アンクル・トムの小屋

アンクル・トムの小屋』(Uncle Tom's Cabin)は、アメリカ合衆国ストウ夫人ハリエット・ビーチャー・ストウ)の小説。『トムじいの小屋』、または原題の音訳で『アンクル・トムズ・キャビン』とも。

アンクル・トムの小屋
Uncle Tom's Cabin
初版
初版
著者 ハリエット・ビーチャー・ストウ
発行日 アメリカ合衆国の旗1852年3月20日
ジャンル 反奴隷制
アメリカ合衆国の旗アメリカ合衆国
言語 英語
コード ISBN
ウィキポータル 文学
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あらすじ

あらすじは初老の黒人奴隷トムの数奇で不幸な半生を描いている。シェルビー家に仕えていた黒人奴隷トムは、主人の息子ジョージから慕われて幸福な日々を送っていたが、そのシェルビー家が困窮したためにジョージと別れて売られていくことになる。売られていく途中、船で出会った白人少女のエヴァンジェリンを救ったことで仲良くなり、彼女に愛されるようになる。しかし、その後にエヴァンジェリンは病死し、トムの理解者だったエヴァンジェリンの父も事故死してしまい、トムは奴隷に冷たかったエヴァンジェリンの母によって悪辣な農場主レグリーに売られてしまう。レグリーの元で残虐な扱いを受けたトムは、最後にはレグリーに暴行されて死亡する。死の直前にトムは、彼を買い戻しに駆けつけたジョージと再会し、そのジョージによって丁重に葬られた。ジョージは奴隷解放、制度廃止の運動に身を投じる。この作品はトムの受難に関するものと、トムと一緒に売られそうになったハリー坊やとその両親がカナダに逃げ延びるまでのものとの二本立てになっており、後者は子供向けに翻案された作品では省かれていることが多い。

影響と評価

当時のアメリカは奴隷解放問題南北分裂の危機を抱えていたため、大変大きな反響を呼び、奴隷解放への世論を喚起する一方、奴隷制の擁護論者からは激しい批判を浴びせられた。この本の出版後、奴隷制支持者たちによるアンチ本(反トム文学)が多数出版された。それらは「優しい白人主人の元で幸せな生活を送る黒人奴隷」といった内容がほとんどであった。その中で最も有名で商業的に成功したのはメアリー・ヘンダーソン・イーストマンによる『アント・フィリスの小屋』で、上記のように「優しくて常識的な白人主人のもとで幸せな生活を送る黒人奴隷」と「北部で惨めな生活を送る労働者や自由な黒人」を小説の中で対比させ、奴隷制の素晴らしさを説いている。ロバート・M・パーシグは、本書を「優れているとはいいがたいが、当時の社会的背景を捉えたために成功した作品」と評する。その後、アメリカは奴隷解放問題を一つの引き金にして南北戦争に突入する。そこに至る上で本作の存在は無視できないものがある。その影響の大きさは、後年の開戦後にエイブラハム・リンカーン大統領が作者のストウ夫人と会見した際、「あなたのような小さな方が、この大きな戦争を引き起こしたのですね」と挨拶したという逸話からも、うかがい知ることができる。その高い知名度から、数回にかけて実写映像化された。

この作品は、黒人奴隷問題の摘発の書として知られているが、キリスト教色の非常に濃い宗教小説との評価もあるエヴァンジェリンを天使、レグリーを悪魔と見立てた上で、受難しそれを耐え忍び、自らを殺そうとするレグリーをも赦し、2人の凶暴な男に囲まれて亡くなるというトムの最期は、イエス・キリストをモチーフとする解釈も可能であるエヴァンジェリンにしても、ただ幼い死によって話の悲劇性を際立たせるだけの存在ではなく、年齢の近い黒人少女トプシーの精神を救い、その様は周囲の大人をも感化する小さな伝道者(エヴァンジェリスト)と解釈できるのであるトムの従順な態度は一見脆弱な存在に映ることもあるが、実際にはイエス・キリストの受難になぞらえているのであって、決してトムを弱い存在として作品自体は描こうとはしていない

蔑称としての「アンクル・トム」

一方で、作中のトムの従順な態度から、公民権運動以降のアメリカの黒人の間では、この作品に対する評価が否定的なものに変化している。現在、黒人の間で通常「アンクル・トム」は「白人に媚を売る黒人」「卑屈で白人に従順な黒人」という軽蔑的な形容を意味する[1]

ジンバブエムガベ大統領がアメリカのライス国務長官を“アンクル・トムの娘”と罵倒したことは、その蔑称としての意味をよく表している例である。さらに、黒人と同じく合衆国の被差別民族であるインディアンたちは、これに呼応して「白人に媚を売るインディアン」を「アンクル・トマホーク」と呼んでいる[2]

また、中国系アメリカ人は同様に、「白人に媚を売る中国系アメリカ人」を「アンクル・トン」(Uncle Tong)と呼ぶ[3]

モハメド・アリは現役当時、黒人への差別を色濃く残していた白人社会に激しい嫌悪感を抱いており、ネイション・オブ・イスラムに入信して対決姿勢を明確にしていた。そのため、白人社会に表立った不満を言わず従順でいる対戦相手の黒人選手を「アンクル・トム」と罵っていた。彼の白人社会への憎悪は強く、アーニー・テレルがわざと旧名の「カシアス・クレイ」と呼んだことに激怒して、判定まで「俺の名を言ってみろ!」と叫びながら徹底的に痛めつけ、試合後には「奴隷の名で俺を呼んだ罰だ」と発言したほどだった。

日本における出版

1897年から翌年にかけて、『國民新聞』に連載小説として掲載された。当時の邦題は『トムの茅屋』であった。

主な翻訳・再話

映画

脚注

  1. ウェブスター辞典「Uncle Tom」
  2. Lakota Woman(Mary Crow Dog, Richard Erdoes, Harper Perennial, 1991)
  3. The Tom Caricature, Jim Crow of racist memorabbia(David Pilgrim, Ferris State University, 2000)

外部リンク

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