ダーリントン原子力発電所

ダーリントン原子力発電所 (英: Darlington Nuclear Generating Station、DNGS)は、カナダのオンタリオ州クラリントンのオンタリオ湖北岸にあるオンタリオ電力の原子力発電所である。名称は設置当時の地名にちなんでいる。

ダーリントン原子力発電所
ダーリントン原子力発電所
ダーリントン原子力発電所の位置(オンタリオ州内)
ダーリントン原子力発電所
オンタリオ州におけるダーリントン原子力発電所の位置
正式名称 Darlington Nuclear Generating Station
国 カナダ
座標 北緯43度52分22秒 西経78度43分11秒(google map)
現況 運転中
着工 1981年
運転開始 1990年:2号機
1992年:1号機
1993年:3号機・4号機
建設費 144億カナダドル
事業主体 オンタリオ電力(OPG)
(分社前1999年4月まで)オンタリオ・ハイドロ(OH)
建設者 カナダ原子力公社(AECL)
原子炉
運転中 4基 x 881MWe[1]
種類 CANDU炉
発電量
定格出力 3,512 MW
Darlington Unit 1-4 設備利用率, 2003-2011[2]

原子炉の停止システム(shutdown system)が全てコンピュータ制御となった最初の原子力発電所の一つである[3]。緊急時システムを制御するソフトウェアの検収の困難さから、当初カナダ規制当局(原子力管理委員会、AECB)から稼動認可を得られなかった経緯がある。

概要

オンタリオ電力ダーリントン原子力発電所は、国有企業オンタリオ・ハイドロにより1981年から1993年にかけて建設された原子力発電所である。4基のCANDU炉からなる。オンタリオ・ハイドロの5社分割(1999年4月)から、現在はそのうちの1社のオンタリオ電力(Ontario Power Generation, OPG)によって運営されている。

正味の電気出力は3,512 MWで200万人規模の都市を十分カバーできる出力であり、オンタリオ州の電力需要の約20%を賄っている[4]。ダーリントン原子力発電所はオンタリオ電力の保有するCANDU炉の中で最も運用成績が良好で、2008年には設備利用率 94.5%を達成している[5]。

建設時の問題

カナダ国内においては、ダーリントン原子力発電所は建設費用の初期予算からの巨額超過で知られている[6]。

当初計画時(1970年代後半)において建設費用は39億カナダドルと見積もられていたが、1981年の建設開始時点で既に74億カナダドルに膨張していた。最終的には建設費用はさらにその倍[7]の144億カナダドルとなったが、その費用超過分の実に70%は建設工事の大きな遅れによる金利負担の増加によるもの[8]であった[9]。

なお、そのような大きな遅れが発生した原因としては、電力需要予測の引き下げやオンタリオ・ハイドロの負債問題、建設中に発生したチェルノブイリ原子力発電所事故を受けた追加安全審査などの影響があった。

将来計画

新設計画

2006年にOPGはダーリントン原発の増設に向け連邦政府の承認を得るプロセスを開始した。これは、4基(合計出力4,800MW)の原子炉を新設・運転するものであった。

設計・建設に係る提案依頼書(request for proposals, RFP) を受け、アレヴァNP、ウェスティングハウス、カナダ原子力公社(AECL)が入札に参加した。 2009年6月にオンタリオ州政府は予想外に入札額が高額であったこと、および入札者(AECL)の将来に関する不確実性を理由として、RFPプロセスを保留にすることを発表した[10][11][12]。

2011年8月に、3名からなる合同審査委員会(オンタリオ州環境省およびカナダ原子力安全委員会により義務づけられている)が、「ダーリントン新設プロジェクトは(適切な緩和策を施せば)周囲の環境に何ら悪影響を与えないことが判明した」とする報告書を発表した。これを受けて、連邦政府は環境アセスメントを承認した[13]。

2013年10月になって、オンタリオ州政府は「想定される高額の初期投資および現状 黒字のエネルギー収支を踏まえると、ダーリントン新設プロジェクトがオンタリオ州の長期エネルギー政策において占める位置はない」と宣言した[14]。

ダーリントン新設プロジェクトは長期エネルギー政策において延期されたものの、ダーリントンでの2基新設はオプションとして残されている。

改修計画

オンタリオ州エネルギー省は2016年1月11日に、ダーリントン原子力発電所の大規模改修工事を2026年まで10年間かけて行い、運転期間を30年延長すると発表した[15]。これは新設計画の代替となるもので、10月には1基目の作業に取りかかるとしている。また、改修期間中のベースロード電源を確保するため、ピカリング原子力発電所の運転期間は2024年まで延長された。これにより、既存の発電所施設を最大限に活用することを目指している。

改修工事では合計128億カナダドル(約1兆円)を投じ、原子炉 1基ごとに480本の圧力管アセンブリと960本の出入口管を取り替えるほか、タービン発電機や補機類の大部分についても分解・再組立や交換を行う。また、蒸気発生器は運転期間が延長されても適合性は維持されるため交換の必要はないが、検査と同時に細管内部の清掃を行って熱伝達効率の改善を図るとした。

廃棄物処理

ダーリントン原発で発生した低レベル・中レベル放射性廃棄物は、オンタリオ州キンカーディン近郊のブルース原子力発電所に併設された西部廃棄物管理施設(Western Waste Management Facility, WWMF)に保管される。 OPGはこれらの低・中レベル廃棄物を長期保管する地層処分場( deep geologic repository, DGR)をWWMF近くの陸上に建設・運営することを提案している。規制当局の承認・認可が保留されているが、地層処分場は2013年から建設し、2018年に運用開始する予定であった[16]。

