スーパームーン

スーパームーン英語: supermoon)とは、満月または新月と、楕円軌道における地球への最接近が重なることにより、地球から見た月の円盤が最大に見えることである。天文学的に外からの視点で説明すると、太陽-地球-月系において、月が地球に対する近点(近地点)にあると同時に、太陽と地球に対し、月が(望)となった時の月のことである。ただし、「スーパームーン」という用語は天文学の正式な用語ではなく[3]占星術に由来するものである[4](天文学では近点の満月を Perigee full moon [5]、新月を Perigee new moon と呼称している)。

スーパームーンとマイクロムーンの大きさの比較(NASAによるもの)
2016年11月14日のスーパームーンは、地球の中心から356,511キロメートル (221,526 mi)離れていて[1]、1948年以来の近さであり、次の同様の接近は2034年となる[2]

この反対の現象である、遠点での惑星直列はマイクロムーン(micromoon)と呼ばれるが[6]、この用語はスーパームーンほどは広まっていない。

距離

地球から月までの距離は、楕円軌道であるために、約35万7000kmから40万6000kmまで変化する[7][8][9]

近点の満月は、遠点のものよりも最大14%大きく、30%明るい(2011年3月19日NASAによる観測)[10]

用語

スーパームーンという用語は、占星術師のRichard Nolleが1979年に以下のように独断的に定義した。

軌道中で地球に最接近(90%以内)した新月または満月。即ち、地球と月と太陽が直線上に並び、月が地球に最も接近した状態[11]

Nolleはまた、スーパームーンの位置にある月は「地球物理学的ストレス」の原因になると主張した。Nolleは、なぜ90%という数字が選ばれたかについては言及しなかった[4]

近年では、特に最接近して近点から前後1時間以内に満月または新月を迎えることを「エクストリーム・スーパームーン」(Extreme Supermoon)、あるいは「エクストラ・スーパームーン」(Extra Supermoon)と呼ぶ場合があり、このような満月はおよそ18年に1度の割合で観測できる(1950年以降では、1955年1974年1992年2011年2014年[5][12]が該当する)[13][14]。なお、2016年のスーパームーンでは月と地球の距離が68年ぶりに最接近する(35万6511kmの距離まで月と地球が最接近した約2時間半後に満月を迎える[15])が、前述の近点から前後1時間以内という「エクストリーム・スーパームーン」の条件には該当しない[16][17]

一方、スーパームーンという用語は天文学の正式な用語ではなく、明確な定義が存在しない[3]。類似する言葉としては、代わりに"perigee-syzygy"(近点惑星直列)や"perigee full/new moon"(近点満月/新月)という用語が使われている[18]。「近点」は、月が軌道中で地球に最接近する点であり、「惑星直列」は、地球と月と太陽が一列に配置した状態で、満月及び新月の度ごとに生じる。したがって、スーパームーンは、上記2つの組み合わせとみなせるが、毎回完全に一致する訳ではない。

スーパームーンは、グラフの最下部に最も近いマークされたポイント

頻度

地球から見たスーパームーン(2011年3月19日、右)と平均的な大きさの月(2010年12月20日、左)

満月周期は、月が近点かつ太陽及び地球と並ぶ間の期間であり、約13.9443朔望月(約411.8日)である。したがって、ほぼ毎回14回目の満月がスーパームーンとなる。しかし、周期のちょうど半分でも満月は近点に近づき、その直前または直後の新月はスーパームーンとなる。したがって、1回の満月周期毎に3回のスーパームーンが生じる。なお、満月のスーパームーンは前述の満月周期によって年に大体1回観測できるが、地球と月の位置関係によっては2014年のように年に数回観測できることもある[19][20]

13.9443と14の差は、1/18に非常に近いので、スーパームーンの周期自体が18回の満月周期(約251朔望月、20.3年)の周期で変動する。したがって、約10年の間は最大のスーパームーンが満月、次の10年間は最大のスーパームーンが新月となる。

