チョウセンゴミシ

チョウセンゴミシ(朝鮮五味子、学名: Schisandra chinensis)は、マツブサ科マツブサ属に属する植物の1種である。落葉性つる性木本であり、雌雄異株、5–7月頃に黄白色の花をつける(図1上)。果実は赤い液果で房状につき(図1下)、五味子ごみし[注 1]とよばれて薬用 (滋養、強壮、鎮咳) に用いられる。日本を含むアジア北東部に分布する。

チョウセンゴミシ

1. チョウセンゴミシの (上) と果実 (下)
分類
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 Angiosperms
: アウストロバイレヤ目 Austrobaileyales
: マツブサ科 Schisandraceae
: マツブサ属 Schisandra
: チョウセンゴミシ S. chinensis
学名
Schisandra chinensis (Turcz.) Baill., 1868[1][2]
シノニム

名称

ゴミシ(五味子)の名は、果実が甘味酸味辛み苦味かん塩味)をもつことから名付けられた[3][4][5]江戸時代生薬として朝鮮半島から輸入されていたため、チョウセンゴミシとよばれるようになった[5]。日本には産しない植物であると考えられていたが、輸入された五味子から得られた種子を平賀源内がお薬園で栽培し、これと同じ植物が日本にも自生していることが明らかとなった[3][5]。陶穀の『清異録』には「六亭劑」の別名がある[6]

特徴

落葉性つる性木本であり、つるは左巻き[7][4][8]互生し、長枝には互いに離れてつき、短枝にはまとまってつく[4][8] (下図2a, b)。葉身は倒卵形から楕円形、4–10 x 2–6 cm、先端は鋭尖頭、基部は広いくさび形、葉縁には5–16個の波状鋸歯がある[1][7][4][8]葉脈の側脈は3–7対[1][8]。葉の表面は黄緑色で無毛、葉脈の部分がくぼんでおり、裏面は淡緑色で葉脈上に毛がある[7][4][8] (下図2c)。葉柄は長さ 1–4 cm (葉身の長さの半分以下) であり、平滑[7][4][8][9]冬芽は長卵形、長さ 3–6 mm、葉痕は円形から半円形[4]

2a. 長枝と葉
2b. 短枝にまとまってついた葉 (つぼみをつけた花柄が伸びている)
2c. 葉: 表面 (左) と裏面 (右)

雌雄異株[注 2] (雄花雌花が別の個体につく)[4]。花期は5–7月、は短枝から生じた長さ 1–3 cm の花柄 (雌花の花柄の方が長い) の先につき、直径約 1 cm、芳香がある[1][7][4][9] (上図2b, 下図3a, b)。花被片は5–9枚、長楕円形 (4.5–10 x 1.1–4.2 mm)、黄白色[1][7][4]。雄花は4–7個の雄しべをもち、花糸が太く、は外向する[1][4][9] (下図3a)。花粉は6溝粒[9]。雌花は、丸い花托上についた14–40個の離生した雌しべをもつ (下図3b)。花柱は白色、子房は淡緑色で2個の胚珠を含む[1][7][4]。訪花者は多様であり、甲虫ハナバチなどが報告されている[10]。花托が花後に伸長するため、個々の果実は離れてブドウの房状の集合果になる[7][4] (上図1下)。果実は液果、8–9月頃に赤熟し、大きさは不揃いであり (5–7.5 x 4–5 mm)、それぞれ1–2個の腎臓形の種子を含む[1][7][4] (下図32c)。種子の表面は平滑[7][4]染色体数は 2n = 24, 28[1][7][9]

3a. 雄花
3b. 雌花
3c. 種子

分布・生態

日本を含むアジア北東部に分布する[3]北海道本州 (中部地方以北)、朝鮮半島中国北部、シベリア東部、沿海州アムールウスリーサハリンに見られる[2][7]

冷温帯に自生し[3]、落葉広葉樹林の林縁に生育する[4][8]

人間との関わり

4a. 市場の五味子 (韓国)
4b. 五味子茶

果実は五味子 (ゴミシ、朝鮮語:オミジャ、満州語:misu hūsiha) とよばれ[注 1]、生食用やジュース、五味子茶、五味子酒として利用される[12] (図4a, b)。

五味子は日本薬局方生薬として収録され、鎮咳去痰作用、強壮作用などがあるとされる[12][13]精油成分としてシトラール、セスキテルペン類としてα-chamigreneなど、リグナン類としてschizandrinやgomisin Aなどを含み[14]小青竜湯清肺湯人参養栄湯苓甘姜味辛夏仁湯杏蘇散などの漢方方剤に配合される[12][13]

長野県阿智村喬木村では、健康増進のためにチョウセンゴミシのつるを風呂に入れ、入浴する伝統の民間療法がある[15]

脚注

注釈

  1. チョウセンゴミシのものを北五味子、近縁のサネカズラのものを南五味子とよぶこともある[11]
  2. 本来は雌雄同株であるが、雌雄異株のように見えるとの記述もある[1]

出典

  1. Saunders, R. M. (2000). Systematic Botany Monographs vol. 58. Monograph of Schisandra (Schisandraceae). The American Society of Plant Taxonomists. pp. 94–99. ISBN 0-912861-58-4
  2. Schisandra chinensis”. Plants of the World online. Kew Botanical Garden. 2021年6月24日閲覧。
  3. 平野隆久監修 永岡書店編 1997, p. 242.
  4. 勝山輝男 (2000). “チョウセンゴミシ”. 樹に咲く花 離弁花1. 山と渓谷社. p. 389. ISBN 4-635-07003-4
  5. 磯田進・鳥居塚和生. チョウセンゴミシ”. 公益社団法人日本薬学会. 2023年2月3日閲覧。
  6. 『清異録 江淮異人録』上海古籍出版社、2012年。
  7. 大橋広好 (2015). “マツブサ属”. In 大橋広好, 門田裕一, 邑田仁, 米倉浩司, 木原浩 (編). 改訂新版 日本の野生植物 1. 平凡社. pp. 50–51. ISBN 978-4582535310
  8. 馬場多久男 (1999). “チョウセンゴミシ”. 葉でわかる樹木 625種の検索. 信濃毎日新聞社. p. 172. ISBN 978-4784098507
  9. Flora of China Editorial Committee (2008年). Schisandra chinensis”. Flora of China. Missouri Botanical Garden and Harvard University Herbaria. 2021年7月16日閲覧。
  10. Saunders, R. M. (2000). Systematic Botany Monographs vol. 58. Monograph of Schisandra (Schisandraceae). The American Society of Plant Taxonomists. pp. 30–32. ISBN 0-912861-58-4
  11. "五味子". 精選版 日本国語大辞典. コトバンクより2021年7月16日閲覧
  12. チョウセンゴミシ”. 熊本大学薬学部 薬草園 植物データベース. 2021年7月16日閲覧。
  13. ゴミシ”. 新常用和漢薬集. 公益社団法人東京生薬協会 (2017年3月1日). 2021年7月16日閲覧。
  14. 竹谷孝一・木内文之・小松かつ子 (2017). パートナー生薬学 (改訂第3版). 南江堂. ISBN 978-4-524-40342-4
  15. 『信州の民間薬』全212頁中83頁医療タイムス社昭和46年12月10日発行信濃生薬研究会林兼道編集

参考文献

  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、242頁。ISBN 4-522-21557-6。

外部リンク

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