果号寺のシブナシガヤ

果号寺のシブナシガヤ(かごうじのシブナシガヤ)は、三重県伊賀市西山にある国の天然記念物に指定されたシブナシガヤ(渋無榧)である[1]

果号寺のシブナシガヤ。2019年12月23日撮影。

カヤ(榧)の変種であるシブナシガヤの種子は通常のカヤの種子と異なり、胚乳全体を囲むように着いている渋皮が全く存在しない、もしくはあっても取れやすいといった特徴があり、種子の殻を割ると、中から渋皮のない白い胚乳が直接露出しているため、昔から「蜂の子ガヤ」「白米ガヤ」などと呼ばれ珍重されてきた[2]

国の天然記念物に指定されたシブナシガヤは、枯死により指定解除[† 1]されたものも含めて日本全国に3件しか存在せず、果号寺のシブナシガヤはそのうちのひとつである。1932年昭和7年)7月25日に国の天然記念物に指定された[1][3][4]1997年平成9年)に三重県が選定した『みえの樹木百選』のひとつにも選ばれている[5]

解説

果号寺のシブナシガヤの位置(三重県内)
果号寺のシブナシガヤ
果号寺の
シブナシ
ガヤ
果号寺のシブナシガヤの位置
果号寺のシブナシガヤ。2019年12月23日撮影。

果号寺のシブナシガヤのある西山地区は、三重県北西部の伊賀盆地北西、滋賀県甲賀市との境界にある御斎峠の南東麓に位置しており、シブナシガヤのある浄土宗果号寺は家屋と畑地が混在する標高約220 - 230メートルの傾斜地に所在している。国の天然記念物に指定されたシブナシガヤは果号寺本堂に隣接した境内の東北隅に生育しており[4][6]、地表からの高さ50センチメートルでの幹囲は370センチメートル、地表高90センチメートル付近より3本の幹に分岐している[7]。枝張りは東西約15メートル、南北約18メートル、樹高約20メートルの高木であり、樹勢は旺盛で毎年、夏の終り頃に多くの実をつける[6]

樹齢は不明であるものの、本樹は後述する江戸期の史料中にも記載が見られることから、古くから知られた古木である。生育する伊賀地方から西隣の奈良県北東部の山辺郡一帯にはカヤの古木が多く見られるが、これはカヤの種子の胚乳に多く含まれる油脂から搾り取った植物油が最上級の食用油であったことから、この地方に多数植樹されたことによるものであるという[6]

これらの中でも果号寺のシブナシガヤは渋皮のない珍しいものとして古くより知られており、江戸時代中期の宝暦年間(1751年 - 1764年)に、藤堂藩上野城城代藤堂元甫によって編纂された地誌『三国地誌』の中では、

白榧實、西山村、此實尋常ニカハリ渋外皮ニツキテ實白シ故ニ白米榧トヨブ。
藤堂元甫『三国地誌』

と記されており[6]、また、著名な本草学者である小野蘭山による『本草網目啓蒙』の嘉永版(嘉永2年/1849年)の巻37、第6枚の裏には、

一種しぶなしガヤアリ、しぶ皮核ニ着イテ仁ニ着カズ、故ニはちのこトモ呼ブ、濃州多良[† 2]及び伊州上野[† 3]ニモアリ伊賀方言しろがやと言フ。
小野蘭山『本草網目啓蒙』

このように記載されており[7][8]、当時より渋皮のない珍しいカヤ(榧)が伊賀地方にあることが知られていたことがわかる[6]

国の天然記念物に指定されたカヤは巨樹や変種を含め日本全国に15件あるが、そのうちの特徴的な珍しい種子を持つ個体について、林野庁所管の国立研究開発法人森林研究・整備機構の関西育種場(岡山県勝田郡勝央町)では、果号寺のシブナシガヤを含むヒダリマキガヤ・コツブガヤなど次に挙げる、

国の天然記念物に指定された上記5件のカヤを保存種としてクローン収集し、保存・定植している[9]

交通アクセス

所在地
  • 三重県伊賀市西山1182[7]
交通

脚注

注釈

  1. 他の国指定2件は、果号寺のシブナシガヤの北東1キロメートルほどの場所に生育する高倉神社のシブナシガヤ岐阜県養老郡上石津町(現大垣市)に生育していた多良のシブナシガヤであるが、多良のシブナシガヤは枯死したため指定解除されている。なお、県指定、市町村指定のシブナシガヤは各地に複数存在する。
  2. 濃州は美濃国のこと。多良とはかつての石津郡多良村のことで、前述した「多良のシブナシガヤ」を指している。
  3. 伊州は伊賀国のこと。

出典

  1. 果号寺のシブナシガヤ(国指定文化財等データベース) 文化庁ウェブサイト、2020年4月16日閲覧。
  2. 南川 1995, p. 407.
  3. 文化庁文化財保護部監修 1971, p. 96.
  4. 本田 1957, p. 54.
  5. 三重県みえの樹木百選 果号寺(かごうじ)のシブナシガヤ 三重県農林水産部 みどり共生推進課 みどり推進班 2020年4月16日閲覧。
  6. 南川 1995, p. 410.
  7. 国指定文化財一覧 (PDF) 伊賀市ホームページ 指定・登録文化財のご紹介 2020年4月15日閲覧。
  8. 三重県教育委員会 文化財情報データベース 果号寺のシブナシガヤ 三重県教育委会事務局 社会教育・文化財保護課 2020年4月16日閲覧。
  9. 廣野 2011, pp. 2–3.
  10. 三重県観光連盟公式サイト 果号寺のシブナシガヤ 公益社団法人三重県観光連盟 2020年4月16日閲覧。

参考文献・資料

  • 加藤陸奥雄他監修・南川幸、1995年3月20日 第1刷発行、『日本の天然記念物』、講談社 ISBN 4-06-180589-4
  • 本田正次、1957年12月25日 初版発行、『植物文化財 天然記念物・植物』、東京大学理学部植物学教室内 本田正次教授還暦記念会
  • 文化庁文化財保護部監修、1971年5月10日 初版発行、『天然記念物事典』、第一法規出版
  • “関西の林木育種 第64号” (PDF). 関西育種場 廣野郁夫 (独立行政法人 森林総合研究所 林木育種センター関西育種場内関西材木育種懇話会). (2011年2月). ISSN 1882-6709. https://www.ffpri.affrc.go.jp/kaniku/business/documents/64.pdf 2020年4月16日閲覧。.

関連項目

外部リンク

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