アラド市電

アラド市電ルーマニア語: Tramvaiul din Arad)は、ルーマニアの都市・アラドに路線網を有する路面電車。2020年現在、アラド市(70 %)およびアラド県(30 %)が株を所有する企業であるアラド公共交通会社(Compania de Transport Public SA Arad、CTP Arad)による運営が行われている[1][6]

アラド市電
シュトゥットガルト市電から譲渡されたGT4(2008年撮影)
シュトゥットガルト市電から譲渡されたGT4(2008年撮影)
基本情報
 ルーマニア
アラド県
所在地 アラド
種類 路面電車[1]
路線網 14系統(2020年現在)[2]
開業 1906年(郊外線 "グリーンアロー")
1946年路面電車[3][4][5]
所有者 アラド公共交通会社[6]
路線諸元
路線距離 48 km[1]
軌間 1,000 mm[1]
電化区間 全区間[1]
路線図(2012年時点)

概要・歴史

市内線

アラド市内における公共交通機関の始まりは、1869年に開通した馬車鉄道であった。これらの路線は1910年代まで残存し、電化計画も立ち上がったものの実現することなく1916年までに廃止され、以降はルーマニアへの併合を経てアラド市中心部の公共交通機関は路線バスが主力となった[6][7]

その後、第二次世界大戦中に勃発したオデッサの戦いによりルーマニアは一時的にソビエト連邦(現:ウクライナ)のオデッサを占領したが、その中で同都市の路面電車(オデッサ市電)から接収した軌間1,000 mmの施設および車両を基に、アラド市内に路面電車を再度建設する計画が発案された。この時点では実現しなかったものの、終戦後に本格的な計画が始動し、1946年11月29日にアラド市内に路面電車が運行を開始した[6][7][3]

1970年代までは4系統のみの運行に留まっていたが、1980年代以降は石油を多く消費する路線バスに代わり路面電車網を拡充するルーマニア政府の方針に基づき大規模な延伸が実施され、民主化以降の2000年代にも更なる延伸が行われた他、線路や施設の改修・近代化工事も継続的に進められている。一方、車両については後述するように共産主義時代に導入された各種電車の老朽化が早期に進行したことを受け、1995年以降ドイツオーストリアの中古車両の大量譲受が行われている他、2010年代以降はルーマニア国産の超低床電車であるインペリオの導入も実施されている[6][7][3][8][9]

郊外線

アラド市電はアラド市内を走る路線網に加えて、伝統的なガラス工芸で知られるポドゴリア(Podgoria)地域を結ぶ郊外路線を有している。この路線はハンガリー時代の1906年に開通し、当初はスチームトラムが客車を牽引する非電化路線であったが、効率の悪さから電化が決定し、1913年に東ヨーロッパ初、世界全体でも8番目となる都市間電気鉄道(インターアーバン)となった。ルーマニアへの併合以降も国営化を経て運行を続けたが、1960年代以降都市の発展の障害となるという理由でアラド市内の区間をはじめとする一部路線が廃止され、1983年以降はアラド市電の路線網に編入されている[4][5]

電化開業時に導入されたハンガリー製の大型電車については、アラド市電への編入やルーマニア民主化を経た1991年まで営業運転に使用された後、1995年に残存車両の動態復元が実施され、2020年現在も現存する。路線の愛称であった「グリーンアロー(Sagetii Verzi)」は現役時代のこの電車の塗装が由来であったが、復元以降は灰色を基調とした開業当初の塗装に改められている[3][10][4][5]

運用

2020年現在、アラド市電で運行されている系統は以下の通り。運賃は距離制に基づいて設定されており、最低運賃は5 km県内までの乗車時の3レイで、全区間を1日乗車可能な12レイの乗車券や1ヶ月ごとに更新される定額制の乗車券の展開も行われている[1][2][11]

系統番号 経路 備考・参考
1 Făt Frumos - Podgoria - Plaţa Romană
1b Zona Industrială - Făt Frumos
3 Făt Frumos - Podgoria - Plaţa Romană - Gara Aradul Nou
6 Plaţa Gai - Podgoria - Plaţa Romană
7 Făt Frumos - Podgoria - Mioriţa - Billa - Podgoria - Făt Frumos ラケット式環状系統
9 Făt Frumos - Podgoria - Vladimirescu - Combinatul Chimic
10 Piata Romană - Combinatul Chimic
11 Făt Frumos - Podgoria - Sămbăteni - Ghioroc
12 Piata Romană - Podgoria - Sămbăteni - Ghioroc
14 Combinatul Chimic - Ghioroc
15 Făt Frumos - Gara CFR - Sere
15b Făt Frumos - Gara CFR - Sere - CET
16 Piata Romană - Podgoria - Sere
18b Făt Frumos - Cpt. Ignat - Piaţa Romană - Podgoria - Maranata - Billa - Renasterii - Miorita - Podgoria - Piata Romană - Cpt. Ignat - Făt Frumos 環状系統

車両

車庫に並ぶアラド市電の電車(2013年撮影)

