3日号、朝日新聞出版

関係する主な訴訟

  • 「結婚の自由をすべての人に」訴訟 - 2019年2月14日、日本初の同性婚訴訟が提訴されると同時に、CALL4のウェブサイトも開設された。当該訴訟に対し500万円を超える寄付が集まった。2020年に原告団は10人の専門家[注 1]による意見書を裁判所に提出するが、寄付はその依頼費などに充てられた[15]
    2021年3月17日、札幌地裁は、同性同士の法律婚を認めない民法戸籍法の規定は法の下の平等を定めた憲法14条に違反するとの判決を下した[24]。北海道訴訟弁護団の須田布美子は「意見書を通じて海外の状況も踏まえた客観的な見方を裁判所に提示でき、説得力のある主張が展開できた。CALL4の寄付がなければ、違憲判決を得るのは難しかった」と述べた[15]。2024年3月14日、札幌高裁はさらに踏み込み、前述の規定は憲法24条1項、同2項、14条に違反するとの判決を下した[25]
  • 入管施設カメルーン人男性死亡事件 - 2014年3月30日、茨城県牛久市東日本入国管理センターで、身体の痛みを7時間以上訴えていたカメルーン人男性が放置された末に死亡した。この事件をめぐり、カメルーン在住の母親は2017年9月26日、国と当時のセンター所長を相手取り、1000万円の損害賠償を求めて水戸地裁龍ケ崎支部に提訴した[26]。CALL4のクラウドファンディングにより、判決前に、300人近くから計120万円余の寄付が集まった。弁護団長の児玉晃一弁護士は「いつも自腹で払ってきた医療専門家の鑑定の費用にあてられた」と話した。
    2022年9月16日、水戸地裁は入管施設側の注意義務違反を認め、国に165万円の賠償を命じた[27]
  • ウィシュマさん死亡事件 - クラウドファンディングを立ち上げるとともに、2022年11月23日に名古屋市内で開かれた「1123ウィシュマさん裁判報告・交流集会」のレポートをウェブサイトに掲載[28]
  • 同性パートナーに対する犯罪被害者給付金不支給訴訟 - 2018年7月9日、同性パートナーを殺害された名古屋市在住の男性は、同性を理由に国の犯罪被害給付制度に基づく遺族給付金を不支給とした愛知県公安委員会の裁定は違法として、同県を相手に取り消しを求めて名古屋地裁に提訴した[29]。弁護団には中川重徳永野靖が加わった[30]。CALL4を通じてクラウドファンディングが立ち上がり[31]、経緯を記したコラムもサイトに掲載された[32]
  • 大川原化工機事件 - 2020年3月11日、警視庁公安部は外国為替及び外国貿易法違反の事実で、噴霧乾燥器メーカーの大川原化工機株式会社の代表取締役、常務取締役、相談役の3人を逮捕した。代表取締役らは一貫して無罪を主張するも、保釈は認められず、その間に相談役は進行胃がんと診断され入院した。2021年2月5日、代表取締役と常務取締役は11か月ぶりに釈放され、同年2月7日、相談役は病死した。同年7月30日、検察官は公訴の取り下げを申し立て、裁判は終結した[33]。同年9月8日、代表取締役らは国と東京都に計約5億6500万円の損害賠償を求めて東京地裁に提訴。また、法律の上限となる計1127万5000円の刑事補償請求も申し立てた[34]。CALL4は弁護団が主催するクラウドファンディングや、代表取締役らへの取材記事をウェブサイトに掲載した[35][36]
    2023年12月27日、東京地裁は国と東京都にあわせて1億6200万円余りの賠償を命じる判決を下した[37]
  • 岡口基一弾劾裁判 - 2021年6月16日、裁判官訴追委員会は、岡口基一裁判官が行ったSNSの投稿をめぐり、岡口の罷免を求めて裁判官弾劾裁判所への訴追を行うと決定した[38]。同年7月29日、岡口の職務停止が決定[39]。弁護団は西村正治(主任弁護士)、伊藤真、田鎖麻衣子ら9人の弁護士で構成される[40]。弁護士の亀石倫子、社会学者の千田有紀ら5人は、弁護団をサポートするためのクラウドファンディングをCALL4を通じて立ち上げた。寄付は2023年7月時点で目標額の100万円を突破している[41]
  • 立候補年齢引き下げ訴訟 - 2023年7月10日、一般社団法人「NO YOUTH NO JAPAN」代表理事の能條桃子ら19歳から25歳の男女6人が、18歳で成人するにもかかわらず、公職選挙法が選挙に立候補できる年齢を25歳や30歳と定めていることは憲法に違反するとして、国を相手取り、次回統一地方選で被選挙権が行使できることの確認や1人10万円の賠償を国に求める訴訟を東京地裁に起こした[18][19]。同日、原告はCALL4を通じてクラウドファンディングを立ち上げた[42]

