31型フリゲート

31型フリゲートまたはインスピレーション級(計画中の名称は31e型フリゲートまたはGRF:General Puropose Frigate)は、2020年代に対潜用の26型と共にイギリス海軍に就役予定のフリゲートの艦級。船体はデンマーク海軍イーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲートをベースとしている。

31型フリゲート
基本情報
艦種 フリゲート
運用者  イギリス海軍
 インドネシア海軍
 ポーランド海軍
建造期間 2022年-現在
計画数 イギリスの旗:5隻
インドネシアの旗:2隻
ポーランドの旗:3隻
建造数 2隻
原型艦 デンマークイーヴァル・ヒュイトフェルト級
前級 26型
次級 32型
要目
排水量 5,700トン
全長 138.7m
機関方式 CODAD方式
主機
電源
  • ロールス・ロイスMTU16V 2000 M41B発電機×4基
最大速力 28ノット(52km/h)
航続距離 9,000海里(17,000 km)
乗員 105名
兵装
搭載機

来歴

2010 年の戦略的防衛安全保障見直し(SDSR:Strategic Defence and Security Review) で、イギリス海軍の13隻の23型フリゲートを置き換える Global Combat Ship (GCS) プログラムを承認した。同年初めに、BAEシステムズ国防省からGCSの設計のため、4年間で1億2,700万ポンドの契約を獲得[1]。同級は派生型として2つサブタイプ(対戦型・対空型)を建造することが計画されていた。この2つのタイプの違いは2087型ソナーを除いてほとんど同じである。当初の計画では、2016年に建造を開始し、2030年代半ばまでに23型を順次置き換える予定だった。

しかし2015年のSDSRで、対潜用の26型フリゲートを8隻のみにとどめ、全く異なる設計の汎用フリゲート5隻を発注して、少なくとも13隻のフリゲートを就役させることが決定した[2]

汎用フリゲート

その結果、汎用フリゲート(GPFF)は、より軽量で拡張性があり、低コストとなることが期待された。2015年のSDSRでは、GPFFの低コスト化により、イギリス海軍は本級を5隻以上調達し、これによりフリゲートと駆逐艦の定数が増加する可能性が示唆された。

2016年7月の防衛と安全保障に関する講演会で、GPFFは第一海軍卿フィリップ・ジョーンズ提督によって31型フリゲートと命名された[3]。提督はまた、31型フリゲートはスエズの東(ペルシャ湾地域からアジア太平洋地域)まで運用可能と述べている。

国家造船戦略

ファイナンシャルタイムズ紙は、防衛アナリストの言葉を引用し、国防省、財務省、海軍内部の役人はBAEのクライド造船所の技術と造船能力を維持するという10年前の取り決めに長い間反対しており、この入札競合は海軍造船業界におけるBAEの支配を打破することを意図しているように見えると延べ。実際31型の入札はBAEを含む入札を除外する可能性があると報じた[4]

しかし国防省は入札は納期短縮とコスト削減のために行われたとして報道を否定した[4]

国の造船能力を維持するため、2017年の国家造船戦略では、1番艦の就役を2023年とする31型フリゲート艦5隻の初期バッチを発注、そのコストをそれぞれ最大2億5,000万ポンドとし、その後イギリス海軍向けに31型の第2バッチを発注することを提案している[5]。31型はクイーン・エリザベス級航空母艦と同様に、複数の民間造船所でパーツを建造し、中央造船所で組み立てるブロック工法で建造予定である[6]

設計入札

2017年、31型の候補として様々な企業から複数の設計が提案された。BAEシステムズ社は、リバー型哨戒艦バッチ2の大幅な改良型「アベンジャー」と、カリーフ級コルベットを大幅に拡張改良した「カットラス」という2つの設計を提案[7]。BMT社は「ベネター110」、ステラ・システムズ社は「スパルタン」、バブコックインターナショナル社は「アローヘッド120」という設計をそれぞれ提案した[7][8][9]

2017年10月、BAEシステムズは、クライドの造船所(新型のリバー級巡視船と26型フリゲートを建造中)の能力の制約を理由に、主契約者としての31型の入札から撤退することを発表。代わりにBAEはキャメル・レアード社との提携を発表し、BAEが設計とシステム統合のノウハウを提供し、キャメル・レアードが主契約者となり、バーケンヘッドの造船所で艦船の組み立てを担当するとした。計画された設計は、イギリス海軍が過去に運用した3つの艦級名にちなみ「Leander」と名付けられた[10]