概要

民主化直後の1990年の時点で、アラド市電には共産主義時代に導入されたタトラT4R(100両)およびティミス2(電動車44両、付随車44両)が在籍していた。1990年代初頭、アラド県評議会はルーマニア国内における路面電車近代化のための投資プログラムに基づき、タトラT4Rのうち27両の近代化を実施したが、それ以外の車両は老朽化が進行し運用に就けない状態にあり、特にティミス2は車軸の破損、機器の落下など欠陥が多数露呈する状況となっており、アラド市電では運用本数に対し車両数が不足する状態に陥った。この事態を受け、ドイツオーストリア等ヨーロッパ各地の路面電車事業者はアラド市電の支援のため事業者で使用されていた旧型電車を譲渡する形での支援を表明し、1995年以降アラド市電には第二次世界大戦後の東西ドイツで使用された多種多様な車両が使用されることとなり、共産主義時代の自社発注車が置き換えられた[3][12][13][14]

ただし、これらの車両についても継続的な導入は難しく、更に長年の使用による老朽化も進んだことから、2010年代以降アラド市電にはルーマニアの国産超低床電車であるインペリオの導入が実施されている。2016年時点では6両の導入に留まっていたが、2019年には新たに28両の発注が実施された。また、これに加えて既存の譲渡車両についても2025年までに54両が近代化工事を受け、今後も使用される事になっている[3][15][13][16]

車両形式一覧

1990年以降のアラド市電に導入された、もしくは導入される予定の営業用車両の形式は以下の通り。そのうち太字の車両は2020年時点で現役車両が存在する、もしくは2020年以降導入が計画されている形式である。これらに加えて、前述の通り「グリーンアロー」こと郊外線で長年使用されていたハンガリー製の車両(電動車付随車)が動態保存運転用に在籍する[3][15][10][12][16][17]

形式 編成 譲渡元 備考・参考
T4R ボギー車
(電動車)
(自社発注車) [18]
ティミス2 ボギー車
(電動車)
(自社発注車)
ボギー車
(付随車)
ゴータカー 2軸車
(電動車)
ハルバーシュタット市電
ツヴィッカウ市電
2軸車
(付随車)
ツヴィッカウ市電
T4 ボギー車
(電動車)
ミュールハイム市電 元は博物館の保存車両[19]
B4 ボギー車
(付随車)
マンハイム市電 [20]
ミュールハイム市電 [20]
T4D ボギー車
(電動車)
ハレ市電
B4D ボギー車
(付随車)
ハレ市電
GT4 2車体連接車
(電動車)
シュトゥットガルト市電 [21]
ウルム市電 元はシュトゥットガルト市電からの譲渡車両[21]
GT6 2車体連接車
(電動車)
インスブルック市電 一部車両はビーレフェルト市電からの譲渡車両[22][23]
マンハイム市電 一部車両はビーレフェルト市電からの譲渡車両
ルードヴィヒスハーフェン市電 [24]
マインツ市電
ミュールハイム市電
ライン・ハールト鉄道
ボーフム/ゲルゼンキルヒェン市電 [18]
GB6 2車体連接車
(付随車)
ライン・ハールト鉄道 [25]
GT6ZR 2車体連接車
(電動車)
ボーフム/ゲルゼンキルヒェン市電 両運転台車両[18][26]
ヴュルツブルク市電
GT8 3車体連接車
(電動車)
エッセン市電 [27][28]
インスブルック市電 ビーレフェルト市電からの譲渡車両
M8S 3車体連接車
(電動車)
エッセン市電 [29][30]
インペリオ 3車体連接車
(電動車)
(自社発注車) 超低床電車

ギャラリー

脚注

注釈

    出典

    1. ARAD”. UrbanRail.Net. 2020年12月4日閲覧。
    2. PROGRAM TRAMVAIE PE LINII”. CTP Arad. 2020年12月4日閲覧。
    3. Romania's tramway revival – part 2”. LRTA (2016年4月11日). 2020年12月4日閲覧。
    4. Istoria "Sagetii Verzi "”. Salvati Sageata Verde. 2007年9月15日時点のオリジナルよりアーカイブ。2020年12月4日閲覧。
    5. Untaru Claudia (2017年2月4日). Săgeata Verde: povestea primului tren electric din România”. Adevărul. 2020年12月4日閲覧。
    6. Istoricul companiei”. CTP Arad (2010年9月21日). 2020年12月4日閲覧。
    7. Andreas Günther; Sergej Tarkhov; Christian Blank (2004-2-16). Straßenbahnatlas Rumänien 2004. Blickpunkt Straßenbahn (1., Edition ed.). Arbeitsgemeinsch. pp. 14. ISBN 978-3926524232
    8. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 5.
    9. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 11.
    10. Vehicle Statistics Arad, Tramway”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    11. Tarife servicii”. CTP Arad (2011年10月31日). 2020年12月4日閲覧。
    12. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 13.
    13. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 14.
    14. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 15.
    15. Astra Vagoane Calatori wins tram contract in Arad”. RailwayPro (2019年6月4日). 2020年12月4日閲覧。
    16. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 15-16.
    17. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 12.
    18. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 99.
    19. Arad, car # 230”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    20. Roster Arad, Duewag B4”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    21. Roster Arad, Esslingen GT4”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    22. Roster Arad, Duewag GT6”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    23. Roster Arad, Lohner GT6”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    24. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 103.
    25. Arad, car # 1054”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    26. Roster Arad, Duewag GT6ZR”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    27. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 100.
    28. Roster Arad, Duewag GT8”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。
    29. MUNICIPIUL ARAD 2018, p. 102.
    30. Roster Arad, Duewag M8S”. Urban Electric Transit. 2020年12月4日閲覧。

    参考資料

    外部リンク

    This article is issued from Wikipedia. The text is licensed under Creative Commons - Attribution - Sharealike. Additional terms may apply for the media files.