山中竹春

山中 竹春(やまなか たけはる、1972年昭和47年)9月27日[1] - )は、日本政治家科学者、データサイエンティスト。横浜市長(1期)。横浜市立大学元特命副学長、医学部教授。専門はデータサイエンス

山中 竹春
やまなか たけはる
生年月日 (1972-09-27) 1972年9月27日(51歳)
出生地 日本の旗 日本 埼玉県秩父市
出身校 早稲田大学政治経済学部経済学科
早稲田大学理工学部数学科
早稲田大学大学院理工学研究科
前職 横浜市立大学特命副学長、同大学医学部教授
所属政党 無所属
称号 理学博士
公式サイト 山中竹春(やまなか たけはる) OFFICIAL WEB SITE

第33代 横浜市長
当選回数 1回
在任期間 2021年8月30日 - 現職

来歴

埼玉県秩父市出身。早稲田大学本庄高等学院在学中はラグビー部に所属。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業および同大学理工学部数学科卒業。文系、理系2つの学士を有する。同大学大学院修了後、2003年に博士号を取得[2][3]

九州大学医学部附属病院文部教官助手、アメリカ国立衛生研究所(National Institutes of Health)研究員国立がん研究センター部長などを経て、2014年、横浜市立大学医学部教授に就任。40代で医学部教授、特命副学長、学長補佐、大学院データサイエンス研究科長など、同大学の要職を歴任した[2][3]

過去の公職

文部科学省科学技術・学術審議会専門委員、厚生労働省厚生科学審議会臨時委員、厚生労働省先進医療技術審査部会構成員、厚生労働省高度医療評価会議構成員、内閣府数理・データサイエンス・AI教育プログラム認定制度検討会議構成員、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)専門委員、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)課題評価委員等を歴任[2][3]

2021年横浜市長選挙

2021年6月に横浜市立大学医学部を退職し、同年8月の横浜市長選挙に立候補した。写真は選挙期間中の横浜市南区弘明寺商店街にて。

山中のほか、首相側近の大臣、現職市長、元内閣府副大臣、前神奈川県知事、元長野県知事らが出馬する異例の大混戦となったが、選挙告示となる8月8日から2日後、朝日新聞が電話調査の結果を公表し、自民党・公明党が支援する小此木八郎との差について「小此木がわずかな差で先行し、山中と林が激しく追う展開」と報道[4]した。有権者に対する山中の主張の明確さや菅政権への政権不信から[5]、選挙中盤で情勢は逆転し、8月15日、神奈川新聞が電話世論調査の結果を「山中氏先行、追う小此木氏 林・松沢・田中氏続く」と報じた[6]。投開票日の8月22日、複数のメディアが投票締め切りの午後8時ちょうどに山中の当選確実を報道。506,392票(33.59%)を獲得し[7]、他候補を大差で破り初当選した[8][9][10]。単独選挙では最も高い投票率(49.05%)となり、市内18区のうち17区で山中が得票数トップとなった。小此木は衆院議員時代に地盤とした鶴見区でのみトップの得票数であったが、2位の山中との差はわずか1,489票だった[11]。2021年8月30日、横浜市長に就任し、横浜市庁舎に初登庁した[12][13]

政策

出産費用ゼロの実現

加速化する人口減少を見据えて、自治体間の住民獲得競争もます中、「選ばれるまち」になるため、2024年4月から国の出産育児一時金50万円とは別に、出産費用を最大9万円助成する独自事業を始めた。横浜市の調査によると、横浜市内の公的病院で要する出産費用の最大値は約57万6千円となっており、産科医療補償制度の掛け金1万2千円を含めてカバーできるようにした。[14]

カジノ・IRの誘致撤回

横浜市議会はカジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致を推進した自民・公明会派が多数を占めており、山中の手腕が問われていたが、市長就任から11日後の2021年9月10日、所信表明演説において、「誘致に反対する多くの市民の声にしっかり応え、誘致の撤回を宣言する」と正式に表明した。市の計画では、資格審査を通過した2グループから事業者を選定する予定であったが、「事業者選定のプロセスを直ちに中止して、必要な手続きを速やかに進める」と述べ、林市長時代に設置された専門部署「IR推進室」の廃止も明言した。市のIR推進室は10月1日に廃止された。[15]

