詐欺による意思表示
詐欺による意思表示(さぎによるいしひょうじ)とは、他人の欺罔行為によって表意者(意思表示を行った者)が錯誤に陥ったためになされた意思表示をいう。強迫による意思表示とともに瑕疵ある意思表示とされる。なお、詐欺による意思表示は、ある者の詐欺行為のために表意者が錯誤に陥ってなした意思表示を指すのであり、表意者に対してある者がなした詐欺行為そのものとは異なる。
- 日本の民法は、以下で条数のみ記載する。
詐欺による意思表示の要件
- ある者が表意者に対して欺罔行為をすること
- 相手方が錯誤に陥ること
- 欺罔行為をした者に故意(錯誤に陥らせて意思表示させようと意図)があること
詐欺による意思表示の効果
第三者詐欺の場合
第三者が詐欺を行った結果として相手方に瑕疵ある意思表示した場合(いわゆる第三者詐欺)においては、相手方がその事実を知り、又は知ることができたときに限って意思表示を取り消すことができる(96条2項)。2017年の民法改正により相手方が「知ることができたとき」が追加された(2020年4月施行予定)[7]。
なお、取消しには無過失であることが必要とされる(多数説)[8]。
第三者との関係
先述のように詐欺による意思表示は取り消すことができるが(96条1項)、強迫による意思表示の取消しとは異なり、詐欺による意思表示の取消しは善意でかつ過失がない第三者に対してはその取消しの効果を主張をすることができない(96条3項)。
なお、目的物が動産の場合には取消しの前後に関わらず即時取得しうる(192条)[9]。
- 第三者の意義
- 96条3項の「第三者」とは「詐欺による意思表示の後、新たに利害関係を有するに至った者」である[6]。
- 96条3項の趣旨は取消しの遡及効から善意の第三者を保護するためであるから、善意の第三者は取消しの遡及効によって不利益を受ける者でなければならないと考えられるため、善意の第三者は取消しがなされるまでに利害関係に入らなければならない(取消し後に利害関係に入った者の保護のあり方については後述のように別途問題となる)[10]。
- 対抗関係
- 善意
- 第三者が保護されるためには善意でなければならない(96条3項)。
- 無過失
- 第三者が保護されるためには無過失でなければならない(96条3項)。第三者の無過失については無過失不要説[11]と無過失必要説[12]が対立していたが、2017年の民法改正により「善意でかつ過失がない第三者」と改められた(2020年4月施行予定)[7]。
- 登記の問題
- 取消し後に新たな利害関係を生じるに至った者
- 先述のように善意の第三者が96条3項の「第三者」として保護を受けるためには意思表示の取消しがなされるまでに利害関係に入らなければならない[10]。したがって、取消し後に新たな利害関係を生じるに至った者は96条3項でいう「第三者」には含まれないことなる[15](講学上は「取消前の第三者」に対して「取消後の第三者」として論じられる[16])。詐欺による意思表示を取り消した者と取消し後に新たな利害関係を生じるに至った者との関係については177条による対抗問題になるとするのが従来の通説・判例[17]であるが[15]、取消しの前後を問わず96条3項適用によって処理すべきとの説、取消後の第三者との関係については94条2項類推適用によって処理すべきとの説(近時の有力説)などもある[13][18]。
脚注
- 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、185頁
- 我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、152-153頁
- 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、77頁
- 我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、153頁
- 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、185-186頁
- 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、188頁
- “民法(債権関係)改正審議を受けての消費者契約法の検討課題(沖野眞已)” (PDF). 消費者庁. 2020年3月11日閲覧。
- 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、186頁
- 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、89頁
- 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、82-84頁
- 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、189頁
- 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、81頁
- 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、85頁
- 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、190頁
- 我妻栄・有泉亨・川井健著 『民法1 総則・物権法 第2版』 勁草書房、2005年4月、154頁
- 大村敦志著 『基本民法Ⅰ 総則・物権総論 第3版』 有斐閣、2007年4月、95-96頁
- 大判昭17・9・30民集21巻911頁
- 川井健著 『民法概論1 民法総則 第4版』 有斐閣、2008年3月、193-195頁
- 内田貴著 『民法Ⅰ 第4版 総則・物権総論』 東京大学出版会、2008年4月、80頁
- 神田秀樹著 『会社法 第8版』 弘文堂、2006年4月、45頁
- 神田秀樹著 『会社法 第8版』 弘文堂、2006年4月、129頁
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