音戸大橋

音戸大橋(おんどおおはし)は、広島県呉市本土倉橋島(旧安芸郡音戸町)を結ぶ道路橋

国道487号標識
国道487号標識
音戸大橋(下方)、第二音戸大橋(上方)
倉橋島(左側)と本州(右側)
瀬戸の音戸の空中写真(2018年)
国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
呉本土側から南を撮影。奥が音戸大橋、手前が第二音戸大橋。
第三音戸大橋から望む、音戸大橋(奥)と第二音戸大橋(左)。

なお、昭和年代にかけられた「音戸大橋」と平成年代にかけられた「第二音戸大橋」の2つのアーチ橋があり、ここでは双方共に記載する。

地理

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狭いところで幅約90m[1]の「音戸の瀬戸」と呼ばれるこの海峡は、平安時代日宋貿易の航路として、1167年永万元年)、平清盛が沈む夕日を扇で招いて1日で開削したとの伝承[2]「日招き伝説」[3]が残る、古くからの交通の要所である[4]。船の往来も激しく、現在でも1日あたりの船舶通行量が約700隻と、最小可航幅60mの航路に1000トン級の大型船舶も通る[2]、“瀬戸内銀座”[3]あるいは“瀬戸内海の難所”[5]と呼ばれる海峡である。

江戸時代からこの海峡を渡る手段として、「音戸渡船」と呼ばれる、片道運航距離120mの日本で最も短い有料渡し船の便が存在する[2][5]。しかし、台風9号や悪天候の影響を受け2隻の船が相次いで故障し、2021年7月中旬から運休していた[6]が、再開の見込みがたたないとして、船頭が継続断念を決意。同年10月末で、日本で最も短い定期航路[7]としての幕を閉じた[8]明治以降、呉市は大日本帝国海軍呉鎮守府の拠点として栄え現在は周囲の島々に海上自衛隊呉地方隊の施設が点在する。また呉は呉海軍工廠からの流れをくむ重工業地域でもある。対岸の倉橋島の経済活動は本州側の呉市に依存しており、島民は市内へ通勤・通学するために渡峡を繰り返し、その渡船はピーク時で1日250往復していた記録が残る[3][9]。一方で1932年には、島と鍋桟橋を結ぶ汽船が沈没。死者・行方不明者29人を出す海難事故も発生した。事故の原因は、定員23人の小型船に6倍近くの137人が乗ったことによるものであった[10]

こうした状況の中、1961年(昭和36年)、瀬戸内海における初めての離島架橋事例として「音戸大橋」が架けられ[3]、その後50年が経過したことにより、交通量増大とそれに伴う慢性的な交通渋滞に対応するために、警固屋音戸バイパスが整備され、2013年(平成25年)、「第二音戸大橋」が架けられた[11]。2橋間の距離は南北に約350m[12]

この橋は本土と呉市周辺の瀬戸内海の島々を結ぶ橋の出発点にあたり、能美島とはこの橋と早瀬大橋で、広島県最南端の有人島である鹿島とは、この橋と堀切橋・鹿島大橋で結ばれている。

周辺は観光地として整備されている。音戸大橋の本土側には約8,300本のツツジが植栽され、開花時期にあたるゴールデンウィークには見物客でにぎわう[2]。第二音戸大橋の島側は「日招き広場」が整備されている[4]。一方で、(初代)音戸には整備されていなかった歩道が第二音戸では整備されたため、音戸渡船の利用者が減少する可能性があるとして、地元から渡船支援の声が挙がっている(音戸渡船は2021年10月をもって廃止された。)[13]

音戸大橋

音戸大橋
警固屋側の南方向からの全景。
基本情報
日本の旗 日本
所在地 呉市
起点側:警固屋8丁目 - 終点側:音戸町引地[3]
交差物件 瀬戸内海音戸の瀬戸
用途 道路橋
路線名 国道487号
開通 1961年12月3日
座標 北緯34度11分41.7秒 東経132度32分14.5秒
構造諸元
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式

概要

1961年(昭和36年)12月3日開通[3]。総工事費3億6200万円[1][4][9]。1961年全建賞道路部門受賞[3]

工事は日本道路公団によるものであり、開通時は道路公団が管理する有料道路であった[3]。建設費の償還残りを広島県が補填し、1974年(昭和49年)8月1日から無料化され、現在は県が管理している[3]。なお開通当時は警固屋側道路の頂上部に料金所が設置され、1974年無料化直前当時の通行料金は普通自動車120円、バス200円、自転車10円、歩行者5円だった[14]

当時としては画期的な橋であったが、のち交通量を対応できず渋滞に悩まされることになり、更に歩道が整備されていない問題点もあった[11]。これが第2音戸大橋架橋理由の一つとなった[12]

