クラカケヒラアジ属

クラカケヒラアジ属(Chloroscombrus )は、アジ科に属し現存2の海水魚を含むである。タイプ種クラカケヒラアジ(C. chrysurus )。東西大西洋と東太平洋の沿岸域でみられる。腹側が丸みを帯びた特徴的な体型や、尾柄にある鞍状の暗い斑点から他属の魚類と区別できる。世界的には漁業においてそれほど重要な種は含まないが、一部地域では主要な食料となっている種もある。

クラカケヒラアジ属
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 条鰭綱 Actinopterygii
: スズキ目 Perciformes
亜目 : スズキ亜目 Percoidei
上科 : スズキ上科 Percoidea
: アジ科 Carangidae
: クラカケヒラアジ属 Chloroscombrus
学名
Chloroscombrus
Girard, 1858
タイプ種
クラカケヒラアジ
Chloroscombrus chrysurus
英名
Bumper
Bumperfish
本文参照

分類

クラカケヒラアジ属[1](Chloroscombrus )は現存の2を含むである。スズキ目アジ科に属する[2]。分子情報を用いた近年の系統学の研究により、本属はアジ亜科に含められた[3]。最新の系統学の研究の成果によれば、本属はモンツキヒラアジ属(Hemicaranx )、メアジ属(Selar )、ホソヒラアジ属(Selaroides )、そしておそらくマブタシマアジ属(Alepes )に非常に近縁であり、それらの属がアジ亜科の中でひとつのクレードを作るという。またこの研究ではクラカケヒラアジ属の単系統性も強く支持されている[4]

本属はフランス博物学者シャルル・フレデリック・ジラールによって1858年に、彼が見つけた「新種」のChloroscombrus caribbaeus を収容するための新属として、その種をタイプ種として創設された[5]。その後デイビッド・スター・ジョーダンCharles Henry Gilbertは、おそらくC. carribaeus のタイプ標本が紛失してしまったために、Micropteryx cosmopolita を本属のタイプ種として改めて指定した。この種が現在でも本属のタイプ種として認められている[6]。しかしながら、どちらの学名も1766年にリンネが記載していたScomber chrysurus クラカケヒラアジ)の後行シノニムであることが後に判明し、現在では実質的に本属のタイプ種はクラカケヒラアジ(Chloroscombrus chrysurus )ということになっている。なおChloroscombrus という属名は、ギリシャ語で「緑色」を意味するchloros と、同じくギリシャ語で「魚」、特に「サバ」を意味するskombros を組み合わせたものである[7]

本属に属する種の化石記録はない。

現在では2種がみとめられている。両種は同種である可能性もあるが、そのような関係の真偽を確認するための研究はまだ行われていない[8]

形態

両種ともに小型から中型の種であり、それぞれの最大体長は全長で約30cm(C. orqueta )[9]、約60cm(クラカケヒラアジ)である[10]。他属の魚類からは容易に識別できるが、太平洋に生息するC. orquetaメアジ(Selar crumenophthalmus )との混同が起こる可能性がある[11]。本属の種を他属の種から区別する特徴のひとつとして腹側輪郭が背側輪郭よりもふくらんでいることがあり、そのため本種は腹側が丸みをおびた特徴的な体型をしている。その他の外見上の特徴として尾柄上部に鞍状の黒斑があること、斜めに開いた口、瞳孔の直径が比較的小さいことなどがある[12][13]。その他の形態上の特徴は他のアジ科魚類と類似している。背鰭は二つの部分に分かれ、第一背鰭は8棘、第二背鰭は1棘、25-29軟条である。臀鰭には前方に2本の遊離棘があり、それを除けば1棘、25-29軟条である[13]側線は前方でゆるやかに湾曲し、直線部には6から16の稜鱗ぜいご)がわずかに発達する。胸に無鱗域はなく、両顎には細かい絨毛状歯からなる歯列が存在する[12]

体色は両種ともに全体的に銀色であり、背側は青緑色から暗い金属光沢をもった青色になる。C. orqueta には鰓蓋上縁にはっきりとした暗色の斑が存在するが、クラカケヒラアジには存在しない[12][13]

分布

カメルーンで漁獲されたクラカケヒラアジ(C. chrysurus )

本属の二種の分布域は東西大西洋、東太平洋の熱帯温帯域に限定されている。クラカケヒラアジは大西洋のアメリカ東岸とアフリカヨーロッパ西岸の両方に生息する[13]一方、C. orqueta は東太平洋の中央アメリカ沿岸に生息する[12]

