アオギリ

アオギリ(青桐[5]・梧桐[5]学名: Firmiana simplex)は、アオイ科[注 1]アオギリ属落葉高木。別名ではケナシアオギリ[1]ともよばれる。和名の由来は、キリ科キリ(桐)が「白桐」とよぶのに対して、幹肌が青緑色で大きな葉がつく様子がキリに似ることから名付けられている[6][7][8]。中国名の梧桐(ごとう)も日本ではよく知られている[8]。公園樹、街路樹に利用される。

アオギリ
Firmiana simplex
Firmiana simplex
(2004年8月12日)
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : 真正バラ類II eurosids II
: アオイ目 Malvales
: アオイ科 Malvaceae
亜科 : Sterculioideae
: アオギリ属 Firmiana
: アオギリ F. simplex
学名
Firmiana simplex (L.) W.F.Wight (1909)[1]
シノニム
和名
アオギリ、ケナシアオギリ
英名
Chinese parasol tree

分布

中国南部・東南アジア原産。日本では沖縄奄美大島に自然分布し[9]、日本国外では中国、台湾インドシナに分布する[6]。暖かい地域の沿岸地に生える[10][11]。日本へは極めて古くに渡来し、広く各地に植えられて本州四国九州にも分布し[12][7]伊豆半島紀伊半島などの暖地に野生化した状態でみられることもあるが[6]、多くは街路樹庭木などにして植えられる[9]

形態・生態

落葉広葉樹の高木で[9]、樹高は10 - 20メートル (m) になり、幹は直立する[6][8][5]。幹や枝の樹皮緑色で、小枝は太い[9]。若木の樹皮は緑色で滑らかだが、生長と共に灰褐色を帯びて縦に浅い筋が入るようになる[5]。春に芽吹いて、赤色の芽を勢いよく伸ばしていく[12]

互生し、大きな葉身に長い葉柄がついて全体の長さは40 - 50センチメートル (cm) にもなり[12]、葉身は薄く形で掌状に浅く3 - 5裂(ふつう5裂)する[9][11]。葉身の基部は心臓形で、縁に鋸歯はない[11][12]。芽吹きはじめの葉は大きく、幼葉の表面、葉枝に淡い赤茶色の軟らかい毛があり、よく目立つ[9][5]。秋には黄色に紅葉し、柄つきのまま落葉する[12]。紅葉はやや薄い黄色に色づき、褐色を帯びるのが比較的早い[11]

花期は初夏から夏(5 - 7月)で[6]、枝先に大形の円錐花序を出して[13]、黄白色の雄花と赤色の雌花が混じり、5弁の小花を群生する[9][14]がく片は5個で、花弁はない。

果実蒴果で草質、秋(9 - 10月ころ)に熟すが、完熟前に子房が5片に裂開し、それぞれ1片の長さが7 - 10 cmほどある舟の形のような裂片(心皮)になる[8]。その葉状の舟形片の縁辺に、まだ緑色のエンドウマメ(グリーンピース)くらいの小球状の種子を1 - 5個ほど付ける[6][13]種子は球形で径4 - 6ミリメートル (mm)、のちに黄褐色から茶色に変化し、表面に皺があり硬い[9][13]。冬でも、さやが割れて縁に丸い種子を付けた実を見ることができる[5]

冬芽は枝の先端に頂芽を1個つけ、側芽は互生する[10]。頂芽は径8 - 15 mm ほどある大きな半球形で、ビロード状の赤茶色の毛が密生した10 - 16枚の芽鱗に包まれている[10][5]。側芽は球形で小さく、枝に互生する[5]。葉痕上部に托葉痕がある[5]。葉痕はほぼ円形で大きく、小さな維管束痕が多数ある[10][5]

よく水を吸い上げて、火に強い性質がある[7]。生命力が強く、潮水や潮風などの塩害や、大気汚染にもよく耐える[8]

利用

庭木公園樹街路樹にする[10][13]。アオギリが庭木や街路樹によく使われるのは、その耐火性にあり、過去の震災においても火災の延焼を食い止めた例もたくさんあった[8]。樹皮の繊維は強健で、粗布や縄の材料にする[8]。まっすぐな幹は建材などに用いられ[6]、材を楽器下駄などとするが、耐久性は低い[8]。種子は古くは食用にされ、太平洋戦争中には炒ってコーヒーの代用品にした。

栽培は、主に春に発芽前の若枝を長さ30センチメートル (cm) ほどに切って、挿し木して育成される[9]

種子は梧桐子(ごどうし)と呼ばれる生薬として用いられ、胃痛下痢の薬効作用がある[9]。葉は浮腫高血圧コレステロールの低下などの民間薬として用いられ、初夏に採って洗い、陰干ししたものを10 - 15グラムを水500 ccで煎じ、服用する用法が知られている[9]

