スタージョン級原子力潜水艦

スタージョン級原子力潜水艦(スタージョンきゅうげんしりょくせんすいかん、英語: Sturgeon class submarine)はアメリカ海軍の攻撃型原子力潜水艦。基本計画番号はSCB 188AないしSCB 188M(SSN-678〜684、686、687)。

スタージョン級原子力潜水艦
水上航走中のSSN-674 トレパン
基本情報
艦種 攻撃型原子力潜水艦
命名基準 魚名、人名
建造期間 1963年-1975年
就役期間 1967年-2004年
前級 パーミット級
次級 ロサンゼルス級
要目
排水量

(水上/水中)

  • 4,250t/4,780t
  • 4,460t/4,960t(後期)
全長 89.1m
92.1m(後期)
最大幅 9.7m
吃水 7.4m
9.1m(後期)
機関方式 原子力ギアード・タービン方式
主機
推進器 7翼ハイスキュード・スクリュー×1軸
出力 15.000SHP
電力 ガピーIC型電池×126個1群
速力 (水上/水中):15kt/25kt
潜航深度 396m (安全潜入深度)
乗員 107名
(士官12名、先任兵曹12名、下士官兵83名)
兵装

Mk.63 533mm水圧式魚雷発射管×4門

C4ISTAR Mk.113 mod.6 UBFCS
ソナー
  • BQQ-1Bシステム(BQS-6B、BQR-7、BQS-8)
  • BQG-3 PUFFS
  • WLR-9A
電子戦・
対抗手段
  • BPS-14またはBPS-15
  • BRD-6
  • WLR-4
その他 予備浮力: 12.6%/11.2%(後期)

パーミット級の後継で、パーミット級(14隻)を上回る37隻が建造され、1960年代末から1980年代前半にかけて攻撃型潜水艦の主力をなした。最後期に建造された9隻(SSN-678〜687、以下後期建造艦)は、ハープーンの搭載による対水上打撃能力の向上に対応するために、AN/BQQ-2ソナーから探知距離が大きく高精度のAN/BQQ-5ソナーに換装[1]したことにより船体が延長され[2]、またパーチー(SSN-683)は大規模な改装を受けているため、要目に変化がある。

概要

スタージョン級は、対潜戦を第一の任務とし、速力よりも静粛性と探知能力を重視して設計され、初めて7翼のハイスキュード・プロペラが採用された。パーミット級と同様、氷海行動を念頭に置いてセイルの構造を強化し、浮上時の深度管制を容易にするため、セイルプレーンの装備位置を低くし、なおかつ、90度まで旋回可能としている[3]。本級以前の潜水艦開発を踏まえて、安全対策、兵装、居住性を改善する機軸が盛り込まれたことにより本級は高い評価を得たものの、排水量の増大と船型の大型化は避けられず、特に涙滴型から魚雷型に船型が変更され水中抵抗が増大したにもかかわらず、出力の向上がなかったため、速力はいっそうの低下(パーミット級の28ノットから25ノットに)を見た[1]。

就役期間中に、トマホーク巡航ミサイル、ハープーン対艦ミサイルなどの新兵器が登場し、魚雷とサブロック対潜ミサイルのみだった攻撃型潜水艦の兵装は著しく多様化したが、兵装搭載可能量の増大は小幅にとどまったため、搭載量の分配にやや悩まされた節がある。[注 2]

冷戦後の研究により、設計命数は当初の20年間から30年間に延長可能であることが示され[4]、ソナー・システムの改良、燃料交換、新型の曳航式ソナー・アレイの増設を含む改装が検討された。しかし、冷戦後の軍縮下で、スタージョン級の各艦は艦の寿命に達する以前に、高価な原子炉の燃料交換を避けるために退役が進められ[4]、情報収集任務に従事するパーチー (SSN-683) を除く全艦が1990年代末までに、また、2004年10月19日にパーチーが、それぞれ退役したことにより、スタージョン級は米海軍から完全に姿を消した。

派生型

スタージョン級の船体を元に、自然循環循環式原子炉を搭載するナーワル(USS Narwhal, SSN-671) と、ターボ・エレクトリック方式推進を採用したグレナード・P・リプスコム(USS Glenard P. Lipscomb, SSN-685)の2隻が建造され、さらなる静粛性の向上を含んだ次世代攻撃原潜の原型が模索された。詳細は各記事を参照。

