ヴェガロケット

ヴェガイタリア語: Vettore Europeo di Generazione Avanzata, VEGA)ロケットは、欧州宇宙機関 (ESA) が開発した低軌道人工衛星打ち上げロケットである。

Vega
ヴェガロケット
基本データ
開発者 ESA/ASI
運用機関 アリアンスペース
使用期間 2012年 - 現役
射場 ギアナ宇宙センター ZLV (ELA-1)
打ち上げ数 23回(成功20回)
開発費用 710Mユーロ(2012年から2014年までの5機の打ち上げ支援金400Mユーロ含む)[1]
打ち上げ費用 約20M$(支援金により低減された価格)
原型 ゼフィーロ(計画中止)
姉妹型 Mini Vega
発展型 Vega C, ESL, ESLM, LYRA
公式ページ ESA - Launch Vehicles - Vega
物理的特徴
段数 4段
総質量 137 t
全長 30 m
直径 3.0 m
軌道投入能力
低軌道 2,300 kg
300 km / 5.2 度
太陽同期軌道 1,500 kg
700 km / 90 度

概要

ESAの主力ロケットのアリアン5静止軌道に6トンものペイロードを投入できるが、300kgから2,000kg程度の小型の科学衛星地球観測衛星低軌道 (LEO) へ経済的に打ち上げたいという需要に応えるため、高度700kmの太陽同期軌道 (SSO) に1.5トンの衛星を打ち上げられるヴェガを開発することになった。

イタリア宇宙機関 (ASI) が開発プログラムを主導しており、ロケット機体および推進システムはフィアットアヴィオ社などが担当するほか、フランス国立宇宙センター (CNES) なども開発に参加し、打上げはCNESのギアナ宇宙センターのELA1から行う。参加各国の分担比率はイタリア65%、フランス12.43%、ベルギー5.63%、スペイン5%、オランダ3.5%、スイス1.35%、スウェーデン0.8%となっている。

開発及び製造はヴェガロケットの開発及び製造を目的として2000年12月に設立されたELV S.p.Aによってなされ、最低年4機の打ち上げを確保する予定である。

当初は2006年中の初飛行を目指していたが計画は大幅に遅れ、2012年2月13日に初打上げに成功した[2]

歴史

初期の構想は1990年代初頭になされ、アリアン固体ロケットブースター (SRB) の技術を用いて小型衛星を打ち上げるロケットを補完するというものである。これは1988年にASIによって提案されたサン・マルコ・スカウト計画を引き継ぐものであった。サン・マルコ・スカウト計画は、引退したアメリカスカウトを置き換える目的でZefiro モーターを用いた新たなロケットを開発するという計画であり、スカウト2として知られている試験機が1992年に1機が失敗し、制式型として予定されていたゼフィーロも含めて凍結されていた。

1995年の段階では3段構成で高度700kmのLEOに700kgの打ち上げ能力をもつロケットであり、直径1.9mのZefiro 16 固体ロケットモーターを1,2段目として用い、3段目としてIRIS (Italian Research Interim Stage) を用いるというものであった。

1997年には2つの型式がフィアット・アヴィオ社とウクライナユージュノエ設計局の共同で提案された。

  • ヴェガ K0
    前述の構想と同様に1、2段にZefiro 16 固体ロケットモーターを用い、第3段、第4段に非対称ジメチルヒドラジン (UDMH) と四酸化二窒素 (NTO) を用いる液体ロケットエンジンであるRD-861RD-869を用いる。高度700kmの極軌道に300kgの打ち上げ能力をもつ。
  • ヴェガ K
    ヴェガ K0の第1段をアリアン5のブースターであるEAPを短縮したP85 固体ロケットモーターで置き換えたもの。高度700kmの極軌道に1,600kgの打ち上げ能力をもつ。

1998年においてASIによってアリアンのブースター技術を用いた固体ロケットとして再び提案された。同年4月にアリアン5のSRBであるEAPのノウハウを用いたものとしてESAのプリプロジェクトとして採用された。これはヴェガ Kの下段に第3段としてZefiro 7 固体ロケットモーターを使用する3段構成のロケットであり、最上段に液体ロケットエンジンを用いた軌道精度向上モジュールの採用を検討していた。打ち上げ能力は700km円軌道に2,000kgとなる予定であった。

2000年11月27日から28日にアリアンプログラムとして承認され、同年12月15日に7ヶ国による共同開発計画として正式に開始される。

最終的には2004年に現在の構成に定まった。

第4段であるAVUMの代替エンジンの開発が進行中である[3][4]