諸元

  • 路線名 : 国道487号[3]
  • 総延長 : 1,184m[15]
  • アーチ部
    • 橋長 : 172m[3][9]
    • 幅員 : 車道5.5m[3]
    • 橋梁形式 : 下路式鋼ランガー橋[3][9]
      • アーチスパン :114.88m[3][9]
      • アーチライズ : 17.0m[3]
    • 航路限界 : 23.5m[3][9]
  • 高架橋
    • 橋種 : 2連半回り螺旋形 RC中空式単純床版橋(RC単径間連続ラーメン橋脚)[9]
    • 延長 : 434m[3][9]
      • 橋梁301.6m + 道路132.4m[9]
    • 幅員 : 車道9.5m[3]
    • 中心線半径 : 24m[9]
    • 縦断勾配 : 5.7%[9]
  • 施工
    • アーチ部および取付部 - 呉造船所(現IHI[16]
    • 下部工および高架橋 - 大林組[17]

特徴

1988年[18]。右が警固屋(呉市本土)、左が音戸町(倉橋島)。右側警固屋のループ線頂上付近の広地に昔は料金所が設けられていた。

音戸の瀬戸は、大型船舶も通る海峡である。そのため、大きな桁下制限が設定され、航路を確保する都合上、海峡中央に橋脚を建設することが出来ず、さらに問題となったのが倉橋島側は用地が少ないことであった[3][9]

そこで考えられたのが、倉橋島側を螺旋状の高架橋とすることだった。この高架橋は当時前例のない規模で、日本でも初施工で世界的なレベルでも珍しかったことから、大阪市此花区の埋立地に実物大の走路モデルを作り載荷実験や運転性を確かめている[3][9]。反対側の警固屋側は地形を活かし、橋1つを含む変則二重ループ線とした[3]

主径間の橋梁形式は、最終案として鋼橋(ランガー橋)とPC橋(ディビダーク工法)の2案に絞られたが甲乙つけがたかったため、設計付入札を行い総合的に評価した結果、ランガー橋に決定した[3][9]。完成当時としては日本最長のランガー橋であった[3]。なお当時はフローティングクレーンでの一括架設は技術的に無理だった時代であったことから、この橋はケーブルエレクション工法により架設している[3]

塗装の朱赤は、共に平清盛と関係深い厳島神社の大鳥居の色に合わせている[3]

第二音戸大橋

第二音戸大橋
音戸瀬戸側から北方向を撮影。
基本情報
日本の旗 日本
所在地 呉市
警固屋8丁目 - 音戸町坪井1丁目[11]
交差物件 瀬戸内海(音戸の瀬戸)
用途 道路橋
路線名 国道487号(警固屋音戸バイパス)
開通 2013年3月27日
座標 北緯34度11分53.4秒 東経132度32分19.2秒
構造諸元
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式
警固屋側の南方向から撮影。

概要

2013年(平成25年)3月27日開通[11]。総工事費約80億円[12]。愛称は「日招き大橋」[11]。一般国道487号警固屋音戸バイパス整備に伴い架橋された。2012年(平成24年)土木学会田中賞作品部門受賞、同年全建賞道路部門受賞[11]

完成年度現在で、広島空港大橋新木津川大橋大三島橋に次いで全国4番目の長さのアーチ橋になる(夢舞大橋と同支間長)[11]

日没から午後10時までLED照明でライトアップされている[11]

諸元

特徴

橋梁形式選定にあたり、経済性だけでなく(初代)音戸大橋との景観性も加味した結果、ニールセンローゼ構造のアーチ橋に決定した[11]。塗装の朱赤も音戸大橋と同色である[11]

耐震設計に際し、当初は1905年(明治38年)芸予地震を強振動の評価に用いていたが、その設計の最中である2001年(平成13年)芸予地震が起こり、データを検証した結果、妥当性が立証されることになった[11]

架橋工事は上記の通り、往来の激しい航路であったことに加え、この地は住宅地が密集しているため、工期短縮および細心の注意が払われた[12]。また架設工法は、工事請負業者側から発注者である県にされた提案(橋梁工事としては国内初のVE提案)により工法を変更され、中央径間となる桁を現場近くの工場で造り、そこからフローティングクレーンで現場まで運ばれ、日本初施工例となるベント(仮受け台)を用いない「空中ジョイント一括架設工法」で結ばれた[11][12]。この時吊り下げた桁は3,500t(ジャンボジェット9機分相当)もあり、国内最大級のFC船が導入され、早朝から運び出された桁は午前11時までには全ての作業が完了した[11][12]。この一括架設工事は現場での見学があった他、インターネット中継で配信された[11]

歩道橋「第三音戸大橋」

坪井広場横断歩道橋
坪井広場横断歩道橋
基本情報
日本の旗 日本
所在地 呉市音戸町坪井1丁目地内
交差物件 (国道487号警固屋音戸バイパス)
用途 横断歩道橋
路線名 (歩道)
開通 2013年12月27日
座標 北緯34度11分55.1秒 東経132度32分10.6秒
構造諸元
関連項目
橋の一覧 - 各国の橋 - 橋の形式