山中は、IR誘致の経緯を振り返り今後の施策に生かす目的で、誘致の経緯にかかる検証を指示し、市は2022年9月に最終報告書を取りまとめた。報告書の外部有識者による考察では、「消費はIR内で完結し、地域の経済効果はマイナスになることも想定される」「(最大1200億円とした)市への増収効果の試算は条件設定や仮定の置き方によって大きく増減する」などの検証結果が示され、「IRは不確定要素が多く、効果が期待通りにならない事業リスクがあった」と結ばれた。[16]

「新たな劇場」建設の中止

前市長の林文子は、みなとみらい21地区60・61街区に「世界トップレベルのバレエ・オペラの日常的公演」ができるような劇場を建設する構想を立て[17]、2019年6月14日、「横浜市新たな劇場整備検討委員会」を設置[18]した。建設費は約480億円、開業後の運営費は年約45億円と試算され、収入は市費が年約14億円で残りはチケット収入や国の補助金などをあてこむとされた[17]。山中は「オペラ座建設の中止」を公約に掲げて、計画を撤回した。

中学校給食の実現

横浜市では数十年にわたり中学校給食の全面実施が実現してこなかった。背景には市議会の一部に「母親が愛情弁当を作るべき」という考えが根強くあり、歴代市長がそういった声に配慮してきたことがあったとみられる[19][20]。山中は中学校給食を「全員制」に転換した上で、デリバリー方式による全員分の供給体制を準備することなどを盛り込んだ中期計画を2022年12月に可決させた。これにより、2026年4月から中学校の全員給食が実現することになり、長年にわたった横浜市の中学校給食問題は一気に解決に向かった[21]

こどもの医療費の無償化

2歳までを全額助成の対象としていた横浜市の小児医療費について、山中は2023年8月から、中学校卒業までの全額助成に引き上げる方針を決めた[22]。政令市における全額助成は名古屋市とさいたま市の2市に留まっていたが、対象人口の規模が最大となる横浜市が2021年8月に全額助成を公表した以降、政令市を含む全国の各自治体で無償化を決定する動きが相次いだ[23]

コロナ対策

山中の市長就任時は、新型コロナウイルス感染拡大第5波の最中であったが、就任直後の2021年9月17日に「ワクチン接種の加速化」「医療提供体制の拡充」を柱とした「新型コロナウイルス感染症対策加速化プラン~Acceleration Plan~」を公表した[24]

前市長時代に、ワクチン接種の予約が取りづらいといった苦情が多く寄せられた反省を踏まえ、担当職員を数倍に増大させたほか、予約システムのオンライン化、接種券送付時期の大幅前倒し、夜間や早朝接種の実施[25]、若者向け接種センター開設[25]、予約なし接種の実施[26]、市内郵便局による予約代行などを次々に行い、ワクチン接種率を政令市トップクラスに回復させた[27]

第5波の終息以前から第6波に備え、異例の短期間でコロナ専門病院を開院[28]。同病院は2022年9月末までに1280名の患者受け入れを行い、全国でも有数の治療実績を有する病院となった[29]

第6波中の2022年1月26日には、全国20の政令市で作る指定都市市長会をとりまとめて、新型コロナウイルスの感染者を全て保健所に届け出る運用を見直すよう求める要望書を国に提出[30]、保健所の負担軽減に向けた全国的に最も早い対応として注目された。さらに感染者の出た保育園や小中学校において濃厚接触者の同定までの手順や学級閉鎖基準を県に先駆けて見直した[31][32]

2022年1月の第7波では感染拡大による検査キットの需要増によるキット不足が全国的に広がる中、休園が相次ぐ保育園の職員や医療機関をはじめエッセンシャルワーカーに対して、事前に備蓄しておいた抗原検査キットを配布する独自の取り組みを行った[33][34]。来院が殺到していた市内の発熱外来にも抗原検査キットを配布する取り組みを始め、軽症の来院者には自主検査を促し、重症化リスクの高い人が優先的に受診できるようにした[35]

