モバイルファーマシー
モバイルファーマシー(英語:Mobile Pharmacy, MP)とは、医薬品を積載し、移動先で薬局の機能を提供する車両となり、主に災害派遣時に運用される。2011年3月に発生した東日本大震災を契機に宮城県薬剤師会の山田卓郎によって発明された[1]。日本語で災害対策医薬品供給車両とも表記される[2]。
概要
東日本大震災では津波の被害により大半の薬局が機能を失ったことでDMATによる災害処方箋の対処不能[3]、DMAT撤収後に薬の供給が停止した上[4]、緊急支援物資の中に医薬品が同梱されていても調剤設備が無ければ配薬することができない問題も発生した[5]。また、DMATへの薬剤師の帯同人員不足や[6]、被災者の大半がお薬手帳を失っているため服用している薬剤名もわからないなど惨憺たる状況であった[5]。震災の現場を目の当たりにした宮城県薬剤師会の山田卓郎薬剤師(現:日本薬剤師会常務理事)によってライフライン喪失下でも活動可能な移動薬局として考案され、山田はアウトドアが趣味であったことからキャンピングカーをベースにした車両を着想し[1]、埼玉県所沢市に本拠を置くキャンピングカー製造会社であるバンテック社と共同で開発が進められた[7]。この車両は最大500品目の医薬品を積載することが可能であり[8]、車内には医薬品冷蔵庫や調剤棚、分包機や電子天秤、クリーンベンチなど備えていることからその場で調剤や各種医薬品への対応が可能となった[9]。
自己完結環境を築くため車輛は調剤だけでなく対応する薬剤師の住居としての機能も兼ね備えており、3名分のベッドやシャワー、トイレ設備や発電機なども有している。この他に太陽光発電パネルや衛星電話用アンテナ、現地通話用トランシーバー用アンテナなどの通信設備も完備する[9]。
ベース車両はキャンピングカーのほか、ワンボックスカーやトラック、マイクロバスをベースとした車両の開発も行われているほか[3]、海外では大型トレーラーなども使用される[10][11]。
課題
導入コスト
車輛価格が高額であり、導入に関し一部自治体による補助があるものの各薬剤師会が負担しなければならない。また、車輛メンテナンス費用や通信費などのランニングコストが掛かる[12]。
人材不足
車輛や装備に関する知識が必要であり熟知する人材が少ない[13]。
脚注
出典
- “モバイルファーマシー 走る薬局 熊本地震で活躍実証”. 毎日新聞. (2016年10月30日)
- “能登地震でモバイルファーマシー初投入 7日早朝に出陣式、DMATやJMATに同行し調剤へ【無料公開】”. 日刊薬業. (2024年1月7日)
- “「動く薬局」被災地で活躍 命つなぐモバイルファーマシー 能登半島地震で支援”. カナロコ. (2024年3月11日)
- “薬局機能を備えた車を被災地へ”. 日本放送協会. (2024年2月7日)
- “能登半島地震、医師が感嘆「移動薬局車」の活躍”. 東洋経済. (2024年1月18日)
- “東日本大震災における活動報告書” (PDF). 日本薬剤師会 (2012年3月11日). 2024年3月23日閲覧。
- “モバイルファーマシー® 災害対策医薬品供給車両 Mobile Pharmacy”. VANTECH. 2024年3月23日閲覧。
- “重要度増すモバイルファーマシー 被災地で活躍、感染防止も”. 産経新聞. (2020年7月2日)
- “【写真14枚】移動型薬局!?モバイルファーマシーを徹底調査!”. 災害医療大学 (2022年2月15日). 2024年3月23日閲覧。
- “Upshur County Kroger location opens mobile pharmacy after fire closes store” (英語). 12WBOY. (2021年3月12日)
- “The Supply Side: Walmart’s mobile pharmacy part of a growing health agenda” (英語). TB&P. (2023年7月11日)
- “災害時などに「移動薬局」として活躍が期待されるモバイルファーマシーとは?”. ファルマラボ (2021年12月27日). 2024年3月23日閲覧。
- “災害時などに「移動薬局」として活躍が期待されるモバイルファーマシーとは?”. 東京薬科大学 (2021年12月27日). 2024年3月23日閲覧。
- 林秀樹 (2023年6月21日). “災害対策医薬品供給車両を用いた過疎地域における調剤モデルに関する実証” (PDF). 内閣官房. 2024年3月23日閲覧。
- “地域における薬剤師サービスの提供” (PDF). 厚生労働省 (2022年4月19日). 2024年3月23日閲覧。
- “災害対策医薬品供給車両を用いた過疎地域における調剤モデルに関する実証” (PDF). 内閣官房 (2022年7月13日). 2024年3月23日閲覧。

