Il-214 (航空機)

Il-214は、多目的輸送機(MTA)として開発されている中規模の軍用輸送機でロシアの統一航空機製造会社(UAC)とインドのヒンドスタン航空機(HAL)の合弁事業で生産される予定である。両社ともそれぞれ約3億USドルを合弁事業に出資する[1][2]

2009年のMAKSに展示されたIl-214の模型

2009年のMAKSに展示されたIl-214の模型

通常の輸送用途だけでなく空挺兵の降下にも使用できる。2023年に初飛行、2026年に量産初号機が納入予定[3]

開発

貨物室の内部

2009年10月にインドの国防相であるA.K. Antonyがロシアを公式訪問中に正式に共同開発が決まった。インドとロシアの両国の軍隊に向けて生産され、更に友好的な第三国への輸出も含めた契約文書が作成された。関係者によると、契約にはスピンオフによりバンガロールにあるHALの航空機研究・設計センターによって開発される100席クラスの民間航空機仕様も含まれる。インドではHALのカーンプルの輸送機部門で生産する予定である[4]

報道によると生産の分担割合は協議中であるとのことである。ロシアの統一航空機(UAC)とヒンドスタン航空機(HAL)は航空機を開発する為の子会社を設立中である。

2国間の正式な合意文書はモスクワで9月9日の協議で策定され、新会社の資本金は6億70万USドル(両国で折半出資)とされた。HALの会長でマネージング・ディレクター(CMD)のAshok Nayakによるとインドは45機、ロシアは105機を購入予定だという。輸出は民間仕様と軍用両方が予定され、さらに多数の生産が予定されていた[5]

2012年5月、ヒンドスタン航空機と統一航空機製造会社輸送機、ロシアのパートナーの三者との間でMTAの共同開発のための合弁会社である多目的輸送機株式会社設立のための契約を締結した[6]

2012年10月、HALはUACで予備設計契約を締結しモスクワで共同設計作業を開始すると定めた。この作業ではUACの技術者のほか30人のインド人技術者が設計にかかわるという[7]

2015年6月16日、ロシアUACはインドのHALに対して設計作業を急ぐよう求め、MTAにPS-90を搭載することで合意した[8]

2015年12月16日、エコノミクスタイムズはプロジェクトに関するインドとロシアの違いが広がっており、ナレンドラ・モディ首相が今月末にモスクワを訪問した際に、高いレベルでの介入が見込まれ、事態に巻き込まれる可能性が高いと報じた。インドの関係者によると主な競合点はエンジンで、インド空軍は新型機にFADECシステムを備えた新世代エンジンを主張しており、計画の遅れのためにPS-90の新しい派生型を先行させているロシアと対立しているという。ロシア側は、PS-90エンジンの新しい派生型は適切な性能を提供でき、FADECは必要ないと考えており、UACのユーリ・シュルサルは、FADECは後の段階でインド空軍が追加したもので必要な性能のためにはそのような必要ないとしている。一方インドの当局者は、MTAがほぼ30年間運用を継続するとすれば、PS-90は空軍の長期要件を満たすのに十分ではないと主張している[9]

2016年1月11日、イリューシンはインドとのMTA計画を凍結したことを発表した。基本設計は完了済みのため、イリューシンでは凍結後もロシアの顧客および輸出用として開発していくという[10]。凍結に陥った原因としてはインドがロシア側の推すPD-14Mの性能に満足せずFADECを装備した完全新規開発のエンジンを搭載しかつ技術移転を望んだこと、ロシアの利害関係者間の内部競合、An-32の寿命延長があるとされている[11][12]

2016年6月27日、イリューシンは自社資金で開発を再開したことを発表した。またTsAGIは、PD-14とPS-90Aをそれぞれ搭載したモックアップの風洞試験を行うための準備を進めていることを明らかとした。PD-14については既に1年前より試験が行われているという[13]

2017年2月28日、HALの関係者はidrw.orgに対しMTAプログラムはほぼ公式に死亡していると述べた。拒否の主な理由は主にインド空軍が求めているPS-90A1のFADECの欠如に基づいていたが、PS-90A1が優れた保守性の記録を持っておらずインド空軍が新しいプラットフォームで同じエンジンを再び使用することを熱望していなかったのが主な理由であった。インドはロシアに対しPS-90に代わりCFM56V2500の装備を求めたがロシアは販売後のサポートを失う恐れがあることから西側のエンジンをロシアのプラットホームに統合することに消極的であり、代わりにPS-90のコアエンジンをベースに開発したPD-14を量産型のMTAに提案した。エアロインディア2017においてロシア代表団はすぐにMTAの新しい提案で戻ってくるであろうと述べたが西側エンジンの搭載要求を認めるかは不透明である[14]