両種ともに群れを形成する沿岸性の魚類で、大陸棚の付近で漂泳性の生活を送っている。浜やラグーンエスチュアリーなどの浅い海域でよくみられる。外洋でもまれにみられ、その際はふつうクラゲなどの浮遊物体のそばにいるのがみられる[12][13]

生態

本属の二種はともに肉食魚で、魚類、頭足類動物プランクトンなどを含む様々な小型生物を捕食対象とする。稚魚は成魚よりもプランクトンを捕食する傾向が強い[10]。両種の繁殖や仔魚の発生過程については研究が進んでいないが、稚魚はしばしば外洋で発見される[13]

人間との関係

どちらの種についても特にその種を狙った漁業は行われていないが、トロール漁地引き網延縄などで漁獲されることがあり、鮮魚、あるいは塩漬けや、冷凍された状態で市場で販売される[12][13]。どちらの種も特に釣りの対象とはならないが、時々外道として捕獲される[11]。食用としては淡白な味とされる[13]が、クラカケヒラアジはアフリカの一部で主要な食料とみなされている[14]

出典

  1. 松浦啓一 (1983年). クラカケヒラアジ(新称)”. スリナム・ギアナ沖の魚類. 独立行政法人 水産総合研究センター 開発調査センター. 2015年11月14日閲覧。
  2. "Chloroscombrus" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2008年1月29日閲覧
  3. Zhu, Shi-Hua; Zheng, Wen-Juan; Zou, Ji-Xing; Yang, Ying-Chun; Shen, Xi-Quan (2007). “Molecular phylogenetic relationship of Carangidae based on the sequences of complete mitochondrial cytochrome b gene”. Acta Zoologica Sinica 53 (4): 641–650.
  4. Reed, David L.; Kent E. Carpenter; Martin J. deGravelle (2002). “Molecular systematics of the Jacks (Perciformes: Carangidae) based on mitochondrial cytochrome b sequences using parsimony, likelihood, and Bayesian approaches”. Molecular Phylogenetics and Evolution 23 (3): 513–524. doi:10.1016/S1055-7903(02)00036-2. PMID 12099802.
  5. Girard, C.F. (1858). “Notes upon various new genera and new species of fishes, in the museum of the Smithsonian Institution, and collected in connection with the United States and Mexican boundary survey: Major William Emory, Commissioner”. Proceedings of the Academy of Natural Sciences of Philadelphia 10: 167–171.
  6. Jordan, D.S.; C.H. Gilbert (1883). “Synopsis of the fishes of North America”. Bulletin of the United States National Museum 16 (i–iiv): 1–1018.
  7. Froese, Rainer, and Daniel Pauly, eds. (2009). "Carangidae" in FishBase. May 2009 version.
  8. Froese, Rainer, and Daniel Pauly, eds. (2013). Species of Chloroscombrus in FishBase. February 2013 version.
  9. Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2009). "Chloroscombrus orqueta" in FishBase. April 2009 version.
  10. Froese, Rainer and Pauly, Daniel, eds. (2009). "Chloroscombrus chrysurus" in FishBase. April 2009 version.
  11. Mexfish (2006年). Pacific Bumperfish”. Photos and Species Information for Fish Caught in Mexico. 2009年5月30日閲覧。
  12. Fischer, W.; Krupp F.; Schneider W.; Sommer C.; Carpenter K.E.; Niem V.H. (1995). Guía FAO para la identificación de especies para los fines de la pesca. Pacífico centro-oriental. Volumen II. Vertebrados - Parte 1.. Rome: FAO. pp. 953. ISBN 92-5-303409-2. http://www.fao.org/fishery/sidp/3,1/en#Ecp
  13. Carpenter, K.E. (ed.) (2002). The living marine resources of the Western Central Atlantic. Volume 3: Bony fishes part 2 (Opistognathidae to Molidae), sea turtles and marine mammals. FAO Species Identification Guide for Fishery Purposes and American Society of Ichthyologists and Herpetologists Special Publication No. 5. Rome: FAO. pp. 1438. ISBN 92-5-104827-4. ftp://ftp.fao.org/docrep/fao/009/y4162e/y4162e00.pdf
  14. David O’Connor; Randy Olson (Photograph) (2007年4月). 手元に残らない魚”. 特集 シリーズ地球の悲鳴 魚が消えた海. ナショナルジオグラフィック日本語版. 2015年11月14日閲覧。
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