構成

主要諸元一覧
全長 30 m
外径 3 m
質量 137 t
ペイロード 2,300 kg / 300km LEO
1,500 kg / 700km SSO
段数 (Stage) 第1段 第2段 第3段 第4段 (AVUM)
使用エンジン P80 FW Zefiro 23 FW Zefiro 9 FW RD-843
各段全長 10.5 m 7.5 m 3.85 m 1.74 m
各段全径 3.0 m 1.91 m 1.91 m 2.18 m
各段質量 95,796 kg 25,751 kg 10,948 kg 968 kg
推進剤 HTPB 1912 HTPB 1912 HTPB 1912 UDMH/NTO
推進剤質量 88,380 kg 23,906 kg 10,115 kg 183 kg / 367 kg
最大推力 3,040 kN 1,200 kN 213 kN 2.45 kN
真空比推力 280 s 289 s 295 s 315.5 s
ノズル膨張比 16 25 56 -
有効燃焼時間 107 秒 71.6 秒 117 秒 667 秒
(最大)

第1段から第3段までの各エンジンは、それぞれ2度の地上燃焼試験にパスすることが義務づけられている。

第1段:P80 固体ロケットモーター
2006年11月30日、2007年12月4日の地上燃焼試験に成功[5][6]。このP80 固体ロケットモーターの技術は将来アリアン5のブースターにも採用される予定である。開発費用は123Mユーロ[7]
第2段:Zefiro 23 固体ロケットモーター
2006年6月23日、2008年3月27日の地上燃焼試験に成功[8][9]
第3段:Zefiro 9 固体ロケットモーター
2008年10月23日、2009年4月30日の地上燃焼試験に成功[10][11]
第4段:AVUM (Attitude and Vernier Upper Module) RD-843 液体ロケットエンジン
旧ソビエトのR-36大陸間弾道ミサイルのRD-869エンジンの燃焼室を流用したウクライナのユージュノエ設計局製液体ロケットエンジンである。燃料にはUDMH、酸化剤にはNTOを使用する。これによって軌道投入精度99.7%を達成する予定である。

打ち上げ実績

ヴェガ(打ち上げ実績)

回数構成打ち上げ日時 (UTC)フライトペイロード結果
1Vega2012年
2月13日10:00
VV01LARES, ALMASat-1, 7機のCubeSat(Xatcobeo, Robusta, e-st@r, ゴリアテ, PW-Sat, MaSat-1, UniCubeSat GG)成功
2Vega2013年
5月7日02:06
VV02PROBA-V, VNREDSat-1A, CubeSat1機 (ESTCube-1)成功
3Vega2014年
4月30日01:35
VV03カザフスタンの地球観測衛星KazEOSat-1 (DZZ-HR)成功

[12]

4Vega2015年
2月11日13:40
VV04IXV (弾道飛行)成功

[13]

5Vega2015年
6月23日01:51
VV05Sentinel-2A成功

[14]

6Vega2015年
12月3日04:04
VV06LISA パスファインダー成功

[15]

7Vega2016年
9月16日01:43
VV07PerúSAT-1, SkySat4機(SkySat-4, SkySat-5, SkySat-6, SkySat-7)成功

[16]

8Vega2016年
12月5日13:51
VV08GÖKTÜRK-1成功

[17]

9Vega2017年
3月7日01:49
VV09Sentinel-2B成功

[18]

10Vega2017年
8月2日01:58
VV10OPSAT 3000, VENµS成功

[19]

11Vega2017年
11月8日01:42
VV11MOHAMMED Ⅵ-A成功

[20]

12Vega2018年
8月22日21:20
VV12ADM-Aeolus成功

[21]

13Vega2018年
11月21日01:42
VV13MOHAMMED Ⅵ-B成功

[22]

14Vega2019年
3月22日01:50
VV14PRISMA成功
15Vega2019年
7月11日01:54
VV15Falcon Eye 1失敗
16Vega2020年
9月3日01:51
VV16キューブサット53基など成功
17Vega2020年
11月17日01:52
VV17SEOSat-Ingenio, TARANIS失敗
18Vega2021年
4月29日01:50
VV18Pléiades Neo 3・NorSat-3・Bravo・ELO Alpha・Lemur-2×2基成功
19Vega2021年
8月17日01:47
VV19Pléiades Neo 4・BRO-4・LEDSAT・RADCUBE・SUNSTORM成功
20Vega2021年
11月16日09:27:55
VV20CERES 1/2/3成功
21Vega-C2022年
7月13日13:13:17
VV21LARES 2・ALPHA・AstroBioおよびキューブサット4基成功
22Vega-C2022年
12月21日01:47:31
VV22Pléiades-Neo 5/6失敗
23Vega2023年
10月9日01:36
VV23THEOS-2・FORMOSAT-7R/TRITONおよび超小型衛星10機成功

ヴェガC

ヴェガC

2014年12月2日に開催されたESAの閣僚レベル会合で、ヴェガC (Vega Consolidated) の開発予算が承認された。ヴェガCは1段にP120(既存のP80と比べると推進薬を80トンから120トンへ増加)固体ロケットを使用する発展型。P120はアリアン6ロケットと共用するため、量産効果が出てコストを低減することが出来るようになる。ヴェガCは2018年に初打上を行う計画であった[23]。ヴェガの1段モータの製造ラインはこれまでイタリアにしかなかったがこの新しい1段P120に備えて2つ目の製造ラインをドイツに設置する予定。ドイツはヴェガ計画に7%の出資をしており、P120プログラムに関しては23%の出資比率を持つ。新しいP120はヴェガの1段だけでなく、アリアン6の1段(A62型で2本、A64型で4本装備)としても使用されるため、これまで年3基だった製造数が、両方のプログラムを合わせると年37基のP120が必要となる計画[24]