裁判アーカイブプロジェクト

CALL4は関係する訴訟の裁判記録をPDF化してウェブサイトに随時公開しているが、それとともに、過去の著名な公共訴訟の記録の収集も行っている。「裁判アーカイブプロジェクト」と銘打ち、インターネット上で募集し、公開している[6]。これまでに掲載された主な訴訟・事件の記録は下記のとおり。

脚注

注釈

  1. 10人の氏名は以下のとおり。鈴木賢木村草太二宮周平、谷口洋幸、河口和也風間孝赤枝香奈子駒村圭吾、大野友也、渋谷秀樹[7]

出典

  1. 運営組織”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  2. 法人・団体情報詳細 CALL4”. 東京生活文化スポーツ局. 東京都. 2023年6月14日閲覧。
  3. 大沢秀介「公共訴訟の概念をめぐる最近の動向」『慶應義塾創立一二五周年記念論文集 : 法学部政治学関係』、慶應義塾大学法学部、1983年、325-344頁、2023年10月3日閲覧
  4. クラファンで公共訴訟を後押しするCALL4 「裁判で社会は変わる」と語る代表・谷口太規弁護士の思いは”. 東京新聞 (2022年10月2日). 2023年7月10日閲覧。
  5. 国・行政との裁判、CFで支援 「共感を力に」若手弁護士ら成果”. 毎日新聞 (2023年1月10日). 2023年7月10日閲覧。
  6. 裁判アーカイブプロジェクト”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  7. 結婚の自由をすべての人に訴訟(同性婚訴訟)”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月3日閲覧。
  8. マクリーン事件【アーカイブケース】”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  9. 弁護士法人東京パブリック法律事務所代表 NPO法人CALL4代表理事 谷口太規氏”. リクルートマネジメントソリューションズ (2022年5月16日). 2023年7月10日閲覧。
  10. 社会を変える「みんなの訴訟」を作ろう 支援プラットフォーム「Call4」運営弁護士の思い”. 弁護士ドットコム (2019年5月31日). 2023年7月10日閲覧。
  11. 一般社団法人Citizen's Platform for Justiceの企業情報(東京都新宿区)”. 全国法人情報データベース. 2023年7月10日閲覧。
  12. 北沢拓也、山下知子 (2019年2月14日). “「同性婚認めないのは違憲」 13組、国を一斉提訴”. 朝日新聞. https://www.asahi.com/articles/ASM2F6R1TM2FUTIL074.html 2021年3月17日閲覧。
  13. 「結婚の自由をすべての人に」北海道訴訟弁護団 (2021年3月17日). 「結婚の自由をすべての人に」北海道訴訟判決についての弁護団声明”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月1日閲覧。
  14. 「結婚の自由をすべての人に」訴訟東京弁護団 (2022年11月30日). 「結婚の自由をすべての人に」東京地裁判決についての弁護団声明”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年6月1日閲覧。
  15. 遠山和宏 (2023年1月10日). 一市民だって国に勝てる CFで訴訟 「共感」味方に拡大”. 毎日新聞. 2023年6月5日閲覧。
  16. 佐藤倫子 Twitter 2019年2月14日 午後1:43”. 2023年6月3日閲覧。
  17. CALL4|社会課題の解決を目指す“公共訴訟”プラットフォーム
  18. 金森崇之 (2023年7月10日). 立候補年齢の引き下げ求め、10~20代が提訴 東京地裁”. 毎日新聞. 2023年7月10日閲覧。
  19. 太田理英子 (2023年7月11日). 「立候補の年齢制限を引き下げて」10〜20代の6人が「被選挙権」求め提訴 選挙権と年齢異なる理由は?”. 東京新聞. 2023年7月12日閲覧。
  20. 谷口太規、井桁大介、亀石倫子、西愛礼、戸田善恭 (2023年7月10日). 訴状”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月12日閲覧。
  21. 日本初の公共訴訟を支える専門家集団「LEDGE」創立”. PR TIMES (2023年7月10日). 2023年7月12日閲覧。
  22. Althouse, Ann (1987). “How to Build a Separate Sphere: Federal Courts & State Power”. Harvard Law Review 100 (4): 1528-1529. doi:10.2307/1341229. JSTOR 1341229. https://media.law.wisc.edu/m/mtfdy/althouse_how_to_build_a_separate_sphere_100_harv.pdf.
