アサマノイタズラ

アサマノイタズラ(欧字名:Asamano Itazura2018年4月1日 - )は、日本競走馬[1]2021年セントライト記念の勝ち馬である。

アサマノイタズラ
2021年皐月賞
欧字表記 Asamano Itazura[1]
品種 サラブレッド[1]
性別 [1]
毛色 黒鹿毛[1]
生誕 2018年4月1日(6歳)[1]
登録日 2020年11月5日
ヴィクトワールピサ[1]
ハイタッチクイーン[1]
母の父 キングヘイロー[1]
生国 日本の旗 日本北海道日高町[1]
生産者 前野牧場[1]
馬主 星野壽市[1]
調教師 手塚貴久美浦[1]
競走成績
生涯成績 19戦2勝[1]
獲得賞金 9500万2000円[1]
(2024年3月10日現在)
勝ち鞍
GIIセントライト記念2021年

馬名は群馬県の郷土かるたである上毛かるたの一文「浅間のいたずら 鬼の押し出し」より[2]

戦績

母・ハイタッチクイーン

アサマノイタズラの母であるハイタッチクイーンは、2007年に北海道日高町の前野牧場に生産された父キングヘイロー、母オペラレディの牝馬である[3]。当時の牧場代表であった前野博幸がオペラレディをジェイエスが行う繁殖セールで購入した際、既にお腹の中にいた子がハイタッチクイーンであった。博幸から牧場を継いだ前野真一代表によると、ハイタッチクイーンは「小さくて背ったれで、おでこがへこんでいるような馬」であったといい、購入した星野壽市オーナーも「こんなヤギみたいな馬を俺に売りつけやがって」と冗談を言うほどの馬体であったが、引退までに3勝を上げて6000万円以上の賞金を獲得し、前野代表は「会長、ヤギがずいぶん稼ぎましたね」とジョークで返したという[4]

繁殖入り後、牧場の経営が苦しい時から前野代表が世話になった星野オーナーの「前野牧場の馬で重賞を取りたい」という熱い想いもあり、ハイタッチクイーンにはオルフェーヴルを2回、ディープインパクトを1回配合するなど期待の種牡馬があてがわれたが、小柄な母からコンパクトに産まれた産駒は大成しなかった。「何とか馬格のある子供を」という願いから前野代表が第4仔の配合として選んだのが、現役時代は510キロ以上の大柄であったヴィクトワールピサだった[4][5]

誕生

アサマノイタズラは2018年4月1日、母と同じく北海道日高町の前野牧場で産まれた。父はGⅠ3勝のヴィクトワールピサ、母ハイタッチクイーンという血統である。

配合を決めた前野代表の思惑通り、アサマノイタズラは1歳の6月頃には品のある垢抜けた馬体となった[4]。前野代表は本馬の幼少期を「大人しくて放牧地でも素軽い走り。皮膚も薄くむちゃくちゃ良かった」と回顧している[5]。また、星野壽市がオーナーとなることは既に決まっていたものの、前野代表が「セリに出してみたい」と思うほどの出来であったという[4]

上毛かるた軍団

上毛かるたは群馬県の風物を詠んだ郷土かるたであり、高崎で会社を経営する星野オーナーは2017年デビューのライトカラカゼからヘイワノツカイ、ココロノトウダイなど毎年一世代一頭に上毛かるた由来の馬名をつけている。本馬はその4頭目にあたる。アサマノイタズラの名前の由来となった「浅間のいたずら 鬼の押し出し」という札は、浅間山のいたずら(噴火)によって流れ出た溶岩の広がる「鬼押出し(園)」を詠んだものである[6][7]

2歳(2020年)

12月13日に中山競馬場で行われた2歳新馬戦に鞍上嶋田純次で出走し3着となる。

3歳(2021年)

1月5日の3歳未勝利戦で新馬戦同様、嶋田純次とのコンビで出走し後続に4馬身差をつけ初勝利を挙げる。2月27日、水仙賞では1番人気に支持されるも直線で前が壁となり、スムーズさを欠いてしまったためにレッドヴェロシティの4着に敗れる[8]。3月21日、スプリングステークスで初めて重賞に出走。鞍上の嶋田は前走の内容から乗り替わりも覚悟していたというが、引き続き手綱を任されることになった[8]。レースでは手塚貴久調教師の「強気な競馬をしてくれ」という指示通り、中団から捲っていく競馬で一度は抜け出すもヴィクティファルスに捉えられ、アタマ差の2着となり皐月賞の優先出走権を得る[9]。しかしクラシック登録の時期はデビュー前であり、ノド鳴りも見られたために登録しておらず、追加登録料200万円を払って[10]4月18日、本番の皐月賞に出走。生産牧場の前野牧場にとっては初のクラシック出走[11]、鞍上の嶋田はデビュー11年目でのG1初騎乗であった[8]。しかし結果は疲労や外枠によるロスもあってか[12]最下位の16着と大敗、短期放牧を挟んだ[13]7月4日のラジオNIKKEI賞では5番人気に支持されるもまたしても12着と大敗する。