ヴェガCは2022年7月に運用が開始され、初号機の打ち上げに成功した[25]。しかし2022年12月に2号機の打ち上げに失敗し、運用が中断。失敗原因となった第二段に修正を加えたうえで2023年6月28日に燃焼試験が行われたが、これも別の原因で失敗しており、この時点で打ち上げ再開時期は不透明となっていた[26]

なお従来型のヴェガは2023年10月9日 (UTC) に打ち上げを再開した[27]

過去に検討された将来構想

アップグレード構想として、第2段をP80に換装するESL、第1段をより大型なP230に換装し第3段を液体エンジンエスタスに換装するESLMなどがある[28]。3,4段目をLOX/LCH4を推進剤とするMyraエンジンを採用したC10に置き換える構想のライラ (Lyra) では、太陽同期軌道 (SSO) への投入能力が2,000 kgに増大することが見込まれていた[29]。また、ライラの上段エンジンMyraをVinciに換装するロケットや、ヴェガの第2段を省きSSOに300-400kgの投入能力を持つミニヴェガも計画されていた[30]

脚注・出典

  1. Europe’s Italian-led Vega Rocket Succeeds in Debut、SPACE NEWS 2012-02-13
  2. ギアナからヴェガロケット、初の打ち上げ”. sorae 宇宙へのポータルサイト (2012年2月14日). 2024年3月3日閲覧。
  3. CLARK, S. (2012年2月14日). Vega launcher program courts German participation”. Spaceflight Now. pp. 1. 2015年5月29日閲覧。
  4. ESA keeps eye on Ukraine crisis as Vega launch nears.”. Flightglobal (2014年4月24日). 2015年5月29日閲覧。
  5. ESA: Successful firing of Vega’s first-stage motor in Kourou
  6. ESA: Vega main engine test in Kourou
  7. Vega Launcher (Avio) Archived 2010年9月18日, at the Wayback Machine.
  8. Vega's second stage motor roars to life (英語). ESA. 2024年3月3日閲覧。
  9. Successful qualification firing test for Zefiro 23 (英語). ESA. 2024年3月3日閲覧。
  10. Successful first test for Vega’s Zefiro 9-A solid-fuel rocket motor (英語). ESA. 2024年3月3日閲覧。
  11. Second firing test for Vega’s Zefiro 9A solid rocket motor (英語). ESA. 2024年3月3日閲覧。
  12. “Liftoff of Vega with KasEOSat-1”. Arianespace. (2014年4月30日). http://www.arianespace.com/news-mission-update/2014/VV03-liftoff.asp 2014年4月30日閲覧。
  13. “A suborbital success: Vega supports European space technology development with launch of the IXV spaceplane”. Arianespace. (2015年2月11日). http://www.arianespace.com/news-mission-update/2015/1260-success.asp 2015年2月15日閲覧。
  14. Vega Flight VV05 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  15. Vega Flight VV06 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  16. Vega Flight VV07 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  17. Vega Flight VV08 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  18. Vega Flight VV09 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  19. Vega Flight VV10 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  20. Vega Flight VV11 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  21. Vega Flight VV12 – Arianespace”. Arianespace. 2018年10月21日閲覧。
  22. Vega Flight VV13 – Arianespace”. Arianespace. 2018年11月21日閲覧。
  23. “Frequently asked questions on Vega”. ESA. (2015年2月9日). http://www.esa.int/Our_Activities/Launchers/Launch_vehicles/Frequently_asked_questions_on_Vega 2015年2月15日閲覧。
  24. “ESA Ministerial Produces a Few Surprises”. SpaceNews. (2014年12月12日). http://spacenews.com/esa-ministerial-produces-a-few-surprises/ 2015年2月15日閲覧。
  25. 欧州の新型ロケット「ヴェガC」初打ち上げに成功 ESAに新たな宇宙輸送手段が加わる”. sorae 宇宙へのポータルサイト (2022年7月20日). 2024年3月3日閲覧。
  26. 「ヴェガC」ロケット第2段の燃焼試験失敗 打ち上げ再開時期は不透明”. sorae (2023年7月15日). 2023年7月16日閲覧。
  27. アリアンスペース、ヴェガロケットの打ち上げに成功 台湾が初めて独自開発した気象衛星を搭載”. sorae (2023年10月17日). 2024年3月6日閲覧。
  28. Internet Reference Guide to Space Launch Vehicles - Vega Versions
  29. Engine for the future Lyra launch vehicle is ignited (Avio)
  30. Future Launchers Preparation (CNES) - P.19 / 2007-10-15

関連項目

外部リンク

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