2013年12月27日開通[4][20]。正式名称は「坪井広場横断歩道橋」、通称「第三音戸大橋」[4][20]。橋長14m、幅員2m、下を通る警固屋音戸バイパスから約5mの高さに位置する[21][22]

広島県は、第二音戸大橋の音戸町側を観光目的のコミュニティー広場兼通行止の際の転回場として整備し、その「坪井コミュニティ広場(日招き広場)」を繋ぐ歩道橋を設置することになった[4]。当地に元々あった里道の代わりでもある[21]。広場を含めた総事業費約1億800万円[22]

工事は県によるもので、呉市からの提案の結果「第三音戸大橋」としてイメージ化し、螺旋状の階段を用いたりするなど初代音戸大橋を似せて作られた[21][22]。そのため一見アーチ橋に見えるが、アーチ部補剛材にあたる部分は構造的には荷重が作用していない所謂「装飾」であり、橋の分類としては桁橋にあたる[20]

ギャラリー

音戸大橋
第二音戸大橋
その他

アーチ橋データ

上記の橋3つの諸元をまとめる。数字単位はメートル。

音戸大橋第二音戸大橋歩道橋
下を船舶が通る
下を広島-松山(四国)間
を結ぶ定期船が通る
下を国道が通る
路線名 国道487号国道487号
警固屋音戸バイパス
(横断歩道橋)
交差物件 音戸瀬戸音戸瀬戸国道487号
交差物件との高さ 23.539.04.7
橋種 下路式ランガー中路式ニールセンローゼ(桁橋)
橋長 17229214
幅員 車道5.5車道14.0+歩道4.0歩道2.0
アーチスパン
(支点間の長さ)
115280-
アーチライズ
(支点と頂点の高さ)
1765-

脚注

出典

  1. 音戸大橋 住民支え60年”. 読売新聞オンライン (yomiuri.co.jp). 読売新聞社 (2021年12月11日). 2022年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月19日閲覧。
  2. 「音戸の瀬戸」と「平清盛」 (PDF). 経済産業省中国経済産業局. 2013年12月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月22日閲覧。
  3. 音戸大橋(おんどおおはし)”. 広島県. 2014年7月22日閲覧。
  4. 音戸大橋”. くれナビ. 2014年7月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月22日閲覧。
  5. 音戸大橋”. 呉海上保安部. 2014年7月22日閲覧。
  6. 「日本一短い定期航路」存続ピンチ 呉市の音戸渡船、廃業の意向【動画】”. 中国新聞デジタル (chugoku-np.co.jp). 中国新聞社 (2021年9月14日). 2022年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月19日閲覧。
  7. 「日本一短い」音戸渡船 定期航路の運航終了へ”. NHK 広島のニュース. NHK NEWS WEB (2021年9月30日). 2021年10月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月19日閲覧。
  8. 渡船廃止1カ月、「音戸の象徴」再開願う 町まちづくり協会長、姿懐かしむ”. 中国新聞デジタル (chugoku-np.co.jp). 中国新聞社. 2022年11月19日時点のオリジナルよりアーカイブ。2022年11月19日閲覧。
  9. 音戸橋工事について」(PDF)『土木学会誌』第45巻第6号、土木学会、1960年6月、58-68頁、2014年7月22日閲覧
  10. 『呉市史 第5巻』pp.245 昭和63年3月31日 呉市史編纂委員会編
  11. 第二音戸大橋(だいにおんどおおはし)”. 広島県. 2014年7月22日閲覧。
  12. 第2音戸大橋(仮称)上部工大ブロック一括架設 (PDF). 国土交通省中国技術事務所. 2013年10月23日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月22日閲覧。
  13. 音戸渡船の支援を呉市に要望”. 中国新聞 (2012年12月10日). 2014年7月26日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月22日閲覧。
  14. 音戸町の歴史”. おんど観光文化会館. 2014年7月22日閲覧。
  15. 音戸の歴史・史跡 (PDF). 音戸市民センター. 2015年9月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月22日閲覧。
  16. 鋼橋の技術史研究部会報告書』鋼橋技術研究会〈部会報告書〉、2003年4月、239頁http://www.kougiken.jp/04_seika/pdfsystem/55_koukyou/55_7.pdf
  17. 竣工作品”. 大林組. 2014年7月22日閲覧。
  18. 国土交通省 国土地理院 地図・空中写真閲覧サービスの空中写真を基に作成
  19. 田中賞 作品部門受賞一覧”. 土木学会. 2014年7月22日閲覧。
  20. 第三音戸大橋(だいさんおんどおおはし)”. 広島県. 2014年7月22日閲覧。
  21. 「第3音戸大橋」新名所に”. 47NEWS(よんななニュース)(中国新聞) (2013年12月25日). 2013年12月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月22日閲覧。
  22. 第2音戸大橋に眺望歩道橋”. 47NEWS(よんななニュース)(中国新聞) (2012年12月24日). 2014年7月27日時点のオリジナルよりアーカイブ。2014年7月22日閲覧。

関連項目

外部リンク

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