特殊任務艦

1979年、パーチー (SSN-683) は、シーウルフ (SSN-575)とハリバット (SSN-587) に続く特殊任務艦に改装された。この場合の「特殊任務」とは、ソ連領海内に進出しての情報収集任務に従事することを意味し、同年、電子情報収集及び分析装置を増載する改装を受けた。1987〜1991年には、「研究開発(Research & Development)」計画に従い、メア・アイランド海軍工廠で、セイル前方に約30mの区画を挿入し、船体を延長する工事が行われた(同時に炉心交換も行われた)。これにより、海底作業用の区画および無人遠隔作業艇(ROV: Remote Operation Vehicle)格納庫が増設され、さらに72名の追加人員を輸送可能となる。これに伴い要目は大きく変わり、水中排水量は7,800tに増大し、速力はさらに低下した。

また、この大改装に伴って、代替艦として、リチャード・B・ラッセル (SSN-687) が所要の改装を施された上で、4隻目の特殊任務艦に指定された(1987年)が、パーチーの復帰に伴って指定は解除された。

パーチー (SSN-683 Parche)
  • 全長:122.4m
  • 喫水:8.8m
  • 排水量(水上/水中):不明/7800t
  • 水中速力:20kt以上
  • 乗員:179名(士官22名、先任兵曹含め下士官兵157名)

(注:1987〜91年の改装後の数値)

比較表

SSN各型の比較
バージニア級 シーウルフ級 ロサンゼルス級 リプスコム ナーワル
Block V - Block I - IV 準同型 1,2番艦 フライトII/III フライトI
船体 水上排水量 不明 7,568 t 7,460 t 6,255 t - 6,330 t 6,080 t - 6,165 t 5,813 t 4,450 t
水中排水量 10,400 t 7,800 t 12,139 t 9,150 t 7,102 t - 7,177 t 6,927 t - 7,012 t 6,480 t 5,350 t
全長 140,4 m 114.8 m 138 m 107.6 m 109.73 m 111 m 95.91 m
全幅 不明 10.4 m 12.2 m 10.1 m 9.8 m 11.46 m
吃水 不明 9.3 m 10.9 m 10.67 m 9.75 m 9.8m 不明 8.8 m
主機 機関 原子炉+蒸気タービン
方式 GT TE
原子炉 GE S9G WEC S6W GE S6G WEC S5W GE S5G
出力 40,000 shp 45,000 shp 30,000 shp 12,500 shp 17,000 shp
水中速力 不明 推定34 kt 25 kt 35 kt 31 kt 23 kt 25 kt
兵装 水雷 533mm魚雷発射管×4門 660mm魚雷発射管×8門 533mm魚雷発射管×4門
ミサイル VLS×40セル VLS×12セル ― VLS×12セル ―
同型艦数 推定38隻 28隻予定 1隻 2隻 31隻 31隻
(退役)
1隻
(退役)
1隻
(退役)
スタージョン級
タリビー スレッシャー級/
パーミット級
ハリバット トライトン スキップジャック級 スケート級 シーウルフ ノーチラス
長船体型 短船体型
船体 水上排水量 4,460 t 4,250 t 2,316 t 3,705 t 3,655 t 5,800 t 3,070 t 2,550 t 3,260 t 2,980 t
水中排水量 4,960 t[注 3] 4,780 t 2,607 t 4,311 t 5,000 t 7,900 t 3,500 t 2,848 t 4,110 t 3,520 t
全長 92.1 m[注 3] 89.1 m 83.2 m 84.9 m 106.7 m 136.5 m 76.7 m 81.6 m 102.9 m 97.5 m
全幅 9.7 m 7.2 m 9.7 m 8.8 m 11.3 m 9.6 m 7.6 m 8.4 m 8.5 m
吃水 9.1 m[注 3] 7.4 m 6.4m 7.7 m 8.5 m 7.2 m 7.7 m 6.3 m 6.7 m 7.9 m
主機 機関 原子炉+蒸気タービン
方式 GT TE GT
原子炉 WEC S5W CE S2C WEC S5W WEC S3W GE S4G WEC S5W WEC S3W GE S2G[注 4] WEC S2W
出力 15,000 shp 2,500shp 15,000 shp 7,300 shp 45,000 shp 15,000 shp 6,600 shp 15,000 shp
水中速力 25 kt[注 3] 25 kt 14.8 kt 28 kt 20 kt以上 27 kt 29 kt 18 kt 19 kt 23.3 kt
兵装 水雷 533mm魚雷発射管×4門 533mm魚雷発射管×6門
ミサイル ― レギュラス発射機×1基 ―
同型艦数 9隻
(退役)
28隻
(退役)
1隻
(退役)
14隻
(退役)
1隻
(退役)
1隻
(退役)
6隻
(退役)
4隻
(退役)
1隻
(退役)
1隻
(退役)