2022年8月末からは、物価高騰下の市民生活を支援する目的で、スマホで撮ったレシート画像を送れば、購入価格の2割が還元される「レシ活VALUE」を実施した。手続きの手軽さもあり、2か月間で約35万人が利用し、351億円もの市内経済効果を生み出す反響があった。[36][37]

ウクライナ支援

山中はロシアのウクライナ侵攻を受けて避難したウクライナ避難民に対し、早くから、市独自の支援メニューによる避難民受け入れを積極的に行った。横浜市営住宅への入居、銀行口座の開設、医療機関の手配、子供の学校入学等をサポートする他、市内企業と共に横浜市営住宅へ入居する際の生活家電や家具の手配を行った[38]。さらに市内に「カフェ ドゥルーズィ」を開設して、ウクライナ避難民同士が母国語で交流できる場や日本語教室・就労支援セミナー開催の場として活用するほか[39][40][41]、元プロ野球選手アレックス・ラミレス氏やオリンピック柔道金メダリスト井上康生氏ら著名人と連携した避難民支援イベントを実施した。また、ロシアの攻撃により水道施設が機能停止した姉妹都市オデーサ市には、移動式浄水装置を隣国ポーランド経由で緊急搬送する独自の取り組みを行った[42][43]。山中のリーダーシップによる横浜市の支援に対して、第11代国連難民高等弁務官フィリッポ・グランディ氏は、「横浜市のウクライナ支援は手本。日本全体に広げてほしい」とエールを送った[44]

旧市庁舎売却問題への対応

林文子市長時代の2020年1月31日、地上32階建の市役所新庁舎が完成した[45]。旧市庁舎のあった街区については、企業コンソーシアムによって再開発されることが決まり[46]、同年12月25日、建物の売買予約などの契約が締結された[47]。しかし、2021年5月、市民団体や無所属の市議らが「旧市庁舎の売却額が不当」として、市に売却契約の差し止めを求める住民訴訟を起こした[48][49]

2021年8月30日に新市長に就任した山中は、9月16日に行われた市議会本会議で、売却価格の妥当性について「早急に確認する」と述べ[50][51]、複数の第三者専門家による価格の再検証を実施した。再検証の結果、「価格算定は妥当」と判断できたとして、同年9月30日に企業コンソーシアムと正式に契約を結んだ[52]

市長就任前の事項

コロナ抗体研究の成果

2020年12月2日、山中は研究グループを代表して会見し、新型コロナウイルスへの感染を防ぐ「中和抗体」についての新たな調査結果を発表した[53]。2021年5月12日、さらにコロナに関する日本初の抗体研究の結果を発表。データに基づく客観的な結果として、全国的な注目を集めた[54][55]。また、医学データサイエンスの専門家として活躍し、2020年の日本癌治療学会では医師以外で初めて最優秀演題賞を受賞した[56]

ポビドンヨード

2020年8月、吉村洋文大阪府知事は、松井一郎大阪市長大阪府立はびきの医療センターと共同で記者会見を開き、ポビドンヨード(イソジン)とコロナ感染の関係に関する同センターの研究結果を発表した。この説明の際に吉村が使用した資料(フリップボード)にデータの解析者として、横浜市大医学部教授の山中の名前が記されていた[57]。会見から1年近くが経過した2021年6月、ネットメディアが「横浜市長選候補の山中教授 あのイソジン会見に関与」と題した記事を掲載[58]。7月、山中は自身のウェブサイトで「研究チームの一員として関わった事実はない」と説明した[59]。山中は大阪府に対し、ネット上の会見時資料から自身の名前を削除するよう求め、府は事実関係を確認後、削除に応じた[60]

経歴に関する指摘

2021年8月の横浜市長選期間中から選挙後にかけて、郷原信郎は、山中が世界最大の医学研究所であるアメリカ国立衛生研究所(NIH)の職歴を詐称していると自身のブログやSNSで拡散した[61]。当時、郷原は同市長選に出馬する意向を表明していたが、立憲民主党と郷原の協議は物別れに終わり、同党が山中の推薦を決めたことから、出馬を取りやめて山中の落選運動を行うと宣言していた[62]。山中は市長就任後の定例会見において、「2002年7月から2004年6月の間、研究者として在職していたという証明書がNIHから届いている」ことを明らかにした[63]

