デュワグB形電車

B形は、ドイツの鉄道車両メーカーであったデュッセルドルフ車両製造所(→デュワグ)製の電車ドイツ各地に開通したシュタットバーンと呼ばれる地下鉄ライトレール)向けに開発された連接式車両である[1][2][5]

デュワグB形電車
B形電車
左:ケルン向け車両、右:ボン向け車両
基本情報
製造所 デュワグ
製造年 1973年 - 1999年
主要諸元
編成 2車体・3車体連接車
軌間 1,435 mm
電気方式 直流750 V
架空電車線方式
最高速度 80 km/h、100 km/h
備考 主要数値は下記も参照[1][2][3][4][5]

概要

開発までの経緯

1960年代以降、西ドイツ(現:ドイツ)の各都市ではモータリーゼーションの進展から道路の混雑が深刻化し、従来の道路上を走る路面電車では定時運転が難しい状況に陥っていた。だが、その一方で路面電車の輸送力の高さを見直す動きも存在し、道路と分離した専用軌道への移設など様々な施策が実行に移されるようになった。その1つが、都市部の併用軌道を地下のトンネルに移設し、路面電車と同じ小規格の地下鉄網を建設するというシュタットバーンであった。その動きがとくに盛んだったのはケルンボンドルトムントデュッセルドルフなどのライン=ルール大都市圏で、従来の路面電車や電気鉄道網を拡張し、各都市を繋ぐシュタットバーンの計画が次々に進められていた。これに合わせて、ドイツの鉄道車両メーカーであったデュッセルドルフ車両製造(デュワグ、現:シーメンス)がボンケルンで路面電車を運営する各事業者と共に開発したのが、シュタットバーン向け連接式電車であるB形である[注釈 1][1][2][5][3][4][6]

構造

B形は両運転台の2車体連接車で、最大3両まで総括制御による連結運転が可能な設計となっている。そのため車両には自動連結器が備わっており、冬季には加熱設備により氷結を防ぐ。高速運転を目的としシュタットバーンで運用される事から、最高速度は80 km/h - 100 km/hと従来の西ドイツにおける路面電車車両と比べて高く設定されている他、全長も28,000 mmと長くなっている。また、高床式プラットホームが設置された路線での運用を前提としており両開きの乗降扉は高い位置に存在するが、従来の低床式プラットホームに対応するため扉の下部には折り畳み式のステップが搭載されている。車体設計については、ドイツにおける路面電車BOStrab)および普通鉄道EBO)双方に適合した設計が用いられている[1][2][3][4][5][7][8]

車種・主要諸元

B形は導入された路線の条件や技術の向上により、最高速度や機器、編成が異なる多数の車種が展開された。これらの形式名および主要諸元は以下の通りである[9]

形式 B80S B100S B80D B100D B80C B100C B80C8
車種 2車体連接車 3車体連接車
軸配置 B'2'B' B'2'2'B'
最高速度 80km/h 100km/h 80km/h 100km/h 80km/h 100km/h 80km/h
加速度 1.1m/s2 1.0m/s2
緊急減速度 3.0m/s2 2.7m/s2
軌間 1,435mm
全長 28,000mm 38,350mm
全幅 2,650mm
床上高さ 1,000mm
乗降扉数 4箇所 5箇所
重量 37.0-40.0t 50.0t
着席定員 72人 96人
立席定員 112人 150人
主電動機出力 235kw(x2基)
196kw(x4基)
222kw(x2基)
車両出力 470kw
784kw
444kw
制御方式 抵抗制御
(電磁開閉器使用)
電機子チョッパ制御 VVVFインバータ制御
参考 [2][5][10][11] [2][5][10][11] [2][5][10][11] [2][5][10][11] [2][5][10][11] [2][5][10][11] [9]

