トールハム

トールハム又はトゥールハムパシュトゥー語又はウルドゥー語 تورخم طورخم tōrkham 又は tūrkham)はアフガニスタン・パキスタン国境にある国境検問所、あるいはその検問所を中心に両国に広がる町である。すなわちパキスタンハイバル管区のトールハムとアフガニスタンナンガルハール州のトールハムが存在する。 日本では町の名をトルカム、検問所をトルカム検問所として報道されている[1]

トールハム
トールハム国境、2011年9月。
トールハム国境、2011年9月。
ナンガルハール州、西にカーブル、東にペシャワール。
トールハムの位置(アフガニスタン内)
トールハム
トールハム
トールハムの位置(パキスタン内)
トールハム
トールハム
トールハム (パキスタン)
北緯34度6分53秒 東経71度5分5秒

 パキスタン

 アフガニスタン
標高
2,579 ft (786 m)
等時帯 UTC+4:30

この検問所はパキスタンアフガニスタン間の主要な陸路国境のひとつとなっており、アフガニスタンのナンガルハール州とパキスタンの連邦直轄部族地域(FATA)とカイバル・パクトゥンクワ州をつないでいる。両国間の物流の中心となっており、もっとも繁忙な通関手続き地となっている[2][3]

概要

アフガニスタン側ではハイウェイ7がジャラーラーバードを経由してトールハムとカーブルを結んでいる[4]。パキスタン側ではトールハムはNN-5ナショナル・ハイウェイの終着点となっており、ハイバル(カイバル)峠の最高到達点からは5キロ西に位置している。東へたどるとペシャワールへ、そしてイスラマバードまで続いている。パキスタンにとってトルクハンはカラチシンド州から貨物が集まる物流の要衝であり、アフガニスタンで活動するアメリカ軍(あるいはNATO)主導の国際治安支援部隊にとっても重要な補給ルート上に位置している。そのためパキスタン政府は、パキスタン国内で無人爆撃機によるオペレーションを行っているアメリカに対する抗議として、このルートを封鎖することがある[5][6]

アフガニスタン国境警察パキスタン軍フロンティア・コープスが主にトルクハンの管理を担い、それぞれがパキスタンアフガニスタンそれぞれの正規軍からサポートを受けている。アフガニスタン側には加えて主にアメリカ軍からなるNATO軍も控えている。アメリカのトールハム前線基地(基地)は検問所から数マイル離れた場所、ナンガルハール州内に位置している。

歴史

この地は古くからアフガニスタンテュルク系民族キャラバン、時には大帝国の軍勢の通り道になってきた。彼らの多くはトールハムを経由し、ペシャワール、ラホールを経て北インドへ向かうルートをとっている。この地を訪れた歴史上の人物として、チャンドラグプタ玄奘三蔵ジャヤパーラビールーニーイブン・バットゥータバーブルフマーユーンナーディル・シャーアフマド・シャー・ドゥッラーニーザマーン・シャー・ドゥッラーニードースト・ムハンマド・ハーンムハンマド・アクバル・ハーンなどが挙げられる。

前世紀を通してパキスタンのハイバル峠鉄道ハイバル(カイバル)峠)をアフガニスタンのジャラーラーバードへ、あるいはさらに西へと延長しようという提案がなされてきた。今世紀に入ってからはアフガニスタン政府はこの提案に前向きに取り組むようになり、アフガニスタンとパキスタンの両政府は国際鉄道の敷設に関して了解覚書を交わした。このプロジェクトは2010年から始動することになった[7]

2001年11月、ニューヨーク・タイムズはトールハムがハズラト・アリーの故郷であると報道した。アリーは反タリバン民兵組織の指導者で、タリバン撤退後に権力を握った人物である[8]。ハズラト・アリーは、2人の民兵組織の指導者ムハンマド・ユーヌス・ハーリスとエザトゥッラーとともに地方暫定政府を発足させたと伝えられている。

2006年4月よりアフガニスタン国境警察は国境を越える旅行者に対し渡航文書の所持を要求するようになった[2][9]

2016年7月までにパキスタンはトールハムに国境ゲートとターミナル、その他のインフラを整備した。国境ゲートはパシュトゥー語で「パキスタンの扉」を意味する「バービ・パーキスターン」(bab-i-pakistan)と名付けられ、ターミナルは「シャヒード・メイジャー・アリー・ジャワド・チャンゲジ・ターミナル」と名付けられた。アリー・ジャワド・チャンゲジ少佐(シャヒードは殉教者の意)はアフガニスタンの治安部隊との小競り合いで殉職した士官であり、この事件がそもそもゲートを作るきっかけとなっている。これら施設の完成に合わせて、ちょうど印パ国境のワーガで行われているような国旗掲揚セレモニーも行われるようになった。アフガニスタンからパキスタンへのテロリストの侵入を防ぐため、書類に不備のあるものは国境を超えることはできなくなっている。ゲート他の整備は2014年より始まったもののアフガニスタンがたびたびプロジェクトの進行を見合わせ、完成は予定より遅れた。パキスタンはその他の主要な6か所のア・パ国境にも同様の措置をとる予定である[10]