2017年3月17日、インドへ出張したデニス・マントゥロフ産業貿易大臣は軍用輸送機を確立するためのロシア・インドの共同プロジェクトが停止したと発表した。マントゥロフ大臣はこの5年間で当事者が計画を実現するために、将来的に有益であろう解決策を見つけることができなかったことと発言した[15]

2017年7月19日、UACのユーリ・シュルサル社長はLenta.ruの特派員に対してIl-214の主な顧客は軍隊だが、民間市場でも見通しがあると発言。続けてIl-214が確立された後にインドとのパートナーシップに戻ることも可能であるという希望を表明した。一方で同氏の意見によるとIl-214の主な潜在的顧客は、約60機を購入する軍隊であるであろうとし、テストは2024年から2025年に完了し、その後、国防省のニーズに合わせた航空機の配備が開始されるとした[16]

2017年10月20日、イズベスチアはMTAをベースとしたIl-276の調達をロシア航空宇宙軍の主要指揮官と協議していると報じた。特にIl-276の確率に向けた日程と計画についても議論されているという。同報道によれば軍の必要性は、少なくとも55機であることは明らかであるという[17]

2020年6月、ロシア国防省は、新たな中型軍用輸送機としてIl-276を選定したと発表した[3]

設計

機体は、高翼式でT型尾翼である。積載量は軍用も民間用も20メトリックトン (44,000 lb)で、航続距離は2,500km、速度は870km/hである。要求に応じて空中給油装置の設置も可能である。機内の大きさはIl-76と同規模だが全長は半分である。機内は与圧されており、80名の人員や医療機器の設置も可能である。カーゴランプの長さは、重量のある車輪付きの機器のロールオン/ロールアウトを容易にするため12°の角度で地面に接地する。カーゴランプは2,500kgの荷重に対応する[18]

コックピットは、6基の液晶多機能ディスプレイヘッドアップディスプレイで構成される。乗員は機長、副操縦士、航法士の3名。アビオニクスはオープンアーキテクチャに基づいており、将来の近代化や強化が考慮されている[18]

エンジンは2基のターボファンエンジンを搭載する。当初ロシアは未舗装滑走路への着陸のためターボプロップエンジンを搭載する意向であったが、インドとの折衝の結果ターボファンエンジンになった経緯がある[19]。また、ターボファンについても当初PD-14Mを搭載するとしていたが[20]、計画のスピードアップのため2015年にPS-90に変更された。2016年現在はPS-90Aが搭載されることとなっている。かつてはBR715D-436も検討されていた[21]

現時点で派生型はないが、給油機型や電子妨害型などが構想されている[18]

運用

採用国

ロシアの旗 ロシア

ロシア空軍では105機を購入し[5]An-12An-26An-72An-74を置き換える予定である[22]

中止

インドの旗 インド

インド空軍では、45機を購入しAn-32を置き換える予定であったが[5]、計画の凍結(実質的な中止)によりグローバルな入札に切り替えるとされている[12]

仕様 (予定)

Il-214

出典: [23]

諸元

性能

  • 最大速度: 870 km/h (541 mph) 470 kn
  • 巡航速度: 810 km/h (503 mph) 437 kn
  • フェリー飛行時航続距離: 7,300 km (4,536 mi) 3,942 nmi
  • 航続距離: 20トンの荷物を搭載して3,250 km (2,019 mi) 1,755 nmi
  • 実用上昇限度: 13,100 m (42,979 ft)
  • 離陸滑走距離: 1,050 m (3,440 ft)
  • 着陸滑走距離: 1,050 m (3,440 ft)


