バナドセン

バナドセン(Vanadocene)またはビス(η5-シクロペンタジエニルバナジウム(Bis(η5-cyclopentadienyl) vanadium)は、有機金属化合物であり、化学式はV(C5H5)2である。Cp2Vと略される。紫色の結晶で、常磁性を持つ固体である。用途は比較的限られているものの、盛んに研究されている。

バナドセン
識別情報
CAS登録番号 1277-47-0 チェック
PubChem 18667909
UNII GZ5K54AP9L チェック
特性
化学式 V(C5H5)2
モル質量 181.128 g/mol
外観 紫色結晶
融点

167 °C, 440 K, 333 °F

特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

構造と結合

バナドセンは、金属イオンを2つのシクロペンタジエニル環で挟んだメタロセンの一つである。固体状態では、D5d対称性を持つ。バナジウム(II)中心は、2つのシクロペンタジエニル環から等距離で、反転中心に位置する。V-C結合長の平均は、226 pmである[1]。バナドセンのシクロペンタジエニル環は、170 K以上では動的に無秩序な状態で、108 Kまで冷やすと完全に整列する。

合成

バナドセンは1954年にバーミンガム、フィッシャー、ジェフリー・ウィルキンソンにより、二塩化バナドセンを水素化アルミニウムで還元し、その後、真空中100℃で昇華させることで合成することができる[2]。より大量生産が可能な最近の合成法では、[V2Cl3(THF)6]2[Zn2Cl6]をシクロペンタジエニルナトリウムで処理する[3]

2 [V2Cl3(THF)6]2[Zn2Cl6] + 8 NaCp + THF → 4 Cp2V

性質

バナドセンは反応性の高い分子である。15個の価電子しか使えないが、多くの配位子と容易に反応する。例えば、アルキンと反応し、バナジウム-シクロプロペン錯体を形成する[4]

不活性雰囲気中での一酸化炭素の関与するある反応では、イオン性のバナドセン誘導体が得られる。

Cp2V + V(CO)6 → [Cp2V(CO)2][V(CO)6]

トルエン中で、フェロセニウム塩で処理することで容易に酸化し、モノカチオンを与える[5]

VCp2 + [FeCp2]BR4 → [VCp2]BR4 + FeCp2 (R = Ph or 4-C6H4F)

これらのモノカチオンは、非常に空気反応性が高く、酸化還元電位は、-1.10 Vである[5]

高圧の一酸化炭素と反応し、CpV(CO)4を与える[6]

出典

  1. Robin D. Rogers; Jerry L. Atwood; Don Foust & Marvin D. Rausch (1981). “Crystal Structure of Vanadocene”. Journal of Crystal and Molecular Structure 11 (5-6): 183-188. doi:10.1007/BF01210393.
  2. Birmingham, J. M., A. K. Fischer, and G. Wilkinson (1955). “The Reduction of Bis-cyclopentadienyl Compounds”. Naturwissenschaften 42 (4): 96. doi:10.1007/BF00617242.
  3. Lorber, C. "Vanadium Organometallics." Chapter 5.01. Comprehensive Organometallic Chemistry III. Elsevier, 2007. 1-60.
  4. Jordan, Markus (2009). Azine in der Koordinationssphare von Vanadocenderivaten unterschiedlicher Oxidationsstufen (PhD thesis). Universitat Oldenburg.
  5. Calderazzo, Fausto, Isabella Ferri, Guido Pampaloni, and Ulli Englert (1999). “Oxidation Products of Vanadocene and of Its Permethylated Analogue, Including the Isolation and the Reactivity of the Unsolvated [VCp]Cation”. Organometallics 18 (13): 2452-2458. doi:10.1021/om9809320.
  6. King, R.B.; Stone, F.G.A. (1963). “Cyclopentadienyl Metal Carbonyls and Some Derivatives”. Inorg. Synth. 7: 99. doi:10.1002/9780470132388.ch31.
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