潮汐、海岸浸食への影響など

太陽と月からの地球の海洋に対する影響[21]は、月が新月または満月の時に最も大きくなる[22]。月が近点にいる時は、潮汐力はいくらか強くなり[23]Perigean spring tide(近点の大潮)を引き起こす。潮汐力は逆三乗則に従うため、力は平均よりも19%大きくなる。

「この力が最も強い時でも、せいぜい数インチ程度の影響である[24]」と言う人も。

ただし、各地点(海域)での実際の潮の高さは世界中で異なる。

海岸浸食

スーパームーンの時には海岸侵食が増大することが明らかにされている[25]港湾空港技術研究所の研究チームが発表した研究成果[26]によると、スーパームーンの時の侵食量は、通常時と比較して約50%増しになることが示されている。スーパームーンによる大潮満潮位は通常の大潮の時よりも高くなることから、浸水リスクが高く、台風などによる高波高潮が重なると侵食も大きくなり、沿岸部のリスクが高くなる。

この現象は、スーパームーンの持つ大きな起潮力によって、満潮時の海水位の上昇に伴って地下水位も大きく上昇し、その後の海水位が下がった時にも砂浜に水が含まれた状態のままとなり、波で削られやすくなることで生じると考えられている。この現象は茨城県神栖市波崎海岸での25年間の地形観測により確認されたものである。

座礁?

2011年3月19日のスーパームーンは、イギリスのソレント海峡での5隻の船の座礁の原因となった、とも言われた(主張された)[27]。だが「そのような主張を裏付ける証拠はない」と言う人も。

地震との関連

2011年の東北地方太平洋沖地震や2004年のスマトラ島沖地震のような巨大地震は、1〜2週間以内に発生しているスーパームーンに起因するという憶測があるが[28][29]、深さ40km以内の比較的浅い地点で起こる地震については、月の引力により断層にかかる力が大きくなればなるほど地震が発生しやすくなるという学説が存在する[30][31]。また、東京大学の研究チームが潮英科学誌ネイチャー ジオサイエンス」(2016年9月12日付電子版)に発表した研究結果によると、1万件以上の地震データから潮汐力の強い時期には巨大地震の発生確率が上昇することが示されている[32][33](「潮汐#地震との関係」も参照)。