2017年11月、BMTとバブコックが31型に関する協力協定を締結したことが発表された。両社はそれぞれの「Venator 110」「Arrowhead 120」のどちらかを選択するのではなく、最良の選択肢を決定するため設計を検討するとした[11]。2018年5月末、バブコックはBMT及びタレス・グループと提携し、デンマークイーヴァル・ヒュイトフェルト級フリゲートの船体を基にした「Arrowhead 140」の設計を発表した[12]

2018年7月20日、入札が「適合する入札が不十分」であったため中断されたが、タイムズ紙はこれが国防総省の予算不足によるものであると報道した[13]。その後2018年8月に再開された。

競走設計段階

2018年12月10日、競争設計段階で3組が選ばれた。

2019年9月12日、31型フリゲート用にアローヘッド140の設計が採用されたことが発表された[14]。2019年11月15日にバブコックと契約が正式に締結され、1隻あたりのコストは2億5,000万ポンド、計画全体の総コストは20億ポンドとされた[15]

2020年1月20日、議会決算委員会(the Public Accounts Commitee)は国防次官から、1番艦は2023年までに進水するが、就役は2027年になるとの報告を受けた[16]。これは就役時期が2023年になるという以前の発言とは矛盾する。2022年9月に、バブコック・インターナショナル社の企業担当最高責任者ジョン・ハウイ氏は5隻すべてが2028年までに海軍に「引き渡し」されると述べたが、他の報道によると実際の「就役」時期は遅延するとされる[17][18]

装備

武器システム

艦砲として、57mm Mk3中口径砲を採用しており、前甲板に搭載する。近接防空としてファランクスCIWS、近距離の対水上用として40mm Mk4小口径砲を2基搭載する[19]

個艦防空ミサイルとしてはシーセプターを採用し、最大24セルのVLSが装備される。巡航対艦ミサイルの運用にあたり、Mk.41VLSは後日装備としている。

格納庫にはマーリンまたはワイルドキャットを収容でき、ヘリコプター甲板チヌークの運用も可能。またパシフィック24複合艇が3隻搭載され、乗船や捜索、麻薬対策に使用される[20]

比較

同規模艦艇の比較
日本 新型FFM 日本 もがみ型 中華人民共和国 054A型 イタリア C・ベルガミーニ級 ロシア A・ゴルシコフ級 イギリス 31型
船体 満載排水量 6,200 t 5,500 t 4,050 t 5,950 t 5,400 t 5,700 t
全長 142.0 m 133.0 m 134.0 m 142.0 m 135.0 m 138.7m
全幅 17.4 m 16.3 m 15.0 m 19.4 m 16.0 m 未公表
主機 方式 CODAG CODAD CODLAG CODAG CODAD
出力 不明 70,000 ps 28,200 ps 43,500 shp 55,000 ps 未公表
速力 30 kt 27 kt 27 kt 29-30 kt 28 kt
兵装 砲熕 62口径5インチ単装砲×1基 60口径76mm単装砲×1基 64口径127mm単装砲×1基[注 1] 70口径130mm単装砲×1基 70口径57mm単装砲×1基
62口径76mm単装砲×1基 70口径40mm機関砲×1基
不明 水上艦艇用機関銃架×2基 1130型CIWS×2基 80口径25mm単装機銃×2基 パラシ CIWS×2基 7.62mm機関銃×8挺
ミサイル Mk.41 VLS×32セル Mk.41 VLS×16セル[注 2]
07式[21]
VLS×32セル
HQ-16 / CY-3
シルヴァーA50 VLS×16セル
アスター15/30
3K96 VLS×32セル
(9M96E2-1/E、9M110)
VLS×24セル
シーセプター
SeaRAM 11連装発射機×1基
17式 4連装発射筒×2基 YJ-83 4連装発射筒×2基 テセオ 4連装発射筒×4基[注 3] UKSK VLS×16セル
P-800カリブルNK
Mk.41 VLS[注 4]
SLCMSSM
水雷 324mm3連装短魚雷発射管×2基 4連装短魚雷発射管×2基
艦載機 SH-60K×1機 Z-9C / Ka-28×1機 NFH90×1機 Ka-27×1機 AW159 / AW101×1機
同型艦数 12隻予定 4隻/12隻予定
(4隻艤装中、4隻計画中)
35隻/50隻予定
(5隻艤装中)
12隻予定[注 5] 2隻 / 15隻予定
(1隻艤装中、5隻建造中)
10隻予定
(2隻建造中)

