先取特権
先取特権(さきどりとっけん)とは、一定の類型に属する債権を有する者に付与される、債務者の財産について他の債権者に先立って自己の債権の弁済を受ける権利(民法第303条)。
- 民法について以下では、条数のみ記載する。
概説
先取特権の性質
先取特権は、債権者平等の原則を破るものであるから、本来は軽々しく認めるべきものではない(ドイツ民法やスイス民法にはこの制度はない)。しかし、特に公平の観点から法定担保物権として設けられている。
民法上の先取特権
動産先取特権
以下に掲げる原因より生じた債権を有する者は、特定動産の先取特権を有する(311条)。
- 不動産の賃貸借(312条〜316条、319条)
- 旅館の宿泊(317条、319条)
- 旅客又は荷物の運輸(318条、319条)
- 動産の保存(320条)
- 動産の売買(321条)
- 種苗又は肥料(蚕種又は蚕の飼養に供した桑葉を含む)の供給(322条)
- 農業の労役(323条)
- 工業の労務(324条)
動産の先取特権の順位は、原則として上記に掲げる順序に従う(330条)。
債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない(333条)。
不動産先取特権
以下に掲げる原因より生じた債権を有する者は、特定不動産の先取特権を有する(325条)。
先取特権の順位
不動産の保存・工事の先取特権は高順位の担保権に優先するが、不動産の売買の先取特権は担保権と同じ優先度である。そのために、不動産の売買の先取特権は、担保権実行時の優先順位の変更の効果は発生しない。また、登記された一般の先取特権は、登記されていない一般の先取特権に優先する。
「先取特権保存登記」も参照
特別法上の先取特権
- 国税徴収法上の先取特権
- 国税徴収法8条により、原則として国税は納税者の総財産について全ての公課その他の債権に先だって徴収される(国税優先の原則)。
- 地方税法上の先取特権
- 地方税法14条により、原則として地方団体の徴収金は納税者や特別徴収義務者の総財産について、国税などを除き、すべての公課その他の債権に先だって徴収される。
- 建物区分所有法上の先取特権
- 建物区分所有法7条により、管理者・管理組合法人等は、職務上の債権(マンションの管理費が代表的な例である)等について、債務者の区分所有権等の上に先取特権を有する。
- 行旅病人及行旅死亡人取扱法の先取特権
- 行旅病人及行旅死亡人取扱法第15条により、その費用に関しては「行旅病人行旅死亡人及其ノ同伴者ノ救護若ハ取扱ニ関スル費用ハ所在地市町村費ヲ以テ一時之ヲ繰替フヘシ」とされ、具体的な費用徴収に関しては
- 15条第2項「前項費用ノ弁償金徴収ニ付テハ市町村税滞納処分ノ例ニ依ル」
- 15条第3項「前項ノ徴収金ノ先取特権ハ国税及地方税ニ次グモノトス」 と規定されている。
脚注
- 昭和58(オ)1548 最高裁判所 昭和60年7月19日
外部リンク
- 『先取特権(さきどりとっけん)』 - コトバンク
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