運用・導入都市

1973年ボンボン・シュタットバーン)向け車両が導入されて以降、B形は以下のドイツ各都市へ向けて1999年まで量産が行われた。導入された車両の中には連結運転を前提とし定員数を増加させた片運転台車両や、車内に調理設備を有するものも存在する。その一方でB形は軌間1,435 mmのみに対応しており、軌間1,000 mm路面電車が存在するエッセンではB形と従来の路面電車が共に走る区間が三線軌道(デュアルゲージ)で建設されている[1][5][12]

デュワグB形 導入都市一覧[1]
都市 形式 両数 車両番号 製造年 備考・参考
ボーフム
(BOGESTRA)
B80D 16両 6001-6013 1988-89 [13]
6014-6016 1993
ボン
SWB
B100S 28両 7351
7451-7467
7651-7654
7751-7760
8451-8456
1973-84 10両は2004-09年ドルトムントへ譲渡(B1S)、ただし2020年以降全車廃車予定[14][15][16][17]
B100C 14両 9351-9364 1993
ボン
SSB
B100S 17両 7571-7578
8371-8378
8471
1975-84
B100C 6両 9371-9376 1993
ドルトムント B80C6
(B6)
54両 301-354 1986-94 344-354は後年にB80C8(B8)へ改造[9][14][17]
B80C8
(B8)
10両 355-364 1998-99 3車体連接車[9][14][17]
デュッセルドルフ
(ラインバーン)
B80D 12両 4001-4012
4101-4104
4201-4288
1981 [18]
4両 4101-4104 1988 車内に調理設備を設置[19]
88両 4201-4288 1985-93 [20]
デュイスブルク B80C 18両 4701-4718 1983-85 4715-4718は車内に調理設備が存在
エッセン B100S 104両 5001-5008 1975-85 1986年にB80C(5101-5108)へ改造
5009-5011 1981年にB80C(5109-5111)へ改造
5021-5026,5028 1981年にB80C(5121-5127)へ改造
5027 1978-88年デュッセルドルフに在籍
エッセンへ返還後1988年にB80C(5128)へ改造
B80C 5141-5145
ケルン
KWB
B100S 56両 2001-2029
2050-2054
2101-2122
1973-85 2000番台のうち32両は2008-09年イスタンブール(トルコ)へ譲渡[4]
B80S 20両 2030-2049 1977
B80D 50両 2201-2240
2251-2260
1987-92 連結運転を前提とした片運転台車両
一部車両はワゴン・ユニオンが製造[4]
33両 2301-2333 1995-96
ケルン
(KBE)
B100S 5両 2095-2099 1977 1992年以降はKWBが所有[4][21]
8両 2192-2199 1985
ミュールハイム B100S 5両 5012-5016 1976
B80S 2両 5031-5032 1985

ギャラリー

更新工事

2000年代以降、後継車両の導入により各都市でB形の廃車や譲渡が行われているが、その一方でケルンボンを始め、今後もB形を継続して使用するため車体や内装、機器の更新が積極的に実施されている都市も多い。以下に取り上げるのは、B形の更新(リニューアル)工事の実例である[3][22]

ボン

更新工事が行われた車両(2012年撮影)

ボンシュタットバーンであるボン・シュタットバーンには開通当初から多数のB形が導入されていたが、製造から40年が経過した初期車について、2010年代でも車体は良好な状態を保っている一方、電気機器については老朽化に加え旧来の技術を用いる事から陳腐化が目立っていた。また、各メーカーの新型車両についてもボン・シュタットバーンの使用条件に適したものは存在せず、高額な導入費用も課題となっていた。そこで、シュタットバーンを運営するボン市交通公社(SWB)ボン=ライン・ジーク電鉄(SSB)は、25両を対象に更新工事を行う事を決定した[22][23][24]

主要な改造箇所は電気機器で、制御装置が新造品の電機子チョッパ制御装置IGBT素子)に交換され、制動使用時に電力を回収可能な回生ブレーキを搭載する事で消費エネルギー量が大幅に削減されている。また運転台も再設計が行われ、前面形状に変化が生じている。2007年に計画が発表された後、2012年に最初の試作車が完成し[注釈 2]、以降は2019年現在も改造が継続して行われている。また、対象となった車両は「B80C-Z」という形式名で呼ばれている[22][23][24]