なお、(すでに古いものではあるが)2011年~2012年の文献では「スーパームーンと大地震の相関関係を示す証拠はない[34][35][36]」とする説もあった。

脚注・出典

2016年11月14日の夜、テキサス州オースティンリンドン・ジョンソン大統領記念図書館の上空を飛行し、スーパームーン後約5時間、空港に接近している飛行機。
  1. http://sivertimes.com/super-moon-exceptional-brightest-moon-in-the-sky-of-normandy-Monday-November-14/1872
  2. http://astrobob.areavoices.com/2016/11/10/moongazers-delight-biggest-supermoon-in-decades-looms-large-Sunday-night/
  3. 質問2-7)「スーパームーン」ってなに?”. 国立天文台(NAOJ). 2019年6月16日閲覧。
  4. Kryptonite for the supermoon | Bad Astronomy | Discover Magazine
  5. 日曜夜にエクストラ・スーパームーン(ナショナルジオグラフィック公式日本語サイト:ニュース 2014年8月8日)
  6. Micro Moon – year's smallest full moon – on January 15-16”. EarthSky. 2013年11月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2016年9月26日閲覧。
  7. Meeus, Jean (1997). Mathematical Astronomy Morsels. Richmond, Virginia: Willmann-Bell. p. 15. ISBN 0-943396-51-4
  8. Plait, Phil (2011年3月11日). No, the 'supermoon' didn't cause the Japanese earthquake”. Discover Magazine. 2011年3月14日閲覧。
  9. Hawley, John. Appearance of the Moon Size”. Ask a Scientist. Newton. 2015年2月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。14 March 2011; no publication date閲覧。
  10. Phillips, Tony, Dr. (2011年3月16日). Super Full Moon”. Science@NASA Headline News. NASA. 2012年5月7日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月22日閲覧。
  11. Nolle, Richard. Supermoon”. Astropro. 14 March 2011; no publication date; modified March 10, 2011閲覧。
  12. 今年最大のエクストラ・スーパームーン 世界のスーパームーンを見ておこう(カラパイア 2014年8月10日)
  13. 知恵蔵2013の解説:スーパームーン(コトバンク)
  14. エクストラスーパームーン小学館デジタル大辞泉』/goo 国語辞書)
  15. 【最新】スーパームーン情報!2016年はスゴいぞ!(キラっと。 2016年11月3日)
  16. 68年ぶりの超特大スーパームーン、11月14日に:気になる大地震との関連性ニューズウィーク日本版 2016年11月4日)
  17. 11月14日、70年ぶりのすごいスーパームーンがやってくるハフィントン・ポスト日本版 2016年11月5日)
  18. Phillips, Tony (2012年5月2日). Perigee "Super Moon" On May 5-6”. NASA Science News. NASA. 2012年5月6日閲覧。
  19. 2014年のスーパームーンは3回、最大の条件が揃うのは8月11日(Tabetainja 2014年7月13日)
  20. 月が地球に接近、「スーパームーン」(CNN 2014年7月11日)
  21. Plait, Phil (2008年). Tides, the Earth, the Moon, and why our days are getting longer”. Bad Astronomy. 14 March 2011; modified March 5, 2011閲覧。
  22. Sumich, J.L. (1996年). Animation of spring and neap tides”. NOAA's National Ocean Service. 2013年6月22日閲覧。
  23. Apogee and Perigee of the Moon”. Moon Connection. 14 March 2011; no publication date閲覧。
  24. Rice, Tony (2012年5月4日). “Super moon looms Saturday”. WRAL-TV. http://www.wral.com/weather/blogpost/11061791/ 2012年5月5日閲覧。
  25. スーパームーンで砂浜浸食50%増し 異例の観測研究”. 日本経済新聞 (2020年12月29日). 2021年1月7日閲覧。
  26. Banno, Masayuki; Kuriyama, Yoshiaki (2020). “Supermoon Drives Beach Morphological Changes in the Swash Zone” (英語). Geophysical Research Letters 47 (22): e2020GL089745. doi:10.1029/2020GL089745. ISSN 1944-8007. https://agupubs.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1029/2020GL089745.
  27. Andy Bloxham (2011年3月21日). Supermoon blamed for stranding five ships in Solent”. Telegraph.co.uk. 2014年11月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年6月22日閲覧。
  28. Paquette, Mark (2011年3月1日). Extreme Super(Full) Moon to Cause Chaos?”. Astronomy Weather Blog. AccuWeather. 14 March 2011;閲覧。
  29. Is the Japanese earthquake the latest natural disaster to have been caused by a supermoon?”. The Daily Mail (2011年3月11日). 2011年3月14日閲覧。
  30. 月の引力が地震を誘発、日本の研究員ら米科学誌に発表(読売新聞 2004年10月22日)
  31. 米科学誌サイエンス電子版 2004年10月22日、防災科学技術研究所田中佐千子ら・米カリフォルニア大学ロサンゼルス校
  32. 巨大地震、大潮の時期に発生確率上昇か 東大研究(AFPBB News 2016年9月13日)
  33. 月の引力、大地震と関係か 東大チーム(日本経済新聞 2016年9月13日)
  34. Can the position of the Moon affect seismicity?”. The Berkeley Seismological Laboratory (1999年). 2012年8月18日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年3月14日閲覧。
  35. Fuis, Gary. Can the position of the moon or the planets affect seismicity?”. U.S. Geological Survey: Earthquake Hazards Program. 2012年5月9日時点のオリジナルよりアーカイブ。14 March 2011; no publication date閲覧。
  36. Wolchover, Natalie (2011年3月9日). Will the March 19 "SuperMoon" Trigger Natural Disasters?”. Life's Little Mysteries. 2011年3月15日閲覧。

関連項目

外部リンク

This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.