2021年ターリバーン攻勢では、国境付近もターリバーンの支配下となりパキスタンが検問所を一時的に閉鎖した[11]が、ターリバーンが政権を奪取すると再び開放され、アフガニスタンから弾圧を逃れて脱出する人々の経路の一つとなった[12]2023年時点においては、パキスタンとアフガニスタンとの間で最も通行量の多いルートとなっているが、検問所は国境付近の武装組織の活動と両国の緊張関係から閉鎖と開放が繰り返されている[13]

気候

トールハムはステップ気候の影響を受けている(ケッペンの気候区分 BSh)。平均気温は20.3度、年間降水量は407mm。7月が最も乾燥した季節で、月の平均降水量は8mm、雨季は3月で、平均降水量は82mmとなっている。

7月は1年のうちでもっとも暑い月で、平均気温は31.0度、1月はもっとも寒く、平均気温は8.4度となる。

Torkhamの気候
1月2月3月4月5月6月7月8月9月10月11月12月
平均最高気温 °C°F 14.5
(58.1)
16.3
(61.3)
20.9
(69.6)
26.1
(79)
32.2
(90)
38.0
(100.4)
36.6
(97.9)
34.8
(94.6)
33.4
(92.1)
28.8
(83.8)
21.9
(71.4)
16.4
(61.5)
26.66
(79.97)
日平均気温 °C°F 8.4
(47.1)
10.5
(50.9)
15.0
(59)
19.9
(67.8)
25.6
(78.1)
31.0
(87.8)
30.8
(87.4)
29.5
(85.1)
27.1
(80.8)
21.4
(70.5)
14.5
(58.1)
9.7
(49.5)
20.28
(68.51)
平均最低気温 °C°F 2.3
(36.1)
4.7
(40.5)
9.1
(48.4)
13.7
(56.7)
18.7
(65.7)
24.0
(75.2)
25.1
(77.2)
24.2
(75.6)
20.8
(69.4)
14.1
(57.4)
7.2
(45)
3.1
(37.6)
13.92
(57.07)
出典:Climate-Data.org[14]

関連項目

参考文献

  1. パキスタン、国境検問所の通行再開 NATO軍向け輸送車”. AFP (2010年10月10日). 2023年12月10日閲覧。
  2. “ANP secure Torkham border” (PDF). ddrafg.com. (2006年4月4日). http://www.ddrafg.com/images/ANP/DASH-A%2004-01%20ANP%20Towr%20Kham%20border.pdf 2008年2月19日閲覧。
  3. Towr Kham Archived 2013年10月29日, at the Wayback Machine. Collins Maps. Retrieved 21 January 2011
  4. Lt. Col Gordon Phillips and State Department Representative Shawn Waddoups (2007年8月22日). “DoD News Briefing with Lt. Col. Phillips from Afghanistan”. アメリカ国防総省. http://www.defenselink.mil/transcripts/transcript.aspx?transcriptid=4025 2008年2月10日閲覧。
  5. Pakistan blocks fuel to US forces, SEPTEMBER 06, 2008
  6. “Pakistan 'to reopen key NATO Afghanistan supply route'”. BBC News. (2010年10月9日). http://www.bbc.co.uk/news/world-south-asia-11507472 2010年10月9日閲覧。
  7. Pakistan, Afghanistan ink MoU on rail links Archived 2012年3月13日, at the Wayback Machine.
  8. David Rohde (2001年11月16日). “A NATION CHALLENGED: AFGHANISTAN REDUX; Warlord Rule Is Re-emerging In Some Towns”. ニューヨーク・タイムズ. http://query.nytimes.com/gst/fullpage.html?res=9503E4D6143BF935A25752C1A9679C8B63&sec=&spon=&pagewanted=all 2008年2月19日閲覧。
  9. “Afghan Police Secure Towr Kham Border”. American Forces Press Service. (2006年4月10日). http://www.defenselink.mil/news/newsarticle.aspx?id=15504 2008年2月18日閲覧。
  10. http://dailytimes.com.pk/pakistan/28-Jul-16/torkham-gate-titled-as-bab-i-pakistan
  11. カブール空港で大混乱 タリバンを逃れようと飛行機にしがみつく人たちも”. BBC (2021年8月16日). 2023年12月10日閲覧。
  12. タリバンから逃れる歌手たち パキスタンに違法入国、隠れて生活”. BBC (2021年9月17日). 2023年12月10日閲覧。
  13. 「ようこそ」の看板めぐり検問所一時閉鎖 パキスタン・アフガン国境”. AFP (2023年12月7日). 2023年12月10日閲覧。
  14. Climate: Torkham - Climate-Data.org”. 2016年9月9日閲覧。

外部リンク

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