ケルン

更新工事が行われた車両(2428、2017年撮影)

ケルンシュタットバーンであるケルン・シュタットバーンには2002年以降ボンバルディア・トランスポーテーション製の新型電車(フレキシティ・スウィフト)が導入され、初期の車両が廃車、もしくはトルコイスタンブールへ譲渡された一方、1984年から1985年にかけて製造された28両(2100番台、2101 - 2122、2192 - 2199)については、新型車両を導入するよりも費用が安価で済む[注釈 3]という利点に加え、車両の状態が予想以上に良好であった事から、大規模な更新工事が実施される事となった[3][4]

改造内容は多岐に渡っており、前面を含めた運転台は新設計のものと交換されている他、連結運転を前提とする事から車体も片運転台式に変更されている。また電気機器や配線も主電動機を除いて変更され、冷暖房双方の機能を備えた空調が完備されている他、双方向ネットワークシステム「CAN」を用いた各種機器の自動診断・管理システムも搭載されている。車内も車椅子ベビーカーが設置可能なフリースペースが追加されている他、片運転台式に改造された事から座席数も増加している[25][26]

2014年から最初の2両が営業運転に投入されており、2017年までに全28両の更新工事が完了している。また、更新工事が実施された車両は番号も変更され、従来の2100番台から2400番台となっている[25][26]

ドルトムント

ドルトムントシュタットバーンであるドルトムント・シュタットバーンを運営するDSW21は、2018年ハイターブリック製の新型車両(バモスHF)の導入と共に、既存のB形のうち64両(B80C6、B80C8)についても同社やキーペによって更新工事を行う契約を交わした旨を発表した。これは車両の近代化に加え、シュタットバーンの慢性的な混雑解消を目的とした輸送力増強によるものである[16][27]

改造に際しては、内外装を新型車両・バモスHFと合わせる事を目的としており、二重窓による断熱・防音性の強化、空調システムの最適化や運転室への空調の設置、車内案内表示装置の充実などの改造が行われる。また、台車についても空気ばねを用いたニーリング機能を搭載する事で、全てのプラットホームと電車の間の段差を無くす。これらの改造は2020年から実施される事になっている[16][27]

ボーフム

ボーフムヘルネを結ぶボーフム・シュタットバーンで開業時から使用されているB形について、シュタットバーンを運営するBOGESTRAは2021年以降、スイスシュタッドラー・レール[注釈 4]による内装や運転台、主要機器など大規模な更新工事を行う計画を発表している[28][29]

関連項目

脚注

注釈

  1. 開発にあたっては連結型車両(2両編成)であるA形も検討されていたが、実際に製造される事はなかった[3]
  2. 計画当初は2010年に試作車が完成する予定であった。
  3. ケルン市交通公社による試算では、新型車両を導入する場合400万ユーロが必要となる一方で、B形を更新する場合は160万ユーロの支出で抑えられるという結果が出されている。
  4. シュタッドラー・レールボーフム・シュタットバーンへ向けて新型電車・タンゴの製造も行っている。

