愛知登文会

愛知登文会(あいちとうぶんかい)は、愛知県内における国の登録有形文化財建造物の保存と活用を図る任意団体。正式名称は、愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会(あいちけんくにとうろくゆうけいぶんかざいけんぞうぶつしょゆうしゃのかい)。

愛知登文会
(愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会)
事務局が入る名古屋テレビ塔なお名古屋テレビ塔自体は、2005年(平成17年)7月12日に国の登録有形文化財に登録されたが、2022年(令和4年)12月12日に国の重要文化財に指定されたため、登録有形文化財の登録を抹消されている。。
事務局が入る名古屋テレビ塔[注 3]
団体種類 任意団体
設立 2011年6月
所在地 愛知県名古屋市中区三丁目6番15号先 名古屋テレビ塔
北緯35度10分20.4秒 東経137度54分29.9秒
活動地域 愛知県の旗 愛知県
活動内容 愛知県登録有形文化財建造物の保存と活用
収入 会費、協賛金及び文化庁の補助事業等
ウェブサイト http://aichi-tobunkai.org/

毎年秋に建物の特別公開や案内を行う「あいちのたてもの博覧会」をはじめ、文化財の保存と活用につながる様々な活動を行っている。

組織

2011年(平成23年)6月、愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会が設立された[1][2]。大阪・京都・秋田に次いで、全国で4番目の都府県単位の国登録有形文化財建造物所有者の会である[1]

正会員は愛知県内に登録文化財を所有する任意の個人または法人とし、準会員として所有していた登録文化財が指定文化財となった正会員とする。地方自治体が所有する文化財についてはその自治体を特別会員とする。愛知登文会の事業を援助する個人または法人を賛助会員とする[3]

2023年度(令和5年度)は会長1名と副会長3名を含む理事13名、その他に幹事2名、名誉会長1名、相談役8名で構成されている[4]

当初、年1回の総会は名古屋駅周辺の会議室で開催していたが、2013年(平成25年)からは登録有形文化財を会場としており、建物見学などを組み合わせた形で開催している[2]

会員

正会員[注 4](2023年9月19日時点)[5]


準会員[注 5](2023年6月1日時点)[5]

沿革

2011年(平成23年)6月、ウインクあいちにある愛知県立大学名駅サテライトキャンパスにて設立総会を開催し、正会員43名、特別会員7名、賛助会員36名の合計86名の会員で発足した[6]。この2011年度より文化庁の補助事業の採択を受け、2016年度にかけて「愛知県内登録有形文化財の保存・活用促進にむけた文化財建造物所有者と県民の連携事業」として、3つのプロジェクトを実施した。さらに、2017年度からは2021年度には、「愛知県国登録有形文化財公開活用事業」として、建物特別公開(あいたて博)を中心に取り組んだ[7]

2016年度公益信託 大成建設自然・歴史環境基金の助成をうけ、2017年(平成29年)3月、名古屋テレビ塔で全国登文会情報交換会を開催[8]。各地の保存団体のほか、文化庁が一堂に会する初の機会を創出。同年10月、名古屋市内の金城学院高等学校で、一般市民に向けて活動報告を行う全国登文会シンポジウムを開催、全国の登文会がネットワークを形成し、取り組んでいくことの必要性が確認された[7]

さらに、2018年度公益信託 大成建設自然・歴史環境基金の助成をうけ[9]、2019年(令和元年)6月21・22日には日本陶磁器センター等で全国登文会フェスタを開催し、登録有形文化財保存の会の全国的な連携と、保存・活用の円滑化をめざして所有者間の交流促進を図った[10]。なお、この機会を利用し、半田市小栗家住宅において全国登文会設立総会が開催された[7]

2021年(令和3年)、ドローンや360度カメラなどを用いて文化財を撮影しインターネット公開してきた事業が評価され、東海情報通信懇談会から表彰状を贈られた[1]

2022年(令和4年)、文化庁の補助がない年度で当初は魅力紹介冊子の発行を断念していたが、2022年度公益信託 大成建設自然・歴史環境基金の助成[11]及びクラウドファンディングによって資金調達を行い[12]、「あいちのたてもの 明治村編」を2023年4月に発行した[13]

保存活動対象

愛知県内の国登録有形文化財の建造物を対象とする。愛知県内の国登録有形文化財の登録件数は、2023年時点で551件あり、全国で6番目[14]