輸出

2021年6月30日、バブコック社がギリシャインドネシアポーランド、その他2カ国と31型契約の可能性について協議中であることが報じられた[22]

2021年9月16日、バブコック社はPAL インドネシア社に対し、インドネシア海軍向けに31型の派生型2種の設計及び建造を認める契約を締結したと発表[23]。このクラスは現地でFregat Merah Putih(レッドホワイトフリゲート)と命名された。 2022年12月9日に1番艦のスチールカットが行われた。

2022年3月4日、バブコックはポーランドのフリゲートの入札で勝利したことを発表。ポーランド国防省は、合弁企業PGZ-MIECZNIKが提案した3つの設計案からバブコックのアローヘッド140 (AH140) を選択、3隻を建造予定である[24]

同型艦

本級は「インスピレーション級」とも称される。5隻の艦名はいずれも過去に顕著な功績を残した艦艇の名前を受け継いでいるが、選定基準として将来のイギリス海軍・イギリス海兵隊にとって重要な様々なテーマに沿った「インスピレーション」を与える戦歴の艦名が選ばれている。2021年5月19日、第一海軍卿トニー・ラダキン大将によって艦名および選定理由が発表された。2023年現在、すべての艦は2030年2月までに就役予定[25]

  • アクティヴ」…権益保護のため世界中に艦艇を前方展開する能力を象徴。

1982年のフォークランド紛争において活躍した21型フリゲートアクティヴ」に由来。

  • ブルドッグ」…北大西洋での作戦を象徴。

第二次世界大戦で船団護衛に従事し、1941年5月9日にU-110を拿捕・エニグマ暗号機鹵獲に成功したB級駆逐艦ブルドッグ」に由来。

  • フォーミダブル」…航空母艦の運用を象徴。

第二次世界大戦中に地中海大西洋・太平洋の各地で戦ったイラストリアス級航空母艦フォーミダブル」に由来。

  • ヴェンチャラー」…技術と革新を象徴。

第二次世界大戦末期の1945年2月9日、双方が潜航状態のままU-864を魚雷で撃沈し「双方が潜航中の状況で敵潜水艦撃沈に成功した唯一の潜水艦」となったV級潜水艦ヴェンチャラー」に由来。

  • キャンベルタウン」…将来コマンド部隊を象徴。

1942年3月28日のサン=ナゼール強襲において、火船としてノルマンディ・ドックに突入・自爆したタウン級駆逐艦キャンベルタウン」に由来。

艦番号 艦名 建造 発注 起工 進水 就役
ヴェンチャラー バブコック
インターナショナル
2019年
11月15日
2022年
4月26日[26]
アクティヴ 2023年
9月16日
キャンベルタウン 計画中
フォーミダブル 計画中
ブルドッグ 計画中

脚注

注釈

  1. 汎用型での装備、対潜型は127mm砲を76mm砲に変え62口径76mm単装砲が2基
  2. 8番艦まで後日装備。
  3. 汎用型での装備、対潜型はテセオ用とミラス用が各2基
  4. 後日装備
  5. イタリア海軍で汎用型と対潜型が計10隻、エジプト海軍で汎用型が2隻

