全統模試

全統模試(ぜんとうもし)とは、主に大学受験対策として、大手予備校河合塾と株式会社全国進学情報センターが実施している模擬試験の総称のことである。1972年に開始された[1]。正式名称は全国統一模擬試験(ぜんこくとういつもぎしけん)である。

概要

「模試の河合」と呼ばれるように河合塾の看板的存在であり、他の大手予備校・学習塾・通信教育会社(駿台予備学校代々木ゼミナールベネッセZ会東進ハイスクールなど)が主催する大学入試模試よりも受験者総数が圧倒的に多いとされており、2019年度の年間受験者数は延べ299万人余りであった[2]。この「年間受験者数」が、同じ公開試験であるTOEIC英検の年間受験者数を上回る年もある。

また、地方の予備校や、独自に模試を実施できない中小予備校では、信頼性の高い「模擬試験」として、河合塾の「全統模試」を採用することもある。

全統マーク模試(2020年2月以降は「全統共通テスト模試」)と全統記述模試は、全統模試の2枚看板であり、毎年多くの受験生を集めている。2007年8月に実施された「第2回全統マーク模試」には34万1447人、9月に実施された「第2回全統記述模試」には27万7331人の受験生が参加した。

なお、全統模試の実施・運営業務は、株式会社全国試験運営センター(NEXA)が受託している[3]

沿革

  • 1972年 - 河合塾としては初めてとなる全国統一模擬試験を実施[1]
  • 1974年 - 駒場校の開校を前にして、日本初の特定大模試である「東大入試オープン」を実施[1]
  • 1989年 - 大学共通第1次学力試験の廃止と大学入試センター試験の開始にあわせ、全統一次模試を廃止し、全統マーク模試を開始。
  • 年不明 - 河合塾とZ会との提携を開始。
  • 2019年
    • 4月 - 河合塾とZ会との提携が解消された為、「即応オープン」と「プレステージ」をそれぞれ河合塾独自の「入試オープン」と「プライムステージ」に変更。ブラウザ上で復習,成績確認が可能なソフトウェアである模試ナビ(河合塾 全統模試学習ナビゲーター)の運用を開始。
    • 6月9日 - 2021年から大学入試共通テストを開始することを踏まえ、高1生と高2生を対象に本校傘下の株式会社河合塾マナビスと共同で「大学入学共通テストトライアル」を初めて実施[4][5]
  • 2020年
    • 4月 - COVID-19感染拡大の影響により、同年5月に一般向けに実施予定であった第1回全統共通テスト模試、第1回全統記述模試、プライムステージ、第1回全統高2模試、第1回全統高1模試の中止が決まった[2]。また、代替手段として、一般受験生向けには中止となった試験を自宅受験し、解答を返送する「特別受験サービス」が行われた[6]

特徴

「河合塾の偏差値」の意味

河合塾では、合格者と不合格者の割合が、ちょうど半々に分かれる偏差値の値を、ボーダーライン=偏差値と定義している[7]

例えば、河合塾によって「『偏差値60』とされる大学・学部」というのは、「河合塾の『全統模試』を受験した結果、『偏差値が60』」であれば、「その学部に合格できる確率は50%」、「合格可能性が半分」であることを意味する[7]

「Fランク・BFランク」の意味

「倍率」が高く『狭き門』となる大学・学部、すなわち「受験者数が多く、『不合格』となる受験者が多い、高倍率の大学・学部であればあるほど」、確度の高い偏差値(ボーダーライン)の算出が可能である。

一方、不合格者数の少ない大学・学部については、精度の高い偏差値の算定が難しい。よって、河合塾では、『不合格者数が少ないため、合格率50%となるボーダーラインが、どの偏差値帯においても存在しない』学部・学科について、「ボーダーフリー(BF)」としている。

河合塾では、「不合格者数が少ない」大学・学部の偏差値の算定をせずに、ボーダーラインを設定しない「ボーダーフリー(Border Free)」とし、その頭文字をとって「BFランク」としている(以前は、「Fランク」の表記を使用)。したがって、「BFランク(Fランク)」というのは、「不合格者数の少ない大学・学部(倍率の低い大学・学部)」というのが正確な意味である。