出典

  1. 鹿島雅美 2005, p. 141.
  2. 鹿島雅美 2005, p. 142.
  3. KVB modernisiert komplette Stadtbahnwagen-Serie”. Kölner Verkehrs-Betriebe AG (2008年11月25日). 2008年12月3日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月30日閲覧。
  4. Die Fahrzeugflotte der Kölner Verkehrs-Betriebe”. Stadt Köln. 2020年5月30日閲覧。
  5. Department of Transportation 1976, p. 150-151.
  6. イルメリン・キルヒナー (August 2018). ドイツの「欧州大都市圏リージョン」(Europäische Metropolregion)の現状 (PDF) (Report). ベルリン駐在員レポート. 自治体国際化協会 ロンドン事務所. 2020年5月30日閲覧
  7. Department of Transportation 1976, p. 55.
  8. Frank Mlosch (2018-3). “40 Jahre Stadtbahn-Linie 16” (PDF). HVSWB aktuell (Historischen Vereins der Stadtwerke Bonn e.V.): 8-9. https://www.hvswb.de/2015/dokumente-a-daten/category/18-jahrgang-2018?download=66:hvswb-aktuell-03-2018 2020年5月30日閲覧。.
  9. Stadtbahnwagen Typ B80C8”. infoportal.mobil.nrw (2019年4月12日). 2020年5月30日閲覧。
  10. Department of Transportation 1976, p. 130.
  11. Stadtbahnwagen Typ B80/B100”. infoportal.mobil.nrw (2019年4月12日). 2020年5月30日閲覧。
  12. ESSEN . MÜLHEIM . OBERHAUSEN”. UrbanRail.Net. 2020年5月30日閲覧。
  13. Nail Pulling (2017-9). “System Factfile:BOGESTRA”. Tramways & Urban Transit No.957 (LRTA) 80: 347. http://www.bowe.cc/techlib/pdf/Tramways__amp__Urban_Transit_vol80_no957_1528736676.pdf 2020年5月30日閲覧。.
  14. Stadt Dortmund 2014, p. 112.
  15. Stadt Dortmund 2014, p. 113.
  16. FÜR DIE ZUKUNFT GERÜSTET - DIE NÄCHSTEN JAHRE BRINGEN NEUE UND MODERNISIERTE STADTBAHNEN SOWIE E-BUSSE”. DSW21 (2018年4月27日). 2020年5月30日閲覧。
  17. Michael Kochems (2018-7). “Klotzen statt Kleckern”. Strassenbahn Magazin (GeraMond Verlag GmbH): 43,46.
  18. Stadtbahn B80 Stahl”. Rheinbahn. 2020年5月30日閲覧。
  19. Stadtbahn B80 mit Bistro-Abteil”. Rheinbahn. 2020年5月30日閲覧。
  20. Stadtbahn B80 Alu”. Rheinbahn. 2020年5月30日閲覧。
  21. 宇都宮浄人 (19 January 2013). LRTとまちづくり ~経済学的視点から~ (PDF) (Report). 静岡市公共交通シンポジウム. p. 19. 2020年5月30日閲覧
  22. Bonn, Stadtbahn-Zweiterstellung”. Kiepe Electric. 2020年5月30日閲覧。
  23. Nur die Karosserien bleiben erhalten”. General Anzeiger (2008年12月30日). 2020年5月30日閲覧。
  24. Aus alt mach’ neu: Mit der Erneuerung von Stadtbahnen sind die Stadtwerke Bonn Teil der Bonner Nachhaltigkeitsstrategie”. SWB (2019年8月14日). 2019年11月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月30日閲覧。
  25. Köln, Stadtbahn-Sanierung”. Kiepe Electric. 2020年5月30日閲覧。
  26. Von Matthias Pesch (2014年6月13日). Stadtbahnen vorgestellt Neue KVB-Züge - aus den 80er Jahren”. Kölner Stadt-Anzeiger. 2020年5月30日閲覧。
  27. Vamos Dortmund – attraktive und moderne Fahrzeuge”. HeiterBlick. 2020年5月30日閲覧。
  28. Verstärkung für die BOGESTRA-Stadtbahnflotte”. BOGESTRA (2019年4月2日). 2020年5月30日閲覧。
  29. EXPANSION OF THE BOGESTRA CITY RAIL FLEET”. Stadler Rail (2019年3月29日). 2020年5月30日閲覧。
  30. 鹿島雅美 2005, p. 143.
  31. Metro trains celebrate 40 years of service”. Nexus (2015年). 2020年5月30日閲覧。
  32. Teknik Özellikler”. Burulaş Ana Sayfa. 2012年2月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月30日閲覧。
  33. BursaRay Rotterdam Araçları ve Burulaş (ÖZEL HABER)”. Rayhaber (2012年11月24日). 2013年10月31日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年5月30日閲覧。
  34. Technische Daten des Fahrzeugs Siemens B80”. Rayhaber (2001年6月). 2020年5月30日閲覧。

参考資料

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