同型艦

同型艦の一覧を示す[5]。

艦名 船体番号 建造所 母港 DDS[6] 発注 起工 進水 就役 退役
短船体型 スタージョン
(Sturgeon)
SSN-637 エレクトリック・ボート チャールストン 1961年
11月30日
1963年
8月10日
1966年
2月26日
1967年
3月3日
1994年
8月1日
ホエール
(Whale)
SSN-638 フォアリバー グロトン 1964年
5月27日
1966年
10月14日
1968年
10月12日
1996年
6月25日
トートグ
(Tautog)
SSN-639 インガルス パールハーバー 1964年
1月27日
1967年
4月15日
1968年
8月17日
1997年
3月31日
グレイリング
(Grayling)
SSN-646 ポーツマス チャールストン 1962年
9月5日
1964年
5月12日
1967年
6月22日
1969年
10月11日
1997年
7月18日
ポーギー
(Pogy)
SSN-647 インガルス サンディエゴ 1963年
3月23日
1964年
5月5日
1967年
6月3日
1971年
5月15日
1999年
6月11日
アスプロ
(Aspro)
SSN-648 パールハーバー 1963年
3月26日
1964年
11月23日
1967年
11月29日
1969年
2月20日
1995年
3月31日
サンフィッシュ
(Sunfish)
SSN-649 フォアリバー チャールストン 1965年
1月15日
1966年
10月14日
1969年
3月15日
1997年
3月31日
パ-ゴ
(Pargo)
SSN-650 エレクトリック・ボート ブレマートン 1964年
6月3日
1966年
9月17日
1968年
1月5日
1995年
4月14日
クイーンフィッシュ
(Queenfish)
SSN-651 ニューポート・ニューズ パールハーバー 1964年
5月11日
1966年
2月25日
1966年
12月6日
1991年
11月8日
パファー
(Puffer)
SSN-652 インガルス 1965年
2月8日
1968年
3月30日
1969年
8月9日
1996年
7月12日
レイ
(Ray)
SSN-653 ニューポート・ニューズ チャールストン 1965年
1月4日
1966年
6月21日
1967年
4月12日
1993年
3月16日
サンドランス
(Sand Lance)
SSN-660 ポーツマス グロトン 1963年
10月24日
1965年
1月15日
1969年
11月11日
1971年
9月25日
1998年
8月7日
レイポン
(Lapon)
SSN-661 ニューポート・ニューズ ノーフォーク 1965年
7月26日
1966年
12月16日
1967年
12月14日
1992年
8月8日
ガーナード
(Gurnard)
SSN-662 サンフランシスコ サンディエゴ 1964年
12月22日
1967年
5月20日
1968年
12月6日
1995年
4月28日
ハンマーヘッド
(Hammerhead)
SSN-663 ニューポート・ニューズ ヴァレーホ 1964年
5月28日
1965年
11月29日
1967年
4月14日
1968年
6月28日
1995年
4月5日
シーデビル
(Sea Devil)
SSN-664 チャールストン 1966年
4月12日
1967年
10月5日
1969年
1月30日
1991年
10月16日
ギターロ
(Guitarro))
SSN-665 メアアイランド サンディエゴ 1964年
12月18日
1965年
12月9日
1968年
7月27日
1972年
9月9日
1992年
5月29日
ホークビル
(Hawkbill)
SSN-666 パールハーバー 1966年
9月12日
1969年
4月12日
1971年
2月4日
2000年
3月15日
バーゴール
(Bergall)
SSN-667 エレクトリック・ボート ニューロンドン 1965年
3月9日
1966年
4月16日
1968年
2月17日
1969年
6月13日
1996年
6月6日
スペードフィッシュ
(Spadefish)
SSN-668 ニューポート・ニューズ ノーフォーク 1966年
12月21日
1968年
5月15日
1969年
8月14日
1997年
4月11日
シーホース
(Seahorse)
SSN-669 エレクトリック・ボート チャールストン 1966年
8月13日
1968年
6月15日
1969年
9月19日
1995年
8月17日
フィンバック
(Finback)
SSN-670 ニューポート・ニューズ ノーフォーク 1967年
6月26日
1968年
12月7日
1970年
2月4日
1997年
3月28日
ピンタド
(Pintado)
SSN-672 メアアイランド サンディエゴ 1965年
12月29日
1967年
10月27日
1969年
8月16日
1971年
9月11日
1998年
2月26日
フライングフィッシュ
(Flying Fish)
SSN-673 エレクトリック・ボート ブレマートン 1966年
7月15日
1967年
6月30日
1969年
5月17日
1970年
4月29日
1996年
5月16日
トレパン
(Trepang)
SSN-674 グロトン 1967年
10月28日
1969年
9月27日
1970年
8月14日
1999年
6月1日
ブルーフィッシュ
(Bluefish)
SSN-675 ノーフォーク 1968年
3月13日
1970年
1月10日
1971年
1月8日
1996年
5月31日
ビルフィッシュ
(Billfish)
SSN-676 グロトン 1968年
9月20日
1970年
5月1日
1971年
3月12日
1999年
7月1日
ドラム
(Drum)
SSN-677 メアアイランド サンディエゴ 1967年
3月15日
1968年
8月20日
1970年
5月23日
1972年
4月15日
1995年
10月30日
長船体型 アーチャーフィッシュ
(Archerfish)
SSN-678 エレクトリック・ボート グロトン 〇 1968年
6月25日
1969年
6月19日
1971年
1月16日
1971年
12月17日
1998年
3月31日
シルバーサイズ
(Silversides)
SSN-679 ブレマートン 〇 1969年
10月13日
1971年
6月4日
1972年
5月5日
1994年
7月21日
ウイリアム・H・ベイツ
(William H. Bates)
[ex-Redfish]
SSN-680 インガルス造船所 パールハーバー 〇 1969年
8月4日
1971年
12月11日
1973年
5月5日
2000年
2月11日[1]
バットフィッシュ
(Batfish)
SSN-681 エレクトリック・ボート グロトン 1970年
2月9日
1971年
10月9日
1972年
9月1日
1999年
3月17日
タニー
(Tunny)
SSN-682 インガルス パールハーバー 〇 1970年
5月22日
1972年
6月10日
1974年
1月26日
1998年
3月13日
パーチー
(Parche)
SSN-683 サンディエゴ 1970年
12月10日
1973年
1月13日
1974年
8月17日
2004年
10月19日
カヴァラ
(Cavalla)
SSN-684 エレクトリック・ボート パールハーバー 〇 1968年
7月24日
1970年
6月4日
1972年
2月19日
1973年
2月9日
1998年
3月30日
L・メンデル・リヴァーズ
(L. Mendel Rivers)
SSN-686 ニューポート・ニューズ ノーフォーク 〇 1969年
7月1日
1971年
6月26日
1973年
6月2日
1975年
2月1日
2001年
5月10日
リチャード・B・ラッセル
(Richard B. Russell)
SSN-687 ヴァレーホ 1969年
7月25日
1971年
10月19日
1974年
1月12日
1975年
8月16日
1994年
6月24日