主な軍用輸送機の比較
日本の旗C-2 欧州連合の旗A400M アメリカ合衆国の旗C-17 中華人民共和国の旗Y-20 アメリカ合衆国の旗C-130J ブラジルの旗KC-390 ウクライナの旗An-178 ロシアの旗Il-276
画像
乗員 3名 3-4名 2-4名 3名 3-6名 2名 3名 2名
全長 43.9 m 45.1 m 53.0 m 47.0 m 29.79 m 35.20 m 32.95 m 33.2 m
全幅 44.4 m 42.4 m 51.8 m 50.0 m 40.41 m 35.05 m 28.84 m 30.1 m
全高 14.2 m 14.7 m 16.8 m 15.0 m 11.84 m 11.84 m 10.14 m 10.0 m
空虚重量 69.0 t 76.5 t 128.1 t 100 t 34.25 t 51 t
基本離陸重量 120 t 263 t 70.305 t
最大離陸重量 141 t 136.5 t 265.35 t 220 t 79.38 t 81.0 t 51.0 t 68.0 t
最大積載量 32 t(2.5G)
36 t(2.25G)
30 t(2.5G) 77.519 t 66 t 19.050 t 26 t 18.0 t 20.0 t
貨物室
(L×W×H)
15.65×4.0×4.0m 17.71×4.0×3.85m 26.83×5.49×3.76m 20.0×4.0×4.0m 16.76×3.02×2.74m 18.5×3.0×3.4m 16.65×2.748×2.75m
発動機 CF6-80C2K1F×2 TP400-D6×4 F117-PW-100×4 D-30KP-2×4 AE2100-D3×4 V2500-E5×2 D-436-148FM×2 PD-14M×2
ターボファンターボプロップターボファンターボプロップターボファン
巡航速度 マッハ0.81
マッハ0.68-0.72
781 km/h
(高度9,450 m)
マッハ0.74
830 km/h
(高度8,530 m)
マッハ0.75 マッハ0.59
671 km/h
(高度6,700 m)
マッハ0.80
870 km/h
マッハ0.77
825 km/h
マッハ0.75
810 km/h
航続距離 0 t/9,800 km
20 t/7,600 km
30 t/5,700 km
36 t/4,500 km
0 t/8,710 km
20 t/6,390 km
30 t/4,540 km
0 t/9,815 km
72 t/4,630 km
0 t/7,500 km
0 t/6,445 km
16.3 t/3,150 km
0 t/6,241 km
14 t/5,019 km
23 t/2,722 km
26 t/2,000 km
0 t/5,500 km
5.0 t/4,700km
18.0 t/1,000 km
0 t/7,300 km
4.5 t/6,000 km
20 t/3,250 km
最短離陸滑走距離 500 m 770 m 1,000 m 600 - 700 m 600 m 1,100 m 1,050 m
生産数(-2023) 19 119 279 68 500 9 2 0
運用状況 現役 実用試験中 開発中

関連項目

脚注

  1. India, Russia enter into $600m JV to develop new aircraft
  2. МТС вышел из ступора
  3. RICARDO MEIER (2020年6月24日). “Russia approves production of new military freighter IL-276”. Airway. https://www.airway1.com/russia-approves-production-of-new-military-freighter-il-276/
  4. UAC-HAL's Multirole Transport Aircraft JV To Be Incorporated Next Month
  5. India, Russia finalize transport aircraft project
  6. India, Russia sign multirole transport aircraft deal
  7. Aircraft: Hindustan Aeronautics Ltd signs design phase contract with Russia firm
  8. Russia's UAC asks HAL to speed up joint aircraft project
  9. India and Russia's joint military aircraft project still in limbo - The Economic Times
  10. «Ил» заморозил разработку российско-индийского транспортника Ил-214/МТС
  11. Indo-Russian Air Transport Project Falters
  12. Russia 'freezes' India out of MTA project, to proceed alone as Il-214
  13. Ilyushin resumes Il-214 medium airlifter development through self-funding
  14. AERO INDIA 2017: Indo-Russian Multirole Transport Aircraft (MTA) is officially dead - Indian Defence Research Wing
  15. РФ и Индия остановили проект по созданию военно-транспортного самолета - Армия и ОПК - ТАСС
  16. Первые транспортные самолеты Ил-214 передадут военным после 2024 года
  17. Ил-276 ждут в армии | Статьи | Известия
  18. MTA Design features
  19. «Проклятие магараджей»: Дели и Москва спорят о будущем Ил-214
  20. MTA
  21. Il-214 team plans powerplant contest
  22. Быть или не быть многоцелевому транспортному самолёту Ил-214?
  23. MTA Aircraft specification

外部リンク

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