香炉
香炉(こうろ)とは、固体状の香料を加熱し、香気成分を発散させる目的で用いる器具。数える単位は蓋のある容器を数える合(ごう)、もしくは据えて使うものを数える基(き)。
仏具の香炉は香を供えるためのもので、燭を供えるための燭台(灯明)、華を供えるための華瓶(花瓶、花立て)とともに三具足の一つとされる[1]。仏具の香炉は炭や火種を入れて香を焚いたり、点した線香を立てるための道具である[2]。なお、点した線香を立てるための道具であるが炉の形状を持たない香立て(こうたて)もここで取り上げる。
なお、琉球王国にも「香炉」と呼ばれるものがあり、神や祖霊をまつるための媒介となる容器または聖地の目印として御嶽・拝所に置かれることが多い。普通の香炉とは見た目が大きく異なり、帯状の加工が施される縦横およそ20センチ、奥行き約10センチの立方体の石である[3][4]。
形式

上面または側面に大きく開口した筒、椀、箱、皿状の容器である。床や机との接触を避ける目的で、ほとんどのものが脚を備えている。穴の空いた蓋(火屋)を備えたものも存在するが、香道で用いる聞香炉(ききこうろ)は、蓋を持たない。
火気を使用する関係上、材質には不燃性、耐熱性が求められる。そのため、陶磁器や金属、石材などで作られていることが多い。
炭火を用いる場合、香炉自体に直接触れさせずに収めておくために灰を使用することが多い。炭や香料が燃焼した結果としても灰が、そして燃え残りが生じる。香料が粉末や細片である場合、焚く際に一定の形に留めておくことが必要になる場合もある(香時計など)。香炉とは、これらを収める容器でもある。
ただ、香を焚くという行為自体が趣味性、または宗教性の高いものであり、楽しみに用いる場合は個人の嗜好を反映して、芸事や宗教儀式のための香炉には美術的価値の高いものが多数作られている。
文化史
生活における香炉
中国では紀元前3世紀頃の戦国時代には青銅製の香炉が存在し、この頃には香気で空間を満たしたり、衣服に薫香をたきこめる文化があった[1]。
漢代には山岳をかたどった「博山炉」と呼ばれる香炉が流行し、これで香を焚くと仙山に霊雲がたなびくように見え、香炉を視覚的にも楽しんでいた[1]。同様のものとして龍をかたどった香炉があり、香を焚いたときに生じる香煙によって雲気をともなう龍が表現されている[1]。
仏教の香炉
種類
仏前に備える常置の香炉に火舎香炉がある[1]。また、仏前(または葬儀)での焼香には、漆器(またはその模造品としてプラスチック)の外枠に焼香用の香と香炉を備えた長方形の角香炉(かくこうろ)が用いられることもある。また、持ち運べるように柄(え)のついた柄香炉(えごうろ)もある[1][2]。柄香炉はおもに「鵲尾形」「獅子鎮」「瓶鎮」「蓮華形」の4種類に分けられる[6]。大寺院の入り口にある一般参拝者が線香を挙げる香炉は、しばしば大香炉と呼ばれる。
香立て
通常、香炉という場合、容器としての形態を有するものを指す。これとは別に、香料を上に置き、固定する機能しか持たない器具も存在し、これは香立てと呼ぶ。普通、皿状の容器やグラスウールといったものの上に載せて使用する。一部には灰を受ける皿と香立てが一体化したものも存在する。
キリスト教の香炉
キリスト教の伝統的な宗派、正教会、カトリック、聖公会では、日本でも振り香炉をしばしば礼拝で用いる。スペインのサンティアゴ巡礼路の目的地、サンティアゴ・デ・コンポステーラの大聖堂にある巨大な振り香炉「ボタフメイロ」はよく知られている。
香道の香炉
聞香に用いる香炉を聞香炉という[5]。聞香の作法では左手に乗せた聞香炉に右手を被せるようにして行う[5]。
なお、火取り香炉と呼ばれる器具があるが香炉とは似て非なるものである(香道の香席に、熾した炭を持って行くのに用いる容器。火屋をかぶせた香炉に似るが、これで香を焚くことはない)。
出典
- 香の道具 大阪市立美術館、2020年5月17日閲覧。
- 舘隆志「禅房十事 香炉」 花園大学国際禅学研究所、2020年5月17日閲覧。
- ““パワースポット”斎場御嶽、コロナ禍のいま 盗難にあった香炉の意義とは?【深掘り・WEB限定】 | WEBオリジナル記事”. 沖縄タイムス+プラス. 2021年4月7日閲覧。
- “沖縄の世界遺産「斎場御嶽」で盗難か 香炉が別の石材に置き換えられる”. ryukyushimpo.jp. 琉球新報 (2021年4月6日). 2021年4月7日閲覧。
- 研修プログラム 文化体験 お香を聞く 京都府、2020年5月17日閲覧。
- 清水 1978, p. 11.