『後期入試に該当するものはボーダーラインを設定していません。』と、河合塾がことわりをするように、『倍率』がある程度高い場合でも、そもそもの『定員枠』が少なく、「不合格者数の少ない」、国公立大学の「後期日程入試」でも、精度の高い偏差値の算出が困難なため、河合塾はボーダーラインを設定せず「ボーダーフリー(BF)」、「BFランク・Fランク」としている。

「信頼性」とその「影響力」

同じ業界の中でも大きな母集団を誇る全統模試を基にした河合塾の偏差値データは、受験生に強い影響力を持つ。一例として、「Fラン(F欄、Fランク)大学」という用語は、河合塾が行った、偏差値による大学分類を出所とする「俗語」である[8]

河合塾の偏差値に、高い信頼を寄せるのは、受験生のみではない。受験生の動向に関心を寄せる大学にまで、その影響が及ぶため、河合塾は大学に対してまで大きな影響力を持つ特異な存在として取りあげられている[9] [10]

模試の種類

2021年度実施分より、共通テスト模試(マーク式)と全統模試(記述式)については紙媒体での返却は一切なく、「模試ナビ」で成績資料データで確認することとなる。但し、特定大模試(〇〇大入試オープン)は従来通り、個人成績資料および答案用紙は紙媒体による返却となる。

高3・高卒生対象

全統共通テスト模試
  • 大学入学共通テストマークシート形式の私大入試対策の模試である。試験科目は英語(リーディング、リスニング)、数学(I、Ⅰ・A、Ⅱ、Ⅱ・B)、国語、理科(物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎、物理、化学、生物、地学)、地理・歴史(地理B、日本史B、世界史B)、公民(現代社会、倫理、政治・経済、倫理・政治・経済)の中からの選択制である。日本史A、世界史A、地理Aは受験不可能。例年では4月下旬、7月下旬、10月下旬の3回が行われる。
全統プレ共通テスト
  • 大学入試共通テスト対策の模試である。試験科目は全統共通テスト模試に加え、日本史A、世界史A、地理Aも受験可能。例年では11月下旬に行われる。
全統記述模試
  • 国公立大二次試験・私大入試(記述・論述式問題)対策の模試である。試験科目は英語、数学(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)、国語(現代文・古文・漢文)、理科(物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎、物理、化学、生物、地学)、地理・歴史(地理B、日本史B、世界史B)、公民(倫理、政治・経済)の中からの選択制である。例年では5月中旬、8月下旬、10月中旬の3回が行われる。
オープン
  • 「特定大オープン模試」とも呼ばれる[11]、大学別の入試形式及び傾向対策の模試である。試験科目は国公立前期日程試験及び私立大学の入試時のそれぞれの学部・学科・系のものが直接反映されている[12]
  • 下記のうち、東大、京大、名大は、年2回開催であり、第1回は8月上旬、第2回は10月下旬 - 11月上旬に実施される。それ以外は年1回、10月 - 11月上旬に実施される。
プライムステージ
  • 難関大学志望者向けの模試。試験科目は英語、数学(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)、国語(現代文・古文・漢文),理科(物理、化学、生物)、地理・歴史(地理B、日本史B、世界史B)の中からの選択制である。例年では4月に行われる[13]

高2生対象

全統高2模試
  • 例年では5月下旬、8月下旬、10月下旬の3回が行われる。形式は全統記述模試と同様だが、科目は英語、数学、国語(現代文・古文・漢文)の3教科のみである。
全統記述高2模試
  • 例年では1月下旬に行われる。形式は全統記述模試と同様であり、科目は英語、数学(Ⅰ・A・Ⅱ・B)、国語(現代文・古文・漢文)以外に、理科(物理基礎、化学基礎、生物基礎、地学基礎、物理、化学、生物)、地理・歴史(地理B、日本史B、世界史B)、公民(倫理、政治・経済)が追加されたものの中からの選択制である[14]
全統共通テスト高2模試
  • 例年では1月下旬に行われる。試験科目は全統共通テスト模試と同様である[15]
高2プライムステージ
  • 難関大学志望者向けの模試。試験科目は英語、数学(Ⅰ・A・Ⅱ・B)、国語(現代文・古文・漢文)、理科(物理、化学、生物)、地理・歴史(地理B、日本史B、世界史B)の中からの選択制である。例年では10月に行われる[16]