9月20日、菊花賞トライアルのセントライト記念では鞍上が田辺裕信に乗り替わりとなって9番人気で出走。道中は有力馬が好位でひしめき合う中で後方待機策を取り、4コーナー11番手から追い込むと、一旦は先頭に立ったソーヴァリアントをクビ差交わし優勝。騎乗していた田辺は「正直(前の馬を)全部とらえてくれるとは思わなかった。能力の高さに驚かされました」とコメントした[14][15]。この勝利が牧場にとって初タイトルとなった前野牧場の前野代表は、レース中応接室でラグのある携帯電話の中継を見ており、直線に入ったところで隣の自宅から歓声が聞こえてきたことから「2着か3着くらいあるのかな」と思った瞬間にぐんぐん伸びていき勝利を飾ったため、遅れて歓喜の輪に加わり星野オーナーの息子と抱き合って喜んだという[4]。アサマノイタズラはこのような事前評価を裏切る好走によって重賞4戦目での初制覇を飾るとともに菊花賞への優先出走権を獲得した[14]。また、担当の手塚師はこの日が57歳の誕生日であり、「良い誕生日プレゼントをもらうことができました」とコメントした[16]

続くレースは皐月賞と同じく追加登録料200万円を払っての参戦となった菊花賞であったが、1周目のスタンド前で最後方まで位置が下がり、直線では上り最速タイの脚を使ったものの9着までが精いっぱいだった[17]。次走は年内最後にグランプリレースの有馬記念を選択。投票上位10番目まで優先出走権が与えられるファン投票では11番目であったが、賞金順で6番目となり出走がかなった[18]。しかし迎えたレース本番では道中最後方から反応がなく、鞍上の田辺もレース後に「こんな手応えは今までなかった。」[19]「いつもスイッチが入るとガツンと反応してくれるが、今日は反応がなく不可解。何もなければいいのですが」[20]と述べるほどの走りで最下位の16着に終わる。レース後、せきが出ていたことや調教と走りの違いを疑問に思った手塚調教師が検査をさせたところ、気管支に炎症を発症していたことが判明した[21][22]

4歳(2022年)

2022年は年明けから気管支炎の治療を行い[23]、前日まで出否保留ではあったが[21]、4歳初戦は鞍上を嶋田に戻しアメリカジョッキークラブカップに出走。レースは最後方から追い込んで4着に入った。続く日経賞では横山武史との新コンビで参戦。3番人気に支持されるも右に張る面が出てしまいリズムが取れず、8着に沈む[24]。次走は鞍上を嶋田に戻し目黒記念に出走。これまでの戦績から“中山巧者”のイメージもある本馬にとって初の東京コースであったが[25]、結果は11着に敗れた。

競走成績

以下の内容は、JBISサーチ[26]およびnetkeiba.com[27]に基づく。

競走日競馬場競走名距離(馬場)


