クースクリド・メン

クースクリド・メンアイルランド語: Cúscraid Mend Macha[1]; 異綴り Cumscraid[2]) (発音ガイド: /'ku:skrid m'eN 'maxa / (Maier 1997) /cŏŏs'crĭ/ (Cross & Slover 1936) /KOOS-kridh/ (Paddy Brown)[3]) は、「メン」=「どもり(吃音症)」または「唖者」の異名をとるアルスター伝説の戦士で、アイルランド神話の登場人物。アルスターの王コンホヴァル・マク・ネサの王子。兄のコルマク・コン・ロンガスに次ぐ王位後継者に認められた。綽名は、「メン・マハ」(「アルスター王都エヴァン・マハのどもり男」の意)ともつくる。

国では若者が武具装備帯刀を許される年齢になると、宿敵国コナハトに(単独ではなく仲間をひきつれて)行って、敵国人を一人の討ち取ってくるしきたりであった。しかしクースクリドはこの通過儀礼をおこなう際、強敵 ケト・マク・マーガハによって負傷し、言葉の自由を失った。説明は二通りあって委細が異なる。

古典の人名由来集によれば、口(を襲った武器に)より、舌の先端を失って「メン(唖者/吃音者)」となったとされる[4])。

別の短編物語によれば、初武装(初陣)[5]のとき、国境近くでケトと遭遇し、仲間の1/3を置き去りにして逃げたが、槍で喉をつかれ、喉の筋を損傷して正しく言葉を発音できなくなった[6][7]

また、ある短編のなかでは、クースクリド、クー・フリンコナル・ケルナハの三人を思い慕うアルスターの女性たちは、その愛情ありあまり、彼らにそなわる不具までも、そっくり真似て見せたと記されている。すなわち、クースクリド熱愛者はそのどもりを真似、コナル・ケルナハ心酔者は(背筋/首筋が?)ひん曲がった歩行をなぞり、クー・フリン支持者はその容体をゆがませた狂戦士状態(アイルランド語: ríastrad; 英訳:battle fury, warp spasm)に模して片目が見えないふりを装った[8]

後年、コンホヴァルの死後、アルスターの臣民はまず、長子のコルマク・コン・ロンガスを王として奉戴しようとしたが、帰途につく途中で戦死した。そこで従兄弟コナル・ケルナハに王位を継がせる意見もでたが、コナルは自分の里子として養育したクースクリドを推したので、クースクリドがアルスター王に即位した[9]

クースクリドは、「勝利の」を意味するコスグラハ (アイルランド語: Coscrach)という盾または剣をもつ[10]。さらには、『クアルンゲの牛捕り』では、 クースクリドの槍が「蝋燭」を意味するカネル(?)(現代発音 キニェル アイルランド語: Caindel, Cainnel)と呼ばれているふしがあるが、単に「蝋燭(松明)のようにまばゆい」とも解釈される[11]

ほんの噂ほどの記述だが、クースクリドは、ルーン(ルイン)の凶刃に倒れたという記述がある[12]

脚注

  1. 『マク・ダトーの豚の話』 Chadwick 1927編訳本や、その他作品にみられる標準綴り
  2. 『マク・ダトーの豚の話』異本Meyer 1894, pp. 51–64編訳本, The Story of Mac Dáthó's Pig and Hound, ¶14
  3. Paddy Brown. The Ulster Cycle”. 2012年2月10日閲覧。(個人サイト)
  4. 『コール・アンマン(名字義)』:Stokes 1897, pp. 404–5 編訳 Coire Anmann, #279 Cuscraid Mend Macha ('the Dumb of Macha'):"Cet wounded Cuscraid through his mouth, and shore off the point of his tongue.."
  5. cetgaihaiscedh=cet "first-" + "weapon; feat with arms" eDIL
  6. 『マク・ダトーの豚の話』 Story of Mac Da Thó's Pig, Chadwick 1927, ¶14(p.13 原文, p.21 英訳); Meyer 1894, ¶14 (p.54 原文 p.61 英訳) "Thou (left) with a spear through thy throat so that no word comes rightly over thy lips,.."
  7. 前述『コール・アンマン(名字義)』#278 によれば、ケトが喉を怪我させ言語障害者にさせた相手は、サール=ホルグの息子メンであった("..Mend son of Sál-cholg 'Heel-sword' in the throat")
  8. クー・フリンの衰弱』。英訳: Leahy 1905, HRI, p.58, "each woman who loved Cuscraid Mend, .. stammered in her speech"
  9. 『アルデフの戦い』(?) Best 1915編訳本 The Battle of Airtech
  10. コンホヴァルの話』。Stokes 英訳や O'Curry 訳では盾とみなすが、Kinsella 英訳 The Tain, p.5 では "Cúscraid's triumphant sword Coscrach"として剣に見立てる。
  11. Kinsella 英訳 The Tain, p.226, "a great spear in his hand like a palace-torch"
  12. Stokes 編訳 "On the Deaths of Some Irish heroes" Revue Celtique 23, p. 308(第16詩節)。ルーン (槍)の項目参照

参考文献

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.