パイロクロア

パイロクロア (Pyrochlore) は組成式 (Na,Ca)2Nb2O6(OH,F) で表されるナトリウムカルシウムニオブ複酸化物鉱物で、ニオブとタンタルが任意の割合で固溶体となっている。ニオブが主のものがパイロクロア、タンタルが主のものがマイクロ石チタンが主のものがベタフォ石で、これらを中心としてパイロクロアスーパーグループを構成している。

パイロクロア
Pyrochlore
ウガンダ産のパイロクロア
分類 酸化鉱物
シュツルンツ分類 04.DH.15
Dana Classification 08.02.01.01 パイロクロア群
化学式 (Na,Ca)2Nb2O6(OH,F)
結晶系 等軸晶 - Hexoctahedral
対称 等軸晶 4/m 3 2/m
単位格子 a = 10.41(6) Å, Z=8
晶癖 八面体、粒状で散在または成長
双晶 111 (希)
へき開 111 不明瞭、時に裂開
断口 亜貝殻状 - 不均一、割れやすい
粘靱性 脆い
モース硬度 5.0–5.5
光沢 ガラス光沢 - 樹脂光沢
黒色、褐色、黒褐色、赤褐色、アンバー、赤橙色
条痕
透明度 半透明 - 不透明
比重 4.45 - 4.90
光学性 等方性、弱い異常異方性
屈折率 n = 1.9–2.2
その他の特性 放射性、 メタミクト化
文献 [1][2][3]
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学

外観

パイロクロアはマグマの貫入による交代作用の末期に形成される。樹脂光沢をもつ黄色-褐色の八面体で自形結晶もよく見られるが、放射性元素を含むことからメタミクト化されていることも多い。

パイロクロアは霞石閃長岩などのアルカリ性岩のペグマタイト花崗岩ペグマタイト、グライゼン中で見つかる。カーボナタイト中で濃集しニオブ鉱床を形成することもある。共存鉱物としてはジルコンエジリン輝石燐灰石灰チタン石コルンブ石などがある[1]

発見と命名

1826年、ノルウェーのヴェストフォル県ラルヴィクのスタヴェルン (フレドリクスヴェルン) の標本が記載された。 吹管分析にかけると緑に変色することから、ギリシャ語で火または熱を意味する πΰρ(pyro) と緑色を意味する χλωρός  (chlores) からパイロクロアと名付けられた[2]

結晶構造

パイロクロアの結晶構造は立方晶系において一般に「パイロクロア構造」(Fd-3m) と呼ばれる。より一般的には A、Bを共に希土類元素又は遷移金属元素としたときに A2B2O6 および A2B2O7 と表される物質(例えば Y2Ti2O7)の構造のことを言う。パイロクロア構造は単純な蛍石構造 (AO2 = A4O8) からなる超構造体で、陽イオン A と B が面方位 <110> に沿って並んだものである。また、隣接するBサイトの陽イオン間にある四面体状の隙間に陰イオンが入ることができる。これは幾何学的フラストレーションを内在する格子系であり、特異な磁気効果を生み出している。

パイロクロア構造の物質は絶縁体 (La2Zr2O7)、イオン性導電体 (Gd1.9Ca0.1Ti2O6.9), 金属性導電体 (Bi2Ru2O7-y)、スピンアイス磁性体 (Dy2Ti2O7), スピングラス磁性体 (Y2Mo2O7)、ハルデン鎖 (一次元反強磁性鎖) (Tl2Ru2O7)、超伝導体 (Cd2Re2O7)など、多様な物理的性質を示す。

ニオブ鉱山

ニオブ鉱石の三大産地はいずれもパイロクロア鉱床である。最大のものはブラジルミナスジェライス州アラシャ南方のCBMM鉱山であり、それに次ぐのがゴイアス州カタランの東にあるカタラン鉱山である。3番目に大きいのはカナダケベック州シクーティミ近郊の街サントノーレの西部にあるニオベック鉱山である[4]

パイロクロアは0.05%以上のウランやトリウムを含み、放射能を持つことが多い[5]

脚注

  1. pyrochlore at RRuff database”. rruff.info. 2015年2月3日閲覧。
  2. Pyrochlore Group: Pyrochlore Group mineral information and data.”. mindat.org. 2015年2月3日閲覧。
  3. Barthelmy, Dave. Pyrochlore Mineral Data”. webmineral.com. 2015年2月3日閲覧。
  4. J. Kouptsidis, F. Peters, D. Proch, W. Singer. Niob für TESLA”. 2008年9月2日閲覧。
  5. Dias da Cunha, K.; M. Santos, F. Zouain1, L. Carneiro1, G. Pitassi, C. Lima, C. V. Barros Leite and K. C. P. Dália (May 8, 2009). “Dissolution Factors of Ta, Th, and U Oxides Present in Pyrochlore”. Water, Air, & Soil Pollution (Springer Netherlands) 205 (1-4): 251–257. doi:10.1007/s11270-009-0071-3. ISSN 0049-6979.

参考文献

  • "Oxide Pyrochlores - A Review", M.A. Subramanian, G. Aravamudan and G. V. Subba Rao, Progress in Solid State Chemistry, Volume 15 (1983) pp. 55-143
  • Atencio, D., Andrade, M. B., Christy, A. G., Gieré, R., & Kartashov, P. M. (2010). The pyrochlore supergroup of minerals: nomenclature. The Canadian Mineralogist, 48(3), 673-698.doi: 10.3749/canmin.48.3.673

関連項目

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