おもな活動

概要

愛知登文会の独自事業として、総会、講座、シンポジウム、県外の事例視察、『愛知登文会ニュース』の発行などを行っている[8][2]。講座などの実施にあたってはヘリテージマネージャーなど建築の専門家の協力も受けている[2]。また、2016年(平成28年)から文化財の保存や活用に力を尽くしている所有者等の顕彰を行っている[8]

また、設立当初より文化庁補助事業の採択を受け、2011~2016年度に「愛知県内登録有形文化財の保存活用にむけた文化財建造物所有者と県民の連携事業」に取組んだ[15]。2014年(平成26年)から「登録文化財魅力体験」を謳った特別公開事業「あいちのたてもの博覧会」を開催し、建物ごとにトレーディングカード「あいたてカード」を作成する[16][8]。歴史的な施設は町の景観に貢献する一方で、所有者にとっては維持の苦労が多い[17]。エアコンが設置しにくい、窓やドアにサッシを付けにくいなどの生活上の不便が多く、修繕費用や昔ながらの広い敷地が相続税で負担になることもある。特別公開は、市民や行政とこうした課題を共有しつつ、歴史的建造物を次世代に受け継いでいくための方策を地域全体で考えるきっかけとなることを期待して開催されている[17]

2017年(平成29年)からは文化財ガイドの育成にも力を入れ、地域固有の文化遺産の現状や課題を共有する「登録文化財保存活用シンポジウム」を開催している[8]。また、2018年(平成30年)からは登録有形文化財の魅力を紹介する冊子刊行を開始し、2023年(令和5年)までに5冊が刊行された[8]

あいちのたてもの博覧会

あいたて博の刊行物群

2014年(平成26年)から、愛知県内の登録有形文化財において、普段公開されていない建物の公開や専門家・所有者による建物解説を行っている[16]。当初は建物特別公開と称していたが、2019年度より、「あいちのたてもの博覧会」(略称:「あいたて博」)と名称を変更した[18]

「あいたて博」では、会員が所有する国登録有形文化財建物を毎年秋に数十件、各1日のみ特別公開し、ガイドツアーなどを実施する[18]。ガイドは所有者によるもの、専門家によるものなどがあり、街歩きツアーやワークショップ、ライブなどの多彩なイベントが同時開催される[18]

なお、2020年(令和2年)は新型コロナ感染拡大防止の観点から、「おうちでたてものミュージアム」と題してオンラインによるあいちたてもの博覧会を開催し、2020年11月7日から23日にかけての週末7日間で、8建築をライブ配信、20建築をオンデマンド配信で紹介した[19]。その配信の様子はCBCテレビニュースでも紹介された[20]

2021年(令和3年)には文化庁の助成が終了することから、建物特別公開イベントはひとくぎりを迎えると公表していたが[21]、熱心な協力者や支援者に恵まれ、2022年(令和4年)は規模を縮小しつつも開催した[22]

大阪府におけるイケフェス大坂(生きた建築ミュージアムフェスティバル大阪)、京都府における京都モダン建築祭など、あいたて博と同様の建物公開イベントは各地で行われるようになった[2]。10年目となる2023年(令和5年)には、建物特別公開の対象を指定文化財や未指定文化財にも広げ、NPO法人あいちヘリテージ協議会とNPO法人なごや歴まちの会らも加わった実行委員会による開催とした[2]。これによって中産連ビルなどがあいたて博に初参加した[23][24]

日程公開箇所
第1回2014年(平成26年)10月26日、11月3日37箇所[25]
第2回2015年(平成27年)10月25日、11月1日・3日・15日・22日40箇所[26]
第3回2016年(平成28年)10月30日、11月3日・6日・13日・19日47箇所[27]
第4回2017年(平成29年)10月29日、11月4日・11日・12日・18日・23日53箇所[28]
第5回2018年(平成30年)10月28日、11月11日・17日・18日・23日・24日・25日50箇所[29][30]
第6回2019年(令和元年)10月14日・20日、11月2日・4日・9日・10日・17日・・23日・24日50箇所[31]
第7回2020年(令和2年)オンライン開催28箇所[32]
第8回2021年(令和3年)10月16日・17日・23日・24日プレミアム企画8箇所6企画[33]
11月6日・7日・13日・14日・20日・21日建物公開29箇所[33]
オンライン(動画公開)15箇所[33]
第9回2022年(令和4年)10月23日・29日、11月5日・6日・13日・19日・20日建物公開20箇所[34]
9月23日、11月3日・13日コラボ企画3箇所[34]