高1生対象

全統高1模試
  • 例年では5月下旬、8月下旬、10月下旬、1月下旬の4回が行われる。形式は全統記述模試と同様だが、科目は英語、数学、国語(現代文・古文・漢文)の3教科のみである。
高1プライムステージ
  • 難関大学志望者向けの模試。試験科目は英語、数学(Ⅰ・A・Ⅱ)、国語(現代文・古文・漢文)の3教科である。例年では10月中旬に行われる[17]

廃止された模試

全統一次模試
  • 大学共通第1次学力試験の廃止に伴い、「全統マーク模試」に名称が変更、形式の一部を引き継ぐ形で消滅した[18]
全統マーク模試・全統センター試験プレテスト・全統マーク高2模試
  • 大学入試センター試験の廃止に伴いそれぞれ「全統共通テスト模試」「全統プレ共通テスト」「全統共通テスト高2模試」に名称が変更、形式の一部を引き継ぐ形でそれぞれ消滅した[18]
全統論文模試
  • 国公立大・私立大・短大の一般入試における論述型試験(小論文など)対策の模試であった。例年では9月下旬 - 10月上旬に行われていた。
プレステージ
  • Z会との共催模試の一つとして高3・高卒生向けに、例年4月頃に開催されていた。Z会との提携解消により消滅し、現在は河合塾単体で「プライムステージ」が実施されている[19]
高2プレステージ
  • Z会との共催模試の一つとして、例年10月頃に開催されていた。高2生向けの模試としては珍しく理科(物理、化学、生物)、地理・歴史(地理B、日本史B、世界史B)の試験があった。Z会との提携解消により消滅し、現在は河合塾単体で「高2プライムステージ」が実施されている。
高1プレステージ
  • Z会との共催模試の一つとして、例年10月頃に開催されていた。試験科目は英語、数学、国語の3教科のみであった。Z会との提携解消により消滅し、現在は河合塾単体で「高1プライムステージ」が実施されている。
即応オープン(東大即応オープン・京大即応オープン・阪大即応オープン)
  • Z会との共催模試として現在の「オープン」とほぼ同じ日程で行われていた。Z会との提携解消によって消滅し、現在は河合塾単体で「オープン」が実施されている[18]
全統難関15私大模試
  • 難関私立大学15校の入試対策の模試として扱われており、例年では7月中旬と10月に行われていたと考えられる[18]。開始時期は不明だが、2000年を以て廃止したと言われている。
全統私大・短大模試
  • 中堅私立大学・短大入試対策の模試として扱われており、例年では7月中旬と10月に行われていた。開始・消滅時期は不明[18]
全統私大模試
  • 「全統難関15私大模試」と「全統私大・短大模試」を統合し、私大入試対策に焦点が置かれた模試と考えられる。少なくとも2018年以降は実施されていない。
全統医進模試
  • 国公立大医学部医学科二次試験、上位私大医学部医学科の入試対策の模試である。例年では11月中に行われていた。この模試では面接は行わない為、科目試験のみで判定を出す。しかし、この模試の科目試験は英語、数学(Ⅰ・A・Ⅱ・B・Ⅲ)、理科(物理、化学、生物)からの選択制であり、国語は課さないため、東京大京都大名古屋大等の個別学力検査で国語が課される大学は国語を除いた得点で合格可能性判定が為されていた[20][21]。2021年度実施分に関しては、ラインアップから外れている。
第1回 東北大入試オープン
  • 2020年度実施分まで、夏休みに第1回、秋に第2回、と年2回開催されていた。ところが2021年度実施分では、例年第1回に相当する時期での開催ではラインアップから外れており、第2回に相当する時期で年1回のみの開催となっている。これに伴い、「東北大入試オープン」に名称が変更された。
広大入試オープン
  • 2020年度実施分まで、秋に1回開催されていた。ところが2021年度実施分では、ラインアップから外れている。

トライアル・関関同立大入試プレステージ

正確には全統模試ではないイベントであるが、河合塾では「実際に答案採点または集計して統計を取る」公開型のテストゼミも実施している。

大学入学共通テストトライアル
  • 10月に実施。高1・高2生対象。河合塾と河合塾マナビスとの共催。試験科目は英語、数学、国語の3教科である。
関関同立大入試プレステージ
  • 毎年河合塾近畿地区が独自に実施するイベントである。科目は英語、国語、地歴公民が中心で、数学、理科の選択は出来ない[22][23]
    • 関西大学入試プレステージ
    • 関西学院大学入試プレステージ
    • 同志社大学入試プレステージ
    • 立命館大学入試プレステージ
トライアル
  • 2月に実施される。
    • 東工大トライアル(数学のみ実施)
    • 一橋大トライアル(英語、数学のみ実施)