脚注

注釈

  1. サブロック、後にハープーンとトマホークが追加。
  2. 1980年代における標準的な武装はMk48魚雷15本、ハープーン4本、サブロック4基。1990年のサブロック運用停止後、SSN-671、678〜687にはトマホーク4基が替わって搭載されるようになった。結局、米海軍の攻撃原潜での兵装搭載量の問題の解決は、ロサンゼルス級以降におけるVLSの導入や、シーウルフ級以降における弾庫容量の根本的見直しを待つことになった。
  3. 6番艦は大規模オーバーホールと大規模改修により特殊任務艦に改装され、水中排水量7,800 t、全長122.4 m、喫水8.8 m、水中速力20 ktとなった。
  4. 1960年以降WEC S2W

出典

  1. 『世界の艦船』編集部、2000、『アメリカ潜水艦史』、海人社〈『世界の艦船』567(増刊第5集、2000年4月)〉:p.130
  2. 水上芳弘、2000、「アメリカ潜水艦の技術的特徴」、『世界の艦船』編集部(編)『アメリカ潜水艦史』、海人社〈『世界の艦船』567(増刊第5集、2000年4月)〉:p.170
  3. 『世界の艦船』編集部、2000、『アメリカ潜水艦史』、海人社〈『世界の艦船』567(増刊第5集、2000年4月)〉:p.131
  4. “SSN-637 Sturgeon class”. FAS. 2021年4月17日閲覧。 “After a 5-year study was completed on the SSN-637 class submarine, the design life was extended from 20 years to 30 years, with a possible extension to 33 years on a case-by-case basis. However, many boats of this class were retired prior to this limit in order to avoid expensive reactor refueling operations.”。
  5. 下表は特記ない限り、次のサイトの情報を出典とする。“SSN-637 Sturgeon class”. FAS. 2021年4月2日閲覧。。
  6. この列の〇はDDSの運用能力を付与された(DDS capable)艦であることを示す。該当艦は次のサイトの情報を出典とした。“SSN-637 Sturgeon class”. FAS. 2021年4月2日閲覧。。

関連項目

外部リンク

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