シンポジウム等

2012年(平成24年)、愛知県立大学サテライトキャンパスを会場に、第1回「文化財建造物の保存・活用講座」を開講[35]。岐阜県高山市の市史編さん委員を講師に招き、歴史的な外観を維持しつつ現代の生活に支障なく改修する事例などについて学ぶ全7回講座で、名古屋市東区の建中寺などに会場を移しつつ開講した[35]

その後も建物を保存し適切に活用していくためのシンポジウムや、子ども向けの歴史的建造物学習会「文化財こどもプロジェクト」などを実施する[17][1]。この文化財こどもプロジェクトでは、大人のボランティアガイドに小学生が学び、グループ学習で文化財ガイドのコースなどについて検討したりした[36]

2023年(令和5年)にはウィキペディアを情報発信に活用すべく、ウィキペディアタウンに類似した勉強会「ウィキペディア愛知登文会」を開催し、愛知県内の登録有形文化財の記事を充実させた[2]

愛知県登録文化財魅力紹介冊子「あいちのたてもの」

2018年(平成30年)から年1冊のペースで愛知県内の登録有形文化財の多様な魅力を紹介する冊子を作成している。A5版でページ数は各巻56ページ。執筆担当は建築史家の村瀬良太[37]。「文化財を通じて周辺の歴史や文化を深く知ってもらえれば、建物の価値が見直されることにつながる」等と執筆意図を明かし[38]、建築の専門用語はイラスト付きで説明するなど難しい言葉の使用を避けて構成する[39]

内容は、各巻でテーマごとに県内の登録有形文化財建造物をイラストや写真も交えてわかりやすく紹介するほか、文化財建造物に関するコラムや、名古屋大学名誉教授の飯田喜四郎のインタビューを掲載する[39]。印刷製本したものは県内公共図書館に寄贈するほか、愛知登文会のホームページからダウンロードできる[40]

  • 2018年度 - 『あいちのたてもの ものづくり編』[41][42]
  • 2019年度 - 『あいちのたてもの まなびや編』[43][37]
  • 2020年度 - 『あいちのたてもの いのりのば編』[44][39]
  • 2021年度 - 『あいちのたてもの すまい編』[45][38]
  • 2022年度 - 『あいちのたてもの 明治村編』[46][47]

『愛知登文会ニュース』

愛知登文会では広報誌『愛知登文会ニュース』を年3回程度発行しており、団体としての活動紹介、建物の紹介などを行っている[2]。愛知登文会のホームページからダウンロードできる[48]

脚注

注釈

  1. なお名古屋テレビ塔自体は、2005年(平成17年)7月12日に国の登録有形文化財に登録されたが、2022年(令和4年)12月12日に国の重要文化財に指定されたため、登録有形文化財の登録を抹消されている。
  2. なお名古屋テレビ塔自体は、2005年(平成17年)7月12日に国の登録有形文化財に登録されたが、2022年(令和4年)12月12日に国の重要文化財に指定されたため、登録有形文化財の登録を抹消されている。
  3. なお名古屋テレビ塔自体は、2005年(平成17年)7月12日に国の登録有形文化財に登録されたが、2022年(令和4年)12月12日に国の重要文化財に指定されたため、登録有形文化財の登録を抹消されている。
  4. 愛知県内に登録文化財を所有する者
  5. 所有していた登録有形文化財が指定文化財になった正会員。