文化

広島平和記念公園の「被爆アオギリ

中国の伝説ではアオギリの枝には12枚の葉がつくが、閏月のある年には13枚つくといわれた[15]。また中国では鳳凰が住む樹とされた[16]伏羲がはじめて桐の木を削って古琴を作ったという伝説がある(ただしアオギリかキリか不明)[17]

中国人の季節感と深い関係があり、七十二候のひとつに「桐始華」(清明初候)がある。またアオギリの葉が色づくのは秋の代表的な景色であり、王昌齢「長信秋詞・其一」に「金井梧桐秋葉黄」の句がある。また白居易長恨歌」には「秋雨梧桐葉落時」という。

日本では、広島の「被爆青桐」は有名で、爆心地から1.3キロメートルの地点で被爆して半身が焼け焦げたが、再び芽を出して人々に勇気を与えた[8]平和記念公園に移植されて、焼けた傷を包み込むように生長を続け、毎年多くの種子を成し、平和を願う生命力のシンボルとしてその種子が全国に配られる[8]

アオギリの花言葉は、「秘めた意思」「秘めた恋」とされる[8]

アオギリ属

アオギリ属(アオギリぞく、学名: Firmiana)は、アオイ科の一つ。

脚注

注釈

  1. 最新の植物分類体系であるAPG体系ではアオイ科(Malvaceae)に分類されるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではアオギリ科(Sterculiaceae)に分類されていた[1]

出典

  1. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Firmiana simplex (L.) W.F.Wight アオギリ(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年1月2日閲覧。
  2. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Firmiana platanifolia (L.f.) Schott et Endl. f. tomentosa (Thunb.) H.Hara アオギリ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2023年1月2日閲覧。
  3. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Firmiana simplex (L.) W.F.Wight var. glabra Hatus. アオギリ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年1月2日閲覧。
  4. 米倉浩司・梶田忠 (2003-). Firmiana platanifolia (L.f.) Schott et Endl. アオギリ(シノニム)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2024年1月2日閲覧。
  5. 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2014, p. 100.
  6. 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 142.
  7. 辻井達一 2006, p. 127.
  8. 田中潔 2011, p. 132.
  9. 馬場篤 1996, p. 9.
  10. 菱山忠三郎 1997, p. 124.
  11. 林将之 2008, p. 64.
  12. 亀田龍吉 2014, p. 60.
  13. 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文 2012, p. 117.
  14. 菱山忠三郎 1997, p. 125.
  15. 埤雅 巻14・釈木・桐https://archive.org/stream/06050594.cn#page/n54/mode/2up。"旧説、梧桐以知日月正閏。生十二葉、一辺有六葉。従下敷一葉為一月。有閏則生十三葉。視葉小者、則知閏何月。不生、則九州異君。"。
  16. 詩経』大雅・巻阿に「鳳凰鳴矣、于彼高岡。梧桐生矣、于彼朝陽。」とある。また『荘子』秋水篇に鳳凰は梧桐の木にしかとまらないと言う。
  17. 太平御覧 巻579・琴下http://ctext.org/library.pl?if=gb&file=80608&page=40。"『琴書』曰昔者至人伏羲氏王天下也(中略)削桐為琴。"。

参考文献

  • 亀田龍吉『落ち葉の呼び名辞典』世界文化社、2014年10月5日、60頁。ISBN 978-4-418-14424-2。
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『草木の種子と果実』誠文堂新光社〈ネイチャーウォッチングガイドブック〉、2012年9月28日、117頁。ISBN 978-4-416-71219-1。
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、100頁。ISBN 978-4-416-61438-9。
  • 田中潔『知っておきたい100の木:日本の暮らしを支える樹木たち』主婦の友社〈主婦の友ベストBOOKS〉、2011年7月31日、132頁。ISBN 978-4-07-278497-6。
  • 辻井達一『続・日本の樹木』中央公論新社〈中公新書〉、2006年2月25日、127 - 130頁。ISBN 4-12-101834-6。
  • 馬場篤『薬草500種-栽培から効用まで』大貫茂(写真)、誠文堂新光社、1996年9月27日、9頁。ISBN 4-416-49618-4。
  • 林将之『紅葉ハンドブック』文一総合出版、2008年9月2日。ISBN 978-4-8299-0187-8。
  • 菱山忠三郎『樹木の冬芽図鑑』主婦の友社、1997年1月7日、124 - 125頁。ISBN 4-07-220635-0。
  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、142頁。ISBN 4-522-21557-6。
  • 茂木透写真『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、554頁。ISBN 4-635-07004-2。
  • 多田多恵子『身近な草木の実とタネハンドブック』文一総合出版、2010年、35頁。ISBN 978-4-8299-1075-7。

関連項目

外部リンク

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