オッズ
(人気)
着順タイム
(上り3F)
着差騎手斤量
[kg]
1着馬(2着馬)馬体重
[kg]
2020.12.13 中山 2歳新馬 芝1800m(良) 13 6 9 007.80(3人) 03着 R1:51.2(36.1) -0.8 0嶋田純次 55 ディオスバリエンテ 506
2021.01.05 中山 3歳未勝利 芝2000m(良) 16 6 11 008.40(4人) 01着 R2:02.0(35.0) -0.6 0嶋田純次 56 (コスモマイン) 500
0000.02.27 中山 水仙賞 1勝 芝2200m(良) 11 5 5 003.20(1人) 04着 R2:17.1(34.3) -0.4 0嶋田純次 56 レッドヴェロシティ 490
0000.03.21 中山 スプリングS GII 芝1800m(重) 15 4 6 021.20(7人) 02着 R1:52.0(36.2) -0.0 0嶋田純次 56 ヴィクティファルス 500
0000.04.18 中山 皐月賞 GI 芝2000m(稍) 16 7 14 032.7(12人) 16着 R2:03.6(39.8) -3.0 0嶋田純次 57 エフフォーリア 494
0000.07.04 福島 ラジオNIKKEI賞 GIII 芝1800m(稍) 16 2 3 009.50(5人) 12着 R1:49.1(35.6) -1.1 0嶋田純次 56 ヴァイスメテオール 502
0000.09.20 中山 セントライト記念 GII 芝2200m(良) 14 2 2 042.70(9人) 01着 R2:12.3(34.6) -0.1 0田辺裕信 56 ソーヴァリアント 498
0000.10.24 阪神 菊花賞 GI 芝3000m(良) 18 1 2 013.10(5人) 09着 R3:06.0(34.7) -1.4 0田辺裕信 57 タイトルホルダー 492
0000.12.26 中山 有馬記念 GI 芝2500m(良) 16 7 14 051.1(10人) 16着 R2:35.4(38.4) -3.4 0田辺裕信 55 エフフォーリア 496
2022.01.23 中山 AJCC GII 芝2200m(良) 14 2 2 018.80(7人) 04着 R2:13.0(34.8) -0.3 0嶋田純次 56 キングオブコージ 494
0000.03.26 中山 日経賞 GII 芝2500m(稍) 15 7 12 008.10(3人) 08着 R2:36.3(34.9) -0.9 0横山武史 56 タイトルホルダー 502
0000.05.29 東京 目黒記念 GII 芝2500m(良) 18 7 14 030.9(11人) 11着 R2:32.7(33.7) -0.6 0嶋田純次 56 ボッケリーニ 508
2023.07.29 新潟 関越S OP 芝1800m(良) 18 3 5 082.1(13人) 16着 R1:45.9(34.1) -1.5 0嶋田純次 59 ストーリア 518
0000.09.24 中山 オールカマー GII 芝2200m(良) 15 2 3 138.1(13人) 14着 R2:14.0(36.0) -2.0 0嶋田純次 57 ローシャムパーク 510
0000.11.05 東京 AR共和国杯 GII 芝2500m(良) 18 8 18 176.3(18人) 18着 R2:31.4(36.3) -1.5 0柴田善臣 56 ゼッフィーロ 510
0000.11.18 京都 アンドロメダS L 芝2000m(稍) 16 3 5 049.4(10人) 09着 R2:00.2(35.7) -1.0 0嶋田純次 55 ディープモンスター 500
0000.12.17 中山 ディセンバーS L 芝1800m(良) 13 6 9 038.4(11人) 07着 R1:48.3(35.6) -0.5 0嶋田純次 59 ロングラン 506
2024.02.18 小倉 小倉大賞典 GIII 芝1800m(良) 15 2 4 027.2(11人) 11着 R1:46.1(34.8) -1.0 0嶋田純次 55 エピファニー 506
0000.03.10 中山 東風S L 芝1600m(良) 14 2 2 068.0(10人) 13着 R1:34.8(36.0) -1.4 0嶋田純次 59 ディオ 508
  • 競走成績は2024年3月10日現在

血統表

アサマノイタズラ血統(血統表の出典)[§ 1]
父系サンデーサイレンス系
[§ 2]

ヴィクトワールピサ
2007 黒鹿毛
父の父
ネオユニヴァース
2000 鹿毛
*サンデーサイレンス Halo
Wishing Well
*ポインテッドパス Kris
Silken Way
父の母
*ホワイトウォーターアフェア
Whitewater Affair
1993 栗毛
Machiavellian Mr. Prospector
Coup de Foile
Much Too Risky Bustino
Short Rations

ハイタッチクイーン
2007 栗毛
キングヘイロー
1995 鹿毛
*ダンシングブレーヴ Lyphard
Navajo Princess
*グッバイヘイロー Halo
Pound Foolish
母の母
オペラレディ
2001 栗毛
*オペラハウス Sadler's Wells
Colorspin
*レディステラ Crafty Prospector
Maggie J. Jones
母系(F-No.) レディステラ(USA)系(FN:3-h) [§ 3]
5代内の近親交配 Halo 4 × 5 × 4= 15.63%、Mr. Prospector 4 × 5= 9.38%、Northern Dancer 5 × 5(母内) = 6.25% [§ 4]
出典
  1. [28][29]
  2. [30][29]
  3. [28][29]
  4. [28][29]