出展

  1. “「愛知登文会」10年 文化財活用へ意欲 常滑で総会”. 中日新聞: p. 19. (2021年7月7日)
  2. 小栗宏次「登録有形文化財建造物の保存と活用 ~愛知登文会の取り組み~」『アーバン・アドバンス』名古屋都市センター、2023年9月、pp.49-56
  3. 入会のご案内 愛知登文会、2023年7月29日閲覧
  4. 愛知登文会とは 愛知登文会、2023年7月29日閲覧
  5. 愛知登文会 会員名簿 (PDF). 愛知登文会 (2023年7月29日). 2023年7月29日閲覧。
  6. 「愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会」設立総会 (PDF). 愛知登文会 (2011年6月26日). 2023年7月29日閲覧。
  7. 事業活動”. 2023年7月30日閲覧。
  8. 名古屋市鶴舞中央図書館『「愛知登文会」2020年度版冊子』愛知登文会、2020年。
  9. 2018年度 助成先団体一覧”. 2023年9月19日閲覧。
  10. 文化遺産総合活用推進事業 実施計画 (PDF). 文化庁. 2023年7月31日閲覧。
  11. 2022年度 助成先団体一覧”. 2023年9月19日閲覧。
  12. 明治村の魅力を伝える「あいちのたてもの 明治村編」を作成したい”. 2023年9月19日閲覧。
  13. 愛知登文会ニュース第34号”. 2023年7月30日閲覧。
  14. 登録文化財”. 2023年7月30日閲覧。
  15. 愛知登文会 事業活動、2023年9月19日閲覧
  16. “国と文化財構造物公開へ 名古屋、尾張、三河の37件”. 中日新聞: p. 24. (2014年10月24日)
  17. “豊かに薫る歴史と伝統”. 中日新聞: p. 15. (2016年10月14日)
  18. あいちのたてもの博覧会2022”. 2023年7月30日閲覧。
  19. 『あいちのたてもの博覧会 建物特別公開2020パンフレット(名古屋市鶴舞中央図書館所蔵0237847116)』愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会、2020年。
  20. 「あいたて博」で爲三郎記念館から配信いたしました”. 古川美術館. 2023年7月31日閲覧。
  21. 『あいちのたてもの博覧会 建物特別公開2021パンフレット(名古屋市鶴舞中央図書館所蔵0237847116)』愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会、2021年。
  22. 『あいちのたてもの博覧会 建物特別公開2022パンフレット』愛知県国登録有形文化財建造物所有者の会、2022年。
  23. 「歴史の重み感じる建築を間近で 11月、愛知各地で『たてもの博覧会』」『中日新聞』2023年10月23日
  24. 「あいちのたてもの博覧会2023」開催のお知らせ 中産連ビル
  25. 「国文化財建造物 公開へ」『中日新聞』、2014年10月23日。
  26. 「国の登録有形文化財40か所が特別公開に」『読売新聞』、2015年10月22日。
  27. 愛知登文会 国登録有形文化財特別公開 2016”. 愛知登文会. 2023年7月29日閲覧。
  28. 愛知登文会 国登録有形文化財特別公開 2017”. 愛知登文会. 2023年7月29日閲覧。
  29. 愛知登文会 国登録有形文化財特別公開 2018”. 愛知登文会. 2023年7月29日閲覧。
  30. “国文化財建物 名古屋大豊田講堂など /愛知”. 毎日新聞. (2018年11月2日). https://mainichi.jp/articles/20181102/ddl/k23/040/209000c 2023年7月31日閲覧。
  31. 愛知登文会 国登録有形文化財建物特別公開 2019”. 愛知登文会. 2023年7月29日閲覧。
  32. 愛知登文会 国登録有形文化財 建物特別公開2020 オンライン あいちのたてもの博覧会 開催要領”. 愛知登文会. 2023年7月29日閲覧。
  33. あいちのたてもの博覧会2021”. 愛知登文会. 2023年7月29日閲覧。
  34. あいちのたてもの博覧会2022”. 2023年7月29日閲覧。
  35. “文化財建造物の保存活用に知恵”. 中日新聞: p. 21. (2012年7月20日)
  36. “文化財を継ぐ /上(その1) 子どもがガイドに”. 毎日小学生新聞. (2016年1月18日). https://mainichi.jp/maisho/articles/20160118/kei/00s/00s/002000c 2023年7月31日閲覧。
  37. “県内の学校建築魅力紹介”. 中日新聞: p. 19. (2020年4月4日)
  38. “愛知登文会発行「価値見直しに」”. 中日新聞: p. 13. (2022年4月20日)
  39. “「祈りの場」に名建築あり”. 中日新聞: p. 19. (2021年4月13日)
  40. 愛知県登録文化財魅力紹介冊子「あいちのたてもの」”. 2023年7月29日閲覧。
  41. あいちのたてもの ものづくり編 (PDF). 愛知登文会 (2019年3月28日). 2023年7月29日閲覧。
  42. “国有形文化財の建物17カ所紹介”. 中日新聞: p. 21. (2019年4月18日)
  43. あいちのたてもの まなびや編 (PDF). 愛知登文会 (2020年3月26日). 2023年7月29日閲覧。
  44. あいちのたてもの いのりば編 (PDF). 愛知登文会 (2021年3月21日). 2023年7月29日閲覧。
  45. あいちのたてもの すまい編 (PDF). 愛知登文会 (2022年3月24日). 2023年7月29日閲覧。
  46. あいちのたてもの 明治村編 (PDF). 愛知登文会 (2023年4月28日). 2023年7月29日閲覧。
  47. 明治村の魅力を伝える「あいちのたてもの 明治村編」を作成したい”. READYFOR. 2023年7月31日閲覧。
  48. ニュースレター”. 2023年7月30日閲覧。

関連項目

外部リンク

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