関連書籍

2020年現在でも一部の模試の過去問は河合出版より問題集として発売され、市販されている[24]

  • 記述総合問題集 - 全統記述模試の過去問を収録した問題集であった。河合出版になって以降は発売されていないと思われる。なお、正式な書名は「(発売年度)記述総合問題集(試験科目名)」であった。
  • マーク式総合問題集 - 全統マーク模試の過去問及びセンター試験を収録した問題集である。収録方法が科目によって異なるので注意すること。なお、正式な書名は「(発売年度)マーク式総合問題集(科目名)」である[25]。販売している科目は、英語,国語,日本史B,世界史B,地理B,現代社会,倫理,政治・経済,「倫理,政治・経済」,数学Ⅰ・A,数学Ⅱ・B,物理基礎,化学基礎,生物基礎,地学基礎,「化学基礎,生物基礎」,「化学基礎,地学基礎」物理,化学,生物,地学である。大学入試センター試験の廃止、及び大学入学共通テストの実施開始に伴い、「総合共通テスト問題集」と改称された。
  • 入試攻略問題集 - 特定大オープン模試の過去問を掲載したものである。2020年現在は東京大学,京都大学向けの英語,数学,国語,理科,地歴を、名古屋大学,広島大学,九州大学向けの英語,数学を販売している。なお、名古屋大学,広島大学,九州大学向けの国語,理科,地歴の問題集や北海道大学,東北大学,東京工業大学,一橋大学,大阪大学,早稲田大学,慶應義塾大学向けの全受験科目の問題集は2020年現在もなお未発売若しくは発売見合せとなっている。

その他

  • 「全統模試」は河合塾による登録商標(商標登録番号日本第3061161号)である。
  • 受験の申込みはオンラインのほか、場合によっては所属高校や塾などを通して行われる。
  • 特定大オープン模試においての成績優秀者は答案返却時に冊子に氏名を掲載することが出来る。
  • 同じ模試であっても、地域によって開催日の異なる場合がある。
  • 模擬試験の実施会場は、全国の河合塾校舎や大学・公共施設が利用される。

脚注

  1. 河合塾の歴史2020年4月23日閲覧
  2. 全統模試案内(2020年4月29日のアーカイブ)
  3. 河合塾人材募集|河合塾モバイル(総合教育機関・予備校・塾・大学受験)”. www.kawai-juku.ac.jp. 2020年5月1日閲覧。
  4. 正確にはイベントであるため、厳密には全統模試ではない。
  5. 全統模試案内 | 大学受験の予備校・塾 河合塾”. web.archive.org (2020年5月27日). 2020年5月28日閲覧。
  6. 偏差値と順位の関係は如何に|医の知の森<近畿地区医学科進学情報センター>
  7. 現在ではここから派生して、小中高も含め「校則が緩く生徒の自由がきき過ぎる学校」や「偏差値の極端に低い学校」を揶揄する意味で使われる事もある
  8. 「名古屋が日本を支配する---『河合塾』から『牡丹と薔薇』まで、止まらぬ勢い」 AERA 2004年5月17日号
  9. 「大学を指導する予備校『河合塾』--- 中京資本の恐るべき『実力』」 選択 2005年7月号
  10. 特定大入試対策 2020年5月27日閲覧。
  11. これには早稲田大学創造理工学部建築学科の試験の一つである「空間表現」も反映されている。
  12. プライムステージ2020年4月29日閲覧
  13. 全統記述高2模試2020年4月29日閲覧
  14. 全統共通テスト高2模試2020年4月29日閲覧
  15. 高2プライムステージ2020年4月29日閲覧
  16. 高1プライムステージ2020年4月29日閲覧
  17. 2018年度プレステージの案内書(pdf) 2020年4月29日閲覧
  18. 全統医進模試2020年4月29日閲覧
  19. 判定対象科目評価科目一覧(pdf)2020年4月29日閲覧
  20. 関関同立志望者必見!関関同立対策が出来る模試情報まとめ(2018年版)
  21. 入試プレステージの案内(pdf)
  22. かつては「進学研究社」からの発売であった。
  23. 共通一次時代は「共通一次式問題集」と言う名称であった。

関連項目

外部リンク

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