高倉神社のシブナシガヤ

高倉神社のシブナシガヤ(たかくらじんじゃのシブナシガヤ)は、三重県伊賀市西高倉にある国の天然記念物に指定されたシブナシガヤ(渋無榧)である[1]。

高倉神社のシブナシガヤ。2023年5月10日撮影。

カヤ(榧)の変種であるシブナシガヤの種子は通常のカヤの種子と異なり、胚乳全体を囲むように着いている渋皮が全く存在しない、もしくはあっても取れやすいといった特徴があり、乾燥した種子の殻を割ると、中から渋皮のない白い胚乳が直接露出しているため、昔から「蜂の子ガヤ」「白米ガヤ」などと呼ばれ珍重されてきた[2]。

1932年(昭和7年)7月25日に国の天然記念物に指定された[1][3][4][5][6]。国の天然記念物に指定されたシブナシガヤは、現存するもので本件含め2物件[† 1](指定解除された1件[† 2]を含めても3物件)のみである。

解説

高倉神社のシブナシガヤの位置(三重県内)
高倉神社のシブナシガヤ
高倉神社の
シブナシ
ガヤ
高倉神社のシブナシガヤの位置
高倉神社のシブナシガヤ。主幹は二岐している。2023年5月10日撮影。

高倉神社のシブナシガヤのある西高倉地区は、三重県中西部の伊賀盆地北西、滋賀県甲賀市との境界にある御斎峠の南東麓に位置しており、シブナシガヤのある高倉神社は、西高倉地区に鎮座する倉庫の神様、高倉下命(たかくらじのみこと)を主祭神とする天正2年(1574年)建立の旧県社、式外社である[7][8]。

国の天然記念物に指定されたシブナシガヤは、神社入口の鳥居左手側山腹に広がる境内林一角の竹藪の中に生育しており[9][10]、樹高は約21メートル、根元の周囲は2.5メートルあって[3]、胸の高さ付近の幹囲は305センチメートル、地表高2メートル付近より二岐に分かれ、さらに10メートルほど上部で西側に6本、東側に5本分岐しているが、西側の分岐は腐朽が進んでいる[10]。

伊賀一帯では古くよりカヤの種子の胚乳に多く含まれる油脂から搾り取った植物油を得るため、多くのカヤが植樹されており[10][11]、高倉神社のシブナシガヤの種子も江戸期には藩主へ献上されていたといい[3][4]、今日も毎年多数の実を付けている[12][13]。

高倉神社の境内にはコジイ(ツブラジイ)やサカキの天然林が広がる自然豊かな境内林が残されており、中でもアヤマスズ(スズタケに似たササの一種でアヤマナンブスズともいう)は三重県指定天然記念物に指定されている[10][14]。境内の一角にはアヤマスズが三重県指定天然記念物であることを示す石碑は設置されているものの、国指定の天然記念物であるシブナシガヤに関しては、それを示す案内板や石碑などはどこにも設置されていない。これは1932年(昭和7年)に国の天然記念物に指定された際、当時の神主や地域氏子らの意向により、あえてシブナシガヤの詳細な所在地を伏せたことによるものという[15]。

国の天然記念物に指定されたカヤは巨樹や変種を含め日本全国に15件あるが、そのうち特徴的な珍しい種子を持つ個体について、林野庁所管の国立研究開発法人森林研究・整備機構の関西育種場(岡山県勝田郡勝央町)では、高倉神社のシブナシガヤを含むヒダリマキガヤ・コツブガヤなどの後継樹が育成されている。

国の天然記念物に指定された上記5件のカヤを保存種としてクローン収集し、保存・定植している[16]。

交通アクセス

所在地
  • 三重県伊賀市西高倉1050-2[6]。
交通

脚注

注釈

  1. もう1件の国指定は、本件の南西1キロメートルほどの場所に生育する果号寺のシブナシガヤ。なお、県指定、市町村指定のシブナシガヤは各地に複数存在する。
  2. 岐阜県養老郡上石津町(現大垣市)に生育していた多良のシブナシガヤ。枯死により指定解除されている。

出典

  1. 果号寺のシブナシガヤ(国指定文化財等データベース) 文化庁ウェブサイト、2023年4月26日閲覧。
  2. 南川 1995, pp. 407–408.
  3. 文化庁文化財保護部監修 1971, p. 96.
  4. 本田 1957, p. 54.
  5. 南川 1995, p. 407.
  6. 高倉神社のシブナシガヤ 観光みえ 公益社団法人 三重県観光連盟 2023年4月26日閲覧。
  7. 高倉神社県神社庁 皇學館大学現代日本社会学部神社検索システム研究会 2023年4月26日閲覧。
  8. 高倉神社 観光みえ 公益社団法人 三重県観光連盟 2023年4月26日閲覧。
  9. 本田 1957, p. 53.
  10. 南川 1995, p. 410.
  11. 白井伸昴・志賀靖二・岡田文士 2000, pp. 142–143.
  12. 国指定文化財一覧 (PDF) 伊賀市ホームページ 指定・登録文化財のご紹介 2023年4月26日閲覧。
  13. 南川 1995, p. 409.
  14. アヤマスズ自生地 三重県教育委員会 文化財情報データベース 果号寺のシブナシガヤ] 三重県教育委会事務局 社会教育・文化財保護課、2023年4月26日閲覧。
  15. 奥ゆかしきたたずまい 天然記念物シブナシガヤ「高倉神社」番外編 (PDF) 伊賀市立上野北小学校ホームページ 令和3年10月11日 ぶらり北小校区 2023年4月26日閲覧。
  16. 廣野 2011, pp. 2–3.

参考文献・資料

  • 加藤陸奥雄他監修・南川幸、1995年3月20日 第1刷発行、『日本の天然記念物』、講談社 ISBN 4-06-180589-4
  • 本田正次、1957年12月25日 初版発行、『植物文化財 天然記念物・植物』、東京大学理学部植物学教室内 本田正次教授還暦記念会
  • 文化庁文化財保護部監修、1971年5月10日 初版発行、『天然記念物事典』、第一法規出版
  • 白井伸昴・志賀靖二・岡田文士、2000年1月20日 第1版発行、『東海の天然記念物』、風媒社 ISBN 4-8331-0081-9
  • “関西の林木育種 第64号” (PDF). 関西育種場 廣野郁夫 (独立行政法人 森林総合研究所 林木育種センター関西育種場内関西材木育種懇話会). (2011年2月). ISSN 1882-6709. https://www.ffpri.affrc.go.jp/kaniku/business/documents/64.pdf 2023年4月26日閲覧。.

関連項目

外部リンク

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