ダーリントン廃棄物管理施設はダーリントンで発生した使用済み燃料の乾式保管設備であり、水中での初期冷却が済んだものを保管している。施設は2007年に供用開始され、レポートによれば費用・工期とも予定通りであったという[17]。核廃棄物管理機構がカナダの全原子力発電所から発生する使用済み核燃料の恒久保管施設建設地の選定を行っている。

年表

2005年
インターナショナル・コーポレート・ハビタット・オブ・ザ・イヤーを受賞 (野生生物生息地審議会) [18]
2007年
能力向上賞を受賞 (原子力発電運転者協会) [19]
サステナビリティ賞20周年記念賞 を受賞(野生生物生息地審議会)[20]
2008年
インターナショナル・コーポレート・ハビタット・オブ・ザ・イヤー を受賞(野生生物生息地審議会) [20]
2009年
ウィリアム・H・ハワードC.E.O.賞を受賞(野生生物生息地審議会) [21]
12月21日、ダーリントン原子力発電所の運転員が微量の三重水素を含んだ20万リットルの水を誤ってオンタリオ湖に放出してしまう事故が発生。この水はタンクに貯蔵されていたもので、運転系統から出たものではなく、放出された三重水素の量は月間許容放出量の0.1%相当だった[22]。
2011年
12月に無破損運転1200万時間を達成[23]
2012年
12月の公聴会を受けて、カナダ原子力安全委員会は2013年2月にダーリントン原発の運転許可期限を2013年5月1日から2014年12月31日まで延長すると発表した[24]。

脚注

  1. Canadian Nuclear Association:CANDU technology
  2. Report on 2008 Performance Archived 2013年10月29日, at the Wayback Machine.、OPG 2010 Annual Report Archived 2013年10月29日, at the Wayback Machine.、OPG 2011 Annual Report Archived 2013年10月29日, at the Wayback Machine.
  3. Bowmen(1995) p.19
  4. オンタリオ電力:ダーリントン原子力発電所
  5. Ferguson, Rob (2010年2月9日). “'Tune-up' for Pickering, Overhaul at Darlington”. Toronto Star. http://www.thestar.com/unassigned/article/762506---tune-up-for-pickering-overhaul-at-darlington 2010年2月10日閲覧。
  6. コスト増とダーリントン原発の残債務の責任の所在についての議論は州議会選挙の際にしばしば取り上げられ、反核運動の書物でも扱われている。
    CBC News. http://www.cbc.ca/ontariovotes2003/features/power_091703.html
  7. 1986年に、1年におよぶオンタリオ州政府の超党派委員会による調査や公聴会が実施されて計画を進めることが決定されたものの、その時点で建設コストはさらに70億カナダドル膨張していた。
    William Walker. "Ontario to complete huge nuclear plant." The Toronto Star, August 21, 1986.
  8. カナダ消費者物価指数によれば、1977年から1981年の間のインフレ率は46%で、利率は20%であった。コストの4分の1は装置選定が不適切だったことと、コスト問題と遅延の影響で電気工事が半年止まってしまったのが原因だった。“アーカイブされたコピー”. 2011年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2011年10月15日閲覧。
  9. Nuclear FAQ : なぜダーリントン原発の建設費用はそんなに巨額になったのですか?
  10. “Darlington plans on hold”. World Nuclear News (2009年6月29日). 2009年7月16日閲覧。
  11. Hamilton, Tyler (2009年7月14日). “$26B cost killed nuclear bid”. Toronto Star. http://www.thestar.com/comment/columnists/article/665644 2009年7月16日閲覧。
  12. Lawson, Don (2012年2月). “CANDU at Darlington: Securing Jobs and Energy for the New Economy”. CCRE Commentary. http://www.thinkingpower.ca/PDFs/Commentary/CCRE%20Commentary%20-%20CANDU%20at%20Darlington%20-%20Securing%20Jobs%20and%20Energy%20for%20the%20new%20Economy%20-%20February%202012.pdf 2013年10月26日閲覧。
  13. “Darlington New Build Project Overview”. 2013年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月26日閲覧。
  14. “"Ontario nixes building two nuclear reactors" - Global News”. 2013年10月26日閲覧。
  15. “OPG gets go-ahead for Darlington refurbishment”. WorldNuclearNews. 世界原子力協会 (2016年1月12日). 2016年3月13日閲覧。
  16. “OPG's DGR”. 2011年4月10日閲覧。
  17. “"News from Ontario Power Generation", Nov 2, 2007”. 2011年6月12日時点のオリジナルよりアーカイブ。2010年10月30日閲覧。
  18. “OPG News Release, November 30, 2005”. 2013年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月26日閲覧。
  19. “"News from Ontario Power Generation", Dec 4, 2007”. 2013年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月26日閲覧。
  20. OPGreport2009
  21. OPGreport2010
  22. "Nuclear plant spills tritium into lake" The Toronto Star.
  23. “OPG "POWERNews", vol. 14, issue 1”. 2013年10月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2013年10月26日閲覧。
  24. “CNSC Renews OPG’s Darlington Nuclear Generating Station Operating Licence (revised)”. 2013年10月26日閲覧。

参考文献

オンタリオ電力刊行報告書類

関連項目

外部リンク

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