  23. 浜田敬子 (2023年7月2日). 社会を変える“武器”としての「公共訴訟」 声なき声を社会に反映させる仕組みを”. AERA dot.. 2023年7月12日閲覧。
  24. “同性婚の不受理、初の違憲判断 札幌地裁「差別的扱い」”. 朝日新聞. (2021年3月17日). https://www.asahi.com/articles/ASP3K3F63P3JIIPE02H.html 2021年3月17日閲覧。
  25. 石垣明真 (2024年3月14日). 同性婚を認めない規定は「違憲」 札幌高裁判決 初めての高裁判断:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2024年3月17日閲覧。
  26. カメルーン人男性死亡事件国賠訴訟”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月13日閲覧。
  27. カメルーン人男性収容死 国に165万円賠償命令 水戸地裁”. 毎日新聞 (2022年9月16日). 2022年9月30日閲覧。
  28. 塚田恭子 (2022年12月30日). ウィシュマさん裁判報告・交流集会レポート”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  29. 犯罪被害給付金:「同性パートナーも配偶者」と提訴”. 毎日新聞 (2018年7月9日). 2023年7月12日閲覧。
  30. 堀江哲史、長谷川桂子、岡村晴美、倉知孝国、矢﨑暁子、浦野智文、進藤一樹、大畑泰次郎、中川重徳永野靖、山下敏雅、水谷陽子 (2020年8月5日). 控訴理由書”. 2023年7月10日閲覧。
  31. 「同性パートナーにも犯罪被害の遺族給付金を」訴訟”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月13日閲覧。
  32. 丹山美祐 (2021年4月7日). 「同性同士を事実婚と認めない?」社会通念というブラックボックス”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月13日閲覧。
  33. 大川原化工機事件”. 日本弁護士連合会. 2023年7月10日閲覧。
  34. 初公判直前の地検起訴撤回で「甚大な損害」、精機メーカー社長らが賠償求め提訴”. 読売新聞 (2021年9月8日). 2023年7月10日閲覧。
  35. 大川原化工機事件 〜無実で約1年勾留「人質司法」問題をただす〜”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  36. 原口侑子 (2022年1月12日). 一点の曇りもないと黙秘をし、身柄拘束され続けた331日間”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  37. 「大川原化工機」不正輸出めぐるえん罪事件 捜査は違法 国と都に賠償命じる判決”. NHK (2023年12月27日). 2023年12月29日閲覧。
  38. 阿部峻介 (2021年6月16日). 仙台高裁判事の罷免を審理へ SNSで不適切投稿:朝日新聞デジタル”. 朝日新聞デジタル. 2021年6月16日閲覧。
  39. 岡口判事の職務停止 訴追受け弾劾裁判所 時事通信
  40. 西村正治、伊藤真、大賀浩一、岡田浩志、小倉秀夫、児玉晃一、田鎖麻衣子、野間啓、前田領 (2022年3月2日). 訴追事由に対する弁護人意見”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  41. 司法の独立を脅かす岡口裁判官の罷免訴追に反対します!弾劾裁判の弁護団にご支援を”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  42. 立候補年齢引き下げ訴訟”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  43. 在外選挙権確認訴訟【アーカイブケース】”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  44. レペタ訴訟【アーカイブケース】”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  45. 日米合同委員会議事録情報公開訴訟【アーカイブケース】”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。
  46. ベトナム人技能実習生リンさんの死体遺棄罪刑事事件【アーカーブケース】”. 特定非営利活動法人CALL4(コールフォー). 2023年7月10日閲覧。

関連項目

外部リンク

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