脚注

注釈

    出典

    1. 『全国歴代知事・市長総覧』日外アソシエーツ、2022年、154頁。
    2. プロフィール 山中竹春 OFFICIAL WEB SITE”. 2023年1月31日閲覧。
    3. 市長の部屋 プロフィール”. 2024年3月17日閲覧。
    4. “小此木氏わずかに先行、山中氏ら猛追 横浜市長選情勢調査”. 朝日新聞. (2021年8月10日). https://www.asahi.com/articles/ASP8B6X94P8BUZPS001.html 2021年8月22日閲覧。
    5. “横浜市長選 政権不信が与党の惨敗招いた”. 読売新聞. (2021年8月24日). https://www.yomiuri.co.jp/editorial/20210823-OYT1T50193/ 2021年8月25日閲覧。
    6. 世論調査:山中氏先行、追う小此木氏 林・松沢・田中氏続く 横浜市長選”. カナロコ by 神奈川新聞. 2022年4月15日閲覧。
    7. 横浜市長選挙(令和3年8月22日執行)”. 横浜市. 2021年8月23日閲覧。
    8. “横浜市長選 立民推薦の山中竹春氏 当選確実 小此木氏ら及ばず”. NHK. (2021年8月22日). https://web.archive.org/web/20210822110151/https://www3.nhk.or.jp/news/html/20210822/k10013216971000.html 2021年8月22日閲覧。
    9. “【詳報】横浜市長選挙 野党支援の山中氏が当選確実 菅政権に打撃「厳しい結果。これが民意」”. 東京新聞. (2021年8月22日). https://www.tokyo-np.co.jp/article/125870 2021年8月22日閲覧。
    10. “横浜市長選、山中氏が初当選 首相支援の小此木氏ら破る”. 朝日新聞. (2021年8月22日). https://www.asahi.com/articles/ASP8Q4WB7P8NUTIL04G.html 2021年8月22日閲覧。
    11. 横浜市長選 山中氏、市内の大票田で圧勝 小此木氏、地盤でも苦戦”. 毎日新聞. 2022年4月15日閲覧。
    12. 横浜新市長の山中竹春氏が初登庁 IR中止、コロナ対策へ関係構築課題”. 日刊スポーツ (2021年8月30日). 2021年8月30日閲覧。
    13. 任期満了日 - 神奈川県ホームページ
    14. “横浜市24年度予算案 「出産費用ゼロ」へ独自助成、子育て関連注力 地震防災対策も”. 東京新聞. https://www.tokyo-np.co.jp/article/306097 2024年1月30日閲覧。
    15. “「IR誘致の撤回を宣言します」横浜市の山中竹春市長、当選後初の所信表明演説で 予算執行の停止も”. 東京新聞. https://www.tokyo-np.co.jp/article/130057 2022年1月15日閲覧。
    16. 横浜市、IR誘致撤回で最終報告「経済効果にリスク」 IR考”. カナロコ by 神奈川新聞. 2023年4月24日閲覧。
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    19. 直子, 小林. 「弁当は愛情の証し」って本当? 横浜市の給食議論で記者が思うこと”. withnews.jp. 2023年4月24日閲覧。
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    43. INC, SANKEI DIGITAL (2023年2月9日). オデッサの生活水供給に貢献 横浜市寄付の浄水装置が活躍”. 産経ニュース. 2023年4月24日閲覧。
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    61. 横浜市長選、山中竹春氏は「NIH リサーチフェロー」の経歴への疑問にどう答えるのか - 郷原信郎(ゴウハラノブオ) | 選挙ドットコム”. 選挙ドットコム. 2022年6月8日閲覧。
    62. 弁護士の郷原氏が出馬を正式表明 立民との協議折り合わず”. 神奈川新聞2021年7月16日. 2022年2月1日閲覧。
    63. 市長定例記者会見(令和3年12月23日)”. 2022年6月8日閲覧。

    外部リンク

    公職
    先代
    林文子
    横浜市旗 横浜市長
    第33代 : 2021年 -
    次代
    現職
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