脚注

  1. アサマノイタズラ|JBISサーチ(JBIS-Search)”. JBISサーチ. 2023年9月24日閲覧。
  2. 2021年皐月賞レーシングプログラム
  3. ハイタッチクイーン|JBISサーチ(JBIS-Search)”. www.jbis.or.jp. 2022年6月19日閲覧。
  4. 重賞制覇レポート『アサマノイタズラ』前野牧場編(セントライト記念)”. Pacalla. 2022年6月27日閲覧。
  5. 【皐月賞 牧場からのエール】前野牧場、アサマノイタズラでクラシック初挑戦 何とかダービーにつなげたい”. スポーツ報知. 2022年6月27日閲覧。
  6. 【セントライト記念】アサマノイタズラ由来は星野オーナー地元愛“上毛かるた””. スポニチ. 2022年6月27日閲覧。
  7. 上毛かるた由来 アサマノイタズラ皐月賞へ”. netkeiba. 2022年6月27日閲覧。
  8. 【皐月賞】嶋田 アサマノイタズラと挑む「感謝」の初G1 さまざまな思い胸に大舞台へ”. netkeiba. 2022年6月19日閲覧。
  9. 【スプリングS】7番人気アサマノイタズラは健闘2着 手塚氏は皐月賞への出走を公言”. 中日スポーツ. 2022年6月19日閲覧。
  10. 【POG調査隊】アサマノイタズラ”. サンスポZBAT!. 2022年6月19日閲覧。
  11. 前野牧場初のクラシック出走馬『アサマノイタズラ』これまでとは違った方法論実った【村本浩平コラム】”. 中日スポーツ. 2022年6月19日閲覧。
  12. 【ラジオNIKKEI賞】体調万全アサマノイタズラ初G獲りだ”. サンスポZBAT!. 2022年6月19日閲覧。
  13. アサマノイタズラは短期放牧でリフレッシュ/ラジオNIKKEI賞”. 日刊スポーツ. 2022年6月19日閲覧。
  14. 【セントライト記念】アサマノイタズラが豪快差し切り”. サンスポZBAT!. 2022年6月19日閲覧。
  15. 【セントライト記念】皐月賞16着アサマノイタズラ激走V「ビックリ」と田辺裕信騎手”. スポーツ報知. 2022年6月19日閲覧。
  16. 【セントライト記念レース後コメント速報】優勝したアサマノイタズラ田辺裕信騎手ら”. netkeiba. 2022年6月27日閲覧。
  17. 【菊花賞】アサマノイタズラは末脚勝負にかけるも9着まで 田辺「展開の助けが欲しかったですね」(サンケイスポーツ)”. Yahoo!ニュース. 2021年10月27日閲覧。
  18. アサマノイタズラ出走 あす有馬記念 末脚生かし波乱演出へ”. 上毛新聞. 2022年6月19日閲覧。
  19. 【有馬記念】アサマノイタズラは最下位16着 田辺裕信騎手「こんな手応えは今までなかった」”. スポーツ報知. 2022年6月19日閲覧。
  20. 【有馬記念】5着タイトルホルダー横山和「一瞬夢を見ました」 最下位アサマノイタズラ田辺「不可解」”. 東スポ競馬. 2022年6月19日閲覧。
  21. アサマノイタズラ参戦決定、2頭併せ先着で手塚師がゴーサイン/AJCC”. 日刊スポーツ. 2022年6月19日閲覧。
  22. 【AJCC】アサマノイタズラWでしっかり半馬身先着”. サンスポZBAT!. 2022年6月19日閲覧。
  23. 【AJCC】嶋田純次 アサマノイタズラとの再タッグに燃える 4戦ぶりの手綱に「感謝」”. デイリー. 2022年6月19日閲覧。
  24. 【目黒記念】アサマノイタズラ 府中の直線勝負なら「そこそこやれる」手塚調教師”. スポーツ報知. 2022年6月19日閲覧。
  25. 【目黒記念】初府中で〝中山巧者〟一新だ!アサマノイタズラ”. ウマニティ. 2022年6月19日閲覧。
  26. アサマノイタズラ 競走成績”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2023年9月24日閲覧。
  27. アサマノイタズラの競走成績”. netkeiba. Net Dreamers Co., Ltd.. 2023年9月24日閲覧。
  28. アサマノイタズラ 血統情報:5代血統表”. JBISサーチ. 公益社団法人日本軽種馬協会. 2021年9月22日閲覧。
  29. アサマノイタズラの血統表”. netkeiba. Net Dreamers Co., Ltd.. 2021年9月22日閲覧。
  30. アサマノイタズラ - Asamano Itazura - 競走馬データベース”. 競馬ラボ. 2021年9月25日閲覧。

外部リンク

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