出典

  1. “BAE signs £127m warship contract” (英語). (2010年3月25日). http://news.bbc.co.uk/2/hi/business/8587060.stm 2023年2月5日閲覧。
  2. Strategic Defence and Security Review 2015”. govement of uk. 2023年2月5日閲覧。
  3. First Sea Lord’s defence and security lecture to the City of London (英語). GOV.UK. 2023年2月5日閲覧。
  4. “BAE Systems takes below-deck role on UK’s Type 31 frigate”. Financial Times. (2017年10月18日). https://www.ft.com/content/572e3292-b41d-11e7-aa26-bb002965bce8 2023年2月5日閲覧。
  5. National Shipbuildiing Strategy:the future of naval shipbuilding in the UK”. British Ministry of Defence. 2023年2月5日閲覧。
  6. “UK shipyards: Five frigates at centre of new strategy” (英語). BBC News. (2017年9月6日). https://www.bbc.com/news/uk-41171515 2023年2月5日閲覧。
  7. Allison, George (2017年9月6日). The Avenger, a possible yet unpopular contender for the Type 31 Frigate (英語). 2023年2月5日閲覧。
  8. Allison, George (2017年7月5日). Spartan – A contender for the Type 31 Frigate? (英語). 2023年2月5日閲覧。
  9. Allison, George (2017年9月8日). Babcock unveil Arrowhead 120, a contender for the Type 31 Frigate (英語). 2023年2月5日閲覧。
  10. navaltoday (2017年10月18日). BAE Systems teams with Cammell Laird for UK Type 31 frigate build (英語). Naval Today. 2023年2月5日閲覧。
  11. Allison, George (2017年11月9日). Babcock and BMT team up on Type 31e Frigate bid (英語). 2023年2月5日閲覧。
  12. Allison, George (2018年5月31日). Babcock launches ‘Team 31’, selects Arrowhead 140 design for Type 31e frigate competition (英語). 2023年2月5日閲覧。
  13. Allison, George (2018年5月31日). Babcock launches ‘Team 31’, selects Arrowhead 140 design for Type 31e frigate competition (英語). 2023年2月5日閲覧。
  14. Editor, Deborah Haynes, Defence. “Contest to build a ‘budget frigate’ on hold as MoD runs out of funds” (英語). ISSN 0140-0460. https://www.thetimes.co.uk/article/contest-to-build-a-budget-frigate-on-hold-as-mod-runs-out-of-funds-wgvvkq0p3 2023年2月5日閲覧。
  15. Editor, Deborah Haynes, Defence. “Contest to build a ‘budget frigate’ on hold as MoD runs out of funds” (英語). ISSN 0140-0460. https://www.thetimes.co.uk/article/contest-to-build-a-budget-frigate-on-hold-as-mod-runs-out-of-funds-wgvvkq0p3 2023年2月5日閲覧。
  16. Type 31 Programme Acoounting Officer Assessment”. British MInistry of Defence. 2023年2月5日閲覧。
  17. Bahtić, Fatima (2022年9月12日). UK: All five Type 31 frigates to be delivered by 2028 (英語). Naval Today. 2023年2月5日閲覧。
  18. Royal Navy formally announces the names of the ‘inspiration class’ Type 31 frigates | Navy Lookout (英語). www.navylookout.com (2021年5月19日). 2023年2月5日閲覧。
  19. UK’s naval balancing act: getting the Type-31 frigate right (英語). IISS. 2023年2月5日閲覧。
  20. Romaniello, Federica. Explained: The new Type 31 frigates (英語). Forces Network. 2023年2月5日閲覧。
  21. 見えてきた「もがみ型護衛艦の“次”」=売る気満々!? 海自新型FFMの“ファミリー構想”とは?”. 乗りものニュース (2023年11月22日). 2023年12月4日閲覧。
  22. Tovey, Alan (2021年6月30日). “Babcock in talks to sell 'budget frigates' to five countries” (英語). The Telegraph. ISSN 0307-1235. https://www.telegraph.co.uk/business/2021/06/30/babcock-talks-sell-budget-battleships-five-countries/ 2023年2月5日閲覧。
  23. paulaanderson (2021年9月16日). Babcock sells first new frigate design licence to Indonesia (英語). Babcock International. 2023年2月5日閲覧。
  24. Allison, George (2022年3月4日). British company Babcock wins Polish frigate competition (英語). 2023年2月5日閲覧。
  25. Royal Navy formally announces the names of the ‘inspiration class’ Type 31 frigates | Navy Lookout (英語). www.navylookout.com (2021年5月19日). 2023年2月5日閲覧。
  26. markblackburn (2022年4月26日). Keel laying for Royal Navy’s Type 31 frigate showcases Babcock workforce (英語). Babcock International. 2023年2月5日閲覧。
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